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第12章 強奪の地にて
第362話 「現場」と「象牙の塔」と
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どうやらダンギムの仕えている知識神イリピーの寺院ではドラゴンの卵についてはある程度情報を得ていて、その魔力を抑える方法まで伝わっていたらしい。
またダンギムは知識を得るために命を賭ける程の知識欲がある一方で、自分の得ている知識は出し惜しみする系統なのは分かった。
まあそれを言ったら、オレも隠している事は多々あるわけで、あんまり偉そうに人の事は言えないけどな。
そしてここでダンギムが勢い込んで問いかけてきた事に、オレは少々驚く事になる。
「それで是非とも教えていただきたいのですが、アルタシャ様はここ数年、大陸の各地で顕現して活躍なされておりますよね」
え? ここ数年だって?
オレが活動したのは、せいぜい数ヶ月だぞ。
これは要するにオレと全然関係無い事でも、オレが関わっている事にされてしまっているのと言う事だな。
いやひょっとしたら無理矢理にオレのゆかりの地ということにして、村おこしに利用されているとかそういう事だってありうるな。
確か日本の『○河ドラマ』で主役として取り上げられ有名になると、ちょっとした関わりがあるだけで『ゆかりの地』だと宣伝する事があるけどそれに近いものがあるのか。
しかもそれを唱えた人間達は大した根拠もない話だと知っていても、何十年も経つとそれが紛れも無い真実になってしまったりもするんだな。
それどころか下手をすれば、将来的には『ここ数年』どころか数十年、数百年前の出来事でも勝手にオレと関わりある話にされてしまいかねないな。
もっとも正反対に、後で出て来た別の英雄にオレのエピソードが繋げられたりするかもしれないけどな。
それはともかくオレとしてはやっぱり根も葉もない話が広められるのは好きではない。
「すみませんがわたしはせいぜい数ヶ月しか行動していませんよ」
「それでは最初のご活躍はやはりラマーリア王国での事件でしょうか?」
「ええ。そうですね」
オレの返答を聞いて、ダンギムは少しばかり嬉しげに頷く。
「どうされました?」
「いえいえ。あなた様がいつから活動なされているのかについて、我が信徒の間でも議論がありましてね。あちこちで激論が交わされていると聞いておりましたので、それだけでも大変貴重な情報です」
「それでわたしから聞いた話でその議論には決着がつくのですね」
本人無視して、各地で激論というのもどうかと思うが、これでそんな不毛な論争にケリがつくなら話ぐらいはしてやるよ。
だがここでダンギムの顔はちょっとばかり陰る。
「そうなるといいのですがね……」
「それはこの話が簡単に信じてもらえないという事なんでしょうか。聞くところではわたしの偽者があちこちに出ているらしいですからね」
以前に出会った聖女教会の使者であるミツリーンから聞いたところでは、オレの名を騙っていかがわしい教団をつくっては有力者に取り入ったり、金を騙し取ったりするような連中が大勢いるらしい。
その話が本当だとしたら、そりゃあ『本人から聞きました』と言ったところで、そうそう信じてもらえないだろう。
もっともそれを言うならダンギムがオレの言う事を鵜呑みにすると言う事は、もしもオレを騙る詐欺師に出会ったとしたら、その話もまた鵜呑みにしてしまいかねなかったワケで、知識神の使徒というにしてはちょっとばかり心配だ。
いくら何でも、ただの詐欺師が常人は見ただけで動けなくなるドラゴンの卵に載って川を下ってくるとは思わないだろうけどさ。
「もちろんそれはお言葉の通りですが、そもそも私は田舎の小さな社を預かっているに過ぎませんからね。大都市の偉い司祭様方に聞き入れてもらえるかどうか……」
ああ。こんな知識神の使徒達の間でも学閥だの何だのが幅を利かせているわけか。
派閥に大勢の信徒を抱えるお偉い学者さんが、過去の文献をあさって一度主張した事はそうそう引っ込めるわけにはいかないのだ――それが事実であるかどうかは関係無く。
「それどころか下手をしたら『議論の邪魔』と言う事にされてしまうかもしれません。私はそれを危惧しています」
「どういうことですか?」
「私のように現場に出かけて、直接情報を調べるのは卑しい者のやることですからね」
「はあ?」
オレはちょっとどころでなく意表を突かれた。
そりゃまあお偉い学者さんがいわゆる『象牙の塔』にこもって世俗とかけ離れた生活をしている事は見当がついているけど、現場で情報を得る役目の人が蔑まれるとはどういうことなのだろうか。
いや。ちょっと聞いたところでは元の世界のある地域の昔には『犬の歯は何本か』という事で学者同士が議論を交わすものの、実際に犬の口を開いて見るという事は『下賤のやることであり、学識のある者のやることではない』という変な風潮があったらしいので、それと似たような話なのかもしれない。
そしてそういう人間に限って、自分達の閉鎖的な空間の外にいる相手に対し『知識を持たぬ者』として見下していたりするものなんだな。
しかしここでダンギムはまたしても勢い込んでこちらに迫ってくる。
「もちろんそれでも私は真実を訴えますとも。そんなわけで是非ともっとお話を聞かせて下さい」
この人は偉くはなれそうにないけど、少なくとも象牙の塔にこもっている連中よりは大分マシと言うべきかな。
そう思って少しは付き合うことにした。
その背後で卵の精霊が『お前達、何をやっているんだ?』と言わんばかりにこっちを見ていたが、ダンギムも卵に危害を加える気は無いようなので、ここは少しばかり黙っていて下さいな。
またダンギムは知識を得るために命を賭ける程の知識欲がある一方で、自分の得ている知識は出し惜しみする系統なのは分かった。
まあそれを言ったら、オレも隠している事は多々あるわけで、あんまり偉そうに人の事は言えないけどな。
そしてここでダンギムが勢い込んで問いかけてきた事に、オレは少々驚く事になる。
「それで是非とも教えていただきたいのですが、アルタシャ様はここ数年、大陸の各地で顕現して活躍なされておりますよね」
え? ここ数年だって?
