酩酊

紺野真

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酩酊
寝そべっている。
というか瓶や服や紙と同様に落ちている。
おちて、いる。
ぐにゃりとした天井。白い四肢。脳が蕩ける感覚…

この部屋ごと溶けてなくなっちまえ!
瓶を投げつける。小さな稲妻の音がした。
何をしているんだろう?いや、そんな事はどうだっていいか…何も考えなくていい…このまま夜と一体化して空気中の一部として浮遊し、循環していられたら。
ただただ無意味に廻っていたい。
心身共にどろどろになった俺にアイツが叫ぶ。
「お前は自由さ!」
そうか。そうだ。
自由か!やっと、やっと手に入れた!欲しかったものはこれだ、遂に…!
自由は無敵だ。何も誰も恐れるものは何ひとつない。
俺は球形を取り戻した。
この世界のすべてが馬鹿馬鹿しいよ。滑稽さ。俺は笑った。大声で、ゲラゲラと。アイツも笑った。面妖な音で。嗚呼そうだ!
今から俺はこのくだらない世界を破壊しよう。
なんて素晴らしい事だろう。アイツはまだ笑っている。今、この部屋は俺という弾丸を乗せた爆撃機だ。
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