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第16章 破滅の聖者
第638話 『2号』の望んだ事とは
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これはいったいどういうことだ?
他人の空似ではありえない。その身にまとう独特な雰囲気を見紛うはずも無いからだ。
つまり新しく現れたのは明らかに『メトゥサイラ』だった。
そうすると考えられるのは一つだけだ。
「あなたは新しく生まれたメトゥサイラなのですね……」
そりゃまあメトゥサイラが一人だけではない可能性は、さっきまでオレ自身が散々口にしていたけど、いきなり目の前に現れたらやっぱり驚くよ。
ただ考えてみれば、メトゥサイラが泡のような存在なら、儚く消えるのと同じく次から次に生まれてきても不思議では無い。
だけどそれだけなのだろうか?
「ああそうだ。この我がメトゥサイラだ」
一人称とか口調とかやっぱり微妙に違っているな。
よく似ているけど同じ存在ではないという事は予想していたが、これまで一緒にいた当人を前にすると少しばかり違和感があると同時に一応は区別がつくということでホッとしたところもあるよ。
とりあえず後から来た方は『2号』とでも内心で呼んでおこう。
そして『2号』の方はいままでのメトゥサイラに近づき――そのまま無視してオレの方に近づいて来た。
どうやらこの二人は協力する気は無いようだが、敵対するワケでも無く、ただ完全にスルーしただけだ。
「あの……どういうおつもりですか?」
「決まっている。君も聞いているだろう。我が子を産んで欲しい」
要求する事は一緒かよ!
やっぱりなんだかんだ言っても同じ存在なのか。
「待て!」
だがここでメトゥサイラの方は怒りの声を挙げた。
これまでそんな感情を見せた事は無かったから、やはりかなり変化しているということか。
そうすると『2号』の方とは、いろいろ違っていても当然というべきなんだろうな。
「待て! アルタシャはまず私の相手をするのだ。お前は去れ」
「……」
自分自身からの抗議を耳にしているはずなのだが『2号』の方はやはり無視して、オレの方に迫ってくる。
「さあ我が子を産んでくれ」
「おのれ!」
メトゥサイラが怒って手を伸ばした瞬間、『2号』の身から魔力が放たれて、はね飛ばされる。
「ええ?!」
これまでのメトゥサイラはアンデッドに影響力を行使する事はあっても、直接的な攻撃をするような真似をしなかったから、オレも驚いた。
いや。メトゥサイラも『2号』には敵対的な態度をとっていたから、ひょっとすると『自分自身』に対しては攻撃出来るのかも知れない。
とにかく今はメトゥサイラをどうにかせねばと思って駆け出そうとすると、オレの腕がつかまれる。
「さあこの我と――」
「ちょっと待って下さい! あなたの相手はしていられません」
「なぜだ? ……そうか『あれ』がまだ残っているからなのか」
そういって『2号』は自分が吹き飛ばしたメトゥサイラへと視線を向ける。しかしそれには敵意や怒りがあるわけではなく、敢えて言えば『ゴミ』としか思っていない様子だった。
とにかく今は止めるしかない。
「あなたはわたしに子供を産ませて、それでどうしたいのですか?」
「もちろんこの世界を苦痛から解放する。それが我の存在意義だ。どうやら『あれ』はそれを忘れてしまったようだがな」
この言い方からしたら、ひょっとするとメトゥサイラがオレとの接触で、人間性を抱くようになった結果として、この『2号』が生まれたのかも知れない。
それでは『2号』がここにきてメトゥサイラと争っているのは、オレのせいなのか?
いや。まあ。オレを巡ってこの二人が対立しているのは見れば分かるけど、普通の意味での『女を巡る争い』ではないのだけど、しかしどっちも『自分の子供を作れ』と迫ってきているのは一緒だし、面倒くさいにも程がある。
それにそもそも『メトゥサイラ同士』でも熾烈な争いをする事は分かったのだから、子供をつくったところでオレが思った通りお互い相争うだけで、意味がないだろう。
「もしもあなたと同じ存在が生まれても、改めて争うだけでしょう。そう思いませんか?」
「もちろんそんな事は分かっている」
え? だったら『2号』は何のためにオレに子供を作らせたいんだ?
「いったいそれに何の意味があるのですか?」
「当然、その子供によって我はこの苦痛に満ちた世界から解放される」
確かに似たような事はメトゥサイラも口にしていたな。もともと『世界から解放されるためにこの世界を消してしまう』という事が最終目的だったのだから、その基本に戻ったということなのだろう。
しかしそれでも問題は何も解決はしていないはずだ。
「それでは結局は『メトゥサイラ』同士で相争う事に変わりは無いでしょう」
「そんな事は無い」
どういうわけか『2号』には確信があるらしい。
推測だけどオレがメトゥサイラとの間でかわした話の中身がある程度は反映されているのかもしれない。
「いったいどういうことなのですか?」
「君も分かっているだろうが、子供はやはり別の存在だ」
「そうです。だから結局は争う事になるのでしょう」
オレは当然の事を口にしたつもりだったが、その次に『2号』が発したのはとんでもない話だった。
「だからその子供が改めて君と子をなせばよい。そうすれば生まれるのは『メトゥサイラ』ではなくその眷族と言う事になるはずだ」
「はあ?!」
以前にメトゥサイラとの会話でそれは少しばかり脳裏をよぎったことはあったが、まさかマジでそんな事をやらせる気か。
人間の基準で言えば『父親殺しで母親とチョメチョメ』なんてまさに想像しうる最低最悪の所行だけど、この『2号』にとってはそれはただ目的を果たす手段に過ぎないらしい。
確かにメトゥサイラとオレとの会話が一応は反映されているのかもしれないが、その飛躍ぶりは斜め上どころではないぞ。
他人の空似ではありえない。その身にまとう独特な雰囲気を見紛うはずも無いからだ。
つまり新しく現れたのは明らかに『メトゥサイラ』だった。
そうすると考えられるのは一つだけだ。
「あなたは新しく生まれたメトゥサイラなのですね……」
そりゃまあメトゥサイラが一人だけではない可能性は、さっきまでオレ自身が散々口にしていたけど、いきなり目の前に現れたらやっぱり驚くよ。
ただ考えてみれば、メトゥサイラが泡のような存在なら、儚く消えるのと同じく次から次に生まれてきても不思議では無い。
だけどそれだけなのだろうか?
