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第15章 とある御家騒動の話
第532話 久しぶりに着飾って
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オレがミリンサの事について考え込んでいると、デレンダが不可思議そうな表情を浮かべる。
「ひょっとするとあのミリンサと言われる方は、アルタシャさんに詳しい事を伝えていないのですか?」
「まあ……そうですね」
「なんですかそれは!」
この返答を聞いて、デレンダの柳眉は一気に逆立つ。
「アルタシャさんが好意で助力しているのに、それに甘えて事情の説明すらしないとは理不尽にも程があるますよ!」
デレンダはまるで我が事のように憤慨している。
その気持ちはありがたいが、今はミリンサから無理に聞き出すのは避けたい。
「彼女の方から言い出すまで、待っているのですよ。だからあなたが怒る事はありません」
無理に聞き出しても本当の事を全て明かしてくれる保証は無いからな。
「お言葉ですけど……」
「あなたの時も詳しい事情など聞き出そうとはしなかったでしょう? それがわたしのやり方なのですからデレンダは心配しなくてもいいですよ」
「分かりました」
後宮の時もデレンダはオレに隠していたところがあったと謝った事がある。
オレにとってはどうでもいい話だったけど、ここはちょっとばかり引き合いに出させてもらおう。
「それはともかく、ドズ・カムの町についてもう少し詳しい事は分かりませんか?」
「そうですね。分かる範囲で調べておきます。ただ申し訳ないのですけど、あちらの方面にはさほど取引が無いので、数日はかかると思いますよ」
それはいくら何でも時間がかかりすぎだ。
ネットで検索すればすぐに世界中の情報が入る元の世界と違い、こちらでは高価な本をあさらないといけないし、地方都市の詳しい情報なんてそう簡単に得られるものじゃない。
元の世界において知らぬ者のいないローマ法王だって、その後継者をどうやって決めるのかと問われて即座に答えられる人間は少数だろう。
地方領主の後継者選びがどんな事になっているかなど、直接の関係者以外で知っている人間の方が例外だと考えるしか無い。
そして追っ手がこの街にいるのは確実である以上、何日も待っているわけにはいかない。
ミリンサを追っている連中がどんな勢力なのかハッキリしないが、時間をかけたら仲間を集めてくるのは確実だろう。
そうなれば連中が実力行使に出るかもしれないし、そこまで行かなくともデレンダの実家に集団で嫌がらせを行ってきたりするかもしれない。
デレンダに迷惑をかけるわけにはいかないのだ。
「あなたの好意はありがたいのですけど、明日にはこの街を出て行くつもりです」
「そうですか……それはあたしの事に気を遣って下さっているのですよね? 仕方ありません」
デレンダは諦めた様子で小さくため息をつく。
「本当にアルタシャさんはどれほどの名声を得ても変わる事無く、美しく、気高く、お優しいままで、ご自身の信念を曲げることの無いお方なのですね。ただせめて今晩ぐらいはあたしに付き合って下さい」
「ええ。いいですよ」
「それでは――」
デレンダが合図をすると、隣の部屋から女性が何人か押し寄せてきた。
「あたしも着替えをしておきますので、また後でお会いしましょう」
そして迫ってきた女性達は一斉にオレの服をはぎ取り出す。
「ではお召し物を変えさせていただきます」
そんなわけでオレは久方ぶりに、幾人もの女性の手で肌を磨き上げられ、さらにドレスだの装身具などで飾り付けられる事となったのだった。
しばしの後、鏡に映った薄絹のドレスをまとうオレの姿は以前に見た覚えがあった。
そしてそこで同じく着飾ったデレンダがやってくると、オレの姿を見て嘆息する。
「失礼を承知で言わせていただければ、あなたのそのお姿を見るとあこがれと共に、少しばかり嫉妬を感じずにはいられませんよ」
そう言ってデレンダは小さく微笑む。まあ『同性』として考えれば、その気持ちも分からないでは無い。
「このドレスは後宮にあったものと似ていますね」
「そうです。後宮でアルタシャさんがお召しになっていたものを参考にして作らせました」
なるほどな。『後宮で皇帝に仕える女性はこういうドレスをまとうのだ』と宣伝して売っているというわけか。
「もちろんあそこまで上等なものではないので、恥ずかしい限りですけど」
「いえ。そんな事は気にしませんよ」
しかしこの装いは明らかに『男共に見せるため』のものだろう。
デレンダの婚約者にオレが挨拶するのは認めないと言っていたが、いったい誰に引き合わせるつもりなんだ。
「それでこれからあなたの実家にお世話になるのはいいのですが、何かあるのですか?」
「ささやかながら宴を用意させてもらっています。そこでアルタシャさんをあたしの家族に紹介させてもらってよろしいでしょうか」
「それは構いませんけど、あまり大げさな事にはしないでもらえますか」
