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第10章 神造者とカミツクリ
第248話 副支部長に問い詰められ
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とりあえずその日の午後はテセルが市長宅に行っている間、オレは資料をあさっていた。
建前上のオレの立場は『テセルの秘書』というわけだから、市長のところに同行するという選択もあったかもしれない。
しかしどうせ副支部長の時と同様に魑魅魍魎同士の腹の探り合いになるか、さもなくば『中央から出世競争前に腰掛けで来たエリートの若造』に対して表面的には愛想よく話をするとか、そういう事になるのが見えていたのでオレはなるべく関わりたくなかったのだ。
あと公式には『新任支部長の秘書』で、不本意ながら非公式に『愛人』と思われているのがほぼ確実なオレとしては、他の神造者とどういう関係を築けばいいのか分からなかったというところもある。
そんなわけで、ひとまずはこのバッド・ディール市の歴史も調べたいが、テセルからまだ公式の許可を得ていない以上、支部長室にある数冊の本ぐらいしか資料が無いのだ。
まあここにあるだけでも全部目を通して、後の事はそれからだな。
そう思って書籍を手に取ったところで、支部長室の扉が開いてワストリが姿を見せる。
「ここでなにをしているのかね?」
オレがここにいるのはテセルの承認を受けているのだから、責められるいわれは無いはずなのだが、副支部長の視線を受けるとどこか萎縮してしまう。
「少しばかり調べ物をしていただけです」
この言葉にワストリの視線は鋭くなり、こちらは一瞬だが寒気が走った。
「もちろん支部長の許可は得ています。お疑いでしたら、後で支部長にご確認下さい」
「その必要はあるまい。こちらもそこまで浅はかな嘘をつくとは思ってはいない。ただ幾つか質問に答えてもらうぞ」
「それはかまいませんけど……」
ここでスリーサイズや男性経験を聞いてくる下世話なセクハラ野郎だったら、まだ扱いやすいけど、たぶんこの副支部長はそんな相手ではないだろう。
「まずは一つ、君は本当に首都から支部長に同行してきたのかね?」
やばいな。かなりあからさまに疑われている。
しかし下手な事を口にすれば、オレだけで無くテセルにも迷惑がかかりかねないし、ここはごまかすしか無いな。
「申し訳ありませんが――」
「テセル支部長に口止めされているのか」
実際にはそんな事はないけど、ここはその誤解につけ込むべきだろう。
「そんなところです」
「ならばこれは次の疑問だが、君は帝国の人間では無いな」
やっぱり見抜かれていたか。
オレの沈黙を肯定と受け止めたのだろう。副支部長は更にたたみかけてくる。
「もちろん帝国臣民でない人間を雇ったというだけならば違法では無い。だがここは我がフォンリット帝国の根幹である神造者支部だ。そして見たところ君はいろいろと熱心に調べ物をしているようだな」
そう言ってワストリはオレが手に取っていた書籍に目を向ける。
これはかなりまずい雰囲気だ。
どうやらオレが外国のスパイで、テセルを色仕掛けで籠絡して秘密を探っているとワストリは疑っているらしい。
もちろんまるっきり的外れだけど、これまでの出来事からすればそう思われても仕方が無い事は分かっている。
しかしオレはスパイでも何でも無いのだから堂々と否定するぞ。
「これはテセル支部長に頼まれて、この街について調べ物をしていただけです」
「そうだな。確かに、いまここにある書籍だけならば、大したものではない。学識のある人間が少し調査すれば誰にでも分かる事だ」
やっぱりいろいろと含みがありそうな発言だ。
そして個人的に言わせてもらえば、どう考えてもワストリの方が正しい。
むしろテセルが無防備すぎるのだ。
たぶん神造者の学業と魔法の勉強ばかりやってきて、それ以外の事には本当に疎いのだろう。
そして本来ならばそんなテセルを支えるのは、副支部長さんの方だよな。
あれ? そうするとやっぱり副支部長が正論を唱えている事になる。
テセルに対して明らかに不満を持っていた様子だけど、それは見るからに怪しい ―― なにしろ初対面の時点では顔をフードで隠していた ―― オレが同行していたからなのかもしれない。
だけどその疑惑はやっぱり間違っているわけで、ええい本当にややこしい。
「それで質問だが、君はいかなる神を崇拝しているのかね?」
ぬう。これはかなり核心を突いていて、なおかつ困った質問だ。
オレは帝国の諸神について殆ど知らないが、相手はこの道のプロだ。
嘘をつけば簡単にバレてしまうだろう。
そしてごまかすのも難しい。
こっちの世界では、自分の信仰を隠すというのは普通の行動ではないからな。
そうするともっとも確実なのは ―― やむを得ないか。
「わたしは治癒の女神イロールの信徒です」
実際には信仰しているとは言えないけど、不本意ながらオレの守護女神なのは間違いないし、化身になった事もあるからこれは嘘では無い。
テセルはあの女神への信仰について、神造者は殆どいじっていないと言っていたから、フォンリット帝国でも他の地域と同じように崇拝されているはずで、信仰を明かしたとしても問題無いはず。
何よりオレは回復魔法も使えるから、あれこれツッコミを入れられてもどうにかなる。
だがオレのこの返答は全く予想外の展開を招く事になった。
「なに?! それは本当か!」
え? なんで?
