異世界転移したら女神の化身にされてしまったので、世界を回って伝説を残します

高崎三吉

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第19章 神気の山脈にて

第810話 山賊共を蹴散らしたところ

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 オレとフォラジの周囲は、下卑た笑顔を浮かべつつ迫り来る山賊の包囲されていた。
 先ほど出会った『首無し精霊』と比べたら、どちらが恐ろしいかと言えば圧倒的に精霊の方だけど、不快感なら間違い無くこの山賊連中だ。

「女ってのは泣いて悦ぶものなんだから、男よりもいろいろ楽だよな」
「何もせずにただ俺達の言うとおりにしていればいいのだから、うらやましいぜ」
「いや。俺は別に男でもヒイヒイ言わせてやるぜ」
「だったらそっちの男はお前にやるから、女はいらねえな」
「ええ~! そりゃねえよ! てめえ等は薄情だな」

 少なくともさっきの精霊は危険であっても話をする気にはなれたけど、こいつらの言葉は聞くだけで虫酸が走る。
 とってと黙りやがれ。

「アル君……連中は油断しきっている様子だ。これならボクが奴らの不意をつけば……」

 フォラジの方は覚悟を固めた様子で、懐に手を入れる。
 たぶん短刀か何かを入れていて、それで山賊共に一矢報いようという覚悟だろう。

「大丈夫だよ。前にも言った通り、ボクはマークホール神の身元に行くだけだ。この場で果てたとしても、生け贄になるよりはずっとマシというものさ」

 その気持ちだけありがたく受け取っておきましょう。
 あとはやっぱりオレの容姿に対して、男としてフォラジにも思うところがいろいろとあるのだろうよ。
 まあ下心があっても、命がけでやってくれているならそこをとやかくは言うまい。
 そんなわけでオレは『成長加速』グロウス『植物歪曲』ワープ・ウッドの魔法を唱える。
 オレの魔力が周囲に広がると、まずは草木が一斉にざわめき出す。

「いったいなんだ? 風もないのに……」
「おい。まさか精霊が怒っているんじゃあるまいな?」

 そういえばこいつらはそもそも、この祭壇に棲まう精霊に霊力を吸われて倒れた仲間を引き上げるためにここに来ているのだよな。
 仲間の事よりも女を襲う方を優先させるような連中だが、それでもやっぱり精霊は恐ろしいか。

「ええい。気にするな。とっととやっちまえばいいんだよ」

 そう言って迫ってきたヤツの足下に伸びたツタが絡みつく。

「なんだぁ?!」

 男が下を見た瞬間、その身は天地逆になって跳ね上がり文字通りの『釣られた男』ハングドマンと化す。

「た、助けてくれぇ!」

 情けない悲鳴があがるものの、他の連中も周囲から迫り来る木々の枝や、ざわめきねじれ身悶えするかのように動き回る草を見て、明らかに動揺している。だが――

「いまだ!」

 山賊達が動揺したのを見て、好機と思ったらしいフォラジが飛び出そうとする。
 おい! ちょっと待て! 幾ら混乱していても相手だって武器を持っているんだぞ。
 少々の怪我だったら治すのは造作も無いが、万が一急所を突かれて即死なんて事になったらオレでもどうしようもない。

「うがあ!」

 駆けるフォラジの足下に草が伸び、勢いよく地面に転ぶ。
 少しばかり痛い目を見ただろうけど、アンタのためだから勘弁してもらいたい。
 ただこれまでのフォラジだったら周囲で何が起きているのか観察して『記録する』事を優先しただろう。
 やっぱりオレの事を考えたからなのか。それとも考えなかったからなのか。
 一方で山賊連中は植物に包囲される形で動きを止めている。

「誰か助けてくれぇ!」
「ここの精霊にこんな事が出来るなんて聞いてないぞ!」

 そりゃそうだ。やっているのはオレなんだからな。
 そこで連中はあっという間に植物に覆われ、緑の小山が出来る。

「!……」

 もう何を言っているのか分からない。魔法を使えば聞く事ぐらいは出来るけど、どうでもいいや。
 まあ死ぬ事はないだろうけど、しばらく動けないはずだからそこで反省していろ。
 ひとまず周囲の様子を確認するが、動いているのはオレの魔法を受けた植物だけだ。
 そんなわけでオレは倒れたフォラジに駆け寄る。

「フォラジさん。大丈夫ですか!」
「……」

 フォラジはしばしオレをマジマジと見つめ、そして周囲を見回してため息をつく。

「これをやったのはアル君だね?」

 さすがに冷静になったら気がつくだろうな。
 まあこの状況でオレひとり平然としていたら、誰でも見当ぐらいつくか。

「ふうむ。今のはボクへの攻撃――ではなく、危ないと思って止めたのだね」

 口調は落ち着いたものだが、どこか落胆した様子がうかがえる。
 無様を晒したと思っているのか、はたまたオレが『本性』を隠していた事がショックだったのか。

「この魔法がアル君の使ったものだとしたら、君の魔力は英雄どころか半神級だね……ふうむ。以前、君に『白き貴婦人』の末裔かと聞いたとき否定されていたけど、もしかすると末裔ではなく化身だったのかね?」
「そういうわけでもないんですけどね……」

 化身になった事は何度もあるのだけど、少なくとも今は違います。
 そしてフォラジは小さく口を動かす。もちろん常人なら聞こえるはずのない小声だが、オレの耳には十分に届いていた。

「ああ……これが『失恋』というものなのか……」

 すみません。フォラジの事は少し格好いいとは思ったけど、こちらには最初から『その気』だけは全くもってありませんでした。
 そしてここでオレの感覚には誰かが近づいてくる気配が引っかかった。
 何ものだ?
 そちらを注視すると、そこには前に見た仮面を被ったシャーマンの姿があった。
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