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第24章 全てはアルタシャのために?
第1127話 秘密の道へ向かう
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ひとまず宮城に忍び込んでウァリウスに会うことにしたわけだが、当然ながら危険はいろいろと考えられる。
本当にオレが狙われた場合、イオがドラゴンに戻って暴れ回る可能性が高いのでむしろそちらの方が心配だが、逆に頼りにしている意識もある。
ウァリウスが心配なのは確かだが、自分がいざという時にイオの力を当てにしているのは否定出来ないところだ。
「とにかくその秘密の道にまで案内してもらえますか?」
「分かった。ただし言っておくが――」
「やっぱり危険があるのですね?」
その手の『秘密の道』に何もなくてただ進んでいるだけで、皇帝のところに行けるなんて都合のいい事はないだろう。
「残念ながらハッキリした事は分からんのじゃ。ただ守護者が存在しているのは間違い無いじゃろう」
何百年も使われていないから、とっくに忘れられているのか?
記録を文書にして残していないので、詳しい事は廷臣どころか皇帝本人も知らない可能性すらあるな。
いずれにしてもダンジョンになってしまっていて、何が待っているのかは分からない状態なのは確かだ。
もちろんそれでも行くけどな。その程度の話ならばオレが今まで直面してきた危機の数々に比べればモノの数ではないさ。
その場合、面倒なのはミツリーンとテセルだな。
こっそりと置き去りにしたいところだが、あの二人もそれを考えているはず。
マルキウスを連れて気付かれずにこの宿を出るのは無理だな。
それに不本意ながら『テセル達を頼らねばならない事情』がこっちにもある。
そんなわけでミツリーンとテセルに改めて事情を説明する。
「事情は分かりました。ならば私も共に行かせて下さい」
「この僕が行くのは当然だな」
こいつらを口で止めて聞くぐらいなら、オレを追いかけてここまで来る筈もないか。
「それではなるだけ急いで行きましょう」
「おや? てっきり反対されると思っていたのですが?」
ミツリーンは意外そうな表情を浮かべる。
「今さら止めても無駄でしょう。それに万が一の時にはお二人を頼りにしていますから」
「それはなんとありがたいお言葉でしょう」
「そんなの当たり前だな」
二人とも満足げに頷くが、残念ながらそういう話ではないのだ。
「いざとなればテセルとミツリーンさんでマルキウスさんを運んで欲しいんです」
何しろマルキウスはただの老人だからな。どう考えても地下道を通るに当たっては足手まといだ。
もちろんオレも魔法で支援するけど、限度というものがある。
危うくなればテセル達二人の『男手』を頼るしかない。
「「……」」
オレの意図が分かったので、二人ともかなり複雑な表情を浮かべているな。
そしてそれはマルキウスも同じのようだ。
「何を言うか……ワシもまだまだ若い者には負けんぞ」
「その心意気はありがたいですけど、無茶の出来る身体かどうかはご自身がよく分かっておられるでしょう?」
既に枯れた老人に背伸びをされても、こっちが迷惑です。
「どうせ老い先短い身じゃ。最後に一花咲かせるのだと思えば、何が起ころうと覚悟は出来ておるわ」
やっぱりそんな話になるか。だがそれであっても目の前で、知り合いに命を落とされるのは真っ平だ。
これはオレのワガママなのである。
「自分で老人だと思っておられるなら、むしろ若い人たちを頼るべきでしょう。それもまた老人のつとめというものですよ」
「ふう……相変わらずお前さんはこんな老人も心配してくれるのじゃな。大陸中にその名を轟かせる『癒やしの女神の化身』がワシごときを気にかけてくれた事はあの世で自慢話にさせてもらうぞ」
「それはずっと先の話にして下さい。今は皇帝陛下を助ける事でしょう?」
そんなわけでオレ達一行は、マルキウスと共に宮城の隠し通路に向かう。
当たり前だがその出入り口が簡単に発見できる場所にあるはずがなく、向かう先はどんどんと辺鄙な街はずれとなる。
このノチェットはマニリア帝国の衰退と混乱により、一年前には人口は最盛期の半分程度にまで減っていた。
ウァリウス皇帝の統治によりある程度は人口も回復している様子だが、それでも中心部から離れるとゴーストタウンと化した古い街並みが広がっている。
この世界の場合、本当に亡霊が集う『ゴーストタウン』である事も珍しく無いから、余計に人は近づかなくなるのだ。
「爺さん。いったいどこまで行くんだい?」
テセルはすでに駆けずり回っているので、疲れた様子で問いかける。
既にオレの存在は察知されていて、亡霊まで送り込まれている以上、時間をかけるわけにはいかないのだから仕方ない。
ただ途中で幾度か上空から見下ろす『鷹の目』などの魔法を使って、尾行者がいないかどうか確認はしたが、そのような相手は今のところ見つかっていない。
亡霊は使っても、オレの居場所まではつかんでいないと思いたい。
しばらく進むと周囲はかなり寂れ、荒れた墓地になっているようだ。
「ここはかつて帝国のために戦い、命を落とした英霊達の眠る墓地じゃ。帝国への忠誠篤き者共の魂が集っておる」
そんな英霊の墓地がこんな状態とは、まだまだこの国が再建途中である現実を示してくれるものだけど、そこでマルキウスは一つの霊廟に向けて歩き出した。
本当にオレが狙われた場合、イオがドラゴンに戻って暴れ回る可能性が高いのでむしろそちらの方が心配だが、逆に頼りにしている意識もある。
ウァリウスが心配なのは確かだが、自分がいざという時にイオの力を当てにしているのは否定出来ないところだ。
「とにかくその秘密の道にまで案内してもらえますか?」
「分かった。ただし言っておくが――」
「やっぱり危険があるのですね?」
その手の『秘密の道』に何もなくてただ進んでいるだけで、皇帝のところに行けるなんて都合のいい事はないだろう。
「残念ながらハッキリした事は分からんのじゃ。ただ守護者が存在しているのは間違い無いじゃろう」
何百年も使われていないから、とっくに忘れられているのか?
