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第五話 大団円
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「セージョちゃぁ~ん、この人たち殺しちゃったの?」
ブルブル震えながらウルウルの涙目で聞くピンクドラゴンを、シャーリンは笑った。
「きゃはは。そんなことするわけないでしょ、ドラ美ちゃん。聖女ちゃんは良い子なのよ」
シャーリンの言葉を証明するように、白い砂浜に血まみれで倒れていた海賊たちが、次から次へと立ち上がった。
海賊たちはそれぞれに、キラキラの笑顔を浮かべている。
そして懺悔の言葉を口にしたのだ。
「オレたちは、なんて悪いことを……」
「心を入れ替えます、聖女さま」
「これからは、良い子になります、聖女さま」
気付けば、シャーリンの回りには、海賊たちの輪ができていた。
跪いて両手を組み、シャーリンを見上げるその顔に、邪悪なものはない。
不気味なまでのキラキラした笑顔があるだけだ。
「ありがとうございます、聖女さま」
「ありがとう、ありがとう」
口々にお礼を言う海賊たちに向かい、シャーリンはペコリと頭を下げると言った。
「いえいえ、どういたしまして」
海賊たちの表情は、ベカーと輝いた。
キラキラの笑顔でシャーリンをしばし見上げていた海賊たち。
静寂が訪れ、ザザーンと波の砕ける音が響く。
突然、船長はスックと立ち上がると、手下たちに向かって叫ぶ。
「我々は救われたのだぁー!」
おおー、という海賊たちの雄叫びで、白い砂浜は揺れた。
聖女シャーリンを称えるように跪き、地に頭を擦り付けては両手を天に上げる海賊たち。
ドラ美は気味悪そうに海賊たちを見て、怯えたようにシャーリンに寄り添った。
「えと……ちょっと不気味」
「ん……そかも……」
シャーリンもちょっと戸惑って、頬をポリポリと掻いた。
「あ、船長。やたらと強い公爵とその執事が、ドラゴンに乗って帰ってきましたよ?」
小太りの手下の言葉に、船長は反応した。
「ヤベェ。面倒なことになる前に、帰るぞ!」
「「「アイアイサー、船長!」」」
海賊たちは、わらわらと海賊船に群がるようにして、えっちらおっちらと船を海中に浮かべ、白い砂浜から青い海へと逃げていった。
入れ替わるようにして、公爵の声が響いた。
「シャーリンッ! 無事か⁉」
「あっ、お父ちゃま」
慌てて走ってくるカスピエル公爵の姿に気付いたシャーリンは、パッと笑顔になった。
「某の娘、ドラ美は無事か⁉」
「我はココにいるぞ、娘よ」
白いドラゴンと赤いドラゴンが、白い砂を巻き上げながらドタドタと駆けてくる。
「パパ! ママ! おかえりなさぁ~い」
ドラ美は丸い目を輝かせると、慌てて近付いてくる両親に駆け寄った。
「どうやらご無事のようで、ようございました。ワタクシの出番は……」
ない、と言いかけた執事のジアは、真っ赤に染まった白い砂浜を見て「片付け、ですかね……」と呟いた。
◆◆◆
執事のジアは、海賊たちの欠片を箒と塵取りで掃除した。
あらかた片付け終わると、腰を反らしてウーンと唸った。
「後は聖水で流して終わり、ですかね。シャーリンさまの能力は素晴らしいのですが、お片付けが面倒なようです」
「聖女ちゃん、お片付け、へたくそ」
執事が掃除するのを、ベッドのように大きな白いビーチチェアの上から眺めていたシャーリンが言った。
「おや、こんな所にも肉片が……教育によくない能力ですねぇ」
「教育によくない? 聖女ちゃん、良い子なのに?」
シャーリンは、ビーチチェアの背もたれに手を置いて、膝を立てて執事を見ながら、頭を右に傾けて考えた。
高齢の執事は時々、五歳のシャーリンには理解するのが難しいことを言う。
シャーリンは、執事が匂わせる言葉の意味するところに辿り着けたことは一度もないが、一応考えてみることにしていた。
悩んでいる様子のシャーリンを見て、執事は笑みを浮かべて言う。
