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朝、出勤すると恒くんはもう席に着いてパソコンを眺めていた。わざと他人行儀に「おはようございます」と言って目も合わせない。
『昨日どうしたの? 寝てたよ』
社内メールをチェックする。嘘つき。
『すみません、ちょっと用事がありまして』
『今日逢えるじゃん、その時に聞くよ。優香の作るハンバーグ楽しみ』
『すみません、今日は用事。夫の晩御飯を作らないと』
馬鹿にしないでよね。そんな都合のいい女は他を当たってください。サヨウナラ。
『ちょっと、どうしたの? 怒ってる?」
怒ってる? 私は怒ってるの? 何を?
『まさか、怒ってなんていませんよ』
『なんか敬語だし、とにかく仕事終わったら話そう』
『いえ、話す事はないので』
首を曲げないように目線だけを恒くんに向けた。彼は固まったまま動かない、その瞳から涙が溢れた。パタパタっとキーボードに落ちる音が聞こえた気がして胸が苦しくなる。
どうして?
私は慌てて立ち上がり「ちょっと良いですか?」と言って恒くんを屋上に連れ出した。まだ、まばらな社内に怪しむ人間はいない。
「ゆうちゃん……」
「ちょっとなに泣いてるの、他の人が見たらびっくりするよ!」
ハンカチで目元を拭う、鼻水も垂れてる。
「だってゆうちゃんが……」
子供みたいにシクシクと泣く恒くんを「よしよし」と抱きしめる。
何してるんだ私は。
「ほら、泣かない。もう始まるよ」
「じゃあハンバーグは?」
「……それは」
はぐらかそうとしたらみるみる内に目に涙が溜まってくる。すかさずハンカチで拭う。
「分かったから、作るから。もう、泣かないで」
「本当に?」
「うん」
恒くんはパッと笑顔になり私を抱きしめる、誰もいない会社の屋上で、数時間前に固めた覚悟はあっさりと崩壊して彼と唇を重ねていた。
ずるい――。そんなのずるいよ。
『昨日どうしたの? 寝てたよ』
社内メールをチェックする。嘘つき。
『すみません、ちょっと用事がありまして』
『今日逢えるじゃん、その時に聞くよ。優香の作るハンバーグ楽しみ』
『すみません、今日は用事。夫の晩御飯を作らないと』
馬鹿にしないでよね。そんな都合のいい女は他を当たってください。サヨウナラ。
『ちょっと、どうしたの? 怒ってる?」
怒ってる? 私は怒ってるの? 何を?
『まさか、怒ってなんていませんよ』
『なんか敬語だし、とにかく仕事終わったら話そう』
『いえ、話す事はないので』
首を曲げないように目線だけを恒くんに向けた。彼は固まったまま動かない、その瞳から涙が溢れた。パタパタっとキーボードに落ちる音が聞こえた気がして胸が苦しくなる。
どうして?
私は慌てて立ち上がり「ちょっと良いですか?」と言って恒くんを屋上に連れ出した。まだ、まばらな社内に怪しむ人間はいない。
「ゆうちゃん……」
「ちょっとなに泣いてるの、他の人が見たらびっくりするよ!」
ハンカチで目元を拭う、鼻水も垂れてる。
「だってゆうちゃんが……」
子供みたいにシクシクと泣く恒くんを「よしよし」と抱きしめる。
何してるんだ私は。
「ほら、泣かない。もう始まるよ」
「じゃあハンバーグは?」
「……それは」
はぐらかそうとしたらみるみる内に目に涙が溜まってくる。すかさずハンカチで拭う。
「分かったから、作るから。もう、泣かないで」
「本当に?」
「うん」
恒くんはパッと笑顔になり私を抱きしめる、誰もいない会社の屋上で、数時間前に固めた覚悟はあっさりと崩壊して彼と唇を重ねていた。
ずるい――。そんなのずるいよ。
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