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第10章 神造者とカミツクリ
第285話 ついに真相が語られる……のか?
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しばしの後、オレとテセルが支部の中に入ると、支部員は最初は揃って注目していたが、すぐに普段通りの仕事に戻ったようだ。
むしろ終業時間が近いからか、ちょっとばかり気が緩んでいる様子が見受けられるほどだ。
まあ考えてみれば、連中は何が起きたのかも、オレ達がいかなる冒険をしてきたのかも知らないのだから、せいぜい『支部長とその秘書が ―― 連中にとっては『愛人』なんだろうけど ―― しばらく出かけていた』程度の事に過ぎない。
そしてオレ達の前には予想通りにワストリがいつも通りの笑顔を浮かべつつ姿を見せた。
「これは支部長。随分と長いお出かけでしたね」
「ああ。大した大冒険だったよ。一つの新しい神話が出来るぐらいの事だったさ」
「それは素晴らしい。是非ともくわしくお聞かせ下さい」
「もう終業時間だから、僕としてはさっさと休みたいところなんだけどな」
そういってテセルはさりげなくオレの肩に手を回そうとしてくるので、こちらが間合いをとって避けると、あからさまに残念そうな顔をする。
そしてそんな仕草を見て、ワストリの視線が一気に厳しくなったように感じられるな。
「やはり……その者に何かを吹き込まれたのでございますか?」
この問いかけとトゲトゲしい視線に対し、テセルはどちらかと言えば興味深そうだ。
「ほう。副支部長にしては随分とハッキリとしたものいいだな」
「いかに支部長と言えど、節度というものは守っていただかねばなりません。神造者ではない部外者どころか、異国人で明らかに腹に一物を抱いていて、支部長をその美貌で篭絡しようとする相手を許容するわけには参りません」
「さっきのあれをどう見たら、そんな風に思えるんだ? 僕としてはこいつが誘惑してくれるのなら喜んで篭絡されてやるところだけどな」
テセルのこの返答にワストリの視線はますます厳しくなる。
「それは失礼。私にはてっきり恋人同士でたわむれているように見えたものですから」
「そんなだから君はその年齢でもまだ結婚出来ていないんだよ」
おいおい。元の世界だったらそれは完全にパワーハラスメントだぞ。
もっともワストリの方は、こんな横暴な言葉をかけられても、まるで動じた様子はないけどな。
「それはともかく支部長室に向かおうじゃないか。いろいろと話があるし、こちらも君に聞いておきたいことがある」
「分かりました。しかし……その者も同席させるおつもりですか?」
「もちろんだ。彼女は僕の秘書だし、何よりも先ほどの廃墟で起きた事の重要な証人でもあるからな」
ここでワストリの眉がピクリと動くも、それ以上の反応は見せなかった。
ふう。一時的に精神を繋げて記憶まで見せてくれた偽女神像の方がよっぽどワストリよりも扱いやすい気がしてくるよ。
しばしの後、支部長室にはオレとテセル、そしてワストリの三人が集まった。
広くもない部屋には予想通りの重苦しい空気がたれ込んでいるかのようだ。
そしてワストリはオレにとってはかなり意外な事を口にする。
「それで支部長は廃墟地域で『あれ』をご覧になられたのですね」
「もちろんだとも。生還してきた事が君にとってどうなのかは知らないがな」
テセルは平然としたものだが、このやり取りは明らかにワストリが廃虚に何があるのか、分かっていたという事だ。
たとえそうだとしてもワストリは白を切るかと思っていたオレとしてはちょっとどこではない、意外な話だった。
まさかこれからテセルとワストリの間で腹を張った率直な話し合いになるのかと、ちょっとばかり期待してしまうな。
「もちろん大きな喜びですよ。それどころかあなたは『あれ』を倒したのでございましょう? そちらは正直に言って驚きでしたね」
「そうかね? むしろ君ははらわたが煮えくりかえっているかと思っていたよ」
え? それはどういう意味だ?
