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陽向編
【陽向編】#4 最低な男
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「陽向、飯でも行かね?」
ある日の昼、僕は陽向にそんな話を持ち掛けていた。というのも、現在時刻は12時前で家には僕と陽向しかいないのだ。玲奈と有希は何処かへ出掛けたし、琉輝はまだ寝てるしな。
「別に良いけど……珍しいわね、あんたから誘ってくるなんて。私とあんたは基本家でゴロゴロしてるから、2人きりになるとまず外へ出ないのよねぇ~」
「まあ、僕は陽向のパシリにされてちょいちょい出ていってるけどな」
陽向はソファに寝転がり、横画面のスマホを両手で持ってポチポチと操作している。どうやら最近はソシャゲというやつにハマっているのかもしれないな。
「で、結局行くのか?行かないのか?」
ササッと身支度を済ませた僕は、安物の肩掛けバックを身体に掛ける。
「別に行かないなんて言ってないでしょ!?行くわよ!行く!」
「ハハッ、そうか。なら早く準備してくれ」
僕はそう言って、陽向の支度が終わるまで椅子に腰掛けて待つのだった。
「……で、ファミレスと」
「なんだ?文句でもあるのか?」
飯を食いに行くと言ったものの、特に何を食べるかに関しては一切決めていなかったため、数分悩んだ。その結果、無難にファミレスという事になった。
入店して席に案内された僕たちは互いに向かい合う形で座る。陽向は右手の肘をテーブルの上に置き、頬杖を付いて不満そうな顔で僕の方をジッ…と見つめてくる。
「そんなに見つめられると照れるじゃないか///」
「はぁ……何バカな事言ってんのよ。棒読みなのよ、感情が籠もってないわ」
「俺は2年前に感情を失った男……!我が名は遠江駿!」
「何言ってんのよ。縁起でもないわね……はぁぁぁ……」
陽向は目を瞑ってゆっくりと息を吐く。数秒の間を開けた後に再び目を開き、「デートに連れてってくれるのかと思ったのになぁ……」と少し物悲しげに呟く。
「ん?今なんて?」
「何でも無いわよ!」
僕はその言葉を敢えて聞こえなかったフリをする。
「そう言えば、駿と二人きりで何かを食べに行くなんていつぶりかしらね?」
「確かに……そういうの、最近は全くと言って良いほど無かったよな」
「2年前まで……はるかさんが居なくなるまでは、デートとかもよく行ってたのにね」
「行きたかったら言ってくれたら良かったのに……お前の誘いならいつでも付き合うぞ?」
「そういう事じゃないわよ。"もう付き合ってる訳でもあるまいし"……」
2年前にはるかさんが死んでから、僕と陽向の関係は変わった。
はるかさんが死んだその日、僕は陽向に一言「別れよう」と告げた。陽向の気持ちは一切聞かず、ただただ一方的に。今考えれば最低だが、当時ははるかさんが死んで余裕が無かった……だが、陽向はそれでもどうにか納得してくれて、別れることを受け入れてくれた。だからこそ僕は今でも陽向に頭が上がらないし、上げるつもりもない。
「陽向、改めてありがとう。2年前のこんな最低な男を未だに好きでいてくれて……」
「ばっかじゃないの?駿が最低な男なら、それに惚れた私もバカみたいじゃない。それと、"一人称"……戻ってるわよ?」
「……っ!ぁ、やべ……すまん」
「別にいいわよ。でも、今ので分かった……私、昔の駿の方が今の駿より好きだわ」
陽向は「ニヤニヤ」という効果音が聞こえてきそうな悪戯な顔で、僕に向けてそんな事を言ってくる。
「僕は、今のお前も昔のお前も変わらず好きだ」
「……っ!?……よ、よくそんな恥ずかしい事をハッキリ言えるわね!」
陽向の目を見て僕が発した言葉に、想像の5倍顔を赤くしてあわあわした様子の陽向を見て、笑みを浮かべる。
