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42,自棄
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「おい! 飯!!」
メシ、メシ、私の名前はメシじゃないから無視をしてテレビを眺めていた。画面には何が面白いのか分からない女のピン芸人が騒いでいる。
「テメー、なにシカトしてんだよ?」
夫に肩を掴まれて舌打ちした。触るな。
仕方なく振り向いて「なに?」と問いかける。すると、タコのように顔を真っ赤にして何か言おうとしているが言葉がなかなか出てこないようだ。
仕方なく、私は立ち上がりダイニングにあるカップ麺を指差した。格安スーパーで八十五円の優れものだ。
「あそこ、お湯くらい自分でいれなよ」
「てんめぇ……」
「嫌なら無理に食べなくていいよ」
『ゴッ』っと嫌な音が耳に響いた、鼻の奥がツンとして殴られた事を認識する。不思議と痛みはない。軽く鼻を触るが血も出てなさそうだ。
「舐めてんのかオラー!! テメーは仕事で疲れた旦那にカップ麺だすのか? あ? 馬鹿なのか?」
「仕事じゃないよね?」
「ああ?」
「パチンコ屋にチャリ止まってたよ」
今日は土曜日、そもそも仕事はない。遊ぶ女がいなかったのか朝からパチンコに行っていたのだろう。この様子だと負けたみたいだが。
「はあ? 行ってねえよ」
別にどっちでも良い。もうどうでも良い。
何もかも一一。
「さっさと飯作れよブス」
そう言ってソファに腰を下ろした夫に手のひらを差し出した。
「お金」
「あ?」
「あ? じゃなくて材料ないと作れないから」
そんな当たり前のことも分からないのだろうか。相変わらず顔を真っ赤にしてコチラを見上げている。
「テメーが出しとけよそんくらい」
「そんくらいならあなたが出してよ、毎食毎食タダじゃないのよ。わかる?」
子供を諭すようにゆっくりと教えてあげると、夫は立ち上がり右手を振りかぶった。
「撮ってるから」
「あ?」
「あなたが私を殴るところ、蹴るところ。全部盗撮してるから」
「は、テメッ」
夫は急に慌てて辺りを見回した。そんなすぐにわかる場所にあるわけ無いのに。馬鹿なのだろうか。
「ふざけんな! どこだよテメー」
「それを教えたら意味ないじゃない」
「フッ」と鼻を鳴らして、私はスリッパを脱いで右手で持った。
「あんたの!」 『パンッ!』
「頭には!」 『パンッ!』
「蟹味噌が!」 『パンッ!』
「入ってるんですかー?」 『パンッ!』
リズミカルに夫の頭をスリッパで引っぱたくとすごく気持ち良かった。これは癖になりそうだ。
「テンメェ!!」
赤を通り越して青い顔をしながら小刻みに震える夫。私はそれを冷めた目で見つめた。
「今までの全部録画してあるから。SNS? 週刊誌? どうなるのかしらね?」
「いらねえよテメーのまずい飯なんてよぉ!」
そう言って逃げるように玄関から飛び出して行った。私は小さな声で「負け犬」と呟いてソファに座りテレビを消した。
メシ、メシ、私の名前はメシじゃないから無視をしてテレビを眺めていた。画面には何が面白いのか分からない女のピン芸人が騒いでいる。
「テメー、なにシカトしてんだよ?」
夫に肩を掴まれて舌打ちした。触るな。
仕方なく振り向いて「なに?」と問いかける。すると、タコのように顔を真っ赤にして何か言おうとしているが言葉がなかなか出てこないようだ。
仕方なく、私は立ち上がりダイニングにあるカップ麺を指差した。格安スーパーで八十五円の優れものだ。
「あそこ、お湯くらい自分でいれなよ」
「てんめぇ……」
「嫌なら無理に食べなくていいよ」
『ゴッ』っと嫌な音が耳に響いた、鼻の奥がツンとして殴られた事を認識する。不思議と痛みはない。軽く鼻を触るが血も出てなさそうだ。
「舐めてんのかオラー!! テメーは仕事で疲れた旦那にカップ麺だすのか? あ? 馬鹿なのか?」
「仕事じゃないよね?」
「ああ?」
「パチンコ屋にチャリ止まってたよ」
今日は土曜日、そもそも仕事はない。遊ぶ女がいなかったのか朝からパチンコに行っていたのだろう。この様子だと負けたみたいだが。
「はあ? 行ってねえよ」
別にどっちでも良い。もうどうでも良い。
何もかも一一。
「さっさと飯作れよブス」
そう言ってソファに腰を下ろした夫に手のひらを差し出した。
「お金」
「あ?」
「あ? じゃなくて材料ないと作れないから」
そんな当たり前のことも分からないのだろうか。相変わらず顔を真っ赤にしてコチラを見上げている。
「テメーが出しとけよそんくらい」
「そんくらいならあなたが出してよ、毎食毎食タダじゃないのよ。わかる?」
子供を諭すようにゆっくりと教えてあげると、夫は立ち上がり右手を振りかぶった。
「撮ってるから」
「あ?」
「あなたが私を殴るところ、蹴るところ。全部盗撮してるから」
「は、テメッ」
夫は急に慌てて辺りを見回した。そんなすぐにわかる場所にあるわけ無いのに。馬鹿なのだろうか。
「ふざけんな! どこだよテメー」
「それを教えたら意味ないじゃない」
「フッ」と鼻を鳴らして、私はスリッパを脱いで右手で持った。
「あんたの!」 『パンッ!』
「頭には!」 『パンッ!』
「蟹味噌が!」 『パンッ!』
「入ってるんですかー?」 『パンッ!』
リズミカルに夫の頭をスリッパで引っぱたくとすごく気持ち良かった。これは癖になりそうだ。
「テンメェ!!」
赤を通り越して青い顔をしながら小刻みに震える夫。私はそれを冷めた目で見つめた。
「今までの全部録画してあるから。SNS? 週刊誌? どうなるのかしらね?」
「いらねえよテメーのまずい飯なんてよぉ!」
そう言って逃げるように玄関から飛び出して行った。私は小さな声で「負け犬」と呟いてソファに座りテレビを消した。
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