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「やっぱり人多いな」
「・・・そだね」
あの後すぐにフードコートに着いたのだが、まだ昼前にも関わらず大勢の人が居たため、4人席が取れずに僕と玲奈、京夜と瑠衣で分かれて昼飯を食べることになった。
僕は悩みに悩んだ末に結局ハンバーガー屋を選び、照り焼きバーガーとポテトにアップルジュースを付けたセットを頼み、玲奈も同じ店でチーズバーガーとコーラを頼んでいた。
「玲奈の言ってた通りあいつ強え~わ。ありゃなかなか厳しいな」
ポテトをつまみつつ僕は玲奈に向けてそう言う。
「僕の能力じゃ玲奈みたいな攻略法は使えないし、勝ち上がり戦で当たったらどうするかな」
一昨年の大会で、玲奈たち2区がどうやって星乃を倒して優勝したのかというと、答えは簡単でゴリ押しだ。
星乃の能力を破れるほどに強い力を放つ能力を星乃に当てればいい。
玲奈の場合は仲間と協力することでそれを実現させることが出来たため勝てたと言える。
ただ、大会のルールは毎年変わり、玲奈の年は3人チームのトーナメント戦だったためそれでいけたが、今年のルールである勝ち上がり戦では、僕たち2区のメンバーの誰かがタイマンで星乃を破らなければならない。
星乃が能力に頼っているような奴なら僕でも勝てるが、先程戦った感じ僕と同等くらいの身体能力を持っていることが分かった。
身体能力が互角なら、能力が戦闘向きの星乃の方が圧倒的に有利なため、僕が勝つのはなかなかに厳しいのではないだろうか。
「京夜は、なんか勝てそうだよな」
「・・・まあ」
京夜の弾丸を避けるのはかなり難しい。実際、長いこと京夜の能力を見てきた僕でもギリギリ躱せるくらいなため、防御系の能力じゃない奴が相手なら大体勝てる。
星乃と戦った場合は弾丸に触れられて能力を使われない限りは勝てるだろう。
「環は・・・どうだろうな?」
環がいくら能力を使って攻撃しても、星乃の反応速度を超えるくらい速くなければ能力を使われて無効化される気がする。
その上あいつは経験が足りないため、とっさの判断が遅れる可能性がある。
「厳しいかもな」
「京夜に任せよ・・・」
僕と玲奈は同時に「星乃は京夜に任せよう」という結論に行きつき、残りのポテトを2人で分けて食べ切る。
「あの、お願いがあるんですが」
「ん?」
突然話しかけられ、僕は声がした方向を見る。
そこには綺麗な長い黒髪が特徴的なスーツを着た女性が立っていた。
「どちら様ですか?」
その女性に見覚えが無かったため、僕はそう質問する。
「・・・環の付き人の佐々木さん」
その質問に答えたのは黒髪の女性ではなく玲奈だった。
「佐々木さん?が何の用ですか?」
環の付き人に頼み事をされるようなことがあるのか脳内で考えるが、思い当たる節が1つもない。
「環を、兄の碧と戦わせて上げて欲しいんですが!」
「そりゃまた何で?」
1つの疑問が解消され、また新たに1つの疑問が生まれた僕は再度佐々木さんに聞いてみる。
「環は、ずっと兄の碧に対して劣等感を抱いていました。でも、兄に追いつくために並々ならぬ努力を続けてきました。だから環には、この大規模な大会で兄に勝って劣等感を完全に振り払って欲しいんです」
「なるほどね」
なんか複雑な事情があるようだが、そこに踏み込むのはやめておこうと思う。
「まあいいですよ、そんなこと言われたら断れるわけないでしょう」
「ほんとにありがとうございます!」
ただ、逆にこの大舞台で兄に敗北すれば環の劣等感は更に強くなる気がするため、佐々木さんは必ず環が勝つと信じている事が分かる。
「じゃ、控え室に行って皆で作戦会議してくるわ!」
「・・・がんばれ」
僕は残り少ないアップルジュースをストローで飲み干して席を立ち、控え室に向かって走り出す。
「ということで作戦会議だ!」
それから1時間ほど経って2区のメンバー全員が集まり、僕のそんな合図で作戦会議が始まる。
決勝の勝ち上がり戦は直前まで相手の順番が分からないため、相手の出方を予想しつつ、こちらも順番を決める必要がある。
相手視点から見たら、僕は星乃に能力を明かしたことで能力がバレているし、環もまあバレていると思う。
そのため相手は唯一、能力の詳細が分からない京夜を最も警戒しているだろう。
「京夜が一番警戒されていると考えると、環の兄が最後に来るだろうな」
「4区の2人に俺の能力を見定めさせる気だろうな。あと、嶽本とかいうやつとは相性が悪いから、俺的には出来ればそいつと戦うのは避けたい。」
確かに、メインが遠距離の京夜にとって、遠距離攻撃を反射してくる嶽本は相性が悪いな。
それなら、尚更京夜が最後でいい気がする。
そこで僕は先程の佐々木さんの言葉を思い出す。
佐々木さんは、「環に兄に勝って劣等感を完全に振り払って欲しいんです」と言っていた。
だから星乃を倒すのは環、環が負けたときの保険で最後に京夜。
これが一番理想的な順番ではないのだろうか?
