異世界転移したら女神の化身にされてしまったので、世界を回って伝説を残します

高崎三吉

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第20章 とある国と聖なる乙女

第840話 立て続けに『学長先生』と話をすることに

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 サバシーナは念を押すように、ズイと顔を寄せてくる。

『繰り返しますが生徒として通うのならば、私が口をはさむことではありません』
「わたしの事をここの教師には伝えないのですか?」
『この学校の守護精霊として、秩序を守り、問題が生じたときは教師に対して助言するのが私の仕事です。個々の生徒がどのような能力を有し、何を学んでいるのかは私の使命の範疇を超えます』

 あくまでも生徒を導き、評価するのは精霊ではなく、教師の仕事というわけか。
 他の神も普通は信徒に直接、接触したりはせず、あくまでも司祭を通じて神意を伝えるから、それと似たようなものなのだろう。

『あなたがいち生徒としてここに通うなら、どうするかは教師たちに委ねます。それが私の職務ですからね』
「ところで先ほどの王妃様の事ですけど、あなたは学園の外の事は知らなくともこの学校での会話はご存知ですよね?」

 何しろ学長と王妃は友人だということだからな。サバシーナも学長と王妃の会話は絶対に知っているはずだ。

『もちろん知っています。しかし現学長と王妃様の会話の中身など、生徒の分を超えた話であることは明白でしょう』

 ぐう。あくまでもオレを生徒として扱うなら、当然の事か。
 どうやらサバシーナからは肝心の情報は得られないらしい。
 オレの落胆に反して、サバシーナは目を細めてほほ笑む。

『しかし女神に匹敵する力を持つ生徒まで来るとは、私が百年前にこの学校を作ったときから考える本当に立派になったものです』

 学校ができたのは百年前だって?
 先代の国王の命令で作られたとネアラから聞いていたけどどうなっているんだ?

「百年前ですか? この学校は先代の国王様の命令で作られたと聞きましたが」

 慌てて問いかけたオレに対し、サバシーナは懐かし気な笑みを浮かべる。

『そういえば、最初はまだ帝国の一部でフラネス王国ではありませんでしたね』

 いきなり昔話モードに入ったぞ。

『私がこのパナハップの町における最初の女学校として『蒼穹女学院』を作ったときは、ほんの小さな私塾でしかなかったのですよ。それが次第に大きくなり、私の死後も遺志を継ぐ者たちによってはぐくまれ、先代の国王様によって、その名を継いだ学び舎をここに建てていただいたというわけなのです』

 なるほど。これだけ大きな学校になったのが先代国王の時というわけか。
 確かに何の下地もなしに、いきなり立派な女学校ができるはずないから、考えてみれば当たり前だな。

『それではそろそろお別れですが、この学校にいる限り、あなたの事は常に見守っていますよ』

 それは常時監視していると言っているように聞こえるぞ。『秩序を守る』のが仕事だと言っていたから実際にその通りなんだろうけど。
 神様や精霊に話を聞いてそれで物事が解決したことなどないから、それは仕方ないけど、これでスコテイの望んだようなスパイ活動など出来っこないだろ。
 どんどんハードルが上がっていく一方だ。
 そんなことを考えていると、周囲の景色が再び校舎の中に戻っていく。
 どうやらサバシーナと話はひとまず終わりのようだ。

 気が付くとオレの前にはネアラとそれ以外にもう一人、どこか先ほどのサバシーナと近い雰囲気で、質素だが上品な服をまとった中年の女性がこちらを驚愕の目で見ていた。

「アル……これはどういうことなの?」

 ネアラが問いかけたところで、中年の女性が慌ててオレに駆け寄って血相を変えて問いかけてくる。

「アルさん。あなたはもしや先ほどまで『サバシーナ先生』とお話をしていたのではありませんか?!」

 サバシーナは初代の学長だから精霊でも『先生』と呼ばれているわけか。

「ええ?! そんなことがあるのですか。学長先生!」

 ネアラは驚いて問いかけるが、どうやらこの女性が蒼穹女学院の学長らしい。
 最近、王位が変わったばかりで『王妃の友人』というから、なんとなくもっと若いかと思っていたけど、年齢は見たところサバシーナの外見と同じぐらいだ。
 そうすると王妃とは親子ほど年が離れているかもしれないな。

「どうやら少し困惑しているようです。ネアラさんは保健室に行ってきてください」
「わ、分かりました!」

 どうやらオレがちょっと考え事をしていたのを、ショックを受けていると勘違いしたらしい。

「待ってください。わたしは大丈夫です」
「黙っていなさい。学長先生、あとは頼みます」

 オレは引き留めたが、ネアラはあっという間に姿を消した。

「改めて聞きますが、あなたはサバシーナ先生と会っていたのですか?」
「ええ。つい先ほどまでここで話をさせてもらってました」

 その中身を聞かれると、いろいろ面倒だな。

「そうですか……正直言って驚きましたが、サバシーナ先生はきっとあなたに何かを感じたのでしょうね」
「あれ? 何が起きたのか聞かないのですか?」
「サバシーナ先生が生徒に何を語ったのかは、学長といえども詮索はできません。もちろんあなたが語りたいのならば止める事もしませんがね」

 ああ。この学校は、いや、学校だからこそ教えられないことだらけなのかな。

「サバシーナ先生が生徒の前に姿を見せて話をするのは、十年に一度あるかないかです。しかも過去の例ではいずれも在学中に素晴らしい成果を上げた生徒ばかり。登校初日の生徒と対話するなど前代未聞の出来事ですよ」

 学長はかなり興奮している。これが学校の歴史に残る大事件なのは間違いないな。
 最初からこっそりと目立たずにスパイ活動するなんて、オレには至難の技だと思っていたけど、ここまで正反対になってしまうとは自分でもビックリだ。
 これもオレの背負った運命というものなのだろうか。
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