異世界転移したら女神の化身にされてしまったので、世界を回って伝説を残します

高崎三吉

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第22章 軍神の治める地では

第977話 怪物から一緒に逃げると

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 遺体集めギャバダー・コレクターに立ち向かっている少年は、マントをかぶってはいるが見たところ中肉中背で特別な外見というわけでは無い。
 改めて周囲を確認したところ、今のところこの少年以外に人の姿は見当たらないようだ。
 オレの『霊視』ソウルサイトではごく普通の人間だ。だが――
 魔法を知覚する『魔法眼』ウィザード・アイではこの少年の装備品にはかなりの魔力が込められている事が感じられる。
 そうすると高位の貴族か?
 だけどそんな貴族が、こんなところで単独行動している事は普通あり得ない。
 もしかしたらこの地で数日前に起きたらしい激しい戦いにて敗れた側の貴族で、どこかにひとり逃げのびていたけど、ひとまず様子を見るために戻ってきたのかもしれない。
 そこで城も街も滅びているのを見て絶望し、ただ死に場所を探しているとかそんな可能性すらあり得るな。
 いずれにしてもこの少年が殺されてしまったのではたまらない。
 ここは『精霊使い』ファミリア・スピリットの魔法で近くの精霊を呼ぶことにする。
 この魔法は精霊を支配するわけではないので危険な事――特に戦闘――はさせられないが、オレが対価として魔力を提供すればあのゴーレムの足下をすくう事は出来るはずだ。
 だがオレが魔力を地面に注ぎ込んでいる最中にも、少年は戦い続けている。
 幸運にもというべきか『遺体集め』は見た目こそ恐ろしいものの、戦闘を目的として作られているワケでは無く、動きはむしろゆっくりしているのでかわすだけならそう難しくはないようだ。
 しかし人間よりも遥かにパワーがあり疲れも知らないとなると、一人で戦うのは危険というよりも無謀だ。

「とにかく早く逃げてくれ!」
「あなたを置いて逃げられませんよ! 一緒に逃げましょう」

 ううむ。自分でも賢い選択とは思わないが、ここで背を向けるわけにはいかないのだ。

「そういうが――」
「危ない!」

 視線をそらした瞬間『遺体集め』の拳が少年の身をかすめ、オレも一瞬ヒヤッとなる。

「うわあ!」

 直撃したらひとたまりも無かっただろうが、どうにか致命傷は避けてくれたらしく、少年は悲鳴をあげつつ地面を転がった。
 だがこれはまずい! 今のオレには『遺体集め』を止める手段など無いのだ。
 しかしこの時、足下の地面に魔力が生じ始めた。
 ようやく来てくれたか! さっきかけた『精霊使い』の呼びかけに応じて、大地の精霊がやってきてくれたのだ。
 オレは魔力を注ぎ込んだ上で、精霊に『遺体集め』の足下をすくうように頼む。
 その直後『遺体集め』のいる地面が波打って、倒れた少年に向けて放たれた攻撃はギリギリで外れ、今度は死体まみれの巨体が轟音と共に転がる。

「今です!」

 少年の元に駆け込むと、二人揃って地面に引き込むよう精霊に呼びかける。
 オレはともかく少年の方は精霊がどんな扱いをするか不安なので、こういう事は可能な限り避けたいのだが、今は他に手が無いのだ。
 そんなわけで精霊の力でオレは少年を連れて、その場を急いで離れることにした。


 ある程度まで離れたところで、オレは周囲というか地上の様子をうかがう。
 精霊の知覚をある程度、共有出来るので、ひとまず人気のない森だと確認したところで少年と共に顔を出す。
 幸か不幸か。少年はショックで脳震盪を起こしたらしく、意識がハッキリしていない様子で騒がれる事は無かった。
 改めて周囲に危険が無いか確認したあと、少年を見るとあちこち怪我をしているようだ。
 そこで改めて少年の身を調べる――もちろんいかがわしい意味など無い。純粋な医療行為である。
 身体はかなり鍛えられて引き締まったものだが『歴戦の勇士』というイメージからは大きく離れているな。
 訓練はしているが実戦経験がたくさんあるようには感じられないのだ。

 傷は先ほどの戦いによるものと、精霊が手荒く扱ったものだけでなく、その前から受けていたものも幾つかあるようだ。
 やはり数日前の戦いにも参戦していたらしい。
 軽傷とは言え、幾つも傷を負っているのに命がけでオレを助けてくれるとは、生き残ったがやけになって死に場所を探していたのかもしれないな。
 いや。もしかしたらとてつもない使命感を有しているのか。
 まさかとは思うがオレと同じように、無報酬で見ず知らずの相手を助けるため、身体を張るようなお人好しだったりするのか?

 いずれにしてもその身につけている装備は汚れているとはいえ、魔力がこもっているだけでなく、手の込んだ装飾が施されており、かなり高価な代物である事がうかがえる。
 どうやらよっぽどいいところの出身のようだ。
 オレの場合、つい先日、国王と国の命運をかけて対面した事があるし、皇帝や王太子からプロポーズされるのもしょっちゅうなので、今さらそれぐらいで驚く事は無い。
 相手の地位がなんだろうとオレのやることは一緒だ。
 そんなわけで少年に対し『肉体の治癒』ヒールボディをかけると、見る見る傷は回復し、呼吸も落ち着いたものになる。
 後は目を覚ますのを待つだけだが、その前に自分の身を再確認しておく。
 長旅に加えて、先ほどからの戦いのためかなり汚れているので結構気になる。
 出来れば今すぐにでも風呂に入りたい気分だ。
 もちろん少年が気絶している間、なぜか泉に入って身体を洗い、そこで意識を取り戻した相手に全裸をばっちり見られてしまうなんてお約束なエッチイベントは起こさないぞ。
 そんな不毛な事を考えていると少年はようやく意識を取り戻し、その目をゆっくりと開けたのだった。
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