しぇあはうす!

ミースケ

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結希編

【結希編】#1 仮面

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 仮面を被ると決めた。
 はるかさんが死んだあの日から。
「俺の……いや、"僕"はあいつらを幸せにしないといけないんだ……」
 僕は上手くやれているのだろうか?
 どうですか?はるかさん。
 陽向は、自堕落で乱暴だが僕の事をずっと気にかけてくれていて、何より僕の"本質"を知った上でこんな僕の事を好きでいてくれている。まあ、なんだかんだ言って良いやつだ。
 黎奈は、家族を失い絶望を味わって表情が死んでしまっていたが、最近は少しずつ笑顔を始めとする喜怒哀楽の感情を出力できる様になってきている。心を閉ざしていた黎奈に対して根気強く接してきた成果が出てるというものだ。
 琉輝は、相変わらず毎日VTuberとしての活動を頑張っているが、最近はリビングにも顔を出したり家事を手伝ってくれたりと、少しずつでも前に進もうと努力している。そして、いじめられていた過去を乗り越えようとしている様子を見ていると、どうしても応援したくなってくる。
 そして結希は………結希は?思えば僕は結希の事をあまり知らない様な気がする。
 結希は確かにいい子だ。それは間違いない。誰にでも明るく接し、家事や手伝いも積極的に行ってくれるし、空気も読んでくれる。
 そう"いい子"過ぎるのだ。
 そんな結希からは、どこか僕と同じ様な雰囲気を感じる……"自分を偽って仮面を被っている"そんな人間の雰囲気を___



しぇあはうす! 【最終章】



 8月も中旬に差し掛かった頃、夏の暑さも最高潮に達そうとしていた。各地で今年の最高気温更新のニュース等が流れ、僕たちが住んでいる地域も例に漏れず、刺すような太陽の日差しに狙われていた。
「にしても暑いな……こりゃアイスも一瞬で溶けるぞ……?」
 僕はいつものように陽向のパシリついでにアイスを買い、いつものように家に帰ってから食べようとそう思った。しかし、今日の気温では棒付きアイスはおろかカップのアイスでさえも、およそ5分と保たずに溶け切ってドロドロの液体となってしまうであろう事が明白だった。
 そのため僕は、いつものスーパー近くにある公園の陰で買ったアイスをさっさと食べてしまおうと思った。
「もし今日陽向が外に出たらアイスみたいに溶け切っちゃうんじゃないか?ハハッ……それかドライフルーツみたいに干からびるかだな」
 僕はそんな独り言を呟きながら公園の隅に植えられている大きな木の影の中に入って、日光が遮断されたのを確認してからアイスを取り出す。
 此処までの道のりで極力アイスが日光に当たらないように頑張った。それはもう頑張り過ぎて挙動が不審者の様になってしまうほどに。
「んんっ……やっぱりアイスと言えば棒付きだよなぁ……!」
 そう、そこまでして溶けないように必死だったのは僕が買ったアイスがカップではなく棒付きの方だったからだ。カップならば日光を遮らずとも急いで公園まで行けば問題無いだろう。しかし棒付きアイスはその面積の少なさに加え、少し溶けただけでも致命傷になりうる性質上、ただ急ぐだけでは無く「太陽光が当たらないように遮る」必要があったのだ。
「……やっぱり美味いな」
 そんな激闘の末だからか、いつも食べているはずのソーダ味の棒付きアイスがいつもよりも数段と美味しく感じられた。
「お、あれは……お~い、結希~!」
 僕がアイスを食べていると、公園の横を通り過ぎようとしている人影が目に入り、それをよく見ると結希だったので僕は大きく手を振りながら声を掛ける。
「あ!お兄ちゃん、こんにちは!奇遇ですね、こんな所で会うなんて珍しい~!」
「確かにそうだな。いつもはここには寄らずにすぐに帰るからな」
 僕に気が付いたらしい結希は笑顔を浮かべながら駆け足でこちらに向かってくる。その様子は何処か小動物感があってとても可愛い。
「あ、お兄ちゃんアイスを食べてるんですねぇ……ねっ!私の分も無いですか!?」
「悪いがアイスは僕の分しか買ってないんだ。ごめんな結希。代わりにこのハイチュウをあげよう」
 僕はそう言うと左手にぶら下げているビニール袋からハイチュウを取り出して結希に手渡す。
「わぁ!ありがとうございますお兄ちゃん!美味しく頂きますねっ!」
 結希はそう言うと、再び駆け足で僕の前から姿を消した。
「嵐みたいだったなぁ……」
 再び一人になった僕は、そう呟きながら食べ終わったアイスの棒に視線を向ける。そこに書かれていた文字は「ハズレ」。僕はアイス棒をゴミ箱に捨てて帰路につくのだった___
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