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8 闇夜のトンネルでアイラブユー(5億年前)
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とっくに陽も暮れた。
そろそろ日付も変わろうかという深夜の時間帯の山道を、車が進んでいく。
曲がりくねった細い道だ。行く手を照らす明かりなど、ヘッドライト以外は何もない。まるで闇夜に吸い込まれていくかのような、そんな感覚まで覚えてしまう。
「お客さん、本当にこの先に行く気で?」
先程、後部座席に載せた二人の若者に向かって確認をしてみる。
何せ、もう晩秋なのだ。夜の訪れは早いし、標高もそこそこあるので気温も低い。
だが、それよりなにより――あそこはあれが“よく出る”という、この地域では評判の場所なのだ。そんな時期のこんな時間にあんな場所に行くというのには、流石に首を捻りたくなってしまう。
「この先まだ行くのか、ですって? ええ、もちろんですよ、ロマンスグレーのダンディな運転手さん。このまま行っちゃってください!」
「はい……承知しました」
「……」
暗がりではっきりとは見えなかったが、助手席の後ろに座る男はまさに満面の笑みだった。一方、運転手である私の真後ろに座る女性はルームミラーでは確認できないが、かなり不服な雰囲気を醸し出している。
一体全体、今から何が起こるのだろう……。
俄然、心配になってしまう。
だが、最も気になることは、別にある――私の横に座るおばさんの存在だ。
――このおばさんは、誰?
修行僧のような、白いサラシ生地の和服。
首から下げた大袈裟な首飾りは、原始人のシャーマンを思わせる。
助手席に座る、心も体も余裕たっぷりな感じのその女性は、黒さの度合いをいよいよ増していく暗闇へタクシーが突入しようとも、動じた素振りなど全く見当たらない。
そんなとき、激しく点滅する光がルームミラーから私の目に放たれた。
後続車のヘッドライトの明かりが反射したのだ。恐らくあれは――雛地鶏 謙君の車。あの派手なスポーツカーのフォルムには、見覚えがあるのだ。
後部座席に座る彼も気付いたようだ。ちらり、後ろを見遣った。
しかし、それ以上気に留める様子はない。
自然体の口調で、彼は隣に座る美しい“娘”に向かってこう云った。
「今回は、霊媒師で巫女としてもご活躍中の“おたねさん”こと種中良子先生にお越しいただきました」
「霊媒師……種中さん……」
呆気にとられた感じの娘に助手席のおばさんが振り返り、にこやかに挨拶をする。
「どうもー。“おたねさん”こと種中でーす」
「あ、はい。……どうも」
むっつりとした顔で会釈する娘に、50才前後であろうその霊媒師は顔を横に“ニーッ”と引き延ばすような胡散臭い笑顔で返した。
だがそんなやりとりをしている間にも、私の運転するタクシーは一台の派手な車を引き連れたまま山道を進んでいった。ひとつの峠を越え、ようやく見えてきたのは古くて幅の狭い、そして妙に薄暗いトンネルの坑口だった。
噂では戦前に掘られてかなりの年数は経っているのだが、“諸事情”により未だに現役のトンネルということである。
「そろそろ到着です……」
「了解!」
夜更けのこんな時間に増々ボルテージを上げた彼が、私の言葉に元気よく返事した。
暫くの後、私たちの他にはほとんど車両の通行など無いトンネルの前に到着。ブレーキを踏んで車を脇に寄せ、停車させる。
それと時をほぼ同じくして、赤紫色とでも表現すればいいのか、強烈ビビッドカラーなスポーツカーが私たちの何十メートルか後ろに停車した。
……微妙な距離である。
もしかして彼は、尾行しているのがばれていないとでも思っているのだろうか?
