異世界転移したら女神の化身にされてしまったので、世界を回って伝説を残します

高崎三吉

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第22章 軍神の治める地では

第1015話 ようやく目的地についたところで

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 ひとまず地縛霊からオレに憑依した形となったカルマノスを連れて、クロンと共に廃墟を後にする。
 カルマノスにとってクロンは今のところ関心は低いようだ。そしてもちろんクロンはカルマノスの語る『真相』など想像の埒外だから、当面は大丈夫だろう。
 もしもカルマノスの話を聞いても、クロンが信じる可能性はまずない。たぶん廃墟に巣食っていた嘘つきの精霊か何かだと断じて非難し、オレにとっても面倒な事になったろう。
 この世界のほとんどの人間にとって『真実』とは自分たちが聞かされてきた事だからな。
 もっともカルマノスとウルバヌスのどちらかが真実を語っていて、どちらかが嘘と言うわけではなく、両方共に自分にとって都合のいい話をしているだけなのは確実だ。
 そんなわけで首都に着くまで、また珍道中になりそうだな。
 もちろんエシュミール軍が迫っている様子だから、のんびり旅をするわけにはいかないので気分を引き締めてかかるしかない。

「ところでアルタシャ様は今後、どうされるおつもりなのですか?」

 クロンもやっぱりそこが気になるらしい。

「あなた様は一箇所に長居する事はなく、放浪を続けておられる事は知っています」
「ええ。その通りですよ」

 そのためにいく先々で勝手に恋人を名乗る連中だらけになったけどな。

「もちろん我が国に逗留していただければありがたい限りではありますが、それを望んでもアルタシャ様がお困りになるだけなのは分かっているつもりです」

 ううむ。クロンの場合、一歩間違うとオレと同行したいと言って押しかけてきかねない雰囲気があるな。
 残念ながら、その場合は遠慮無く置き去りにさせてもらおう。

「それでも私にできる事が何かありませんか?」
「クロンが立派にこの国を立て直してくれたらそれで十分ですよ」

 オレの返答を聞いてクロンは改めて嘆息する。

「私も王子として美辞麗句を唱えて寄ってくる人間は何人も見てきたつもりです。しかしアルタシャ様の場合は本当に本心から仰っておられるのですね」

 確かに王子ともなれば、表向き立派な事を言いながら下心満載で近づく人間には事欠かないだろうな。
 しかしオレの場合、相手が王子だろうと国王だろうと見返りを期待することは無いからな。

「白馬領のときもそうでしたけど、本当にあなた様は我らと格が……いえ。見ている世界が違うのですね」

 何しろ生まれた世界が違うからね。
 しかし傍目にはオレとクロンはたわいのない会話をしている二人組の旅人でしかないのだろうけど、冷静に考えるととんでもない組み合わせではあるな。
 クロンの言葉によればもうすぐヒクソス王国の首都ハブールが見えてくる筈だが、こういう場合のよくあるパターンだと首都は既に炎に覆われ陥落しているという展開か。
 だけど首都は頑強に防御されているはずだから、籠城すれば数日の攻撃で簡単に陥落する筈など無いだろう。
 いくらエシュミール軍がゴーレムのような兵器を使っていても、ヒクソス王国の方も対策ぐらいは立てているはずだ。
 しかし首都近くまで攻め込まれたとなると、形勢不利を察して焦土戦術で自ら町を焼き払い、国王達は逃亡なんて事もありうるのだな。
 もちろん住民にとっては迷惑この上ないとんでもない戦法だが、戦争ともなればそんな非道な仕打ちなど珍しくも何ともない事は幾度も思い知らされて来た事だ。
 いや。この時点であれこれと妄想していても仕方ない。ただ何が起きていても、動揺しないよう悪い方向に考える癖もついている気がする。
 そして峠を超えたところで、眼下に広がる光景は良くも悪くもオレの予想を裏切るものだった。

 首都ハブールの城壁は今までオレが見てきた都市とは大して変わらないものだったが、少なくとも、先ほど覚悟していたように落城しているとか、焼き払われている様子は無い。
 それどころかその近郊の平原にて、双方供に万に上ると思しく二つの軍勢が対峙している状況だったのだ。
 両軍供に多数の旗指物を掲げて、陣地を構築している様子だ。
 エシュミール軍がここまで来たのはつい先日の筈だが、恐らくはゴーレムを使って陣地も作ったのだろう。
 一応はクロンが『間に合った』と言っていいのか。

「……」

 クロンは緊張の面持ちで、にらみ合う軍勢を見つめている。
 この戦いが、自分はもちろん国の運命を左右するのだ。
 しかもヒクソス王国軍は緒戦にて、裏切りが出て大敗しているが、ここでも同様の事態になる可能性は十分にあり得る。
 そしてその場に居合わせたクロンにすれば、いかに自軍に戦力があろうと、勝つとはとても言い切れないはず。
 これからの事を考えれば、その身を固くするのは当然というものか。
 

 もちろんオレなら一日で数百人の負傷兵を治療したり『士気高揚』モラルの魔法で軍勢の戦闘意欲を高めたり、他にも『鷹の目』イーグルアイで上空から見下ろすとか大規模な戦争でも出来る事は幾つもある。
 流血の事態は可能な限り避けたいが、幾らなんでもここでオレが両方を説得して争いを止めるなんて都合のいい事があるはずがない。
 ここはもう最初の約束通り、クロンを送り届けてそのまま立ち去るのが一番賢明だな。
 そしてこのとき、しばらくは黙ってオレに憑いていたカルマノスの実体無き目がエシュミール軍を食い入るように見つめているように感じられたのだった。
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