異世界転移したら女神の化身にされてしまったので、世界を回って伝説を残します

高崎三吉

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第22章 軍神の治める地では

第1016話 軍勢を前にしていろいろと

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 カルマノスは両軍が軍神として崇拝し、掲げているウルバヌスの紋章が入った軍旗をにらみつけている様子だ。
 クロンに聞いたところではウルバヌスは神として、信徒に対し『軍団招集』の魔法を提供しているということだった。
 それにより呼び出された精霊の宿った軍旗の下では、規律を持って戦闘が出来るようになるという事だったので、当然両軍が精霊の宿った軍旗を掲げているのはオレの『霊視』ソウルサイトでも明らかだ。
 そうすると精霊の宿った軍旗を守る事が極めて重要なのだろう。
 元の世界でも軍旗を奪われるのは最大の恥辱とされる事があったと聞いたけど、こちらでは文字通り軍の崩壊を招いてしまうようだ。
 ただし規律や秩序は守れても、忠誠心が生まれるわけではないので、指揮官の裏切りを止める事は出来ないのが問題というところだな。
 あと目立つのはエシュミール軍には数多くのゴーレムが参加している様子だが、ヒクソス王国の軍には見当たらないところだ。
 恐らくはその技術が伝わらなかったのか、伝わっていても必要が無いとして忘れ去られたのかもしれないな。
 ただそれは単純な戦力と言うだけでなく、その目立つ巨体をそびえさせているエシュミール軍にヒクソス側の貴族が寝返る理由になってしまった事は十分に考えられる。
 エシュミール軍にすればこのゴーレムの威力で敵を粉砕するだけでなく、存在そのものが自軍の威力の証明となっているから、高価なゴーレムを惜しみなく使用しているのだろう。
 もっともウルバヌスがそんな高価な兵器を多数作った事が、結果的に帝国を衰退させた理由になった事は当然考えられるな。
 元の世界でも国を守るために軍備に傾注したら、そのせいで国の方が傾いてしまう本末転倒の話は昔からよくあったようだ。
 それはともかくカルマノスは何をするつもりなのだろうか?
 かつての皇帝と言ったところで、今は人間ひとり呪うだけの力も無い、ただの亡霊でしかない。仮に少しばかり力があったとしても、エシュミール軍にだって霊体に対する防御策ぐらいはあるだろう。
 どう考えてもカルマノスの力で何か引き起こせるとは思えない。
 それでは自分が『真の皇帝』だとでも言って説得するつもりなのか。
 いや。そもそも遥か昔に裏切られて敗死し、今では存在そのものが無かったことになっているらしいカルマノスが、亡霊の身でそんなことを唱えても相手にされるはずがない事は分かっているはずだ。
 しかし何も考えずにオレに同行して戦見物でもしようとしているわけではないだろう。

「ここまで来ましたけど、どうするつもりです?」
「もちろん急いで我が軍に合流します……」

 別にクロンに問いかけたワケではないのだが、カルマノスの存在を知らないクロンにすれば一緒にいるのは自分だけなのだから、返答するのは当然だよな。
 ただどうもクロンはオレと別れるのが名残惜しいようだ。

『もうしばらく付き合ってくれ。あの軍勢の中に入ってくれれば良い』

 そう言ってカルマノスは数多くのゴーレムを率いている、エシュミール軍を指差す。
 おいおい。ずいぶんと簡単に言ってくれるけど、あちらがオレの事に気づいていないとしても、これから戦おうとする殺気だった軍勢の中に入り込むなんて、幾らオレでも危険極まり無い行為だ。

『そなたはあの軍をどうにかしたいのではなかったのか? まさか危険も無く、軍勢を止められるとでも思っていたのか』

 ぐう。自分を『正統な皇帝』などと、現実を無視した事を唱えているくせに、こんな時だけ正論を振りかざすんじゃないよ。
 もっともカルマノスの場合、自分の肉体がないから危機意識がないのかもしれないけどな。
 だがオレの場合、ここまで来ておいて『ここから先は危ないので辞めます』とは言えないのはいつもの事だ。
 こうなったら仕方が無い。

「ここでクロンとはお別れですね」
「そうですか……それは分かります」

 もしもクロンと一緒にヒクソス軍の陣営に入ったら、オレとしてはいろいろ面倒な事になるのはクロンも理解してくれていたはずだ。

「ただ一つ尋ねてよろしいですか? アルタシャ様はこれからエシュミール軍の陣営に向かうおつもりではありませんか?」
「え? なぜ?!」
「やはりそうでしたか!」

 思わぬ事を指摘されて、オレもついつい本音をもらしてしまった。
 クロンは王子らしからぬ甘い面はあるが、決して鈍くはないのだ。

「先ほどから何かを思い悩んでいるご様子でエシュミール軍を見つめておられましたから、もしかしたらと思ったのですが……」

 ここで無理に否定しても、クロンの事だから暴走しかねないな。

「断っておきますが、別にエシュミール軍に味方するつもりはありませんよ」
「そんなことは私とて分かっています。我が軍のためである事は疑っておりません」
「まさか……ついてくるとは言いませんよね?」

 オレひとりならともかくクロンが同行するのは無謀ではすまないぞ。
 しかしクロンはそんなことを言い出しかねない感じがあった。

「いえ。そこまで私も愚かではないつもりです。アルタシャ様には私ごときの考えなど及ばぬ深謀遠慮がおありなのでしょう。しかし我らのためあなた様にそんな危険な事をさせるわけにはまいりません」
「クロンはこの国の王子なのでしょう? ならばやるべき事はわたしを案じる事ではないはずです。違いますか?」
「……お言葉の通りです……分かりました。ここはあなた様を信じます」

 そう言ってクロンは改めて名残惜しそうに去って行く。
 オレが憑いている亡霊の話を信じて、傍目には無謀な行為なだけの事をやらかそうとしているなどとは想像だにしていないのだろうなあ。
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