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第24章 全てはアルタシャのために?
第1159話 女神の宣告を受けて
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気がつくと眼前には大勢の聖女達が集まり、驚愕にその目を見開いていた。
「これは……いったい……」
「いったい何事でしょうか?」
この光景は『神の領域』に高位の信徒が呼び寄せられた状態だ。見た限りでは数十人はいるだろうか。
いきなりだったらしく聖女達はお互いを見合わせている。
もちろん険悪な者同士も大勢いるはずだが、いきなり争いを始める状況ではないようだ。
何しろ目の前には彼女達が崇拝する治癒の女神イロールの姿が燦然と輝いているのだから。
「我らが女神のご降臨です! 皆の者、ひざまずきなさい!」
大司祭らしき服をまとった中年の女性が叫ぶと、他の聖女達も慌ててひざまずく。
それを見てイロールも満足げに微笑む。
「皆が健壮で何よりです。わたくしも嬉しいですよ」
「そのようなお優しき言葉をいただき感謝に身が張り裂ける思いでございます!」
大司祭をはじめ信徒の殆どは感極まった様子だ。
イロールがつい先ほどオレに見せた『親バカ』ぶりを知らなければ、これが正しい反応なのだろうな。
「失礼ながら、そちらのお方はもしや――」
「そうです。我が娘、アルタシャです」
「おお! やはりそうですか! ご高名はかねがねうかがっております」
大司祭は嬉しげな表情を浮かべるが、他の聖女の中には眉をひそめる者が少なくない。
間違い無くオレが『男子でも回復魔法が使えるようにした』事について反発している聖女達だな。
とりあえず不満の声が発せられる前にオレも頭を下げる。
「アルタシャです。よろしくお願いします」
「我が娘のこれまでの功績は皆も知っている事でしょう。特に男にも回復魔法を男子にも開いた事はこのわたくしにとっても誇りです」
イロールの宣告に対し、大司祭とその周囲の聖女達は明らかに勝ち誇った表情を見せて、正反対に沈痛な顔の聖女達に視線を向けていた。
「皆の中に意見の違いがあることは重々承知しています。しかしそれを乗り越え、苦しむ人々を助けるために一丸となって下さいますか?」
そう言ってイロールは憮然とした顔の聖女に近づく。
ちなみにその聖女はオレの方には視線を向けようともしない。明らかに故意に無視する構えだな。
「どうしました? 浮かぬ表情ですね」
「い、いえ。決してそのような事は――」
「何か悩みがおありですか? もしも相談があるのならばこのイロールが応じましょう。何でも言って下さい」
「それは……私ごときに対し身に余る光栄でございます」
声をかけられた聖女はゴクリと唾を飲み込み、そして口を開く。
「我が女神は回復魔法は女性のみという、千年に渡って受け継がれた伝統を変える事を望まれておられるのでしょうか?」
「もちろんですとも。これからは男子もあなた方と同じ癒やし手として、我が教団の仲間となる事をわたくしは喜んで受け入れます」
「さようでございますか……」
あからさまに落胆した空気が漂うな。
恐らくは『回復魔法は女性だけ』について自分達は『それこそがイロールの神命』だと言い張っていたのだろうな。
それを対立する派閥の目の前で、当の女神から完全に否定されたのだ。
少なくともこれでフォンリット帝国における聖女教会は男子も認める事が決定的となっただろう。
そしてここでイロールは優しげに、だが確固たる意志を込めて宣言する。
「今までは我が言葉が足りなかった事で皆に無用な混乱を招いてしまいました。今後はこれまでの軋轢を忘れて、我が信徒が全員、力を合わせて教団をもり立て、苦しんでいる人を助けて下さい」
「はは! 神命をありがたく承ります!」
「それともう一つ頼みがあります。これからは我が娘、アルタシャをこのわたくしと等しく皆で力を合わせて助けて下さい」
「かしこまりました。アルタシャ様をあなた様の代理として、我らは一丸となってお助けしましょう」
やった。これで少なくともこの国の聖女教会はオレの味方になってくれる筈だ。
正直なところますます聖女教会に深入りしてしまったと思わずにはいられないが、今は背に腹は代えられない。
もちろん神造者の力はまだまだ圧倒的で、聖女教会と言えど正面から太刀打ちする事は出来ないが、それでも交渉の材料にはなるはずだ。
「感謝します。それでは皆はまた俗世にお戻りなさい」
イロールの言葉と供に、神界の領域が薄れ始める。
「我が娘よ。しばしの別れですね……名残惜しいです」
女神様は妙に涙ぐんでいないか?
