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第3話 董卓さん、酔う

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董卓「あぁ‥美しい‥」
この世にこんなにも美しい存在がおったなんて‥
どんな宝石よりも輝いておる‥
わしの人生の中で最高の輝きじゃ‥
まさに‥この世の宝じゃ‥
あぁ‥そんな顔で見つめないでおくれ‥
胸が苦しくなるぞよ‥♡

ガチャ
ヒュンッ

董卓「あぁ‥わしって最強に美しい‥」

シャミ「‥董卓さん、訳わかんない事言ってないで、ちょっとついてきて!」

董卓「訳が分からない?‥ふっ、子どもにはわからんか、この魅力が」

バシッ

董卓「痛っ!わしに嫌、世界の宝に向かって‥何という狼藉じゃ!」
ドガッ
シャミ「いいから!早く来て!」
董卓「くっ、、」
あっ!‥いかんいかん、わしは穏やかな人間になるのだ‥
深呼吸をして、わしはシャキに着いて行った

ガヤガヤガヤ‥
なんだ?人だかりが出来ている‥

シャキ「こっちよ!早く!」

人?いや、妖精ごみをかき分けて進んでいく‥

董卓「おお、なんと‥」

そこには人間の‥そして美しい男がおった‥まぁ、美しさにおいてはわしの次ぐらいだが。

フィル「まさか‥こんな事があろうか‥」
キャミ「こんな短期間でしかも同じ場所で‥」
?「あ、あのここは天国でしょうか?」
?「まるでロールプレイングゲームの様なので‥」
フィル「ふむ、時代は最近じゃな‥」
キャミ「あなたの名前は‥?」
?「僕はカオルと言います‥僕は死んだのですか‥?」
キャミ「‥カオルさん、あなたの最後の記憶は?」
カオル「‥‥就活が上手くいかず、悩んでいて気づいたら電車に飛び込んでいた。それが最後の記憶です‥」
フィル「‥過去の人間は色々な事で悩んでおるのじゃな」
フィル「‥わしの家に連れて行ってやってくれ」
キャミ「はい!」
カオルはキャミに案内されて村長の家に向かった

フィル「‥さて、董卓さん。この世界の事少しはわかったかいの?」

董卓「ふむ、まさかここがわしの子孫の世界だとはの。それよりも世紀の大発見をしてしまい、他の事はあまり覚えていない」

フィル「世紀の大発見‥?それは?」
キャミ「村長、それは聞かなくて大丈夫です」
董卓「チッ」

キャミ「それよりも、人間がこんなにも転生するなんて初ですよね?」
フィル「そうなのじゃ‥時代は違うが、こんな事は初めてじゃ。中々興味深いのぅ‥」
キャミ「まさか‥あの‥伝承‥ですか?」
フィル「ふむ‥、にわかには信じ難いが‥試してみる価値はある」
キャミ「分かりました!カオルさんが落ち着いたら話してみます!」
フィル「董卓殿、また図書館で勉強してくだされ。カオル殿が落ち着くまでこの世界の事を知っておいてください。特にこの世界に伝わる話を‥」
董卓「まぁ、よいぞ。わしは良い人間、しかも美しいからの!ガッハッハ!」
董卓は図書館に向かっていった。
フィル「‥‥大丈夫かのぉ‥」

董卓「それにしてもあの男‥、中々の美男だったのぉ‥」
‥‥?
いや、そんなはずはないか‥わしはおなごにしか興味がない!

わしは伝承とやらを知る為、書を探す事にした‥
三国志?
‥なんだか、読まなければならない気がする
わしは恐る恐る読み始めた
嫌な予感は的中した
あらゆる脚色はされているが概ねわしがしてきた事実が記されている
『史上最悪の暴虐王 董卓』
これが後世まで語り継がれているわしの姿か‥

董卓「あぁ‥‥これは‥‥やはり、後世にまで‥」
キャミ「‥‥あなた、こんな事していたのね」
董卓「⁉︎」
董卓「いつからそこに‥」
キャミ「さっきよ」
董卓「わしの事、今まで知らなかったのか⁉︎」
キャミ「その本はあなたが手に取るまでここにはなかったの。私達はほんとにあなたの事を知らなかったわ」

