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第22章 軍神の治める地では
第1014話 カルマノスの真意はどこに?
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カルマノスがどこまで喋ってくれるかは分からないが、確認すべき事はいくらかある。
とにかくオレの方が霊力を提供する以上、有利な立場にはあるわけだからな。
「わたしの裏切りと言いますけど、あなたに危害など加えられませんよ。いったい何が心配なのですか?」
『我がここを離れたらこの身を維持できるかどうかは分からぬ。だからそなたの霊力が欲しいのだ』
なるほど。崇拝されている霊体ならば自分の存在を維持できるが、この亡霊は自分の死んだ場所に呪縛されているから、そこを離れると力を供給されねば霧散・消失してしまうということか。
そんなわけでここを出た場合、オレから霊力を得ないと存在を維持できないので、逆にオレの裏切りを警戒しているということらしい。
それならここでずっと亡霊をやっていればいいものを、それほどまでにウルバヌスに復讐したいのか。
「つまりあなたは自分の存在をわたしに委ねるのでしょう? それなのに何をするのかは教えてもらえないのですか?」
『そなたも予も、これまでの会話ぐらいで互いの真意は分かるまい。ならばこちらも手の内を隠すのは当然というものだ。もちろんそなたが心配するのも分かるが、予にとってウルバヌスが敵なのは間違い無い事は理解しているであろう』
そうすると既に神であるウルバヌス自身には手出しなど出来ないので、その信徒の軍勢に対して何かをしかけてやりたいというところか。
正直言ってスケールが小さいけど、ここはあえてそれは問うまい。
裏切られ滅ぼされたあげく、この廃墟でずっと一人で怒りをため込んでいたのだろうか。
こういう場合、理性も失って狂気に陥っている場合もあって、出会った相手は誰でも敵だと考え、襲ってくるような場合するある。
このカルマノスは理性こそ残っているけど、それでも自分にこのような仕打ちをした張本人であるウルバヌスに一矢報いたいというのだから、相当に執念深いのだな。
それともそれは口実で何か別の事を企んでいるのか?
だがオレの霊力を一部提供したところで、自分が死んだ土地を離れたら存在を維持できるかどうかも分からない程度の力しか無いカルマノスの亡霊が、いきなり強大な邪神と化して暴れ回るなんてことはこの世界ではあり得ない。
そうすると少しばかり力を分け与えるぐらいなら、仮にオレが騙されていたとしても大した問題にはならないはずだ。
『改めて問うが、本当にウルバヌスは神となってこの世を離れているのだな?』
「当然ですよ。そもそも人の身ではとっくに寿命を迎えていますから」
『そうか。それならばよい。では約束通り霊力をもらうぞ』
そう言うとカルマノスはその霊体をオレの身体に重ね合わせる。
少しばかり力が抜ける感覚が生じるが、これぐらいならば大した事はないな。
もしかしたらオレの霊力を残らず奪い取るとか、そんな事を考えているのではないかと疑っていたけど、勘ぐりすぎだったか。
しかしこれまでにもいろいろな同行者はいたが、肉体を持たず、何かに呪縛されているわけでもない、霊体のままでつきまとわれるのは初めてだな。
そんなわけでオレは少し離れていたクロンに合流する。
「もうよろしいのですか?」
クロンは少しばかりオレを心配した様子はあるが、やっぱりカルマノスの存在は察知出来ていないらしい。
もともとクロンは霊体に関しては素人だけど、この亡霊が大した力を有さない事の証明でもある。
『こやつは何者だ?』
カルマノスの言葉を信じると、ヒクソス王国は彼をいったん受け入れつつ、形勢不利になったのでウルバヌス側に寝返り、殺害した下手人の子孫という事になる。
しかもクロン自身の罪ではないにせよ、そんな事情があったとは夢にも思わず、ウルバヌスを崇拝しているのだ。
幾ら当事者ではないとはいえ、ウルバヌス同様に恨みを抱く相手なのは間違い無い。
しかし隠しおおせるものではないので、正直に答えるしかないか。
万が一にもクロンを害しようとしたら、オレが止めるしかない。
「彼は今のヒクソス王国の王子ですよ」
『そうか……予を裏切ってウルバヌスについておきながら、今はそのウルバヌスを信仰している軍勢に攻められ危機に陥っているというわけか』
やはりどこかに『ざまあみろ』と言わんばかりの意志が感じられるな。
しかしクロンとは意志疎通出来ない状態だから、今のところ問題はなさそうだ。
『そうするとそなたはその王子の妻……というわけではなさそうだな。いったいどういう関係なのだ?』
「あえて言えば友人と言うところです」
『そうか。分かった。ならば――』
「断っておきますが、あなたの妻になる気もありませんから」
経験上、こういうかつての力を失った輩の場合、オレを妻にして力を取り戻したいなどと言ってくるが定番だったので、さっさと釘を刺しておこう。
『今の予は力なき単なる亡霊に過ぎず、そなたとは比較にならぬちっぽけな存在でしかない事ぐらいは分かっておるわ。そこまで予も厚かましくはないつもりだ』
「それでは何を言おうとしたのですか?」
『予にとってその王子はもちろんヒクソスがどうなろうと、一切関わりの無いことだという点を念押ししておきたかっただけだ』
確かにカルマノスにすれば当然のことなのだろうけど、何か引っかかる物言いだな。