母と呼んだだけで何ともチョロい気もするが、取りあえず目的は果たしたと思うしか無いか。
気がつくと周囲は改めて白い大寺院であり、正面にはイロールの大きな神像がそびえていた――先ほど神界で見たものに比べると貧相に見えるが、普通の信徒からすれば女神を象徴する偉大なる存在なのは間違い無い。
どうやら現世に戻ってきたようだな。ここにいる聖女の人数は十人ほどで、先ほどよりも少ないが減った人数は別のところにいるのだろう。
そして満足げな大司祭はオレに話しかけてくる。
「アルタシャ様。是非とも我らと供に会衆の前に出て、そのお言葉をいただけませんか?」
「いえ。わたしにはこれからやらねばならないことがあります」
「そうですか……それも我らがイロールの神命とあらば致し方ありませんが、助力は最優先でさせていただきますとも!」
いや。実際には神命ではなくオレの都合なのですけどね。
その大司祭の喜びが、大勢の人間を救ったからではなく、聖女教会の内紛に勝利した事によるものなのはオレにとってもちょっとばかり複雑な気分だよ。
「これは……いったい……」
「いったい何事でしょうか?」
この光景は『神の領域』に高位の信徒が呼び寄せられた状態だ。見た限りでは数十人はいるだろうか。
いきなりだったらしく聖女達はお互いを見合わせている。
もちろん険悪な者同士も大勢いるはずだが、いきなり争いを始める状況ではないようだ。
何しろ目の前には彼女達が崇拝する治癒の女神イロールの姿が燦然と輝いているのだから。
「我らが女神のご降臨です! 皆の者、ひざまずきなさい!」
大司祭らしき服をまとった中年の女性が叫ぶと、他の聖女達も慌ててひざまずく。
それを見てイロールも満足げに微笑む。
「皆が健壮で何よりです。わたくしも嬉しいですよ」
「そのようなお優しき言葉をいただき感謝に身が張り裂ける思いでございます!」
大司祭をはじめ信徒の殆どは感極まった様子だ。
イロールがつい先ほどオレに見せた『親バカ』ぶりを知らなければ、これが正しい反応なのだろうな。
「失礼ながら、そちらのお方はもしや――」
「そうです。我が娘、アルタシャです」
「おお! やはりそうですか! ご高名はかねがねうかがっております」
大司祭は嬉しげな表情を浮かべるが、他の聖女の中には眉をひそめる者が少なくない。
間違い無くオレが『男子でも回復魔法が使えるようにした』事について反発している聖女達だな。
とりあえず不満の声が発せられる前にオレも頭を下げる。
「アルタシャです。よろしくお願いします」
「我が娘のこれまでの功績は皆も知っている事でしょう。特に男にも回復魔法を男子にも開いた事はこのわたくしにとっても誇りです」
イロールの宣告に対し、大司祭とその周囲の聖女達は明らかに勝ち誇った表情を見せて、正反対に沈痛な顔の聖女達に視線を向けていた。
「皆の中に意見の違いがあることは重々承知しています。しかしそれを乗り越え、苦しむ人々を助けるために一丸となって下さいますか?」
そう言ってイロールは憮然とした顔の聖女に近づく。
ちなみにその聖女はオレの方には視線を向けようともしない。明らかに故意に無視する構えだな。
「どうしました? 浮かぬ表情ですね」
「い、いえ。決してそのような事は――」
「何か悩みがおありですか? もしも相談があるのならばこのイロールが応じましょう。何でも言って下さい」
「それは……私ごときに対し身に余る光栄でございます」
声をかけられた聖女はゴクリと唾を飲み込み、そして口を開く。
「我が女神は回復魔法は女性のみという、千年に渡って受け継がれた伝統を変える事を望まれておられるのでしょうか?」
「もちろんですとも。これからは男子もあなた方と同じ癒やし手として、我が教団の仲間となる事をわたくしは喜んで受け入れます」
「さようでございますか……」
あからさまに落胆した空気が漂うな。
恐らくは『回復魔法は女性だけ』について自分達は『それこそがイロールの神命』だと言い張っていたのだろうな。
それを対立する派閥の目の前で、当の女神から完全に否定されたのだ。
少なくともこれでフォンリット帝国における聖女教会は男子も認める事が決定的となっただろう。
そしてここでイロールは優しげに、だが確固たる意志を込めて宣言する。
「今までは我が言葉が足りなかった事で皆に無用な混乱を招いてしまいました。今後はこれまでの軋轢を忘れて、我が信徒が全員、力を合わせて教団をもり立て、苦しんでいる人を助けて下さい」
「はは! 神命をありがたく承ります!」
「それともう一つ頼みがあります。これからは我が娘、アルタシャをこのわたくしと等しく皆で力を合わせて助けて下さい」
「かしこまりました。アルタシャ様をあなた様の代理として、我らは一丸となってお助けしましょう」
やった。これで少なくともこの国の聖女教会はオレの味方になってくれる筈だ。
正直なところますます聖女教会に深入りしてしまったと思わずにはいられないが、今は背に腹は代えられない。
もちろん神造者の力はまだまだ圧倒的で、聖女教会と言えど正面から太刀打ちする事は出来ないが、それでも交渉の材料にはなるはずだ。
「感謝します。それでは皆はまた俗世にお戻りなさい」
イロールの言葉と供に、神界の領域が薄れ始める。
「我が娘よ。しばしの別れですね……名残惜しいです」
女神様は妙に涙ぐんでいないか?
母と呼んだだけで何ともチョロい気もするが、取りあえず目的は果たしたと思うしか無いか。
気がつくと周囲は改めて白い大寺院であり、正面にはイロールの大きな神像がそびえていた――先ほど神界で見たものに比べると貧相に見えるが、普通の信徒からすれば女神を象徴する偉大なる存在なのは間違い無い。
どうやら現世に戻ってきたようだな。ここにいる聖女の人数は十人ほどで、先ほどよりも少ないが減った人数は別のところにいるのだろう。
そして満足げな大司祭はオレに話しかけてくる。
「アルタシャ様。是非とも我らと供に会衆の前に出て、そのお言葉をいただけませんか?」
「いえ。わたしにはこれからやらねばならないことがあります」
「そうですか……それも我らがイロールの神命とあらば致し方ありませんが、助力は最優先でさせていただきますとも!」
いや。実際には神命ではなくオレの都合なのですけどね。
その大司祭の喜びが、大勢の人間を救ったからではなく、聖女教会の内紛に勝利した事によるものなのはオレにとってもちょっとばかり複雑な気分だよ。
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