すると「じゃあ運転手さん、ここで待っててくださいね!」と車中の彼が云ったので、私は後部座席の自動ドアを開け、エンジンを止めた状態でその場に待つことにする。
闇に向かって勢いよく飛び出した、彼。
渋々、その後に付いて行く娘。
余裕たっぷりの霊媒師は、どっこいしょと重たい腰を上げて外へ出る。
さて、後にいる”彼”はどう動く? バックミラーを確認するが、何故か動きがない。
――そうか! 雛地鶏君、暗所&閉所恐怖症だったっけ。
車から出たくても出られない――そんな彼の気持ちを考えると、私は込み上がって来る“笑い”を抑えることはできなかった。口に左手を当てて、くくく、と忍び笑いをした。
しかし今日は、雛地鶏君の後ろを影のように付いて来る“忍者”の存在を感じないのだ。きっと、何か他の任務があるのだろう。だとすれば、今日は彼――榊原祐樹君の独壇場となるのが容易に想像できる。
多少寒くはなるが、彼等の会話が聞こえるよう助手席の窓を開け、祐樹君たちの行動を見守ることとする。するとトンネルの入り口から数メートルほど入ったところで立ちどまった祐樹君が、トンネルの奥を覗き込みながら云った。
「おたねさん。どうです、いそうですか?」
「うん……いるね。ごっちゃりと」
「じゃあ、あんまり奥に行くのもいやだから、この辺でやりますか」
「うむ。あたしゃ、どこでもかまわぬぞよ」
「…………」
祐樹君の横で、少し震えながら立つ娘。
おいてけぼり感満載の彼女が表情を強張らせたことになど気付きもしない彼は、ワクワク感満載の顔をほころばせて、遂に「告白」の口火を切った。
「おたねさん。それでは、お願いします!」
「よっしゃ、あいやぁー」
「!?」
勢いのある掛け声一閃、おたねさんと呼ばれる霊媒師がお経のような呪文のような変な言葉をブツブツと唱え始めた。
そんなおばちゃんの“勢い”ある行動に反比例するかのように、娘の頬がみるみると蒼ざめていく。
あーまらむーにょぉかんぱらぴぃのぺろろちかぁー
あーまらむーにょぉかんぱらぴぃのぺろろちかぁー
あーまらむーにょぉかんぱらぴぃのぺろろちかぁー
――ぺろろちか?
右に大きく傾けた私の頭の中で、“インチキ”という4文字が浮かんだその時だった。おたねさんの夢に出てきそうな無限ループの呪文が、突然止んだのだ。
辺りがまるでブラックホールの如き静けさに変わる。
ごくり、という祐樹君の喉が鳴ったのがわかったほどに。
「われは、そなたのごせんぞさまなるぞ……。しかと、わがいうことをきけ……」
それは水辺から引き剥がされ、からからに喉が渇いた蛙がひっくり返ったまま喉の奥から絞り出したかのような、そんなしゃがれ声だった。おたねさんが、しゃべり出す。
どうやら、この辺りに彷徨う幽霊?魂?におたねさんが憑依されたらしい。
「“そなた”って私のこと?」
「もちろん、そうです」
戸惑う娘の横で、祐樹君が大きく頷く。
その顔はまるで悪戯小学生のそれだった。これ以上ないというくらい、楽しげな顔をしている。
「私のご先祖さまの魂がこんなトンネルに彷徨っているなんて、初耳だわ」
「ま、まあ、そういうこともあり得るでしょうね。ここが古戦場で、真奈美さんの御先祖様がここで討死したとか……」
「ふうん、そんなものかしら」
もちろん、私もそんな話は聞いたことがない。
だが、そんな彼らの会話などお構いなし。更に喉に力を込めたおたねさんが、言葉を喉の奥から吐き出した。干からびた蛙の声で。
「ま、まなみどの……そなたは、そこにいるりりしいわかもの……さかきばらゆうきとけっこんするがいいぞよ……。それがむりなら、まずはおためしトライアルきかんとしてつきあってみるのもいいかもしれんぞよ……。さすれば、まなみどのはしあわせをつかむことになろう、ぞよ……」
ぞよぞよとうるさいおたねさんの言葉を聞いた真奈美さんの眉間に、きりりと思い切り深い縦皺が寄った。
それを見て、急に慌て出した祐樹君。
「ほ、ほら真奈美さんの御先祖様もこう云ってることですし、どうです? この際、僕とつきあっちゃうってのは?」
「あのおばさんの云うこと、めっちゃ嘘くさいんだけど……」
それを聞いたおたねさんの額から、玉のような汗がいくつも吹き出した。
おたねさんを取り巻く胡散臭さの雰囲気が頂点に達したそのとき、遠くで叫ぶ雛地鶏君の声が聞こえたのだ。
「そうだそうだ! 真奈美さん、その人はインチキだぞよ!」
何故か“だぞよ”の口癖が移ってしまった雛地鶏君だが、その声はこの場にいる総ての人々に無視された。
トンネルの壁に空しく反響したその声は、すぐに何処かの彼方に過ぎ去って行った。
「そ、そなた、もしやわたしがごせんぞさまであることをうたがっているのか?」
「ええ、もちろんです」
「な、なんだとお? しつれいな――」
「あああああ! おたねさん、では作戦Bに変更です!」
「おーらいっ!」
「作戦B……? おーらい……?」
真奈美さんの顔色が蒼を飛び越えて緑になる。そんな顔色を窺った祐樹君が、作戦の変更を急遽宣言した。
「あいやあ!」
憑依を解いた、おたねさん。
一度深呼吸して呼吸を整えると、今度は首から下げた大きな数珠の輪のような首飾りを両手で持ち、再びの呪文を唱え始めた。
あーまらむーにょぉかんぱらぴぃのよれよれはー
――よれよれは?
