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第12章 強奪の地にて
第357話 そしていつものように伝説が
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ここでバラストール神は少しばかり嬉しげに笑いつつ寄ってくる。
なおオレとモンローフはまだドラゴンの卵と一緒にロブ・エッグの廃虚の中を流れていて、ちょっとした『廃虚巡り』の気分だな。
『先ほどの話にあったように、この地でドラゴンの卵を守る教団をつくるのは良いと思うぞ』
おい。勝手に『教団』にしてるんじゃねえよ。
まあこの世界では町でも何でも人が集まれば、そこに崇拝が生まれて教団が出来るのは普通の事だ。
しかもロブ・エッグの廃虚の外にあったドラゴン崇拝教団のように、崇拝する相手の意向など一切関知しない教団だって存在する ―― 何しろオレ自身、勝手に崇拝されている実例そのものだからな。
そうするとバラストール神はそれで自分を崇拝させて、町の神から今度は『ドラゴンの卵を守る神』として崇拝を受けて神の座に舞い戻ろうと考えているわけか。
何とも図々しい ―― なにしろ元はドラゴンの卵を略奪していた町の神様だ ―― けどそれでドラゴンの卵をずっと守ってくれるならまだいいか。
「その教団の崇拝の対象にあなたがなると? 随分と図々しい事を言ってくれるな」
むう。モンローフは納得しがたいようだ。
まあ父親の警鐘をこの神が聞き入れなかったわけだから、そりゃその気持ちは分かるけど、ここは折れてくれないだろうか。
『いや。吾もそこまで図々しい事は言わんぞ』
え? 違うの?
『元はと言えばこのバラストールがドラゴンの卵を略奪したのが元凶なのだ。町の神である吾にも責任はある。それで今さらドラゴンの卵を守る教団の守護神というのは、さすがに無理があろう』
「そうなのか。それだったらどうするつもりなんだ?」
待てよ。こういう場合、次に何が起きるのか今までの経験からすると明らかだぞ。
「あの……まさかと思いますけど――」
『そうだ。そなたを女神として崇拝し、その教義にドラゴンの卵を守る事を謳った教団をつくればよかろう』
やっぱりそっちかよ! いつものことだけどゲンナリだ。
「それは大丈夫なのか?」
『先ほどの戦いを多くの人間が見ていたからな。どうやらドラゴンの卵などそっちのけで女神と英雄についての話題で持ちきりになっておるようだ』
そう言ってバラストール神は外に視線を向ける。そりゃ動く事も出来ずにただ凝視していた見物人にすれば、流れていくだけのドラゴンの卵よりはた目には結構派手にバトルしたオレ達の方に注目するのは当然というものだろう。
「女神は分かるが英雄というのは……」
『もちろん。モンローフ。そなたの事だ』
「な?!」
本人もこれには仰天らしい。まあオレとはよくてせいぜい『同盟者』であって、しかも一度ならず槍の穂先を突きつけた関係だからな。
だけど遠目にはオレとモンローフがそんな関係にあるとは分かるはずがないから、勝手に都合よく『英雄譚』として見物人達が話を盛っているに違いない。
『ここでそなたが教団をつくってくれれば、この地を聖地として人も集まり、吾にとっても良い事になるのだ』
なるほど。バラストールにすればここに人が集まって、廃虚が再建されればその守護神である自分も潤うという魂胆か。
ここが再建されなかったのは『ドラゴンに滅ぼされた呪われた廃虚』という悪いイメージがついていたからだが、それを今度は『女神と英雄の聖地』として上書きしようとしているのだな。
『どうだ? もちろんその教団ではそなたの父についても、かの者の名誉ある行いを人々に広める事が出来るのだぞ』
「そ……それは……分かりました」
親父の名誉まで持ち出されたら、そりゃモンローフは断れるはずも無いか。
バラストールも神としての力は無くなっても、長年存在しているだけあって本当に口は達者だな。
それでバラストール神は改めてオレの方に向き直る。
『そちらはどうだ?』
「まあ……それで結構ですよ」
どうせオレが断っても結果は同じだろう。
それにこっちとしてはモンローフがドラゴンの卵を守る組織を作ってくれればいいわけで、それがオレを女神として崇拝する教団になったとしても、それは二の次だ。
ここで流れる卵はバラストールの廃虚をほぼ通過しつつあったので、オレはモンローフ達に話しかける。
「ここでお別れです。後は任せますよ」
「おい……いいのかよ?」
「モンローフさんを信じてますから」
オレもかなり都合のいい事を言っているな。
元は『卵を人質にドラゴンと交渉する』のが目的だったモンローフを『女神と共に卵を守った英雄』に祭り上げているんだから当然か。
まあオレは祭り上げられるのには慣れているが、あちらはそういうわけにもいかないだろう。しかしそれぐらいなら、命がけでドラゴンの卵の略奪を止めようとした親父さんに比べればまだまだマシだと思ってくれ。
「それではさようなら。あなたのご活躍を祈っていますよ」
オレはそれだけを言って、ドラゴンの卵に飛び移り流れのままにロブ・エッグを後にした。
それからロブ・エッグの廃虚では『ドラゴンの卵を守った英雄と女神』の教団が興り、それと共に廃虚の名も不名誉なロブ・エッグから元のバラストールへと次第に変わっていった。
そしてその教団と英雄は次にドラゴンの卵がやってきた時に備え、今も川を見つめている。
それが何年後か、それとも何百年後になるかは誰も知らない。
ただしばらくすると多くの人間がそれを待ち望むようになった。
なぜなら再びドラゴンの卵が現れたそのとき『美しき黄金の女神が再臨する』と信じられていたからだ。
【後書き】
ドラゴンの卵の話はまだしばらく続きます。
なおオレとモンローフはまだドラゴンの卵と一緒にロブ・エッグの廃虚の中を流れていて、ちょっとした『廃虚巡り』の気分だな。
『先ほどの話にあったように、この地でドラゴンの卵を守る教団をつくるのは良いと思うぞ』
おい。勝手に『教団』にしてるんじゃねえよ。
まあこの世界では町でも何でも人が集まれば、そこに崇拝が生まれて教団が出来るのは普通の事だ。
しかもロブ・エッグの廃虚の外にあったドラゴン崇拝教団のように、崇拝する相手の意向など一切関知しない教団だって存在する ―― 何しろオレ自身、勝手に崇拝されている実例そのものだからな。
そうするとバラストール神はそれで自分を崇拝させて、町の神から今度は『ドラゴンの卵を守る神』として崇拝を受けて神の座に舞い戻ろうと考えているわけか。
何とも図々しい ―― なにしろ元はドラゴンの卵を略奪していた町の神様だ ―― けどそれでドラゴンの卵をずっと守ってくれるならまだいいか。
「その教団の崇拝の対象にあなたがなると? 随分と図々しい事を言ってくれるな」
むう。モンローフは納得しがたいようだ。
まあ父親の警鐘をこの神が聞き入れなかったわけだから、そりゃその気持ちは分かるけど、ここは折れてくれないだろうか。
『いや。吾もそこまで図々しい事は言わんぞ』
え? 違うの?