「ああそうだ。この我がメトゥサイラだ」
一人称とか口調とかやっぱり微妙に違っているな。
よく似ているけど同じ存在ではないという事は予想していたが、これまで一緒にいた当人を前にすると少しばかり違和感があると同時に一応は区別がつくということでホッとしたところもあるよ。
とりあえず後から来た方は『2号』とでも内心で呼んでおこう。
そして『2号』の方はいままでのメトゥサイラに近づき――そのまま無視してオレの方に近づいて来た。
どうやらこの二人は協力する気は無いようだが、敵対するワケでも無く、ただ完全にスルーしただけだ。
「あの……どういうおつもりですか?」
「決まっている。君も聞いているだろう。我が子を産んで欲しい」
要求する事は一緒かよ!
やっぱりなんだかんだ言っても同じ存在なのか。
「待て!」
だがここでメトゥサイラの方は怒りの声を挙げた。
これまでそんな感情を見せた事は無かったから、やはりかなり変化しているということか。
そうすると『2号』の方とは、いろいろ違っていても当然というべきなんだろうな。
「待て! アルタシャはまず私の相手をするのだ。お前は去れ」
「……」
自分自身からの抗議を耳にしているはずなのだが『2号』の方はやはり無視して、オレの方に迫ってくる。
「さあ我が子を産んでくれ」
「おのれ!」
メトゥサイラが怒って手を伸ばした瞬間、『2号』の身から魔力が放たれて、はね飛ばされる。
「ええ?!」
これまでのメトゥサイラはアンデッドに影響力を行使する事はあっても、直接的な攻撃をするような真似をしなかったから、オレも驚いた。
いや。メトゥサイラも『2号』には敵対的な態度をとっていたから、ひょっとすると『自分自身』に対しては攻撃出来るのかも知れない。
とにかく今はメトゥサイラをどうにかせねばと思って駆け出そうとすると、オレの腕がつかまれる。
「さあこの我と――」
「ちょっと待って下さい! あなたの相手はしていられません」
「なぜだ? ……そうか『あれ』がまだ残っているからなのか」
そういって『2号』は自分が吹き飛ばしたメトゥサイラへと視線を向ける。しかしそれには敵意や怒りがあるわけではなく、敢えて言えば『ゴミ』としか思っていない様子だった。
とにかく今は止めるしかない。
「あなたはわたしに子供を産ませて、それでどうしたいのですか?」
「もちろんこの世界を苦痛から解放する。それが我の存在意義だ。どうやら『あれ』はそれを忘れてしまったようだがな」
この言い方からしたら、ひょっとするとメトゥサイラがオレとの接触で、人間性を抱くようになった結果として、この『2号』が生まれたのかも知れない。
それでは『2号』がここにきてメトゥサイラと争っているのは、オレのせいなのか?
いや。まあ。オレを巡ってこの二人が対立しているのは見れば分かるけど、普通の意味での『女を巡る争い』ではないのだけど、しかしどっちも『自分の子供を作れ』と迫ってきているのは一緒だし、面倒くさいにも程がある。
それにそもそも『メトゥサイラ同士』でも熾烈な争いをする事は分かったのだから、子供をつくったところでオレが思った通りお互い相争うだけで、意味がないだろう。
「もしもあなたと同じ存在が生まれても、改めて争うだけでしょう。そう思いませんか?」
「もちろんそんな事は分かっている」
え? だったら『2号』は何のためにオレに子供を作らせたいんだ?
「いったいそれに何の意味があるのですか?」
「当然、その子供によって我はこの苦痛に満ちた世界から解放される」
確かに似たような事はメトゥサイラも口にしていたな。もともと『世界から解放されるためにこの世界を消してしまう』という事が最終目的だったのだから、その基本に戻ったということなのだろう。
しかしそれでも問題は何も解決はしていないはずだ。
「それでは結局は『メトゥサイラ』同士で相争う事に変わりは無いでしょう」
「そんな事は無い」
どういうわけか『2号』には確信があるらしい。
推測だけどオレがメトゥサイラとの間でかわした話の中身がある程度は反映されているのかもしれない。
「いったいどういうことなのですか?」
「君も分かっているだろうが、子供はやはり別の存在だ」
「そうです。だから結局は争う事になるのでしょう」
オレは当然の事を口にしたつもりだったが、その次に『2号』が発したのはとんでもない話だった。
「だからその子供が改めて君と子をなせばよい。そうすれば生まれるのは『メトゥサイラ』ではなくその眷族と言う事になるはずだ」
「はあ?!」
以前にメトゥサイラとの会話でそれは少しばかり脳裏をよぎったことはあったが、まさかマジでそんな事をやらせる気か。
人間の基準で言えば『父親殺しで母親とチョメチョメ』なんてまさに想像しうる最低最悪の所行だけど、この『2号』にとってはそれはただ目的を果たす手段に過ぎないらしい。
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