異世界転移したら女神の化身にされてしまったので、世界を回って伝説を残します

高崎三吉

文字の大きさ
357 / 1,316
第12章 強奪の地にて

第357話 そしていつものように伝説が

しおりを挟む
 ここでバラストール神は少しばかり嬉しげに笑いつつ寄ってくる。
 なおオレとモンローフはまだドラゴンの卵と一緒にロブ・エッグの廃虚の中を流れていて、ちょっとした『廃虚巡り』の気分だな。

『先ほどの話にあったように、この地でドラゴンの卵を守る教団をつくるのは良いと思うぞ』

 おい。勝手に『教団』にしてるんじゃねえよ。
 まあこの世界では町でも何でも人が集まれば、そこに崇拝が生まれて教団が出来るのは普通の事だ。
 しかもロブ・エッグの廃虚の外にあったドラゴン崇拝教団のように、崇拝する相手の意向など一切関知しない教団だって存在する ―― 何しろオレ自身、勝手に崇拝されている実例そのものだからな。
 そうするとバラストール神はそれで自分を崇拝させて、町の神から今度は『ドラゴンの卵を守る神』として崇拝を受けて神の座に舞い戻ろうと考えているわけか。
 何とも図々しい ―― なにしろ元はドラゴンの卵を略奪していた町の神様だ ―― けどそれでドラゴンの卵をずっと守ってくれるならまだいいか。

「その教団の崇拝の対象にあなたがなると? 随分と図々しい事を言ってくれるな」

 むう。モンローフは納得しがたいようだ。
 まあ父親の警鐘をこの神が聞き入れなかったわけだから、そりゃその気持ちは分かるけど、ここは折れてくれないだろうか。

『いや。吾もそこまで図々しい事は言わんぞ』

 え? 違うの?

『元はと言えばこのバラストールがドラゴンの卵を略奪したのが元凶なのだ。町の神である吾にも責任はある。それで今さらドラゴンの卵を守る教団の守護神というのは、さすがに無理があろう』
「そうなのか。それだったらどうするつもりなんだ?」

 待てよ。こういう場合、次に何が起きるのか今までの経験からすると明らかだぞ。

「あの……まさかと思いますけど――」
『そうだ。そなたを女神として崇拝し、その教義にドラゴンの卵を守る事を謳った教団をつくればよかろう』

 やっぱりそっちかよ! いつものことだけどゲンナリだ。

「それは大丈夫なのか?」
『先ほどの戦いを多くの人間が見ていたからな。どうやらドラゴンの卵などそっちのけで女神と英雄についての話題で持ちきりになっておるようだ』

 そう言ってバラストール神は外に視線を向ける。そりゃ動く事も出来ずにただ凝視していた見物人にすれば、流れていくだけのドラゴンの卵よりはた目には結構派手にバトルしたオレ達の方に注目するのは当然というものだろう。

「女神は分かるが英雄というのは……」
『もちろん。モンローフ。そなたの事だ』
「な?!」

 本人もこれには仰天らしい。まあオレとはよくてせいぜい『同盟者』であって、しかも一度ならず槍の穂先を突きつけた関係だからな。
 だけど遠目にはオレとモンローフがそんな関係にあるとは分かるはずがないから、勝手に都合よく『英雄譚』として見物人達が話を盛っているに違いない。

『ここでそなたが教団をつくってくれれば、この地を聖地として人も集まり、吾にとっても良い事になるのだ』

 なるほど。バラストールにすればここに人が集まって、廃虚が再建されればその守護神である自分も潤うという魂胆か。
 ここが再建されなかったのは『ドラゴンに滅ぼされた呪われた廃虚』という悪いイメージがついていたからだが、それを今度は『女神と英雄の聖地』として上書きしようとしているのだな。

『どうだ? もちろんその教団ではそなたの父についても、かの者の名誉ある行いを人々に広める事が出来るのだぞ』
「そ……それは……分かりました」

 親父の名誉まで持ち出されたら、そりゃモンローフは断れるはずも無いか。
 バラストールも神としての力は無くなっても、長年存在しているだけあって本当に口は達者だな。
 それでバラストール神は改めてオレの方に向き直る。

『そちらはどうだ?』
「まあ……それで結構ですよ」

 どうせオレが断っても結果は同じだろう。
 それにこっちとしてはモンローフがドラゴンの卵を守る組織を作ってくれればいいわけで、それがオレを女神として崇拝する教団になったとしても、それは二の次だ。
 ここで流れる卵はバラストールの廃虚をほぼ通過しつつあったので、オレはモンローフ達に話しかける。

「ここでお別れです。後は任せますよ」
「おい……いいのかよ?」
「モンローフさんを信じてますから」

 オレもかなり都合のいい事を言っているな。
 元は『卵を人質にドラゴンと交渉する』のが目的だったモンローフを『女神と共に卵を守った英雄』に祭り上げているんだから当然か。
 まあオレは祭り上げられるのには慣れているが、あちらはそういうわけにもいかないだろう。しかしそれぐらいなら、命がけでドラゴンの卵の略奪を止めようとした親父さんに比べればまだまだマシだと思ってくれ。

「それではさようなら。あなたのご活躍を祈っていますよ」

 オレはそれだけを言って、ドラゴンの卵に飛び移り流れのままにロブ・エッグ卵さらいを後にした。


 それからロブ・エッグ卵さらいの廃虚では『ドラゴンの卵を守った英雄と女神』の教団が興り、それと共に廃虚の名も不名誉なロブ・エッグから元のバラストールへと次第に変わっていった。
 そしてその教団と英雄は次にドラゴンの卵がやってきた時に備え、今も川を見つめている。
それが何年後か、それとも何百年後になるかは誰も知らない。
 ただしばらくすると多くの人間がそれを待ち望むようになった。
 なぜなら再びドラゴンの卵が現れたそのとき『美しき黄金の女神が再臨する』と信じられていたからだ。

【後書き】
ドラゴンの卵の話はまだしばらく続きます。
しおりを挟む
感想 104

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処理中です...