私の首が、再び大きく右に傾いた。
と、トンネルの向こうにまるでガス燈に火を灯したかのような小さな青い炎がいくつも煌めいて、こちらへゆっくり近づいて来る。
あーまらむーにょぉかんぱらぴぃのよれよれはー
懐から“ねこまっしぐら”な高級猫缶を取り出したおたねさんは、その場でぱっかんとアルミの蓋を開けた。
あーまらむーにょぉかんぱらぴぃのよれよれはー
三度目に唱えた呪文とともに、ササミと魚の混ざったような良い匂いを振り撒く缶を頭上に突き上げる。
「あいやっ、はあっ!」
増々近づいて来た、青い灯。
あれはまさか――鬼火? す、すごいぞおたねさん、なんか霊っぽいやつをおびき寄せることができるとは!
――にしても、なぜ猫缶?
だいぶ近寄って来た、青い明かり。
あれは――鬼火ではなく、人魂だ! でももしかすると、猫缶でおびき寄せられるなら猫の魂、猫魂なのかもしれない!
「きええええぇ!」
深夜のぶ厚い帳をぶち破るかのような、そんな声がトンネルに木魂する。すると、今まで自由に浮遊していた青白い魂たちが整列し、文字を形作ったのだ。
『アイラブユー』
「うっほぉ、グッジョブ! やったよ、おたねさん!」
「うむ。あたりまえじゃ」
「……」
喜ぶ祐樹君の横で、冷えた蝋燭のように真奈美さんがかちりと固まる。
そして、おたねさんが天まで届けとばかりに猫缶を得意気に突き上げる。
と、そのとき風の如く現れたのは真っ赤なスーツに身を包んだ雛地鶏家の坊ちゃんだった。
「こんなのは嘘だ、でっちあげだ! ただの子供だましに決まってる!」
彼も、やるときはやるのだ。
勇気を振り絞って苦手な暗闇を抜け、祐樹君の「告白」を妨害しにやって来たのだった。
青い火のような魂に向かって突進してきた彼が、その魂を追い払おうとヤタラメッタラに両手を振り回す。
だが、その人魂たちは彼の腕を器用に避ける。僅かに隊列が乱れただけで、文字を大崩れさせることはなかった。
「あれ? おかしいな、テグスとかワイヤーとかあるはずなのに……ない」
ぎゃあああッ
いったい彼は、何のためにやって来たのだろう。折角の勇気を振り絞って。
雄叫びをあげ、自分の車へと今まで見たことも無い速さで駆け戻った雛地鶏君は、耳をつんざくほど大きなエンジン音を山奥に残し、夜の闇へと消えて行った。
前言撤回――。
やるときもやらない、「雛地鶏 謙」である。
おたねさんが「もういいかな?」と祐樹君に確認した後、缶を路上に降ろす。
まるで待てを解除された犬のように、青い火の塊が缶に群がった。
やはりこれらは、猫魂らしい。「よーしよーし」とおたねさんが野良猫をあやすような声を出している。
「どうです、真奈美さん。この告白は気に入っていただけましたか? 何せ、本物の霊が――」
「な、なによ! ゆ、幽霊なんて、ちっとも怖くなんかないんだからね! だけど、そんな変なものを持ち出すアンタのセンスが信じられないわ。……私に告白るなんて、5億年早いのよっ!」
「ご、5億年……。ほ、本物の霊なのに、この程度のリアクションしか貰えないとは……」
衝撃的な、告白までの残り年数を聞いてしまった祐樹君。
まるで燃え尽きたボクサーのように真っ白く石化し、身動きをしなくなった。確か私の記憶では、これが告白できるまでの時間が最長になった瞬間である。
がっくりと項垂れ、冷え冷えとした道路に膝を落とす。
一方のおたねさんは、元気に猫缶を貪る猫魂たちを母親のような穏やかな眼で見守っていた。
