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第10章 神造者とカミツクリ
第280話 あっけない決着……ではなく更なる危機が
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オレ達の前に姿を見せたイロールのまがい物は、その邪悪な喜びに満ちた笑顔を注ぎつつ、ジリジリとこちらに迫ってくる。
「テセル! ここは逃げて――」
「馬鹿を言うな。同じ失態を二度も繰り返すかよ」
見るとテセルの身体の前面に光の八角形が形成されていた。
どうやらあれでまがい物の魅了の力を防いでいるらしい。
もちろんそれだけで相手が諦めてくれるはずもなく、動きを止めること無くドンドンと近づいてくると、再びテセルに向けてさっきの生命を吸収する灰色の光を放つ。
だがその光線も、またテセルの前にある光の八角形に当たって弾かれる。
「ふん。さっきは不意を打たれたが、能力が分かった以上は、信徒もおらず力の衰えたこの程度の小神など僕の敵ではない。とっとと帝国公式神話の中に組み込まれるがいい」
そう言ってテセルは新たな光の八角形を放って、まがい物へと放つ。
一直線にまがい物に突き進んだ光の八角形は狙い過たず、その身に命中して消滅する。
まあ動きは遅いから外すわけがないよな。
「これで決まりだな」
本当にテセルの言葉通りなら、ちょっとかっこいいぞ。
だけど像そのものは姿が消えずにそのまま残っているぞ。
以前にテセルが『水晶の蜘蛛』のごとき廃神の相手をしたときは、全て消えていた事を考えるとちょっと効果が疑問だ。
「まがい物は消えてないですけど大丈夫なんですか?」
「ああ。前に再定義した『廃神』は精霊が肉体を持っていただけだ。コイツはイロールの神像に信仰の力を吹き込んだ代物だから、中身を帝国公式神話に取り込んで器の石像が残っただけに過ぎない」
これで本当に決着だとしたら、何とも呆気ない結末だな。
むしろ拍子抜けするほどだ。
本当にコイツがこの都市を廃虚と化し、周辺の土地の生命を奪って荒野と化した程の存在だったのだろうか。
テセルが凄いのか、それともこのまがい物の力がそれだけ衰えていたのか、そのあたりは後で調べればいいか。
だがその見込みは甘かった ―― いつものことだけど。
まがい物は一度動きを止めたが、それでもギクシャクとした動きでまたこちらに迫ってきたのだ。
「なんだと? まだ動けるのか」
テセルは少しばかり驚いた様子だ。
まあ相変わらず動きはノロいし、魅了の力も生命力を吸収する光線も防いでいるから、焦ってはいないようだけどな。
「どういうことなんですか?」
「そういえばお前、さっきあいつの攻撃を受けたか?」
「まあ……少しですけど」
言われてみればさっき命を吸われかけたテセルの盾になって、あの灰色の光線を受け、それで焼け付くような感覚があったぞ。
「そうか。それが原因だな。ヤツはお前の力を一部でも吸収したのだろう。お前の存在は帝国公式神話にないから、僕では再定義出来ない」
「ええ?! それではどうする事も出来ないのですか?」
「そういうわけでもないが、ちょっとばかり手間だな……」
ここでテセルはオレの方をチラと見る。
「なんですか? 断っておきますけど――」
「分かっている。あれに生命を吸収されかけた僕の盾になった結果なのだろう。僕だってそれが分からない程バカでは無いつもりだ。命を助けてもらっておいて、責めるような愚かな真似はしないぞ」
そうか。ここでいつもの毒舌であのまがい物に力を与えてしまったオレを非難してくるかと思ったが、さすがにそこまでテセルも愚かではなかったか。
「だからこの僕にも少しばかり、力を分けてくれないか? こういう場合は口づけが有効だろうな」
前言撤回。無神経なセクハラ野郎なのは相変わらずだ。
「口づけがダメなら、胸を揉ませてくれてもいいぞ」
「そうですか。それでは鉄拳でわたしの力をテセルに撃ち込んで差し上げましょう。何でしたら蹴りでも、頭突きでもいいですよ。ムチが無いのが残念ですけどね」
「生憎だけど僕はそういう倒錯した趣味は無いんだ。まあいい」
そういってテセルは改めてまがい物の女神に向き直る。
下らない軽口を叩いている間にも相手はゆっくりと迫ってきていたのだ。
「さてとそれでは切り札といくか」
テセルは胸元の銀の八角形の装身具に手を伸ばす。
「切り札なんて便利なものがあったら、先に使って下さいよ。お互いに命がかかっているんですよ」
「これは一回使うと再度充填するのに何日もかかるんだ。外したら後が無いから、そう簡単には使えないのだよ」
その割には随分と余裕ありそうな態度だな。
まあオレと同じで結構、テセルも修羅場をくぐり抜けてきたのかもしれないな。
「ただしこれを使えば、相手が帝国公式神話に所属していなくとも一撃で現世から追い払えるはずだ。ではいくぞ」
テセルは銀のオクタゴンを握りしめつつ、まがい物の女神に向けて駆け出し、オレも釣られるように後に続く。
そして相手から立て続けに光線が放たれるが、それはやはりテセルに弾かれる。
「手こずらせてくれたが、今度こそ終わりだ!」
光を宿した銀のオクタゴンをテセルが女神像に投げつけ、そしてそれと同時にまばゆい光が周囲を覆う。
そしてその光の中で偽りの女神像には亀裂が入り、次いで見る見る崩れて塵と化していく。
「ふん。やはりこの僕の敵ではなかったな」
テセルは誇らしげに胸を張る。