「ええ。もちろん小さな宴ですからご心配なく」
一晩の事でも世話になる以上、デレンダの家族に紹介されるのは仕方ない。
ひょっとするとオレとの付き合いに関して、周囲の人間から話を盛っているのではないかと見られている可能性もあるし、少しばかりは付き合うしかないな。
「ひょっとするとあのミリンサと言われる方は、アルタシャさんに詳しい事を伝えていないのですか?」
「まあ……そうですね」
「なんですかそれは!」
この返答を聞いて、デレンダの柳眉は一気に逆立つ。
「アルタシャさんが好意で助力しているのに、それに甘えて事情の説明すらしないとは理不尽にも程があるますよ!」
デレンダはまるで我が事のように憤慨している。
その気持ちはありがたいが、今はミリンサから無理に聞き出すのは避けたい。
「彼女の方から言い出すまで、待っているのですよ。だからあなたが怒る事はありません」
無理に聞き出しても本当の事を全て明かしてくれる保証は無いからな。
「お言葉ですけど……」
「あなたの時も詳しい事情など聞き出そうとはしなかったでしょう? それがわたしのやり方なのですからデレンダは心配しなくてもいいですよ」
「分かりました」
後宮の時もデレンダはオレに隠していたところがあったと謝った事がある。
オレにとってはどうでもいい話だったけど、ここはちょっとばかり引き合いに出させてもらおう。
「それはともかく、ドズ・カムの町についてもう少し詳しい事は分かりませんか?」
「そうですね。分かる範囲で調べておきます。ただ申し訳ないのですけど、あちらの方面にはさほど取引が無いので、数日はかかると思いますよ」
それはいくら何でも時間がかかりすぎだ。
ネットで検索すればすぐに世界中の情報が入る元の世界と違い、こちらでは高価な本をあさらないといけないし、地方都市の詳しい情報なんてそう簡単に得られるものじゃない。
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地方領主の後継者選びがどんな事になっているかなど、直接の関係者以外で知っている人間の方が例外だと考えるしか無い。
そして追っ手がこの街にいるのは確実である以上、何日も待っているわけにはいかない。
ミリンサを追っている連中がどんな勢力なのかハッキリしないが、時間をかけたら仲間を集めてくるのは確実だろう。
そうなれば連中が実力行使に出るかもしれないし、そこまで行かなくともデレンダの実家に集団で嫌がらせを行ってきたりするかもしれない。
デレンダに迷惑をかけるわけにはいかないのだ。
「あなたの好意はありがたいのですけど、明日にはこの街を出て行くつもりです」
「そうですか……それはあたしの事に気を遣って下さっているのですよね? 仕方ありません」
デレンダは諦めた様子で小さくため息をつく。
「本当にアルタシャさんはどれほどの名声を得ても変わる事無く、美しく、気高く、お優しいままで、ご自身の信念を曲げることの無いお方なのですね。ただせめて今晩ぐらいはあたしに付き合って下さい」
「ええ。いいですよ」
「それでは――」
デレンダが合図をすると、隣の部屋から女性が何人か押し寄せてきた。
「あたしも着替えをしておきますので、また後でお会いしましょう」
そして迫ってきた女性達は一斉にオレの服をはぎ取り出す。
「ではお召し物を変えさせていただきます」
そんなわけでオレは久方ぶりに、幾人もの女性の手で肌を磨き上げられ、さらにドレスだの装身具などで飾り付けられる事となったのだった。
しばしの後、鏡に映った薄絹のドレスをまとうオレの姿は以前に見た覚えがあった。
そしてそこで同じく着飾ったデレンダがやってくると、オレの姿を見て嘆息する。
「失礼を承知で言わせていただければ、あなたのそのお姿を見るとあこがれと共に、少しばかり嫉妬を感じずにはいられませんよ」
そう言ってデレンダは小さく微笑む。まあ『同性』として考えれば、その気持ちも分からないでは無い。
「このドレスは後宮にあったものと似ていますね」
「そうです。後宮でアルタシャさんがお召しになっていたものを参考にして作らせました」
なるほどな。『後宮で皇帝に仕える女性はこういうドレスをまとうのだ』と宣伝して売っているというわけか。
「もちろんあそこまで上等なものではないので、恥ずかしい限りですけど」
「いえ。そんな事は気にしませんよ」
しかしこの装いは明らかに『男共に見せるため』のものだろう。
デレンダの婚約者にオレが挨拶するのは認めないと言っていたが、いったい誰に引き合わせるつもりなんだ。
「それでこれからあなたの実家にお世話になるのはいいのですが、何かあるのですか?」
「ささやかながら宴を用意させてもらっています。そこでアルタシャさんをあたしの家族に紹介させてもらってよろしいでしょうか」
「それは構いませんけど、あまり大げさな事にはしないでもらえますか」
「ええ。もちろん小さな宴ですからご心配なく」
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