そうなると環を万全の状態で星乃と戦わせるため、必然的に僕が1番目になる。
「京夜は最後で確定。僕と環の順番はどっちでもほぼ関係ないけど、僕が先に行かせてくれないか?」
「いいぞ、零ならかなり暴れられるだろうしな」
「まあな」
僕はそう言いながら環にピースサインを送る。
「なら決まったな。零が一番、次が環で最後が俺だ」
「よ~し、じゃあ行ってくるわ!」
順番が綺麗に決まり、僕はその順番を受け付けで登録しに行くために、部屋の扉を開けて部屋を出る。
決勝戦が始まる。
僕はステージの上で色々と考える。
始めは強いと噂の星乃と戦うため、この大会に参加していた。
だが気づけばこの大会で優勝したいと思うようになっていた。
ふざけながらも一応負けないようにはしていたし、環の舞台を整えるがそれが出来るのは最後に京夜が居るからこそだ。
京夜なら必ず勝って優勝をとれると信じているからこそだ。
とにかく僕がすべきなのは環の舞台を整えることだ。
4区の2人を倒して対等な状態で環と星乃を戦わせることだ。
『決勝、勝ち上がり戦をしていきたいと思います!』
相手の順番は、予想通り星乃が最後で、1番目が嶽本、2番目が杉野だ。
バトルステージは75m四方のコンクリートで出来た更地だ。
ステージに立つ僕の目の前には対戦相手の嶽本が立っている。
『それでは、レディ___』
僕と嶽本は互いに構え、相手を注視する。
『ゴー!』
その合図と共に決勝の1戦目が始まる。
「・・・そだね」
あの後すぐにフードコートに着いたのだが、まだ昼前にも関わらず大勢の人が居たため、4人席が取れずに僕と玲奈、京夜と瑠衣で分かれて昼飯を食べることになった。
僕は悩みに悩んだ末に結局ハンバーガー屋を選び、照り焼きバーガーとポテトにアップルジュースを付けたセットを頼み、玲奈も同じ店でチーズバーガーとコーラを頼んでいた。
「玲奈の言ってた通りあいつ強え~わ。ありゃなかなか厳しいな」
ポテトをつまみつつ僕は玲奈に向けてそう言う。
「僕の能力じゃ玲奈みたいな攻略法は使えないし、勝ち上がり戦で当たったらどうするかな」
一昨年の大会で、玲奈たち2区がどうやって星乃を倒して優勝したのかというと、答えは簡単でゴリ押しだ。
星乃の能力を破れるほどに強い力を放つ能力を星乃に当てればいい。
玲奈の場合は仲間と協力することでそれを実現させることが出来たため勝てたと言える。
ただ、大会のルールは毎年変わり、玲奈の年は3人チームのトーナメント戦だったためそれでいけたが、今年のルールである勝ち上がり戦では、僕たち2区のメンバーの誰かがタイマンで星乃を破らなければならない。
星乃が能力に頼っているような奴なら僕でも勝てるが、先程戦った感じ僕と同等くらいの身体能力を持っていることが分かった。
身体能力が互角なら、能力が戦闘向きの星乃の方が圧倒的に有利なため、僕が勝つのはなかなかに厳しいのではないだろうか。
「京夜は、なんか勝てそうだよな」
「・・・まあ」
京夜の弾丸を避けるのはかなり難しい。実際、長いこと京夜の能力を見てきた僕でもギリギリ躱せるくらいなため、防御系の能力じゃない奴が相手なら大体勝てる。
星乃と戦った場合は弾丸に触れられて能力を使われない限りは勝てるだろう。
「環は・・・どうだろうな?」
環がいくら能力を使って攻撃しても、星乃の反応速度を超えるくらい速くなければ能力を使われて無効化される気がする。
その上あいつは経験が足りないため、とっさの判断が遅れる可能性がある。
「厳しいかもな」
「京夜に任せよ・・・」
僕と玲奈は同時に「星乃は京夜に任せよう」という結論に行きつき、残りのポテトを2人で分けて食べ切る。
「あの、お願いがあるんですが」
「ん?」
突然話しかけられ、僕は声がした方向を見る。
そこには綺麗な長い黒髪が特徴的なスーツを着た女性が立っていた。
「どちら様ですか?」
その女性に見覚えが無かったため、僕はそう質問する。
「・・・環の付き人の佐々木さん」