だがその光が弱まった時、そこから灰色の何かがはじけるように飛び出し、このオレにまとわりついてきた。
「これは?!」
このときオレの脳内には『何か』が流れ込んできて、こちらの意識を圧倒しはじめていたのだった。
「テセル! ここは逃げて――」
「馬鹿を言うな。同じ失態を二度も繰り返すかよ」
見るとテセルの身体の前面に光の八角形が形成されていた。
どうやらあれでまがい物の魅了の力を防いでいるらしい。
もちろんそれだけで相手が諦めてくれるはずもなく、動きを止めること無くドンドンと近づいてくると、再びテセルに向けてさっきの生命を吸収する灰色の光を放つ。
だがその光線も、またテセルの前にある光の八角形に当たって弾かれる。
「ふん。さっきは不意を打たれたが、能力が分かった以上は、信徒もおらず力の衰えたこの程度の小神など僕の敵ではない。とっとと帝国公式神話の中に組み込まれるがいい」
そう言ってテセルは新たな光の八角形を放って、まがい物へと放つ。
一直線にまがい物に突き進んだ光の八角形は狙い過たず、その身に命中して消滅する。
まあ動きは遅いから外すわけがないよな。
「これで決まりだな」
本当にテセルの言葉通りなら、ちょっとかっこいいぞ。
だけど像そのものは姿が消えずにそのまま残っているぞ。
以前にテセルが『水晶の蜘蛛』のごとき廃神の相手をしたときは、全て消えていた事を考えるとちょっと効果が疑問だ。
「まがい物は消えてないですけど大丈夫なんですか?」
「ああ。前に再定義した『廃神』は精霊が肉体を持っていただけだ。コイツはイロールの神像に信仰の力を吹き込んだ代物だから、中身を帝国公式神話に取り込んで器の石像が残っただけに過ぎない」
これで本当に決着だとしたら、何とも呆気ない結末だな。
むしろ拍子抜けするほどだ。
本当にコイツがこの都市を廃虚と化し、周辺の土地の生命を奪って荒野と化した程の存在だったのだろうか。
テセルが凄いのか、それともこのまがい物の力がそれだけ衰えていたのか、そのあたりは後で調べればいいか。
だがその見込みは甘かった ―― いつものことだけど。
まがい物は一度動きを止めたが、それでもギクシャクとした動きでまたこちらに迫ってきたのだ。
「なんだと? まだ動けるのか」
テセルは少しばかり驚いた様子だ。
まあ相変わらず動きはノロいし、魅了の力も生命力を吸収する光線も防いでいるから、焦ってはいないようだけどな。
「どういうことなんですか?」
「そういえばお前、さっきあいつの攻撃を受けたか?」
「まあ……少しですけど」
言われてみればさっき命を吸われかけたテセルの盾になって、あの灰色の光線を受け、それで焼け付くような感覚があったぞ。
「そうか。それが原因だな。ヤツはお前の力を一部でも吸収したのだろう。お前の存在は帝国公式神話にないから、僕では再定義出来ない」
「ええ?! それではどうする事も出来ないのですか?」
「そういうわけでもないが、ちょっとばかり手間だな……」
ここでテセルはオレの方をチラと見る。
「なんですか? 断っておきますけど――」
「分かっている。あれに生命を吸収されかけた僕の盾になった結果なのだろう。僕だってそれが分からない程バカでは無いつもりだ。命を助けてもらっておいて、責めるような愚かな真似はしないぞ」
そうか。ここでいつもの毒舌であのまがい物に力を与えてしまったオレを非難してくるかと思ったが、さすがにそこまでテセルも愚かではなかったか。
「だからこの僕にも少しばかり、力を分けてくれないか? こういう場合は口づけが有効だろうな」
前言撤回。無神経なセクハラ野郎なのは相変わらずだ。
「口づけがダメなら、胸を揉ませてくれてもいいぞ」
「そうですか。それでは鉄拳でわたしの力をテセルに撃ち込んで差し上げましょう。何でしたら蹴りでも、頭突きでもいいですよ。ムチが無いのが残念ですけどね」
「生憎だけど僕はそういう倒錯した趣味は無いんだ。まあいい」
そういってテセルは改めてまがい物の女神に向き直る。
下らない軽口を叩いている間にも相手はゆっくりと迫ってきていたのだ。
「さてとそれでは切り札といくか」
テセルは胸元の銀の八角形の装身具に手を伸ばす。
「切り札なんて便利なものがあったら、先に使って下さいよ。お互いに命がかかっているんですよ」
「これは一回使うと再度充填するのに何日もかかるんだ。外したら後が無いから、そう簡単には使えないのだよ」
その割には随分と余裕ありそうな態度だな。
まあオレと同じで結構、テセルも修羅場をくぐり抜けてきたのかもしれないな。
「ただしこれを使えば、相手が帝国公式神話に所属していなくとも一撃で現世から追い払えるはずだ。ではいくぞ」
テセルは銀のオクタゴンを握りしめつつ、まがい物の女神に向けて駆け出し、オレも釣られるように後に続く。
そして相手から立て続けに光線が放たれるが、それはやはりテセルに弾かれる。
「手こずらせてくれたが、今度こそ終わりだ!」
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そしてその光の中で偽りの女神像には亀裂が入り、次いで見る見る崩れて塵と化していく。
「ふん。やはりこの僕の敵ではなかったな」
テセルは誇らしげに胸を張る。
だがその光が弱まった時、そこから灰色の何かがはじけるように飛び出し、このオレにまとわりついてきた。
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