オレが活動したのは、せいぜい数ヶ月だぞ。
これは要するにオレと全然関係無い事でも、オレが関わっている事にされてしまっているのと言う事だな。
いやひょっとしたら無理矢理にオレのゆかりの地ということにして、村おこしに利用されているとかそういう事だってありうるな。
確か日本の『○河ドラマ』で主役として取り上げられ有名になると、ちょっとした関わりがあるだけで『ゆかりの地』だと宣伝する事があるけどそれに近いものがあるのか。
しかもそれを唱えた人間達は大した根拠もない話だと知っていても、何十年も経つとそれが紛れも無い真実になってしまったりもするんだな。
それどころか下手をすれば、将来的には『ここ数年』どころか数十年、数百年前の出来事でも勝手にオレと関わりある話にされてしまいかねないな。
もっとも正反対に、後で出て来た別の英雄にオレのエピソードが繋げられたりするかもしれないけどな。
それはともかくオレとしてはやっぱり根も葉もない話が広められるのは好きではない。
「すみませんがわたしはせいぜい数ヶ月しか行動していませんよ」
「それでは最初のご活躍はやはりラマーリア王国での事件でしょうか?」
「ええ。そうですね」
オレの返答を聞いて、ダンギムは少しばかり嬉しげに頷く。
「どうされました?」
「いえいえ。あなた様がいつから活動なされているのかについて、我が信徒の間でも議論がありましてね。あちこちで激論が交わされていると聞いておりましたので、それだけでも大変貴重な情報です」
「それでわたしから聞いた話でその議論には決着がつくのですね」
本人無視して、各地で激論というのもどうかと思うが、これでそんな不毛な論争にケリがつくなら話ぐらいはしてやるよ。
だがここでダンギムの顔はちょっとばかり陰る。
「そうなるといいのですがね……」
「それはこの話が簡単に信じてもらえないという事なんでしょうか。聞くところではわたしの偽者があちこちに出ているらしいですからね」
以前に出会った聖女教会の使者であるミツリーンから聞いたところでは、オレの名を騙っていかがわしい教団をつくっては有力者に取り入ったり、金を騙し取ったりするような連中が大勢いるらしい。
その話が本当だとしたら、そりゃあ『本人から聞きました』と言ったところで、そうそう信じてもらえないだろう。
もっともそれを言うならダンギムがオレの言う事を鵜呑みにすると言う事は、もしもオレを騙る詐欺師に出会ったとしたら、その話もまた鵜呑みにしてしまいかねなかったワケで、知識神の使徒というにしてはちょっとばかり心配だ。
いくら何でも、ただの詐欺師が常人は見ただけで動けなくなるドラゴンの卵に載って川を下ってくるとは思わないだろうけどさ。
「もちろんそれはお言葉の通りですが、そもそも私は田舎の小さな社を預かっているに過ぎませんからね。大都市の偉い司祭様方に聞き入れてもらえるかどうか……」
ああ。こんな知識神の使徒達の間でも学閥だの何だのが幅を利かせているわけか。
派閥に大勢の信徒を抱えるお偉い学者さんが、過去の文献をあさって一度主張した事はそうそう引っ込めるわけにはいかないのだ――それが事実であるかどうかは関係無く。
「それどころか下手をしたら『議論の邪魔』と言う事にされてしまうかもしれません。私はそれを危惧しています」
「どういうことですか?」
「私のように現場に出かけて、直接情報を調べるのは卑しい者のやることですからね」
「はあ?」
オレはちょっとどころでなく意表を突かれた。
そりゃまあお偉い学者さんがいわゆる『象牙の塔』にこもって世俗とかけ離れた生活をしている事は見当がついているけど、現場で情報を得る役目の人が蔑まれるとはどういうことなのだろうか。
いや。ちょっと聞いたところでは元の世界のある地域の昔には『犬の歯は何本か』という事で学者同士が議論を交わすものの、実際に犬の口を開いて見るという事は『下賤のやることであり、学識のある者のやることではない』という変な風潮があったらしいので、それと似たような話なのかもしれない。
そしてそういう人間に限って、自分達の閉鎖的な空間の外にいる相手に対し『知識を持たぬ者』として見下していたりするものなんだな。
しかしここでダンギムはまたしても勢い込んでこちらに迫ってくる。
「もちろんそれでも私は真実を訴えますとも。そんなわけで是非ともっとお話を聞かせて下さい」
この人は偉くはなれそうにないけど、少なくとも象牙の塔にこもっている連中よりは大分マシと言うべきかな。
そう思って少しは付き合うことにした。
その背後で卵の精霊が『お前達、何をやっているんだ?』と言わんばかりにこっちを見ていたが、ダンギムも卵に危害を加える気は無いようなので、ここは少しばかり黙っていて下さいな。
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