『元はと言えばこのバラストールがドラゴンの卵を略奪したのが元凶なのだ。町の神である吾にも責任はある。それで今さらドラゴンの卵を守る教団の守護神というのは、さすがに無理があろう』
「そうなのか。それだったらどうするつもりなんだ?」
待てよ。こういう場合、次に何が起きるのか今までの経験からすると明らかだぞ。
「あの……まさかと思いますけど――」
『そうだ。そなたを女神として崇拝し、その教義にドラゴンの卵を守る事を謳った教団をつくればよかろう』
やっぱりそっちかよ! いつものことだけどゲンナリだ。
「それは大丈夫なのか?」
『先ほどの戦いを多くの人間が見ていたからな。どうやらドラゴンの卵などそっちのけで女神と英雄についての話題で持ちきりになっておるようだ』
そう言ってバラストール神は外に視線を向ける。そりゃ動く事も出来ずにただ凝視していた見物人にすれば、流れていくだけのドラゴンの卵よりはた目には結構派手にバトルしたオレ達の方に注目するのは当然というものだろう。
「女神は分かるが英雄というのは……」
『もちろん。モンローフ。そなたの事だ』
「な?!」
本人もこれには仰天らしい。まあオレとはよくてせいぜい『同盟者』であって、しかも一度ならず槍の穂先を突きつけた関係だからな。
だけど遠目にはオレとモンローフがそんな関係にあるとは分かるはずがないから、勝手に都合よく『英雄譚』として見物人達が話を盛っているに違いない。
『ここでそなたが教団をつくってくれれば、この地を聖地として人も集まり、吾にとっても良い事になるのだ』
なるほど。バラストールにすればここに人が集まって、廃虚が再建されればその守護神である自分も潤うという魂胆か。
ここが再建されなかったのは『ドラゴンに滅ぼされた呪われた廃虚』という悪いイメージがついていたからだが、それを今度は『女神と英雄の聖地』として上書きしようとしているのだな。
『どうだ? もちろんその教団ではそなたの父についても、かの者の名誉ある行いを人々に広める事が出来るのだぞ』
「そ……それは……分かりました」
親父の名誉まで持ち出されたら、そりゃモンローフは断れるはずも無いか。
バラストールも神としての力は無くなっても、長年存在しているだけあって本当に口は達者だな。
それでバラストール神は改めてオレの方に向き直る。
『そちらはどうだ?』
「まあ……それで結構ですよ」
どうせオレが断っても結果は同じだろう。
それにこっちとしてはモンローフがドラゴンの卵を守る組織を作ってくれればいいわけで、それがオレを女神として崇拝する教団になったとしても、それは二の次だ。
ここで流れる卵はバラストールの廃虚をほぼ通過しつつあったので、オレはモンローフ達に話しかける。
「ここでお別れです。後は任せますよ」
「おい……いいのかよ?」
「モンローフさんを信じてますから」
オレもかなり都合のいい事を言っているな。
元は『卵を人質にドラゴンと交渉する』のが目的だったモンローフを『女神と共に卵を守った英雄』に祭り上げているんだから当然か。
まあオレは祭り上げられるのには慣れているが、あちらはそういうわけにもいかないだろう。しかしそれぐらいなら、命がけでドラゴンの卵の略奪を止めようとした親父さんに比べればまだまだマシだと思ってくれ。
「それではさようなら。あなたのご活躍を祈っていますよ」
オレはそれだけを言って、ドラゴンの卵に飛び移り流れのままにロブ・エッグを後にした。
それからロブ・エッグの廃虚では『ドラゴンの卵を守った英雄と女神』の教団が興り、それと共に廃虚の名も不名誉なロブ・エッグから元のバラストールへと次第に変わっていった。
そしてその教団と英雄は次にドラゴンの卵がやってきた時に備え、今も川を見つめている。
それが何年後か、それとも何百年後になるかは誰も知らない。
ただしばらくすると多くの人間がそれを待ち望むようになった。
なぜなら再びドラゴンの卵が現れたそのとき『美しき黄金の女神が再臨する』と信じられていたからだ。
【後書き】
ドラゴンの卵の話はまだしばらく続きます。
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