――そうか、彼は知らなかったのだ。真奈美さんが幽霊やお化けを苦手にしているということを。
そんな彼を見て、ついつい悲しい気持ちになる。
頑張れ、祐樹君! と密かに応援もしたくなる。
――いやいや、待て待て。私は、そういう立場ではないはずだ。
そう思った矢先。フリーズした祐樹君と猫魂に夢中になっているおたねさんを後に残し、真奈美さんが私のタクシーにつかつかと近づいて来た。
「じゃあ、運転手さん。帰るので車を出して」
「あ、はい。でも、お連れ様がまだ……」
「いいから、出してちょうだい」
私が開けた後部座席のドアをまるでモデルのようなスムーズさで通過した彼女が、乗り込むなりそう云った。
美しい娘の云うことだ。仕方ない……。
エンジンを起動、ヘッドライトを点灯し、きゅるきゅると音を立ててUターンした。
「ああ、ちょっと待って真奈美さん! 僕をこんな所に残していかないでー」
「南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏」
慌てる男と観念して念仏を唱える女。そんな二人を残したまま、私はアクセルを踏んだ。
と、溜息を吐いたまま後部座席に深々と身を託した真奈美さんが、ぽつり、と呟いた。
「お父様……。もうそろそろ、変装を止めてほしいですわ。私、祐樹さんの告白の現場にはいつもお父様が居合わせていることを、最初から気付いていたんですから」
「……」
私の変装術も、まだまだだったらしい。
というより寧ろ娘が鋭すぎるのかもしれない。
ハンドルを持つ右手はそのままに、左手で顔の上に被った肌色の薄皮マスクをべりりと剥ぎ取る。いつもながら、このねちねちとしたマスクの粘性的感触が気持ち悪い。
「真奈美さん……。流石、我が娘。とっくに私の変装を見破っていたとは」
「お父様。私を誰だと思っているのです? 私は、“お父様”の娘ですよ」
「ああ、そのとおりだな。我が娘ながら、その鋭い感覚はいつも感心するよ」
「いくら変装しても、そのダンディな白髪の特徴までは変えられませんでしたね。そんなことでは私を誤魔化すことはできませんよ」
「ああ……なるほど。確かにそこまでは気を配らなかったよ」
――焼肉屋の従業員、動物園の飼育員、公園の清掃員、セスナ機のパイロット、街角DJポリス、植物園の整備員、潜水艦操縦士、そして今回のタクシー運転手……今までの私の変装した姿が、走馬灯のように私の頭の中を駆け巡る。
「どうだろう、真奈美さん。本当のところ、祐樹君の熱意は既に伝わってはいるんだろう? ならばこの辺で――」
「お父様。それは私と彼の問題です。お父様といえども、そこは立ち入っていただきたくはありません」
「そうか、済まなかった……。では、ご自宅までお送りしましょう、お嬢様」
「ええ、それで結構ですわよ。運転手さん」
――ここにきて5億年か。キツイな。
私の口から、盛大な溜息が漏れる。
最初は娘に悪い虫がついたら困るからと、社長の仕事をぶん投げてまでその様子を探るために付いていったのは確かだ。だが最近は、彼――榊原祐樹君の熱意のほどを見るたびに、彼のことが気になって仕方なくなっていた。
でも一方では、彼に「お前にお父様などと呼ばれる筋合いはな―い」とか云ってやりたい気持ちもある。
男親の娘への気持ちは、複雑なのだ。
――ならば、祐樹君。私から君に、最後のチャンスを与えてやろう。
運転しながら、彼のために思いついた秘策。
それを胸に秘めながら、私は娘とともに夜の街をタクシーで駆け抜けた。