副支部長は今まで一番驚いた様子だぞ。
それは明らかにオレの言葉を信じなかったからではなく、真に受けたからこその思わぬ反応だった。
建前上のオレの立場は『テセルの秘書』というわけだから、市長のところに同行するという選択もあったかもしれない。
しかしどうせ副支部長の時と同様に魑魅魍魎同士の腹の探り合いになるか、さもなくば『中央から出世競争前に腰掛けで来たエリートの若造』に対して表面的には愛想よく話をするとか、そういう事になるのが見えていたのでオレはなるべく関わりたくなかったのだ。
あと公式には『新任支部長の秘書』で、不本意ながら非公式に『愛人』と思われているのがほぼ確実なオレとしては、他の神造者とどういう関係を築けばいいのか分からなかったというところもある。
そんなわけで、ひとまずはこのバッド・ディール市の歴史も調べたいが、テセルからまだ公式の許可を得ていない以上、支部長室にある数冊の本ぐらいしか資料が無いのだ。
まあここにあるだけでも全部目を通して、後の事はそれからだな。
そう思って書籍を手に取ったところで、支部長室の扉が開いてワストリが姿を見せる。
「ここでなにをしているのかね?」
オレがここにいるのはテセルの承認を受けているのだから、責められるいわれは無いはずなのだが、副支部長の視線を受けるとどこか萎縮してしまう。
「少しばかり調べ物をしていただけです」
この言葉にワストリの視線は鋭くなり、こちらは一瞬だが寒気が走った。
「もちろん支部長の許可は得ています。お疑いでしたら、後で支部長にご確認下さい」
「その必要はあるまい。こちらもそこまで浅はかな嘘をつくとは思ってはいない。ただ幾つか質問に答えてもらうぞ」
「それはかまいませんけど……」
ここでスリーサイズや男性経験を聞いてくる下世話なセクハラ野郎だったら、まだ扱いやすいけど、たぶんこの副支部長はそんな相手ではないだろう。
「まずは一つ、君は本当に首都から支部長に同行してきたのかね?」
やばいな。かなりあからさまに疑われている。
しかし下手な事を口にすれば、オレだけで無くテセルにも迷惑がかかりかねないし、ここはごまかすしか無いな。
「申し訳ありませんが――」
「テセル支部長に口止めされているのか」
実際にはそんな事はないけど、ここはその誤解につけ込むべきだろう。
「そんなところです」
「ならばこれは次の疑問だが、君は帝国の人間では無いな」
やっぱり見抜かれていたか。
オレの沈黙を肯定と受け止めたのだろう。副支部長は更にたたみかけてくる。
「もちろん帝国臣民でない人間を雇ったというだけならば違法では無い。だがここは我がフォンリット帝国の根幹である神造者支部だ。そして見たところ君はいろいろと熱心に調べ物をしているようだな」
そう言ってワストリはオレが手に取っていた書籍に目を向ける。
これはかなりまずい雰囲気だ。
どうやらオレが外国のスパイで、テセルを色仕掛けで籠絡して秘密を探っているとワストリは疑っているらしい。
もちろんまるっきり的外れだけど、これまでの出来事からすればそう思われても仕方が無い事は分かっている。
しかしオレはスパイでも何でも無いのだから堂々と否定するぞ。
「これはテセル支部長に頼まれて、この街について調べ物をしていただけです」
「そうだな。確かに、いまここにある書籍だけならば、大したものではない。学識のある人間が少し調査すれば誰にでも分かる事だ」
やっぱりいろいろと含みがありそうな発言だ。
そして個人的に言わせてもらえば、どう考えてもワストリの方が正しい。
むしろテセルが無防備すぎるのだ。
たぶん神造者の学業と魔法の勉強ばかりやってきて、それ以外の事には本当に疎いのだろう。
そして本来ならばそんなテセルを支えるのは、副支部長さんの方だよな。
あれ? そうするとやっぱり副支部長が正論を唱えている事になる。
テセルに対して明らかに不満を持っていた様子だけど、それは見るからに怪しい ―― なにしろ初対面の時点では顔をフードで隠していた ―― オレが同行していたからなのかもしれない。
だけどその疑惑はやっぱり間違っているわけで、ええい本当にややこしい。
「それで質問だが、君はいかなる神を崇拝しているのかね?」
ぬう。これはかなり核心を突いていて、なおかつ困った質問だ。
オレは帝国の諸神について殆ど知らないが、相手はこの道のプロだ。
嘘をつけば簡単にバレてしまうだろう。
そしてごまかすのも難しい。
こっちの世界では、自分の信仰を隠すというのは普通の行動ではないからな。
そうするともっとも確実なのは ―― やむを得ないか。
「わたしは治癒の女神イロールの信徒です」
実際には信仰しているとは言えないけど、不本意ながらオレの守護女神なのは間違いないし、化身になった事もあるからこれは嘘では無い。
テセルはあの女神への信仰について、神造者は殆どいじっていないと言っていたから、フォンリット帝国でも他の地域と同じように崇拝されているはずで、信仰を明かしたとしても問題無いはず。
何よりオレは回復魔法も使えるから、あれこれツッコミを入れられてもどうにかなる。
だがオレのこの返答は全く予想外の展開を招く事になった。
「なに?! それは本当か!」
え? なんで?
副支部長は今まで一番驚いた様子だぞ。
それは明らかにオレの言葉を信じなかったからではなく、真に受けたからこその思わぬ反応だった。
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