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第23章 女神の聖地にて真相を
第1064話 シャーマン師弟に対し
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とにかく今はロロダを落ち着かせるしかない。
「落ち着いてください。わたしは決してロロダさんにもモルッカさんにも危害を加えようなどとは全く考えていませんから」
「ほ、本当ですか?」
「もちろんですよ」
オレが念押ししたところで、ロロダはようやく一息つく。
「まあモルッカさんには弟子入りをせがまれてたので、ちょっと困りましたけどね」
「何ですと!」
「あ……それは……」
オレの言葉を受けてロロダはまたしても表情後強張らせ、モルッカはいかにもマズイと言わんばかりの顔色を浮かべる。
「このバカモンが! そんな無茶な事をお願いしていたのか! 私はお前の師としてそんなにも頼りないか!」
「違うんです! あくまでもアルタシャ様にご協力いただこうと思っただけで……」
「お前の事だから、無理を言って、あのお方にご迷惑をおかけしたのだろうが! この私にまで恥をかかせおって!」
「お許し下さい! お師匠様!」
「詫びるのは私ではなくアルタシャ様だろうが!」
ううむ。モルッカがお仕置きされるのは当然だが、それを見ていて気分がよくなるわけではないのだ。
「ロロダさんも落ち着いて下さい」
「しかし……このままではあなた様に申し訳が……」
「償いというわけではありませんが、一つお願いできますでしょうか?」
「は、はい! 何でもおっしゃって下さい!」
ロロダは救いを見出したかのようだ。
ううむ。さっきからオレはずっと穏便に済ませようとしているのだけど、どうにも空気が合わないな。
「この港から出る船についてロロダさんはどこまでご存知ですか?」
「われらは代々、港を一望出来るこの庵にあって、精霊に呼びかけて出航する船を守護してもらっておりました。ですから何でも聞いて下さい」
ロロダは結構大げさに言っているのだろうけど、それなりの影響力はあったらしい。
「ただ……ここ最近では私たちは、すでに古い時代遅れだと言われておりましてな……だからもうそれほど顔のきく事はないのです……」
どうやらかなり口惜しそうだ。
この点についてはモルッカは正直に話をしていたということか。
「それでも幾人かの船長には何度か世話をしてきたので、わたしが頼めばたいていの事はしてもらえるはずです」
おお。これはひょっとしたらこっそりとギルボック島に入りたい、オレの手助けになるかもしれないぞ。
「その船長の中にはギルボック島に向かう人がいますか?」
「はい。幾人かおります。今、入港している船も一隻ありますが……」
おお。これはグッドタイミングというべきか。
「その船に紹介してくれますか? ただしわたしの事は秘密にした上でお願いします」
「どういう事でしょうか? アルタシャ様ならば聖女教会に話をすれば、専用の船が用意されるでしょうに」
ロロダは納得いかないと言わんばかりに首をひねっている。
まあロロダもオレを『聖女教会の英雄』だと聞いているわけだから、それが船の調達を彼女に頼むのは不可解なのだろうな。
「お師匠様。アルタシャ様は聖女教会の組織とは関わりがないそうです。だからいろいろとあるのでしょう」
ここでモルッカも口を挟んでくる。
これ以上、オレの事で師匠からお目玉を食うのは真っ平なのでとっととオレには出て行ってもらいたいらしい。
「分かりました。そのぐらいの事でアルタシャ様はのお許しがいただけるのならば、急いでやらせていただきます」
「あとモルッカさんから聞いたのですが、最近はこの地であなた方が接する事の出来る精霊が減っているのですか?」
この問いに対しロロダは明らかに表情を曇らせる。
「はい……おっしゃる通り、ここ数年の間に集まる精霊がだいぶ減ってきました。私の力が及ばないせいで……」
シャーマンは精霊に対し、礼拝儀式を行い、魔力を捧げる事で精霊といろいろなやりとりをする。
人間に友好的な精霊なら喜んで力を分け与えてくれるかもしれないし、ロクでもない精霊でも彼らをなだめて暴れるのを抑える事が出来る。
そうやってシャーマンは精霊とは関わる事の出来ない一般人から糧を得ているのだ。
しかしモルッカの話によればこのサリリゴール島では神造者が自分達に従うシャーマン以外は精霊に接触できないようにしているらしい。
その推測が正しいかどうかは確認出来ないが、ロロダが接する事の出来る精霊が減少しているのは間違い無いようだ。
「違います! 悪いのはお師匠様ではありません!」
モルッカは慰めようとしているが、それが気休めに過ぎない事は明らかだ。
こうなったら乗りかかった船でもあるし、少しばかりの助力をしようか。
「もしかしたらわたしが精霊を呼び出せるかもしれませんよ
「え? まさか?!」
「お師匠様でも出来ないのに……いえ。難しい事なのにですか?」
モルッカはわざわざ言い直したな。
「ただし以前からいる精霊を呼び出すのではありません。この近くにいる別の精霊を改めて呼んでくるのですよ」
「そんな事が可能なのですか?」