「あそこまで力が衰えていたにも関わらず、今まで支部の連中が手出ししていなかったのは、意図的に放置していたからではないのかい?」
「それはいったい何のためですか」
「利用価値があると見ていたからではないかね。もちろん制御出来なければただの危険物だが、将来的にはあのまがい物を操り、魅了や生命を吸収する能力を利用出来る方策を模索していたのだろう」
この言葉にワストリの唇は小さく歪む。
「確かにそれも『あれ』を放置していた理由だったことは否定しませんよ。ただ私のはらわたが煮えくりかえっているという評価は心外ですな。あの程度のサンプルが一つ失われたぐらいの事で動じたりはしませんよ」
ここで『動じない』というのはワストリの事だろうか。それとも神造者の組織の事か。
「なるほど。それは分かった。今の言葉は撤回しよう」
「ありがとうございます」
さっきからなんなの。このやり取り。
腹を割った話し合いなんてやっぱり幻想だったか。『狐と狸の化かし合い』なんて端で見ていたら『犬でも食わない代物』なんだなあ。
「それよりもあの程度の存在が隠蔽され、記録が抹消されていた方が大事だろうな」
「その理由も支部長は当然、見当がついておられるのでしょうな」
「当たり前だ。僕のようなエリートならば、あれだけの手がかりがあれば十分だとも」
オレが伝えたあのまがい物の記憶が無ければ、気付かなかった癖に ―― と言いたいがここでツッコミを入れない程度の分別はオレにだってあるよ。
そしてようやく真相が語られるとかと思うと、それもロクでもない話なんだろうなという嫌な予感と、それでも謎が解ける事への嬉しい気持ちが両方ある事を感じてしまう。
むしろ終業時間が近いからか、ちょっとばかり気が緩んでいる様子が見受けられるほどだ。
まあ考えてみれば、連中は何が起きたのかも、オレ達がいかなる冒険をしてきたのかも知らないのだから、せいぜい『支部長とその秘書が ―― 連中にとっては『愛人』なんだろうけど ―― しばらく出かけていた』程度の事に過ぎない。
そしてオレ達の前には予想通りにワストリがいつも通りの笑顔を浮かべつつ姿を見せた。
「これは支部長。随分と長いお出かけでしたね」
「ああ。大した大冒険だったよ。一つの新しい神話が出来るぐらいの事だったさ」
「それは素晴らしい。是非ともくわしくお聞かせ下さい」
「もう終業時間だから、僕としてはさっさと休みたいところなんだけどな」
そういってテセルはさりげなくオレの肩に手を回そうとしてくるので、こちらが間合いをとって避けると、あからさまに残念そうな顔をする。
そしてそんな仕草を見て、ワストリの視線が一気に厳しくなったように感じられるな。
「やはり……その者に何かを吹き込まれたのでございますか?」
この問いかけとトゲトゲしい視線に対し、テセルはどちらかと言えば興味深そうだ。
「ほう。副支部長にしては随分とハッキリとしたものいいだな」
「いかに支部長と言えど、節度というものは守っていただかねばなりません。神造者ではない部外者どころか、異国人で明らかに腹に一物を抱いていて、支部長をその美貌で篭絡しようとする相手を許容するわけには参りません」
「さっきのあれをどう見たら、そんな風に思えるんだ? 僕としてはこいつが誘惑してくれるのなら喜んで篭絡されてやるところだけどな」
テセルのこの返答にワストリの視線はますます厳しくなる。
「それは失礼。私にはてっきり恋人同士でたわむれているように見えたものですから」
「そんなだから君はその年齢でもまだ結婚出来ていないんだよ」
おいおい。元の世界だったらそれは完全にパワーハラスメントだぞ。
もっともワストリの方は、こんな横暴な言葉をかけられても、まるで動じた様子はないけどな。
「それはともかく支部長室に向かおうじゃないか。いろいろと話があるし、こちらも君に聞いておきたいことがある」
「分かりました。しかし……その者も同席させるおつもりですか?」
「もちろんだ。彼女は僕の秘書だし、何よりも先ほどの廃墟で起きた事の重要な証人でもあるからな」
ここでワストリの眉がピクリと動くも、それ以上の反応は見せなかった。
ふう。一時的に精神を繋げて記憶まで見せてくれた偽女神像の方がよっぽどワストリよりも扱いやすい気がしてくるよ。
しばしの後、支部長室にはオレとテセル、そしてワストリの三人が集まった。
広くもない部屋には予想通りの重苦しい空気がたれ込んでいるかのようだ。
そしてワストリはオレにとってはかなり意外な事を口にする。
「それで支部長は廃墟地域で『あれ』をご覧になられたのですね」
「もちろんだとも。生還してきた事が君にとってどうなのかは知らないがな」
テセルは平然としたものだが、このやり取りは明らかにワストリが廃虚に何があるのか、分かっていたという事だ。
たとえそうだとしてもワストリは白を切るかと思っていたオレとしてはちょっとどこではない、意外な話だった。
まさかこれからテセルとワストリの間で腹を張った率直な話し合いになるのかと、ちょっとばかり期待してしまうな。
「もちろん大きな喜びですよ。それどころかあなたは『あれ』を倒したのでございましょう? そちらは正直に言って驚きでしたね」
「そうかね? むしろ君ははらわたが煮えくりかえっているかと思っていたよ」
え? それはどういう意味だ?
「あそこまで力が衰えていたにも関わらず、今まで支部の連中が手出ししていなかったのは、意図的に放置していたからではないのかい?」
「それはいったい何のためですか」
「利用価値があると見ていたからではないかね。もちろん制御出来なければただの危険物だが、将来的にはあのまがい物を操り、魅了や生命を吸収する能力を利用出来る方策を模索していたのだろう」
この言葉にワストリの唇は小さく歪む。
「確かにそれも『あれ』を放置していた理由だったことは否定しませんよ。ただ私のはらわたが煮えくりかえっているという評価は心外ですな。あの程度のサンプルが一つ失われたぐらいの事で動じたりはしませんよ」
ここで『動じない』というのはワストリの事だろうか。それとも神造者の組織の事か。
「なるほど。それは分かった。今の言葉は撤回しよう」
「ありがとうございます」
さっきからなんなの。このやり取り。
腹を割った話し合いなんてやっぱり幻想だったか。『狐と狸の化かし合い』なんて端で見ていたら『犬でも食わない代物』なんだなあ。
「それよりもあの程度の存在が隠蔽され、記録が抹消されていた方が大事だろうな」
「その理由も支部長は当然、見当がついておられるのでしょうな」
「当たり前だ。僕のようなエリートならば、あれだけの手がかりがあれば十分だとも」
オレが伝えたあのまがい物の記憶が無ければ、気付かなかった癖に ―― と言いたいがここでツッコミを入れない程度の分別はオレにだってあるよ。
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