異世界転移したら女神の化身にされてしまったので、世界を回って伝説を残します

高崎三吉

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第20章 とある国と聖なる乙女

第903話 『外れ王子』の抱いた野望とは

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 もしも一連の宗教団体に対する圧力が国王の意向だとしたら、一つ間違えば国を滅ぼしかねない危険があるのを承知でなぜあのような事を?
 そんなリスクを冒してまで、この国に覇権をもたらそうとしているようにはとても見えないのだがな。
 いくら何でもアイウーズのように捨て鉢になって、自分の行動で混乱を引き起こそうとしているわけでもあるまい。
 一連の行動の真意は確かめねばならない。

「各教団の有する魔法の秘密を国に差し出させて、あなたはそれを国で管理した上で、国家で魔術師を養成しようとしているのではないのですか?」
「それぐらいは賢明なる貴女ならば気づいて当然だろうな」

 あっさりと認めたな。

「それが危険である事は重々承知しているはずです」
「もちろんだとも。だからこそ貴女が予の前に現れてくれたわけだ。そう考えると悪い事ではないだろう?」

 この後に及んで冗談か。スコテイ同様、どこに底があるのか分からんな。

「過去にも同様の事をやろうとして滅ぼされた例が幾つもあることはよく知っている。予が誰からも相手にされていない『外れ王子』の頃は、ただ図書館にこもってカビの生えた古書を紐解くばかりの日々だったからな」

 やはりどこか他人事っぽく感じるな。
 自分がトップである国の事をあまり深刻に考えている様子が無いのだ。
 別に『国王だから国や国民のために人生の全てを尽くせ』なんて建前論を振りかざす気は無いが、国王として自分の地位を守る事を考えていないのだろうか?

「陛下の望みは何なのですか? 『帝国の再興』ではないとしたら何なのです」
「語弊があったかもしれんな。我が望みがかなえば結果的にフラネス王国が東方に覇を唱える事が出来るのだから、決して間違いというわけではない」

 少なくとも国王を掲げている貴族達と利害は一致しているらしい。
 しかし重要なのはそこではない。国王自身の考えだ。

「いったいその『望み』とは何なのですか?」
「貴女もそれぞれの教団が魔法の秘密を隠し持ち、別々に魔術師を養成しているのは効率が悪いと感じているのではあるまいか?」

 オレは返答しなかったが、国王はその無言を肯定と受け止めたらしく、小さく頷く。
 実際にそこまではオレも分かっているが、世の中は『効率がいいから』というだけでは進まない事は、この世界に来てから何度思い知った事か。
 二一世紀の人間の感覚では非合理な事に、人生どころか命を捧げている人間に出会う事もしょっちゅうだったのだ。

「しかし過去にその非合理を改めようとしたものに待っていたのは、栄光では無く破滅だ」
「そこまでご存じならば、答えは明らかでしょう」
「そうだな。予が最初にそれを成し遂げた人間となれば、さぞかし素晴らしい事だろう」

 ええ? あんたはそこまでの野心があったの?
 そんな人間がどうして『古書を紐解くばかりの日々』を過ごしたりしているんだ?
 先ほどの話は嘘で、実は裏で自分が国王になるべく裏で画策していたのだろうか。
 だけどこの国王からはどうにもそのような事が感じられないのだ。

「ひたすら本を読むだけの日々、ただ頭の中で考えているだけの事を実践できるようになるのはなんとも喜ばしい事だ」

 そう言って国王はオレに笑いかける。

「今からでも貴女には是非とも協力してもらいたいものなのだがな」

 そうか。ようやく分かった。
 この国王はいろいろと一人で学んできた事をこの国であれこれと試したいのだろう。
 そして自分の望み通りになればそれでいいが、その結果として最悪、自分が破滅し、国が滅びる事は大して深刻に思っていない。
 どんな結果になろうとも『将来は歴史書に記される』ぐらいにしか受け止めていないのではないか。
 今現在、自分が国王をしているフラネス王国も、自分が読んできた歴史書に残っているだけの国も同じように考えてしまっているに違いない。

 野心や地位への執着の無い人間が何かの拍子でトップに立ったとき、そのようなものを持たないからこそ『組織を守る』という意識もまた希薄で、リスクに対して鈍感になってしまう事があると聞いた事がある。
 そのため『自分のやりたいこと』を優先し、結果的にその組織を滅ぼしてしまう事態が元の世界でも時々あったらしいが、この国王はそんなタイプなのだ。

 もし国王になる事を夢見て、長年にわたって多大な努力をつぎ込み、命をかけて奮闘した結果として玉座を得たのならば、次はそれを守るために必死になるのが当たり前だ。
 だがこちらの場合、前国王の路線に反対する貴族達に『王の血を引いているが、どうにでもなる軽い神輿』として担がれたので、自分では何もしないうちにあれよあれよと『国王になってしまった』のだ。
 彼を引っ張り出した貴族達は、まるで野心を見せず古書を毎日読んでいるだけの『外れ王子』だから国王になっても、ずっと同じ事をしているだけだと高をくくっていたのだろう。
 降ってわいた国王の座を、本で仕入れた知識を実践するために使うとは誰も想定していなかったに違いない。
 しかもその目指すものが現国王を担ぎ出した貴族達――『帝国の再興』を大義名分として、勢力拡大を望んだ勢力――と対立するものでも無かったので、誰も止められなくなったのだ。
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