異世界転移したら女神の化身にされてしまったので、世界を回って伝説を残します

高崎三吉

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第18章 奇怪なる殺戮者?

第727話 古ぼけた屋敷にて出会った相手は

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 シドンに案内された場所は町の中でもどちらかと言えば中心部から離れ寂れた感じが漂う地域だ。
周囲の街並みも古く、また人通りも少ない。
 建物そのものはかなり大きい部類だが、あたり一帯の雰囲気を見る限り現在は寂れる一方の旧市街というところだろう。
 見るとそこそこ広い庭はほとんど手が入っておらずかなり荒れているし、全体にかなりガタが来ているように感じられる。
 シドンが有力な魔術師の一門だとすれば、恐らくは祖父の世代にはここに屋敷を構えていたけど、新市街に引っ越した後、放置されていた古い屋敷を隠居用にしたのだろう。

 ここで中に入るのをシドンはちょっとばかりためらう。
 たぶん『朝帰り』なので躊躇しているのだな。
 そしてシドンはフードを被ったオレの方にチラと視線を向ける。

「アルさんが顔を隠している理由は、一人旅なので目立たないためなのは僕にもわかります」
「まあ……そんなところです」

 何しろオレの容貌は一目見たらまず忘れられないほど目立ちまくる代物だ。
 いろいろとうるさい知り合いが大勢いるし、いく先々で評判が立ちまくると何かと面倒だ。
 もちろんシドンはそこまで察しているはずもないけどな。

「それだけの凄い美人なのに、魔法でも何でも出来て、それでいて僕のようなダメな落ちこぼれにも優しくしてくれて本当にありがとうございます」
「急にどうしたんですか?」

 何というかもう『死を覚悟したので、最期に感謝の言葉を残したい』とでも言わんばかりの様子だ。

「僕にもしもの事があったら、そのときは――」

 おいおい。いや。まさか。
 この古い屋敷の中に足を踏みいれるだけで、まるで命がけであるかのような雰囲気だぞ。
 ひょっとして本当にヤバいのか?
 だけどそれならどうして今まで黙っていたんだ。
 オレが違和感を抱きつつ見ていると、シドンは意を決した様子で、門の中に足を踏みいれようとする。
 だがそのとき甲高い怒声が鳴り響いた。

「こらぁ! シドン!」
「ひ、ひぃ!」

 この時のシドンは昨晩、殺人鬼に出くわしたのと変わらぬほどの恐怖の表情を浮かべていた。いったい何事だ?

「よりにもよって朝帰りとはどういうことよ! 説明しなさい!」

 叫びつつドアから飛び出して来たのは、オレと同年輩か少し年下、十五歳ほどの少女だった。
 黒髪を短く刈りそろえ、なかなかに整った容貌をしているが、柳眉を逆立てた怒りの表情はまるで般若のごときものだった。
 そしてシドンは少女に対し、必死の表情で手を突き出して制止の声を挙げる。

「ま、待ってよ。姉さん」

 え? この女の子はシドンの姉なの?
 幾ら古ぼけた隠居用の建物でも、使用人ぐらいはいて当然だとは思っていたけど、シドンの姉が待っていたとはまたしても予想外だったな。

「いいえ! 待たないわよ!」

 そして『姉』と呼ばれた少女は、勢いよく駆けつけてきてシドンの襟元をつかむ。

「このサレナ・サスティスは、あんたの世話を亡き先生から念入りに頼まれているんですからね!」

 おや。サレナと名乗った少女が口にした『亡き先生』とは、普通に考えてシドンの祖父だろう。
 そうすると彼女はあくまでもシドンの祖父の弟子であって、血縁はないらしい。
 いまシドンが『姉さん』と呼んだのは『姉弟子』に対する愛称ということか。

「先生がお亡くなりになってまだ喪が明けてもいないのに、一晩外をほっつき歩いて朝帰りなんてどういうことよ! 幾ら悲しくてもそんな事で鬱憤を晴らすなんて真似が許されるとでも思っているの!」
「だから僕の話を聞いて――」

 シドンはしどろもどろになりつつ弁解を試みるが、サレナはまるで聞く耳を持たない。

「あんたがそんな不良少年になってしまったと知ったら、先生があの世でどれほどお嘆きになることか分からないの! 後事を託されたあたしは恥ずかしくてお墓に顔向け出来ないわ!」

 いくら何でもシドンの祖父が、孫より少しばかり年上な程度のサレナに対し保護者になる事を頼んだとは思えない。
 せいぜい『自分の死後も変わらずシドンとは仲良くしてやってくれ』と言い残した程度ではないだろうか。
 しかし無駄に力むタイプらしいこの少女は、シドンの人生の面倒をみるつもりで、勝手な使命感に燃えてしまっているようだ。

「夜には人殺しが出歩いているというのに、そんな中でフラフラ遊び回るなんてどういうことよ! さあ! こっちに来なさい! 今日はみっちりと――」
「あのう。少しお話いいですか?」

 ついついサレナの勢いにこっちも呑まれてしまっていたが、このままシドンを屋敷の中に引きずりこまれてしまって、ハイさようならというわけにはいかない。

「うん……あなたは誰?」

 サレナはここでオレの存在に初めて気付いたと言わんばかりに、不機嫌そうな表情をこちらに注いでくる。

「実は昨晩、そちらのシドン君とわたしが――」
「つまり大事なうちのシドンをあんたがたぶらかしたのね!」

 そう叫びつつ、サレナはシドンを『自分のもの』だと言わんばかりにギュッと抱きしめる。
 まあ暴走気味のサレナの態度からして、なんとなくこんなリアクションは予想していたので、特に落胆したり、驚いたりしたわけではない。
 しかしシドンはどことなく頼りない空気を漂わせているが、こちらのサレナは全く人の話を聞かないな。まあ使命感とか責任感が突っ走ってしまっているのだと思っておこう。
 これではシドンがギリギリまで口にしたくなかった気持ちはよく分かるな。
 しかしこの時、サレナに抱きしめられていたシドンは、何かを案じるような不安げな表情を浮かべていたのが、オレにとってもどこか引っかかるものだった。
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