キミに届けたい、永久の愛を。猫魂でしたためた、虚空に彷徨うラブレター。
―続く―
そろそろ日付も変わろうかという深夜の時間帯の山道を、車が進んでいく。
曲がりくねった細い道だ。行く手を照らす明かりなど、ヘッドライト以外は何もない。まるで闇夜に吸い込まれていくかのような、そんな感覚まで覚えてしまう。
「お客さん、本当にこの先に行く気で?」
先程、後部座席に載せた二人の若者に向かって確認をしてみる。
何せ、もう晩秋なのだ。夜の訪れは早いし、標高もそこそこあるので気温も低い。
だが、それよりなにより――あそこはあれが“よく出る”という、この地域では評判の場所なのだ。そんな時期のこんな時間にあんな場所に行くというのには、流石に首を捻りたくなってしまう。
「この先まだ行くのか、ですって? ええ、もちろんですよ、ロマンスグレーのダンディな運転手さん。このまま行っちゃってください!」
「はい……承知しました」
「……」
暗がりではっきりとは見えなかったが、助手席の後ろに座る男はまさに満面の笑みだった。一方、運転手である私の真後ろに座る女性はルームミラーでは確認できないが、かなり不服な雰囲気を醸し出している。
一体全体、今から何が起こるのだろう……。
俄然、心配になってしまう。
だが、最も気になることは、別にある――私の横に座るおばさんの存在だ。
――このおばさんは、誰?
修行僧のような、白いサラシ生地の和服。
首から下げた大袈裟な首飾りは、原始人のシャーマンを思わせる。
助手席に座る、心も体も余裕たっぷりな感じのその女性は、黒さの度合いをいよいよ増していく暗闇へタクシーが突入しようとも、動じた素振りなど全く見当たらない。
そんなとき、激しく点滅する光がルームミラーから私の目に放たれた。
後続車のヘッドライトの明かりが反射したのだ。恐らくあれは――雛地鶏 謙君の車。あの派手なスポーツカーのフォルムには、見覚えがあるのだ。
後部座席に座る彼も気付いたようだ。ちらり、後ろを見遣った。
しかし、それ以上気に留める様子はない。
自然体の口調で、彼は隣に座る美しい“娘”に向かってこう云った。
「今回は、霊媒師で巫女としてもご活躍中の“おたねさん”こと種中良子先生にお越しいただきました」
「霊媒師……種中さん……」
呆気にとられた感じの娘に助手席のおばさんが振り返り、にこやかに挨拶をする。
「どうもー。“おたねさん”こと種中でーす」
「あ、はい。……どうも」
むっつりとした顔で会釈する娘に、50才前後であろうその霊媒師は顔を横に“ニーッ”と引き延ばすような胡散臭い笑顔で返した。
だがそんなやりとりをしている間にも、私の運転するタクシーは一台の派手な車を引き連れたまま山道を進んでいった。ひとつの峠を越え、ようやく見えてきたのは古くて幅の狭い、そして妙に薄暗いトンネルの坑口だった。
噂では戦前に掘られてかなりの年数は経っているのだが、“諸事情”により未だに現役のトンネルということである。
「そろそろ到着です……」
「了解!」
夜更けのこんな時間に増々ボルテージを上げた彼が、私の言葉に元気よく返事した。
暫くの後、私たちの他にはほとんど車両の通行など無いトンネルの前に到着。ブレーキを踏んで車を脇に寄せ、停車させる。
それと時をほぼ同じくして、赤紫色とでも表現すればいいのか、強烈ビビッドカラーなスポーツカーが私たちの何十メートルか後ろに停車した。
……微妙な距離である。
もしかして彼は、尾行しているのがばれていないとでも思っているのだろうか?
