異世界転移したら女神の化身にされてしまったので、世界を回って伝説を残します

高崎三吉

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第23章 女神の聖地にて真相を

第1071話 そして新たな同行者が

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 正直に言えばかなりの不安があるが、それでもヴィンガが助けになるのなら期待したいという気持ちもあった。
 ここでヴィンガは誇らしげに問いかけてくる。

「失礼ながら前もって、一つ確認させていただいてよろしいですか?」
「ええ。なんでも聞いてください」
「アルタシャ様はご自身の身を隠すためであれば、いかなる立場に身をやつす事も躊躇しないとうかがっておりますが、本当でしょうか?」
「それはあなたの言うとおりです」

 酷いときには首輪をはめられて連れ回されていた事もあるぐらいだからな(第八章)。
 オレにとってはむしろ『女英雄』として扱われる方が気分は良くないぐらいだ。

「やはりそうですか。船でも『見習い』のふりをなさっておいででしたし、それなら出来る事はあります」

 そこまでくるとオレにもだいたいの見当はつく。

「治療目的でこの聖地を訪れた病人のフリをしろという事ですか?」

 オレの返答を聞いて、ヴィンガは満足げにうなずく。

「さすがはアルタシャ様。ご聡明な判断です」
「しかし具体的にはどうするのですか?」
「このギルボック島には顔に火傷を負ったり、アザがついたりで、その治療のために訪れている人間もいます。そのような人ならば顔を隠していてもさほど不自然ではないのですよ」

 それは分かるが、常識的に考えて顔の治療のためにこの聖地までやってくる事が出来るのは、相当な金持ちか特権階級だろう。
 オレの場合は当然、そんな身元を保証してくれる人間などいない――アルタシャとして身元保証をしてくれる相手は幾らでもいるけどな。

「そこでアルタシャ様はあたしの紹介で治療に訪れたと言う事にすればいいのです。見習いとは言えあたしは聖女の端くれですからね。警備の人に問われても、あたしが話をすれば大抵の事は見逃してもらえますよ」

 なるほど。言っていることは分かる。
 聖女教会は女性しか正式な信徒にはせず、警備員のように男の力仕事を必要とする場合は、その男性を準信者という事で寺院の出入りを認めるが、ヴィンガのような最下級の見習い聖女であっても地位的には彼らよりも上なのだ。
 そのヴィンガが『顔の療養のために訪れたので、見せる事は出来ません』と言えば、よほどの事がない限り通してもらえるだろう。
 しかしそれでも気にかかることは幾つもあると思ったら、ヴィンガは先回りした様子でさらにたたみかけてくる。

「アルタシャ様のご様子からすると、今すぐにどこかに行くべきかという、明確な目的地が無いと見受けました」

 なんだって? ヴィンガは意外に鋭いな。

「あたしは見習い聖女として、これから赴任地を訪れます。ですからその旅に同行していただければ、少なくともその間は怪しまれる心配はありませんよ」
「あなたの赴任地とはどこですか?」

 オレは漠然と見習い聖女はギルボック島の大聖堂とか、そういう権威あるところで集まって全員で厳しい修行生活を送るものだと思っていたけど、どうも違う様子だ。
 まあこの島はかなり大きいから、幾つもの聖女教会の寺院や礼拝所があって、修行者もそれぞれ割り当てられているのだろうな。

「残念ですけど、詳しい事は存じません……あくまでも配属先についての書類をもらっているだけですから」

 そう言ってヴィンガは懐から書状を取り出す。
 どうやら港に上陸した時点で早くも修業先が決まっているらしい。
 もっとも幾ら聖女教会でも、その見習いの能力を即座に見抜いて適材適所で配置しているとは考えられないから、割り振りはかなり適当な気がしてくるな。
 電話もないこの世界では、そもそも事前にどこから何人くるのかの連絡も受けていない筈だから、やってくる前から欠員の出ているところをリストアップしていて、順番に割り当てているに違いない。
 ただそのあたりも出身寺院の影響が大きくて、有力な寺院の出身ならばエリートコースまっしぐらで、小さな寺院出身者は場末の小さな礼拝所送りとか、そんな現実があるかもしれないぞ。
 まあいずれにしてもここはヴィンガを信じて行動するしか手はないだろうな。

「分かりました。あなたの言うとおりにしましょう」
「ありがとうございます!」

 ううむ。オレと同行出来ると言う事で、ヴィンガは本当に嬉しそうだな。しかしこれは釘を刺しておかねなるまい。

「ヴィンガさん。念を押しておきますけど――」
「分かっていますよ」

 皆まで言うなとばかりにヴィンガは請け負う。

「アルタシャ様の事は決して口外致しません。すべてあたしの胸の内に秘めておきますからご心配なく。これは我らが偉大なる治癒の女神イロールの名にかけて誓いましょう」
「もちろんそれもありますが、もしかするとあなたの独断を咎められて、後で何らかの処罰があるかもしれませんよ?」

 何しろオレは明らかにギルボック島における聖女教会指導部を故意に無視して行動しているからな。
 たとえ向こうにオレと敵対する意志がなかったとしても、普通に考えてこれだけの勝手をしでかしておいて好意的に受け止める筈がない。
 当然、それに協力したヴィンガへの風当たりも強くなる危険性はある。
 ヴィンガに関してオレがもっとも心配しているのはそこなのだ。何しろ彼女はこれからも聖女教会の一員として生活するわけで、オレのせいでつまはじきにされるような事になったら申し訳が立たない。
 しかしヴィンガは堂々と胸を張る。

「そんな事はとっくに承知していますよ! どうせあたしはしがない田舎の寺院の出ですからね。修行を終えても出世なんて限られてます」

 ああ。やっぱり聖女教会もそのあたりは何ともシビアなものだ。

「それならたとえ微力でも、アルタシャ様のお役に立ったとなれば、あたしにとっては一生自慢のタネになりますよ」

 ううむ。このあたりはモルッカと相通じるところがあるな。
 ただヴィンガの協力をあくまで拒めば、オレの事を聖女教会に伝えられるかもしれないし――彼女の立場からすれば密告でも裏切りでもない――当面は言う通りにするべきなんだろうな。
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