キャミ「ここの本の内容はこの村の妖精族にはすぐに共有される。私達は武力を持たない代わりに圧倒的な知の力があるの。」

董卓「‥もう、みんな‥知っているのか‥そうか‥」
キャミ「‥‥」
キャミ「‥‥ただ、もうあなたは浄化されている。前世の過去の悪行は水に流された。これからの行いで私達の評価は決まるわ」
キャミ「だから、私達のお願いを聞いて欲しい」
董卓「⁉︎‥まだ、ここにいていいのか?」
キャミ「‥‥とりあえず、村長の話を聞きに行きましょう。今後の事はそれ次第だわ。」
わし達は気まずい空気の中、村長の家へと向かった


村長宅

フィル「‥よし、揃いましたな」
わしを見る周りの目は、あきらかにここに来た時よりも、冷ややかな感じがする‥ほんとに本の知識が共有されたんだな‥

シャミ「まずはカオルさん、改めて私達の村へようこそ。私はシャミ」
キャミ「そして、私はキャミ。シャミと双子の妖精よ。笑い方が独特だけど気にしないで。キャハ。」
フィル「わしは村長のフィルじゃ。」
カオル「僕は吉崎カオルです。宜しくお願い致します。」
カオル「‥こちらの方は僕と一緒の人間の方ですか?」
董卓「わしは董卓じゃ‥」
カオル「!‥まさか、あの‥⁉︎」
董卓「そ‥そうじゃ‥」
やはりカオル殿も知っていたか‥

カオル「ぼ、僕大ファンです!三国志のゲームでは必ず使用してます!」
董卓「えっ、えっ、ゲ、ゲーム?」
カオル「みんなから嫌われてるけど、それでも自分の信念を負けず、そして結局いつも呂布に倒される所がなんだか憎めなくて‥確かに実際は残逆非道な行いをしてるから‥友人達にはなかなか好きって言いづらいんですが‥」
ゲームやら三国志やらわしの知らない言葉がどんどん出てくる‥

カオル「それにしても‥まさか‥本物に会えるなんて!ゲームよりだいぶ、美しい人ですね!」

董卓「!!」
董卓「わ、わしの魅力に気づいてくれるとは‼︎ほ、褒美をとらせる!」
わしは感極まって踊りそうになった!

フィル「ご、ごほん! まぁ、積もる話はおいおい2人で話して下され。まずは我が村に伝わる伝承をお聞き下さい」

『世界に混沌渦巻く時
力の神生まれたり
同年 同月 同日 
知の神もまた生を受けたり
力の神 知の神
真実の愛を天に示す時、浄化の光が天と地を包むだろう』

フィル「という、話ですじゃ。まさにあなた方がその力の神と知の神ではなかろうかと私どもは考えております。」
シャミ「今まで何人かは別の時代や世界から人間が来た事があったけど、みんなてんでバラバラのタイミングだったわ。」
キャミ「状況的には神様って事になるのかな、キャハ」
フィル「恥ずかしながら、わしらはこの森と村からここ何十年と外に出ておらん。知の妖精族と言われておるが、まったく新しい情報が入っておらん。」

シャミ「外に出られないのは以前、森の外に出た仲間がゴブリンに襲われて瀕死の状態になってしまったからなの。」

キャミ「私達は森の中では誰にも攻撃される事はないけど、ただ外でも戦う力もないの。逃げる事しか出来ない。
そして新しい知識が入らないと子どもが生まれないの」

フィル「わし達、妖精族は新しい知識が入る事によって魂を維持している。どんな小さな新しい事でも生きる為に必要なんじゃ。それがゴブリンのせいで森から出られない」
フィル「このままではいずれ、わしらも全滅してしまう。」