すると「じゃあ運転手さん、ここで待っててくださいね!」と車中の彼が云ったので、私は後部座席の自動ドアを開け、エンジンを止めた状態でその場に待つことにする。
闇に向かって勢いよく飛び出した、彼。
渋々、その後に付いて行く娘。
余裕たっぷりの霊媒師は、どっこいしょと重たい腰を上げて外へ出る。
さて、後にいる”彼”はどう動く? バックミラーを確認するが、何故か動きがない。
――そうか! 雛地鶏君、暗所&閉所恐怖症だったっけ。
車から出たくても出られない――そんな彼の気持ちを考えると、私は込み上がって来る“笑い”を抑えることはできなかった。口に左手を当てて、くくく、と忍び笑いをした。
しかし今日は、雛地鶏君の後ろを影のように付いて来る“忍者”の存在を感じないのだ。きっと、何か他の任務があるのだろう。だとすれば、今日は彼――榊原祐樹君の独壇場となるのが容易に想像できる。
多少寒くはなるが、彼等の会話が聞こえるよう助手席の窓を開け、祐樹君たちの行動を見守ることとする。するとトンネルの入り口から数メートルほど入ったところで立ちどまった祐樹君が、トンネルの奥を覗き込みながら云った。
「おたねさん。どうです、いそうですか?」
「うん……いるね。ごっちゃりと」
「じゃあ、あんまり奥に行くのもいやだから、この辺でやりますか」
「うむ。あたしゃ、どこでもかまわぬぞよ」
「…………」
祐樹君の横で、少し震えながら立つ娘。
おいてけぼり感満載の彼女が表情を強張らせたことになど気付きもしない彼は、ワクワク感満載の顔をほころばせて、遂に「告白」の口火を切った。
「おたねさん。それでは、お願いします!」
「よっしゃ、あいやぁー」
「!?」
勢いのある掛け声一閃、おたねさんと呼ばれる霊媒師がお経のような呪文のような変な言葉をブツブツと唱え始めた。
そんなおばちゃんの“勢い”ある行動に反比例するかのように、娘の頬がみるみると蒼ざめていく。
あーまらむーにょぉかんぱらぴぃのぺろろちかぁー
あーまらむーにょぉかんぱらぴぃのぺろろちかぁー
あーまらむーにょぉかんぱらぴぃのぺろろちかぁー
――ぺろろちか?
右に大きく傾けた私の頭の中で、“インチキ”という4文字が浮かんだその時だった。おたねさんの夢に出てきそうな無限ループの呪文が、突然止んだのだ。
辺りがまるでブラックホールの如き静けさに変わる。
ごくり、という祐樹君の喉が鳴ったのがわかったほどに。
「われは、そなたのごせんぞさまなるぞ……。しかと、わがいうことをきけ……」
それは水辺から引き剥がされ、からからに喉が渇いた蛙がひっくり返ったまま喉の奥から絞り出したかのような、そんなしゃがれ声だった。おたねさんが、しゃべり出す。
どうやら、この辺りに彷徨う幽霊?魂?におたねさんが憑依されたらしい。
「“そなた”って私のこと?」
「もちろん、そうです」
戸惑う娘の横で、祐樹君が大きく頷く。
その顔はまるで悪戯小学生のそれだった。これ以上ないというくらい、楽しげな顔をしている。
「私のご先祖さまの魂がこんなトンネルに彷徨っているなんて、初耳だわ」
「ま、まあ、そういうこともあり得るでしょうね。ここが古戦場で、真奈美さんの御先祖様がここで討死したとか……」
「ふうん、そんなものかしら」
もちろん、私もそんな話は聞いたことがない。
だが、そんな彼らの会話などお構いなし。更に喉に力を込めたおたねさんが、言葉を喉の奥から吐き出した。干からびた蛙の声で。
「ま、まなみどの……そなたは、そこにいるりりしいわかもの……さかきばらゆうきとけっこんするがいいぞよ……。それがむりなら、まずはおためしトライアルきかんとしてつきあってみるのもいいかもしれんぞよ……。さすれば、まなみどのはしあわせをつかむことになろう、ぞよ……」
ぞよぞよとうるさいおたねさんの言葉を聞いた真奈美さんの眉間に、きりりと思い切り深い縦皺が寄った。
それを見て、急に慌て出した祐樹君。
「ほ、ほら真奈美さんの御先祖様もこう云ってることですし、どうです? この際、僕とつきあっちゃうってのは?」
「あのおばさんの云うこと、めっちゃ嘘くさいんだけど……」
それを聞いたおたねさんの額から、玉のような汗がいくつも吹き出した。
おたねさんを取り巻く胡散臭さの雰囲気が頂点に達したそのとき、遠くで叫ぶ雛地鶏君の声が聞こえたのだ。
「そうだそうだ! 真奈美さん、その人はインチキだぞよ!」
何故か“だぞよ”の口癖が移ってしまった雛地鶏君だが、その声はこの場にいる総ての人々に無視された。
トンネルの壁に空しく反響したその声は、すぐに何処かの彼方に過ぎ去って行った。
「そ、そなた、もしやわたしがごせんぞさまであることをうたがっているのか?」
「ええ、もちろんです」
「な、なんだとお? しつれいな――」
「あああああ! おたねさん、では作戦Bに変更です!」
「おーらいっ!」
「作戦B……? おーらい……?」
真奈美さんの顔色が蒼を飛び越えて緑になる。そんな顔色を窺った祐樹君が、作戦の変更を急遽宣言した。
「あいやあ!」
憑依を解いた、おたねさん。
一度深呼吸して呼吸を整えると、今度は首から下げた大きな数珠の輪のような首飾りを両手で持ち、再びの呪文を唱え始めた。
あーまらむーにょぉかんぱらぴぃのよれよれはー
――よれよれは?
