いろいろあって、俺の進路希望調査票はまだ白紙のままである。

たま「ねぎ

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本編第一章:高二になりました、進級して早々に波乱の展開が続いております。

♢第十話:この生意気なテニス少女を仕方ないから助けてやろうと思う(二)♢

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 「あの・・・ちょっといい?」

 お昼時、白川は珍しくクラスメイトの席に近づいた。

 緊張しているのか、手を後ろで組み、もじもじと動かし続けている。一見、不審にも思われる彼女をクラスメイトは嬉しそうに受け入れ、隣の席から椅子を借りてくると、合体した二つの机のわきに並べた。

 (―――ちゃんとやってるみたいだな・・・)
 俺は教室の隅の自席から彼女らを見守ると、今朝のことを思い出す。




 “
 【午前八時十五分:ボランティア部部室】

 「なにもこんなところで渡してくれなくても・・・・」

 「教室で弁当なんて渡したら、なんか面倒なになりそうだろ?」

 「―――面倒って?」
 彼女は真剣なトーンで問い返す。それにしても、純粋すぎないか?こいつ。

 「あ~たとえば?俺とお前が付き合ってるとかあ?変な噂が立ったりするかもしれないだろ?」

 「・・・!たしかにそれは、面倒、というよりもめい・・・・」
 「ああ‼もういいわ~。その先言わなくてもわかっちゃったし、結構傷ついたわ~」

 「・・・とにかく、食えるだけ食っとけよ。それと、これは食べるときのルールだが、同じクラスにテニス部の桜井さんと道木さんがいるだろ?」
 「ええ、いるけど」


 「昼食は必ず彼女たちを誘って食べること」
 「どうしてそんな面倒くさいことを・・・」

 「部員とのコミュニケーションも特訓の一部だからな。それに、飯は大勢で食うのも悪くないぞ?毎日十秒チャージじゃわからなくても、仕方ないとは思うが・・・」
 「そんなこと言って、あなたも友達とごはんなんて、食べたことないんじゃないの?」


 「・・・・俺は・・良いんだよ」 
 “
 



 「―――わあ!」

 白川が緑色のシンプルな弁当箱のふたを開けると、桜井さんが感嘆の反応を見せる。


 「すごいな、まつり!これ、自分で作ったの?」
 道木さんも驚いたように、並べられた具材を眺めた。


 「あ、え~。ううんと・・・」
 (こっちを見るな、こっちを・・・母親が作ったとでも答えておけばいいだろ?)

 「一口、もらっていい?」
 「あ、ええ、もちろん」

 桜井さんは少し吟味してから、枝豆を混ぜたマッシュポテトを少し箸でつまむと、それを自分の口まで運んだ。


 「う~ん、やっぱり!とってもおいしい‼」


 「ほんと?よかった・・・・・・それで、これは?」
 「お返し、自分で作ったから味は保証できないけど・・・ほら、あーんして?」


 白川は少し恥ずかしそうにしながらも、桜井さん自作の卵焼きをおいしそうに頬張った。



 「―――うまくやっているみたいだね」
 購買から戻ってきた天海が、ビニール袋片手にそう言った。

 「ああ、そうだな」

 俺も自分の昼食を準備し始めたところ、ラインの通知が来たため、俺は視線をスマホに移す。

 (!)

 『まつりちゃんにお弁当作ってあげたんだ?』

 顔を挙げると、咲菜から鋭い視線が送られていた。机に頬杖をついて明らかに不満そうな表情だ。そういえば、この前夜食を頼まれて断ったばかりだったっけな・・・。

 「どうしたの?」
 「いや、なんでもない・・・」
 
 『おまえはわかってるだろ?俺は誰かに料理を作るのはやめたんだ』
 『じゃあ、まつりちゃんは特別ってことだよね』

 『あれは仕事だからだって』
 『ふうん』

 咲菜は友達に呼ばれたためトークはここで終わったが、彼女は舌を少し見せ、俺に向けて不満そうな表情を作った。

 (まあ、咲菜には今度ピザでもおごってやろう)


 *


 長かった平日の五日間が過ぎ、ついに試合当日がやってきた。土曜日に授業以外の理由で学校に来ること自体、もしかしたら初めてかもしれない。


 「調子はどうだ?」
 「悔しいけど、不思議なくらいコンディションがいい」
 「そりゃよかった」

 
 「・・・見ていかないの?」
 「いや、変に緊張させるのも悪いかと思って」

 「それなら心配しないで。榮倉君がいてもいなくても変わらないから」
 
 「・・・その、いちいちグサッとする言い方やめない?まあ、そこまで言うなら少しだけ見ていくことにするよ」
 俺は白川が試合するというコートが見える場所に移動して腰かけた。

 (ずいぶん人気なんだな・・・)

 練習だというのに、周から数人が試合を観戦している。そういえば、うちの女子テニス部は結構強いって話だから、白川もなかなかの実力者というわけか。

 そんな周囲の目も気にせず、彼女はえげつないサーブやストロークをバンバンと決め続ける。

 (なんか、前より化け物感が増してないか?)

 白川があっという間に4ゲームを先取すると、桜井さんが別のコートから出てきて、俺の横に座った。

 「今回は本当にありがとう!」
 「気にしないでくれ、俺も部活でやっただけだし・・・まさかここまで仕上がるとは思ってなかったしな」

 「あははは、それは私もだよ・・・あ、またサービスエース取っちゃった。相手も実力のある選手なんだけど」

 もはや早くて目で追うのが精いっぱいだ。俺は身を守るためにも体育のペアを考え直す必要があることを確信した。

 「そういえば、桜井さんはこんなとこいてもいいのか?」
 「私も、さっき試合終わったから!ちなみに、2対6で勝ちました!」
 彼女は誇らしげにそう答えたが、明らかにコミ力不足な俺は、とりあえず拍手だけしておく。
 しかし、こんなかわいらしい性格の彼女でさえ、余裕のスコア・・・この学校には化け物しかいないのだろうか。

 

 「んじゃ、俺はそろそろ・・・」
 「え?あと一ゲームくらい見ていけばいいのに」


 「いや、ちょっとやることもあるし・・・」
 (それに、あいつのどや顔を見るのも癪だからな)

 「そっか、また今度お礼に行ってもいいかな?」
 「もちろん。暇なときにでも来てくれ・・・みやも喜ぶと思うぞ」
 

 結局、白川はこの日、ラブゲームで試合に勝利した。

 ♡

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