カオル「この森も新しく草や木が生えてるけど、それでは駄目なの?」

フィル「今の所はなんとか平気ですじゃ。それに木の実やお粥でなんとか魂をつないでおります」

董卓「つまり、わしらにゴブリンを倒せ‥と?」
フィル「その通りですじゃ。危険なのは分かっておりますが、あなた方ならやり遂げられると感じられたのです」

董卓「‥わしは、その道の達人じゃ。ここはわしに任せてくれ!」
カオル「ぼ、僕は戦った事なんてないですよ?」
董卓「カオル殿はわしの後ろにいなさい」
カオル「ありがとうございます!」

フィル「‥頼もしいお方じゃ。」
フィル「キャミ、あれをここに」
キャミ「キャハ、村長、本気だね!持ってきます!」

数分後‥

キャミ「お待たせしました!」

フィル「これはわが妖精族が作り出した『妖精の剣』ですじゃ。この剣は、剣自身が戦いの経験によって成長する魔法の剣でございます」
妖精の剣‥なんとも神々しい剣だ‥
それに美しい‥!
フィル「董卓様、手に取ってみて下さい」
わしは妖精の剣を手にした。
急に剣が光だした!
董卓「な、なんじゃ、どうしたのじゃ!」
フィル「おぉ、やはりあなた様は‥」
フィル「ご安心下され、妖精の剣があなたを認めた証拠でござりまする」
董卓「そ、そうなのか?‥それにしてもほんとに美しい剣だ‥」

フィル「さぁ、そして、こちらは妖精の杖です。カオルさん、手にとってみて下され」
カオル「は、はい」
カオルが杖を手にすると、やはり光をはなった
フィル「おぉ、カオルさんまで!これは、伝承が本物だという証拠じゃ!」
キャミ「カオルさん、あの外にある岩に
水を思い浮かべてみて。」

カオル「水?‥こうかな」
杖が光ると同時に岩に向かって杖から水流が直線状に発射された
カオル「な、なにこれ⁉︎」
キャミ「これが魔法です!かおるさんは
呪文をとえなくても魔法が使えるみたいね!」
シャミ「やっぱり‥神様ですね!シャハ!」

フィル「お二方、この2つの武器をもってゴブリンから我々妖精族をお救い下さい!」

董卓「こんな大層な剣貰ってしまったら、もう、後には引けんな。わしに任せてあんたらは、いつも通り過ごしておれ」
カオル「ぼ、僕は援護します!」

フィル「おぉ、ありがとうございます!それでは、本日はゆっくりお休みになられて、明日出発の準備を致しましょう!」

その夜、わし達は盛大にもてなされた。
なんだか、久しぶりに酒を飲む気がする‥
おぉ、妖精族の酒は果実酒なのじゃな!
甘くていい香りがする‥
実に美味い!何杯でも飲めそうだ!

数分後‥
董卓「うぃ~、わしは董卓様じゃぞぉ‥」
キャミ「‥完全に酔っ払ってるわね」
董卓「キャミちゃん、可愛いねぇ!わしが口吸いしたる!」
キャミ「き、気持ち悪い!」
ドガッ
董卓「ふへぇ~‥」
バタッ‥

キャミ「あっ、‥死んだ?」
董卓「ぐがぁ~‥スピ~‥」
キャミ「‥‥」

カオル「あの、僕はほんとにゴブリンを倒せるでしょうか‥?僕の時代は暴力的な争いはなく、僕はケンカなんてした事ありません」
フィル「‥そうですな、そればかりはわしらもなんとも言えないですな。ただ、わしはあなた方を信じております。前世はどうあれ、この村にいる事、わし達の願いを快く受け入れてくれた事。
それだけで信じるに値します」
カオル「‥‥やってみるしかありませんね。少し図書館に行って調べ物してきます。今夜はありがとうございました。」
フィル「フォッフォッフォ、さすがは知の神という感じですな!あまり、夜更かしはしないでくださいな」
カオル「はは、ありがとうございます」
カオルは図書館に向かって行った

董卓「スピ~‥グガァ~‥むにゃむにゃ‥わしは良い董卓さんになるぞ‥」
キャミ「‥‥変わってきたのかしらね‥キャハ、期待しないで待ってよっと」

第3話 完
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