私の首が、再び大きく右に傾いた。
と、トンネルの向こうにまるでガス燈に火を灯したかのような小さな青い炎がいくつも煌めいて、こちらへゆっくり近づいて来る。
あーまらむーにょぉかんぱらぴぃのよれよれはー
懐から“ねこまっしぐら”な高級猫缶を取り出したおたねさんは、その場でぱっかんとアルミの蓋を開けた。
あーまらむーにょぉかんぱらぴぃのよれよれはー
三度目に唱えた呪文とともに、ササミと魚の混ざったような良い匂いを振り撒く缶を頭上に突き上げる。
「あいやっ、はあっ!」
増々近づいて来た、青い灯。
あれはまさか――鬼火? す、すごいぞおたねさん、なんか霊っぽいやつをおびき寄せることができるとは!
――にしても、なぜ猫缶?
だいぶ近寄って来た、青い明かり。
あれは――鬼火ではなく、人魂だ! でももしかすると、猫缶でおびき寄せられるなら猫の魂、猫魂なのかもしれない!
「きええええぇ!」
深夜のぶ厚い帳をぶち破るかのような、そんな声がトンネルに木魂する。すると、今まで自由に浮遊していた青白い魂たちが整列し、文字を形作ったのだ。
『アイラブユー』
「うっほぉ、グッジョブ! やったよ、おたねさん!」
「うむ。あたりまえじゃ」
「……」
喜ぶ祐樹君の横で、冷えた蝋燭のように真奈美さんがかちりと固まる。
そして、おたねさんが天まで届けとばかりに猫缶を得意気に突き上げる。
と、そのとき風の如く現れたのは真っ赤なスーツに身を包んだ雛地鶏家の坊ちゃんだった。
「こんなのは嘘だ、でっちあげだ! ただの子供だましに決まってる!」
彼も、やるときはやるのだ。
勇気を振り絞って苦手な暗闇を抜け、祐樹君の「告白」を妨害しにやって来たのだった。
青い火のような魂に向かって突進してきた彼が、その魂を追い払おうとヤタラメッタラに両手を振り回す。
だが、その人魂たちは彼の腕を器用に避ける。僅かに隊列が乱れただけで、文字を大崩れさせることはなかった。
「あれ? おかしいな、テグスとかワイヤーとかあるはずなのに……ない」
ぎゃあああッ
いったい彼は、何のためにやって来たのだろう。折角の勇気を振り絞って。
雄叫びをあげ、自分の車へと今まで見たことも無い速さで駆け戻った雛地鶏君は、耳をつんざくほど大きなエンジン音を山奥に残し、夜の闇へと消えて行った。
前言撤回――。
やるときもやらない、「雛地鶏 謙」である。
おたねさんが「もういいかな?」と祐樹君に確認した後、缶を路上に降ろす。
まるで待てを解除された犬のように、青い火の塊が缶に群がった。
やはりこれらは、猫魂らしい。「よーしよーし」とおたねさんが野良猫をあやすような声を出している。
「どうです、真奈美さん。この告白は気に入っていただけましたか? 何せ、本物の霊が――」
「な、なによ! ゆ、幽霊なんて、ちっとも怖くなんかないんだからね! だけど、そんな変なものを持ち出すアンタのセンスが信じられないわ。……私に告白るなんて、5億年早いのよっ!」
「ご、5億年……。ほ、本物の霊なのに、この程度のリアクションしか貰えないとは……」
衝撃的な、告白までの残り年数を聞いてしまった祐樹君。
まるで燃え尽きたボクサーのように真っ白く石化し、身動きをしなくなった。確か私の記憶では、これが告白できるまでの時間が最長になった瞬間である。
がっくりと項垂れ、冷え冷えとした道路に膝を落とす。
一方のおたねさんは、元気に猫缶を貪る猫魂たちを母親のような穏やかな眼で見守っていた。
――そうか、彼は知らなかったのだ。真奈美さんが幽霊やお化けを苦手にしているということを。
そんな彼を見て、ついつい悲しい気持ちになる。
