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「お邪魔しましたー。また明日ね」
父と母が玄関で靴を履いているとガチャリと扉が開いた。夫は一瞬、眉間に寄せた皺をほどいて柔和な笑みを浮かべる。
「お義父さん、お義母さん。いらしてたんですか。言ってくれたら早く切り上げてきたのに」
「あら、誠一郎さん。お疲れ様。ごめんなさいね遅くまでお邪魔しちゃってぇ」
「全然良いですよ、それよりも優菜の面倒を見ていただいて感謝しかありません」
「いいの、いいの。どーせ暇だし、孫の顔も見れるから」
「恐縮です。今度は是非ご一緒に」
「楽しみにしてるわ、それじゃあおやすみなさい」
「はい、おやすみなさい。お気をつけて」
もっと遅くなると予想していたが迂闊だった、夫は優しく扉を閉めるとコチラを振り向いた。
「ごめんね、たまには一緒にごは一一」
『バチンッ』
シンプルなビンタが飛んできた。
「お前ら俺の悪口で盛り上がってただろ?」
「え、そんな事一一」
『バチンッ』
「じゃあなんであのジジイは不機嫌そうに俺を睨んでたんだよ」
そうなのか、まるで気が付かなかったが。そう言えば父は一言も発しなかった。夫はダイニングの隅に置いてあるウーバーの配達用バックを蹴っ飛ばした。
「こんなど底辺がやるような仕事を嫁にやらせる旦那だって言ってたんだろーが!」
「そんな事言ってない一一」
『バチンッ』
「何でテメーはよりによってこんなクズがやる仕事してやがるんだ? アアッ! 俺への当てつけか?」
無いんだよ、仕事が。
「そんな、時間が融通効くしさ。ダイエット効果もあって一石二鳥なんだよ」
「馬鹿かお前? A地点からB地点にただ物を運ぶ仕事。小学生でもできるど底辺の仕事を良い大人がやってて恥ずかしくねえのか?」
だったらお前が全部出せよ。
「ごめんね、私なんの資格もないし。こんな仕事しか出来ないの」
「チッ! だったら親には内緒にするくらいの気遣いを見せろブス。テメーの親世代は女が働くのも許さない奴らだろーが」
そこまで古くはない。母も数年前までパートで働いていた。が、口ごたえはしない。
「古臭えんだよ、考えがよぉ。だからお前みたいなすっとろい大人になるんだろうが。大丈夫だろうな? 優菜は」
「うん、大丈夫」
「何がだ?」
「え?」
「何が大丈夫なのか言ってみろ、簡潔にな」
めんど臭え奴。なにかあったな外で。そんなものを私にぶつけるな。
「あの、だから。半分はあなたの血が入っているから、その。きっと優秀になるよ」
「だと良いがな」
バーカ。入ってねえよ。
夫は私の答えに満足したのかベビーベッドで眠る優菜の髪を撫でた。底なしの嫌悪感を全身で感じる。
果たして持つのだろうか。
あと六年も一一。
父と母が玄関で靴を履いているとガチャリと扉が開いた。夫は一瞬、眉間に寄せた皺をほどいて柔和な笑みを浮かべる。
「お義父さん、お義母さん。いらしてたんですか。言ってくれたら早く切り上げてきたのに」
「あら、誠一郎さん。お疲れ様。ごめんなさいね遅くまでお邪魔しちゃってぇ」
「全然良いですよ、それよりも優菜の面倒を見ていただいて感謝しかありません」
「いいの、いいの。どーせ暇だし、孫の顔も見れるから」
「恐縮です。今度は是非ご一緒に」
「楽しみにしてるわ、それじゃあおやすみなさい」
「はい、おやすみなさい。お気をつけて」
もっと遅くなると予想していたが迂闊だった、夫は優しく扉を閉めるとコチラを振り向いた。
「ごめんね、たまには一緒にごは一一」
『バチンッ』
シンプルなビンタが飛んできた。
「お前ら俺の悪口で盛り上がってただろ?」
「え、そんな事一一」
『バチンッ』
「じゃあなんであのジジイは不機嫌そうに俺を睨んでたんだよ」
そうなのか、まるで気が付かなかったが。そう言えば父は一言も発しなかった。夫はダイニングの隅に置いてあるウーバーの配達用バックを蹴っ飛ばした。
「こんなど底辺がやるような仕事を嫁にやらせる旦那だって言ってたんだろーが!」
「そんな事言ってない一一」
『バチンッ』
「何でテメーはよりによってこんなクズがやる仕事してやがるんだ? アアッ! 俺への当てつけか?」
無いんだよ、仕事が。
「そんな、時間が融通効くしさ。ダイエット効果もあって一石二鳥なんだよ」
「馬鹿かお前? A地点からB地点にただ物を運ぶ仕事。小学生でもできるど底辺の仕事を良い大人がやってて恥ずかしくねえのか?」
だったらお前が全部出せよ。
「ごめんね、私なんの資格もないし。こんな仕事しか出来ないの」
「チッ! だったら親には内緒にするくらいの気遣いを見せろブス。テメーの親世代は女が働くのも許さない奴らだろーが」
そこまで古くはない。母も数年前までパートで働いていた。が、口ごたえはしない。
「古臭えんだよ、考えがよぉ。だからお前みたいなすっとろい大人になるんだろうが。大丈夫だろうな? 優菜は」
「うん、大丈夫」
「何がだ?」
「え?」
「何が大丈夫なのか言ってみろ、簡潔にな」
めんど臭え奴。なにかあったな外で。そんなものを私にぶつけるな。
「あの、だから。半分はあなたの血が入っているから、その。きっと優秀になるよ」
「だと良いがな」
バーカ。入ってねえよ。
夫は私の答えに満足したのかベビーベッドで眠る優菜の髪を撫でた。底なしの嫌悪感を全身で感じる。
果たして持つのだろうか。
あと六年も一一。
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