いつか全てが終わって、その時にまだ陽向が僕の事を好いててくれたのなら、その時には___
ある日の昼、僕は陽向にそんな話を持ち掛けていた。というのも、現在時刻は12時前で家には僕と陽向しかいないのだ。玲奈と有希は何処かへ出掛けたし、琉輝はまだ寝てるしな。
「別に良いけど……珍しいわね、あんたから誘ってくるなんて。私とあんたは基本家でゴロゴロしてるから、2人きりになるとまず外へ出ないのよねぇ~」
「まあ、僕は陽向のパシリにされてちょいちょい出ていってるけどな」
陽向はソファに寝転がり、横画面のスマホを両手で持ってポチポチと操作している。どうやら最近はソシャゲというやつにハマっているのかもしれないな。
「で、結局行くのか?行かないのか?」
ササッと身支度を済ませた僕は、安物の肩掛けバックを身体に掛ける。
「別に行かないなんて言ってないでしょ!?行くわよ!行く!」
「ハハッ、そうか。なら早く準備してくれ」
僕はそう言って、陽向の支度が終わるまで椅子に腰掛けて待つのだった。
「……で、ファミレスと」
「なんだ?文句でもあるのか?」
飯を食いに行くと言ったものの、特に何を食べるかに関しては一切決めていなかったため、数分悩んだ。その結果、無難にファミレスという事になった。
入店して席に案内された僕たちは互いに向かい合う形で座る。陽向は右手の肘をテーブルの上に置き、頬杖を付いて不満そうな顔で僕の方をジッ…と見つめてくる。
「そんなに見つめられると照れるじゃないか///」
「はぁ……何バカな事言ってんのよ。棒読みなのよ、感情が籠もってないわ」
「俺は2年前に感情を失った男……!我が名は遠江駿!」
「何言ってんのよ。縁起でもないわね……はぁぁぁ……」
陽向は目を瞑ってゆっくりと息を吐く。数秒の間を開けた後に再び目を開き、「デートに連れてってくれるのかと思ったのになぁ……」と少し物悲しげに呟く。
「ん?今なんて?」
「何でも無いわよ!」
僕はその言葉を敢えて聞こえなかったフリをする。
「そう言えば、駿と二人きりで何かを食べに行くなんていつぶりかしらね?」
「確かに……そういうの、最近は全くと言って良いほど無かったよな」
「2年前まで……はるかさんが居なくなるまでは、デートとかもよく行ってたのにね」
「行きたかったら言ってくれたら良かったのに……お前の誘いならいつでも付き合うぞ?」
「そういう事じゃないわよ。"もう付き合ってる訳でもあるまいし"……」
2年前にはるかさんが死んでから、僕と陽向の関係は変わった。
はるかさんが死んだその日、僕は陽向に一言「別れよう」と告げた。陽向の気持ちは一切聞かず、ただただ一方的に。今考えれば最低だが、当時ははるかさんが死んで余裕が無かった……だが、陽向はそれでもどうにか納得してくれて、別れることを受け入れてくれた。だからこそ僕は今でも陽向に頭が上がらないし、上げるつもりもない。
「陽向、改めてありがとう。2年前のこんな最低な男を未だに好きでいてくれて……」
「ばっかじゃないの?駿が最低な男なら、それに惚れた私もバカみたいじゃない。それと、"一人称"……戻ってるわよ?」
「……っ!ぁ、やべ……すまん」
「別にいいわよ。でも、今ので分かった……私、昔の駿の方が今の駿より好きだわ」
陽向は「ニヤニヤ」という効果音が聞こえてきそうな悪戯な顔で、僕に向けてそんな事を言ってくる。
「僕は、今のお前も昔のお前も変わらず好きだ」
「……っ!?……よ、よくそんな恥ずかしい事をハッキリ言えるわね!」
陽向の目を見て僕が発した言葉に、想像の5倍顔を赤くしてあわあわした様子の陽向を見て、笑みを浮かべる。
いつか全てが終わって、その時にまだ陽向が僕の事を好いててくれたのなら、その時には___
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