頑張れ、祐樹君! と密かに応援もしたくなる。
――いやいや、待て待て。私は、そういう立場ではないはずだ。
そう思った矢先。フリーズした祐樹君と猫魂に夢中になっているおたねさんを後に残し、真奈美さんが私のタクシーにつかつかと近づいて来た。
「じゃあ、運転手さん。帰るので車を出して」
「あ、はい。でも、お連れ様がまだ……」
「いいから、出してちょうだい」
私が開けた後部座席のドアをまるでモデルのようなスムーズさで通過した彼女が、乗り込むなりそう云った。
美しい娘の云うことだ。仕方ない……。
エンジンを起動、ヘッドライトを点灯し、きゅるきゅると音を立ててUターンした。
「ああ、ちょっと待って真奈美さん! 僕をこんな所に残していかないでー」
「南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏」
慌てる男と観念して念仏を唱える女。そんな二人を残したまま、私はアクセルを踏んだ。
と、溜息を吐いたまま後部座席に深々と身を託した真奈美さんが、ぽつり、と呟いた。
「お父様……。もうそろそろ、変装を止めてほしいですわ。私、祐樹さんの告白の現場にはいつもお父様が居合わせていることを、最初から気付いていたんですから」
「……」
私の変装術も、まだまだだったらしい。
というより寧ろ娘が鋭すぎるのかもしれない。
ハンドルを持つ右手はそのままに、左手で顔の上に被った肌色の薄皮マスクをべりりと剥ぎ取る。いつもながら、このねちねちとしたマスクの粘性的感触が気持ち悪い。
「真奈美さん……。流石、我が娘。とっくに私の変装を見破っていたとは」
「お父様。私を誰だと思っているのです? 私は、“お父様”の娘ですよ」
「ああ、そのとおりだな。我が娘ながら、その鋭い感覚はいつも感心するよ」
「いくら変装しても、そのダンディな白髪の特徴までは変えられませんでしたね。そんなことでは私を誤魔化すことはできませんよ」
「ああ……なるほど。確かにそこまでは気を配らなかったよ」
――焼肉屋の従業員、動物園の飼育員、公園の清掃員、セスナ機のパイロット、街角DJポリス、植物園の整備員、潜水艦操縦士、そして今回のタクシー運転手……今までの私の変装した姿が、走馬灯のように私の頭の中を駆け巡る。
「どうだろう、真奈美さん。本当のところ、祐樹君の熱意は既に伝わってはいるんだろう? ならばこの辺で――」
「お父様。それは私と彼の問題です。お父様といえども、そこは立ち入っていただきたくはありません」
「そうか、済まなかった……。では、ご自宅までお送りしましょう、お嬢様」
「ええ、それで結構ですわよ。運転手さん」
――ここにきて5億年か。キツイな。
私の口から、盛大な溜息が漏れる。
最初は娘に悪い虫がついたら困るからと、社長の仕事をぶん投げてまでその様子を探るために付いていったのは確かだ。だが最近は、彼――榊原祐樹君の熱意のほどを見るたびに、彼のことが気になって仕方なくなっていた。
でも一方では、彼に「お前にお父様などと呼ばれる筋合いはな―い」とか云ってやりたい気持ちもある。
男親の娘への気持ちは、複雑なのだ。
――ならば、祐樹君。私から君に、最後のチャンスを与えてやろう。
運転しながら、彼のために思いついた秘策。
それを胸に秘めながら、私は娘とともに夜の街をタクシーで駆け抜けた。
キミに届けたい、永久の愛を。猫魂でしたためた、虚空に彷徨うラブレター。
―続く―
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