その質問に答えたのは黒髪の女性ではなく玲奈だった。
「佐々木さん?が何の用ですか?」
環の付き人に頼み事をされるようなことがあるのか脳内で考えるが、思い当たる節が1つもない。
「環を、兄の碧と戦わせて上げて欲しいんですが!」
「そりゃまた何で?」
1つの疑問が解消され、また新たに1つの疑問が生まれた僕は再度佐々木さんに聞いてみる。
「環は、ずっと兄の碧に対して劣等感を抱いていました。でも、兄に追いつくために並々ならぬ努力を続けてきました。だから環には、この大規模な大会で兄に勝って劣等感を完全に振り払って欲しいんです」
「なるほどね」
なんか複雑な事情があるようだが、そこに踏み込むのはやめておこうと思う。
「まあいいですよ、そんなこと言われたら断れるわけないでしょう」
「ほんとにありがとうございます!」
ただ、逆にこの大舞台で兄に敗北すれば環の劣等感は更に強くなる気がするため、佐々木さんは必ず環が勝つと信じている事が分かる。
「じゃ、控え室に行って皆で作戦会議してくるわ!」
「・・・がんばれ」
僕は残り少ないアップルジュースをストローで飲み干して席を立ち、控え室に向かって走り出す。
「ということで作戦会議だ!」
それから1時間ほど経って2区のメンバー全員が集まり、僕のそんな合図で作戦会議が始まる。
決勝の勝ち上がり戦は直前まで相手の順番が分からないため、相手の出方を予想しつつ、こちらも順番を決める必要がある。
相手視点から見たら、僕は星乃に能力を明かしたことで能力がバレているし、環もまあバレていると思う。
そのため相手は唯一、能力の詳細が分からない京夜を最も警戒しているだろう。
「京夜が一番警戒されていると考えると、環の兄が最後に来るだろうな」
「4区の2人に俺の能力を見定めさせる気だろうな。あと、嶽本とかいうやつとは相性が悪いから、俺的には出来ればそいつと戦うのは避けたい。」
確かに、メインが遠距離の京夜にとって、遠距離攻撃を反射してくる嶽本は相性が悪いな。
それなら、尚更京夜が最後でいい気がする。
そこで僕は先程の佐々木さんの言葉を思い出す。
佐々木さんは、「環に兄に勝って劣等感を完全に振り払って欲しいんです」と言っていた。
だから星乃を倒すのは環、環が負けたときの保険で最後に京夜。
これが一番理想的な順番ではないのだろうか?
そうなると環を万全の状態で星乃と戦わせるため、必然的に僕が1番目になる。
「京夜は最後で確定。僕と環の順番はどっちでもほぼ関係ないけど、僕が先に行かせてくれないか?」
「いいぞ、零ならかなり暴れられるだろうしな」
「まあな」
僕はそう言いながら環にピースサインを送る。
「なら決まったな。零が一番、次が環で最後が俺だ」
「よ~し、じゃあ行ってくるわ!」
順番が綺麗に決まり、僕はその順番を受け付けで登録しに行くために、部屋の扉を開けて部屋を出る。
決勝戦が始まる。
僕はステージの上で色々と考える。
始めは強いと噂の星乃と戦うため、この大会に参加していた。
だが気づけばこの大会で優勝したいと思うようになっていた。
ふざけながらも一応負けないようにはしていたし、環の舞台を整えるがそれが出来るのは最後に京夜が居るからこそだ。
京夜なら必ず勝って優勝をとれると信じているからこそだ。
とにかく僕がすべきなのは環の舞台を整えることだ。
4区の2人を倒して対等な状態で環と星乃を戦わせることだ。
『決勝、勝ち上がり戦をしていきたいと思います!』
相手の順番は、予想通り星乃が最後で、1番目が嶽本、2番目が杉野だ。
バトルステージは75m四方のコンクリートで出来た更地だ。
ステージに立つ僕の目の前には対戦相手の嶽本が立っている。
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僕と嶽本は互いに構え、相手を注視する。
『ゴー!』
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