記録を文書にして残していないので、詳しい事は廷臣どころか皇帝本人も知らない可能性すらあるな。
いずれにしてもダンジョンになってしまっていて、何が待っているのかは分からない状態なのは確かだ。
もちろんそれでも行くけどな。その程度の話ならばオレが今まで直面してきた危機の数々に比べればモノの数ではないさ。
その場合、面倒なのはミツリーンとテセルだな。
こっそりと置き去りにしたいところだが、あの二人もそれを考えているはず。
マルキウスを連れて気付かれずにこの宿を出るのは無理だな。
それに不本意ながら『テセル達を頼らねばならない事情』がこっちにもある。
そんなわけでミツリーンとテセルに改めて事情を説明する。
「事情は分かりました。ならば私も共に行かせて下さい」
「この僕が行くのは当然だな」
こいつらを口で止めて聞くぐらいなら、オレを追いかけてここまで来る筈もないか。
「それではなるだけ急いで行きましょう」
「おや? てっきり反対されると思っていたのですが?」
ミツリーンは意外そうな表情を浮かべる。
「今さら止めても無駄でしょう。それに万が一の時にはお二人を頼りにしていますから」
「それはなんとありがたいお言葉でしょう」
「そんなの当たり前だな」
二人とも満足げに頷くが、残念ながらそういう話ではないのだ。
「いざとなればテセルとミツリーンさんでマルキウスさんを運んで欲しいんです」
何しろマルキウスはただの老人だからな。どう考えても地下道を通るに当たっては足手まといだ。
もちろんオレも魔法で支援するけど、限度というものがある。
危うくなればテセル達二人の『男手』を頼るしかない。
「「……」」
オレの意図が分かったので、二人ともかなり複雑な表情を浮かべているな。
そしてそれはマルキウスも同じのようだ。
「何を言うか……ワシもまだまだ若い者には負けんぞ」
「その心意気はありがたいですけど、無茶の出来る身体かどうかはご自身がよく分かっておられるでしょう?」
既に枯れた老人に背伸びをされても、こっちが迷惑です。
「どうせ老い先短い身じゃ。最後に一花咲かせるのだと思えば、何が起ころうと覚悟は出来ておるわ」
やっぱりそんな話になるか。だがそれであっても目の前で、知り合いに命を落とされるのは真っ平だ。
これはオレのワガママなのである。
「自分で老人だと思っておられるなら、むしろ若い人たちを頼るべきでしょう。それもまた老人のつとめというものですよ」
「ふう……相変わらずお前さんはこんな老人も心配してくれるのじゃな。大陸中にその名を轟かせる『癒やしの女神の化身』がワシごときを気にかけてくれた事はあの世で自慢話にさせてもらうぞ」
「それはずっと先の話にして下さい。今は皇帝陛下を助ける事でしょう?」
そんなわけでオレ達一行は、マルキウスと共に宮城の隠し通路に向かう。
当たり前だがその出入り口が簡単に発見できる場所にあるはずがなく、向かう先はどんどんと辺鄙な街はずれとなる。
このノチェットはマニリア帝国の衰退と混乱により、一年前には人口は最盛期の半分程度にまで減っていた。
ウァリウス皇帝の統治によりある程度は人口も回復している様子だが、それでも中心部から離れるとゴーストタウンと化した古い街並みが広がっている。
この世界の場合、本当に亡霊が集う『ゴーストタウン』である事も珍しく無いから、余計に人は近づかなくなるのだ。
「爺さん。いったいどこまで行くんだい?」
テセルはすでに駆けずり回っているので、疲れた様子で問いかける。
既にオレの存在は察知されていて、亡霊まで送り込まれている以上、時間をかけるわけにはいかないのだから仕方ない。
ただ途中で幾度か上空から見下ろす『鷹の目』などの魔法を使って、尾行者がいないかどうか確認はしたが、そのような相手は今のところ見つかっていない。
亡霊は使っても、オレの居場所まではつかんでいないと思いたい。
しばらく進むと周囲はかなり寂れ、荒れた墓地になっているようだ。
「ここはかつて帝国のために戦い、命を落とした英霊達の眠る墓地じゃ。帝国への忠誠篤き者共の魂が集っておる」
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