異世界転移したら女神の化身にされてしまったので、世界を回って伝説を残します

高崎三吉

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第20章 とある国と聖なる乙女

第901話 謁見の間にて

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 オレが足を踏み入れた謁見の間は、国の威信を示す場所でもあることからかなり広く、壮麗に飾られていた。
 だがその広さを感じさせないほど緊張感に満たされ、空気が張り詰めている。
 もちろんざっと見て数十人はいる大勢の貴族――もちろん大半は男――がオレを凝視しているが、かなり好色な視線も中には混じっているのがいつもの通りだ。
 中に入ったところ、どういうわけかオレの身にはのしかかるような感覚が生まれる。
 恐らくこの謁見の間は魔力を封じ、魔法が使えないようになっているに違いない。
 他国でも国王との謁見や国政を司る重要な場所では、同様の措置が施されているのが普通だと聞いている。
 もっともオレの場合は魔力が桁違いなので、これぐらいならば効果がある程度減じるぐらいであって、魔法が使えなくほどではないな。
 現国王派に今すぐオレを拘束する気は無くとも、話がこじれたら実力行使に打って出る可能性は否定できない。
 その場合、魔法を使って切り抜けるしかないな。
 そんなことを考えていると、いろいろな貴族達の声が耳に入ってくる。

「あれがアルタシャなのか」
「確かにこの世のものとは思えぬほどに美しいが……まだほんの小娘ではないか」
「見た目だけでは? いや。そもそも本物なのか。偽者が横行していると聞いているぞ」
「いや。先ほどトゥロガスをたった一人で倒したのは間違いない。見た目に騙されるな」

 貴族達の多くは今のところ、立場を明確にせずあちこちでさや当てをしているらしい。
 推測だがこれだけ事態が急変したので、オレの事を扱いあぐねているのかもしれない。

「心配はいらん。この謁見の間では魔法は使えないのだから、いざという時はあんな小娘ひとりどうにでもなる」

 やっぱりオレも魔法が使えないと思われているわけか。
 まあそれはそれで構わない。
 さしあたって問題なのは貴族達では無く、正面の玉座に鎮座している相手なのだから。
 初めて見る国王は年齢は二十代半ばほど。
 服装や王冠はともかく本人には特に変わった様子も無い、ごく普通の青年だ。
 やはり大貴族達からは『担ぎやすい軽い神輿』として扱われているのかな。
 ロブラ王妃の姿は見えないが、排除されていると言うよりは、もともと後ろ盾になる勢力の無い彼女は表舞台に顔を出せないのかもしれない。
 それでも国王に全く話が通っていない筈が無いので、ここはある程度は期待しておくとしよう。
 ひとまずオレは玉座の前に出て、頭を下げる。
 オレは『ニグリ家の養女』になっていたけど、それはそれとして臣下では無いので平身低頭する必要は無いよね。
 ひょっとしたら『平伏しろ!』などと文句を言われるかもしれないと思っていたが、そこまではいかないらしい。
 国王の表情には今のところ、オレを迎え入れてどこか嬉しげな様子が感じられる。
 状況を考えろよ、と言いたいところだが、今まで何度もあったことなのでここは我慢するしかないな。

「貴女がアルタシャ殿か。いろいろと評判は聞いておるぞ」
「恐縮です。お招きありがとうございます」

 とりあえず思いついた当たり障りの無い言葉をかけることにする。
 しかし外にいる群衆をいつまでも待たせていたら、何が起きるか分かったもんじゃない。
 ここは長々と交渉はせず、なるだけ早く本題に入りたい。

「大陸に名をはせる英雄が予の元を訪れたとは実に喜ばしい。しかして用件は何なのだ? 遠慮無く申すがよいぞ」

 もちろん国王も貴族達も、おおむねオレが要求する事は知っているはずだ。
 当然、その答えは既に用意しているだろう。

「聞くところによれば、貴女は行く先々で、英雄と見込んだ男を『恋人』に選んでいるそうだが、次はこの予なのかね? それならば喜んで受けさせていただこうではないか」

 あんた立派な奥さんがいるだろうが、こんな公の場で他の女に手を出すんじゃ無い、と言いたいがこの世界では一夫一婦制のところの方が珍しく、国王ともなれば側室を何人も抱えているのがむしろ当たり前なので誰も問題にする奴もいない。
 まあオレの『恋人』は普通の意味ではなく、本人が勝手に自称しているだけで、言葉の本来の意味通りだった相手はいない。
 そうするとこの国王が勝手に『恋人』を名乗るのぐらいは構わないと思うべきか。
 とにかく時間をかけるわけにはいかないので、とっとと本題に入るとしよう。

「フラネス王国がいま現在、行っている各教団への抑圧をおやめ下さい」
「それはいったい何の話だね?」

 国王はごく平然と答える。

「何か誤解があるようだな。我が国は領内の教団に抑圧などしておらぬし、予もそのような命令を下した事など無い」

 国王はまるで動じた様子は無いな。
 まあ当然の返答というものか。

「貴女はこれまで数多の国や街を渡り歩いて来たと聞いておるが、ひょっとすると訪れる国を誤ったのではあるまいか? いや。それでも予の前にこれほどの美女が来てくれたとすればその間違いに感謝すべきなのかもしれんな」

 この冗談に周囲の貴族達は笑みをこぼす。
 やっぱり王家の人間だけあって、仮に傀儡としてもそんなに簡単に底は見せないか。
 いや。何かが違うぞ。
 今までオレはずっとこの国王は王妃なり大貴族なり、誰かに操られているだけの傀儡かと考えていたが、もしかしてそれこそが誤りだったのか?
 ひょっとすると全てがこの男の意思だったのでは。
 そのような考えがふとオレの脳裏をよぎったのだった。
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