森に捨てられた令嬢、本当の幸せを見つけました。

玖保ひかる

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第30話 本当の幸せ

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 それからアリステルとレオンは、ヴァンダーウォール領ディンドナにあった伯爵家所有の小さな屋敷を譲り受け、そこに住むことになった。

 レオンは剣の腕が認められ、ヴァンダーウォール家の私兵団に正式に採用された。

 また、ハリソンが跡目を継いで、ヴァンダーウォール伯爵となった暁には、その職務を助ける側近として、領地経営にも携わることになるらしい。

 最近は、そのための勉強が忙しいようだ。

 ようやく生活が落ち着いたので、ガスター家に近況を知らせる手紙を書いた。

 ガスター家の面々は、みなアリステルが無事に逃げおおせたのか心配していたので、無事を知らせる手紙に大いに安堵した。

 ガスター家からの返事では、マルグリット嬢に拉致監禁されていたジェイコブが救出された顛末が書かれていた。

 マルグリットがアリステルを襲わせるために雇った破落戸が捕縛された。

 エイダンが縛って連行した覆面の男たちだ。

 破落戸は雇い主としてマルグリットの名を白状したため、マルグリットは子爵家から追放されたらしい。

 それに伴い、監禁されていたジェイコブも解放されたようだ。

 マルグリットはジェイコブを自分だけのものにしたかったと言っていたらしい。

 どこまでも彼女は自分のことしか愛していない。

 本当にジェイコブを愛していたのなら、もっと彼を理解し、信じなくてはいけなかった。

 もちろん婚約もなかったことになり、貴族家とのつながりは無くなってしまったが、あのような恐ろしい娘と婚姻を結ばずに済んでよかった、と綴られていた。

 アリステルは、ガスター夫人に渡されたルビーのネックレスを大事にしまってある箱から取り出し、そっと指で触れた。

 肌身離さずネックレスを着けていたら、レオンが嫉妬し外すように言ってきたのだ。


(ルビーはジェイコブの色だからダメって、拗ねていたレオンさんはかわいかったわ)

 アリステルは思い出してくすくす笑う。

 アリステルがプレゼントしたオニキスのブレスレットを、レオンはとても大事に着けてくれている。

 黒と金の飾りが、レオンとアリステルの色だったことを後で聞いて、アリステルは愛の告白をしたのと同じだったのではないかと思い当たり、頬を染めた。




 オーウェルズで出会った人々の顔を思い描いた。

 たくさんの出会いがあり、別れもあった。

 そのすべての出会いが、アリステルにとっては学びであり、大切な宝物になっている。

 そして、かけがえのない出会いもあった。


「アリス」


 愛しい人に呼ばれ、アリスは花がほころんだように笑みを作る。


「レオン!」

「手紙を読んでいたのか?」

「ええ、家庭教師をしていたガスターさんのお手紙よ。わたくしたちの結婚式に、皆さんで来てくださるって」


 とても嬉しそうなアリステルに、レオンは軽く口づけた。


「よかったな」

「ええ、でも、とても遠いのに、お誘いして悪かったかしら」

「アリスに会いたいから遠くても来てくれるのだろう。しっかりおもてなしをしなくてはな」

「そうね!」


 二人は結婚式の準備をしながら、なんでもない毎日を愛しい人と過ごす日々が、永遠に続くようにと願うのだった。 






 結婚式の日、空は見事に晴れ渡った。

 ディンドナの教会に、二人を祝おうと、たくさんの人が来てくれた。

 なぜか一番前の席で、兄のハリソンが号泣しているのが見えて、アリステルは思わずもらい泣きしてしまいそうになる。

 リリーとジェイコブの兄妹もおめかしをして来てくれた。

 リリーの髪には、アリステルとお揃いのあのリボンが付けられている。

 父の腕に掴まって、静々とカーペットを歩き、いよいよ新郎のレオンの手に渡される。


「アリステルを頼んだぞ」


 父の言葉に、レオンは深く頷いた。

 レオンの腕に掴まり、神父様の前まで行く。

 生涯の愛を誓い合い、二人は向き合った。

 レオンがそっとアリステルのベールをめくる。


「アリス、とても美しいよ」

「うふふ、ありがとうございます」

「一生涯愛しぬくと誓う」

「ええ、わたくしも」


 二人はそっと口づけた。

 会場にはわっと拍手と祝福の言葉が飛び交った。



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

ご覧いただきありがとうございます。
本編はこれで終了です。
番外編、閑話が少し続きます。
良かったらお付き合いください。
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