「もちろん精霊を呼ぶだけですよ。後の事はロロダさんがどうにかして下さい」
そういうわけで俺は精霊を近づけるべく、魔法を使うことにした。
「落ち着いてください。わたしは決してロロダさんにもモルッカさんにも危害を加えようなどとは全く考えていませんから」
「ほ、本当ですか?」
「もちろんですよ」
オレが念押ししたところで、ロロダはようやく一息つく。
「まあモルッカさんには弟子入りをせがまれてたので、ちょっと困りましたけどね」
「何ですと!」
「あ……それは……」
オレの言葉を受けてロロダはまたしても表情後強張らせ、モルッカはいかにもマズイと言わんばかりの顔色を浮かべる。
「このバカモンが! そんな無茶な事をお願いしていたのか! 私はお前の師としてそんなにも頼りないか!」
「違うんです! あくまでもアルタシャ様にご協力いただこうと思っただけで……」
「お前の事だから、無理を言って、あのお方にご迷惑をおかけしたのだろうが! この私にまで恥をかかせおって!」
「お許し下さい! お師匠様!」
「詫びるのは私ではなくアルタシャ様だろうが!」
ううむ。モルッカがお仕置きされるのは当然だが、それを見ていて気分がよくなるわけではないのだ。
「ロロダさんも落ち着いて下さい」
「しかし……このままではあなた様に申し訳が……」
「償いというわけではありませんが、一つお願いできますでしょうか?」
「は、はい! 何でもおっしゃって下さい!」
ロロダは救いを見出したかのようだ。
ううむ。さっきからオレはずっと穏便に済ませようとしているのだけど、どうにも空気が合わないな。
「この港から出る船についてロロダさんはどこまでご存知ですか?」
「われらは代々、港を一望出来るこの庵にあって、精霊に呼びかけて出航する船を守護してもらっておりました。ですから何でも聞いて下さい」
ロロダは結構大げさに言っているのだろうけど、それなりの影響力はあったらしい。
「ただ……ここ最近では私たちは、すでに古い時代遅れだと言われておりましてな……だからもうそれほど顔のきく事はないのです……」
どうやらかなり口惜しそうだ。
この点についてはモルッカは正直に話をしていたということか。
「それでも幾人かの船長には何度か世話をしてきたので、わたしが頼めばたいていの事はしてもらえるはずです」
おお。これはひょっとしたらこっそりとギルボック島に入りたい、オレの手助けになるかもしれないぞ。
「その船長の中にはギルボック島に向かう人がいますか?」
「はい。幾人かおります。今、入港している船も一隻ありますが……」
おお。これはグッドタイミングというべきか。
「その船に紹介してくれますか? ただしわたしの事は秘密にした上でお願いします」
「どういう事でしょうか? アルタシャ様ならば聖女教会に話をすれば、専用の船が用意されるでしょうに」
ロロダは納得いかないと言わんばかりに首をひねっている。
まあロロダもオレを『聖女教会の英雄』だと聞いているわけだから、それが船の調達を彼女に頼むのは不可解なのだろうな。
「お師匠様。アルタシャ様は聖女教会の組織とは関わりがないそうです。だからいろいろとあるのでしょう」
ここでモルッカも口を挟んでくる。
これ以上、オレの事で師匠からお目玉を食うのは真っ平なのでとっととオレには出て行ってもらいたいらしい。
「分かりました。そのぐらいの事でアルタシャ様はのお許しがいただけるのならば、急いでやらせていただきます」
「あとモルッカさんから聞いたのですが、最近はこの地であなた方が接する事の出来る精霊が減っているのですか?」
この問いに対しロロダは明らかに表情を曇らせる。
「はい……おっしゃる通り、ここ数年の間に集まる精霊がだいぶ減ってきました。私の力が及ばないせいで……」
シャーマンは精霊に対し、礼拝儀式を行い、魔力を捧げる事で精霊といろいろなやりとりをする。
人間に友好的な精霊なら喜んで力を分け与えてくれるかもしれないし、ロクでもない精霊でも彼らをなだめて暴れるのを抑える事が出来る。
そうやってシャーマンは精霊とは関わる事の出来ない一般人から糧を得ているのだ。
しかしモルッカの話によればこのサリリゴール島では神造者が自分達に従うシャーマン以外は精霊に接触できないようにしているらしい。
その推測が正しいかどうかは確認出来ないが、ロロダが接する事の出来る精霊が減少しているのは間違い無いようだ。
「違います! 悪いのはお師匠様ではありません!」
モルッカは慰めようとしているが、それが気休めに過ぎない事は明らかだ。
こうなったら乗りかかった船でもあるし、少しばかりの助力をしようか。
「もしかしたらわたしが精霊を呼び出せるかもしれませんよ
「え? まさか?!」
「お師匠様でも出来ないのに……いえ。難しい事なのにですか?」
モルッカはわざわざ言い直したな。
「ただし以前からいる精霊を呼び出すのではありません。この近くにいる別の精霊を改めて呼んでくるのですよ」
「そんな事が可能なのですか?」
「もちろん精霊を呼ぶだけですよ。後の事はロロダさんがどうにかして下さい」
そういうわけで俺は精霊を近づけるべく、魔法を使うことにした。
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