しかし今のカルマノス自身には、この国どころかクロン一人すらどうにかする力も無いのは分かりきった事だった。
だがいつものようにそんなオレの見込みはやっぱり外れる事になる。
とにかくオレの方が霊力を提供する以上、有利な立場にはあるわけだからな。
「わたしの裏切りと言いますけど、あなたに危害など加えられませんよ。いったい何が心配なのですか?」
『我がここを離れたらこの身を維持できるかどうかは分からぬ。だからそなたの霊力が欲しいのだ』
なるほど。崇拝されている霊体ならば自分の存在を維持できるが、この亡霊は自分の死んだ場所に呪縛されているから、そこを離れると力を供給されねば霧散・消失してしまうということか。
そんなわけでここを出た場合、オレから霊力を得ないと存在を維持できないので、逆にオレの裏切りを警戒しているということらしい。
それならここでずっと亡霊をやっていればいいものを、それほどまでにウルバヌスに復讐したいのか。
「つまりあなたは自分の存在をわたしに委ねるのでしょう? それなのに何をするのかは教えてもらえないのですか?」
『そなたも予も、これまでの会話ぐらいで互いの真意は分かるまい。ならばこちらも手の内を隠すのは当然というものだ。もちろんそなたが心配するのも分かるが、予にとってウルバヌスが敵なのは間違い無い事は理解しているであろう』
そうすると既に神であるウルバヌス自身には手出しなど出来ないので、その信徒の軍勢に対して何かをしかけてやりたいというところか。
正直言ってスケールが小さいけど、ここはあえてそれは問うまい。
裏切られ滅ぼされたあげく、この廃墟でずっと一人で怒りをため込んでいたのだろうか。
こういう場合、理性も失って狂気に陥っている場合もあって、出会った相手は誰でも敵だと考え、襲ってくるような場合するある。
このカルマノスは理性こそ残っているけど、それでも自分にこのような仕打ちをした張本人であるウルバヌスに一矢報いたいというのだから、相当に執念深いのだな。
それともそれは口実で何か別の事を企んでいるのか?
だがオレの霊力を一部提供したところで、自分が死んだ土地を離れたら存在を維持できるかどうかも分からない程度の力しか無いカルマノスの亡霊が、いきなり強大な邪神と化して暴れ回るなんてことはこの世界ではあり得ない。
そうすると少しばかり力を分け与えるぐらいなら、仮にオレが騙されていたとしても大した問題にはならないはずだ。
『改めて問うが、本当にウルバヌスは神となってこの世を離れているのだな?』
「当然ですよ。そもそも人の身ではとっくに寿命を迎えていますから」
『そうか。それならばよい。では約束通り霊力をもらうぞ』
そう言うとカルマノスはその霊体をオレの身体に重ね合わせる。
少しばかり力が抜ける感覚が生じるが、これぐらいならば大した事はないな。
もしかしたらオレの霊力を残らず奪い取るとか、そんな事を考えているのではないかと疑っていたけど、勘ぐりすぎだったか。
しかしこれまでにもいろいろな同行者はいたが、肉体を持たず、何かに呪縛されているわけでもない、霊体のままでつきまとわれるのは初めてだな。
そんなわけでオレは少し離れていたクロンに合流する。
「もうよろしいのですか?」
クロンは少しばかりオレを心配した様子はあるが、やっぱりカルマノスの存在は察知出来ていないらしい。
もともとクロンは霊体に関しては素人だけど、この亡霊が大した力を有さない事の証明でもある。
『こやつは何者だ?』
カルマノスの言葉を信じると、ヒクソス王国は彼をいったん受け入れつつ、形勢不利になったのでウルバヌス側に寝返り、殺害した下手人の子孫という事になる。
しかもクロン自身の罪ではないにせよ、そんな事情があったとは夢にも思わず、ウルバヌスを崇拝しているのだ。
幾ら当事者ではないとはいえ、ウルバヌス同様に恨みを抱く相手なのは間違い無い。
しかし隠しおおせるものではないので、正直に答えるしかないか。
万が一にもクロンを害しようとしたら、オレが止めるしかない。
「彼は今のヒクソス王国の王子ですよ」
『そうか……予を裏切ってウルバヌスについておきながら、今はそのウルバヌスを信仰している軍勢に攻められ危機に陥っているというわけか』
やはりどこかに『ざまあみろ』と言わんばかりの意志が感じられるな。
しかしクロンとは意志疎通出来ない状態だから、今のところ問題はなさそうだ。
『そうするとそなたはその王子の妻……というわけではなさそうだな。いったいどういう関係なのだ?』
「あえて言えば友人と言うところです」
『そうか。分かった。ならば――』
「断っておきますが、あなたの妻になる気もありませんから」
経験上、こういうかつての力を失った輩の場合、オレを妻にして力を取り戻したいなどと言ってくるが定番だったので、さっさと釘を刺しておこう。
『今の予は力なき単なる亡霊に過ぎず、そなたとは比較にならぬちっぽけな存在でしかない事ぐらいは分かっておるわ。そこまで予も厚かましくはないつもりだ』
「それでは何を言おうとしたのですか?」
『予にとってその王子はもちろんヒクソスがどうなろうと、一切関わりの無いことだという点を念押ししておきたかっただけだ』
確かにカルマノスにすれば当然のことなのだろうけど、何か引っかかる物言いだな。
しかし今のカルマノス自身には、この国どころかクロン一人すらどうにかする力も無いのは分かりきった事だった。
だがいつものようにそんなオレの見込みはやっぱり外れる事になる。
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