「確かにシャーリンさまは、良い子ですが……聖女としての力が、他の聖女の方々と違うと申しますか……ちょっと不穏なのです」
「ふおん?」
シャーリンは頭を左に傾けた。
「人間を齧るとか、ちょっと怖い能力ですよね。悪人から悪い部分を肉片として飛び散らせたり、ドクロマークをニコちゃんマークにしたり……」
「かわいいでしょ」
シャーリンはニコッと笑ったが、触ってもいない旗の模様が変わるなど聞いたことはない。
執事は遠くなっていく元海賊船の旗をしばし眺めた。
ドクロマークの旗がはためいていた海賊船には、いまはニコちゃんマークの旗が揺れている。
「ちょっと気味が悪いですけど……まぁ、可愛いですね」
「やったぁ~。聖女ちゃん、ジアにも褒められたぁ~」
両手を上げて喜び笑うシャーリンに、毒気を抜かれたようになった執事は溜息を1つ吐き、笑みを浮かべた。
そこにカスピエル公爵の声が響く。
「シャーリン、お土産があるよー! おいでー!」
「わーい! いま行くねぇ~、お父ちゃまぁ~」
シャーリンは小さな手の付いた両腕を上げて、青いコットンドレスを揺らしながら、嬉しそうに父親のもとへと駆けていった。
白い砂浜、駆けてくお子ちゃま。
寄せて、返して、砕ける、波々。
世界樹の生えた、まぁるい離れ小島を守るのは。
可愛い鮫の聖女、シャーリン。
ブルブル震えながらウルウルの涙目で聞くピンクドラゴンを、シャーリンは笑った。
「きゃはは。そんなことするわけないでしょ、ドラ美ちゃん。聖女ちゃんは良い子なのよ」
シャーリンの言葉を証明するように、白い砂浜に血まみれで倒れていた海賊たちが、次から次へと立ち上がった。
海賊たちはそれぞれに、キラキラの笑顔を浮かべている。
そして懺悔の言葉を口にしたのだ。
「オレたちは、なんて悪いことを……」
「心を入れ替えます、聖女さま」
「これからは、良い子になります、聖女さま」
気付けば、シャーリンの回りには、海賊たちの輪ができていた。
跪いて両手を組み、シャーリンを見上げるその顔に、邪悪なものはない。
不気味なまでのキラキラした笑顔があるだけだ。
「ありがとうございます、聖女さま」
「ありがとう、ありがとう」
口々にお礼を言う海賊たちに向かい、シャーリンはペコリと頭を下げると言った。
「いえいえ、どういたしまして」
海賊たちの表情は、ベカーと輝いた。
キラキラの笑顔でシャーリンをしばし見上げていた海賊たち。
静寂が訪れ、ザザーンと波の砕ける音が響く。
突然、船長はスックと立ち上がると、手下たちに向かって叫ぶ。
「我々は救われたのだぁー!」
おおー、という海賊たちの雄叫びで、白い砂浜は揺れた。
聖女シャーリンを称えるように跪き、地に頭を擦り付けては両手を天に上げる海賊たち。
ドラ美は気味悪そうに海賊たちを見て、怯えたようにシャーリンに寄り添った。
「えと……ちょっと不気味」
「ん……そかも……」
シャーリンもちょっと戸惑って、頬をポリポリと掻いた。
「あ、船長。やたらと強い公爵とその執事が、ドラゴンに乗って帰ってきましたよ?」
小太りの手下の言葉に、船長は反応した。
「ヤベェ。面倒なことになる前に、帰るぞ!」
「「「アイアイサー、船長!」」」
海賊たちは、わらわらと海賊船に群がるようにして、えっちらおっちらと船を海中に浮かべ、白い砂浜から青い海へと逃げていった。
入れ替わるようにして、公爵の声が響いた。
「シャーリンッ! 無事か⁉」
「あっ、お父ちゃま」
慌てて走ってくるカスピエル公爵の姿に気付いたシャーリンは、パッと笑顔になった。
「某の娘、ドラ美は無事か⁉」
「我はココにいるぞ、娘よ」
白いドラゴンと赤いドラゴンが、白い砂を巻き上げながらドタドタと駆けてくる。
「パパ! ママ! おかえりなさぁ~い」
ドラ美は丸い目を輝かせると、慌てて近付いてくる両親に駆け寄った。
「どうやらご無事のようで、ようございました。ワタクシの出番は……」
ない、と言いかけた執事のジアは、真っ赤に染まった白い砂浜を見て「片付け、ですかね……」と呟いた。
◆◆◆
執事のジアは、海賊たちの欠片を箒と塵取りで掃除した。
あらかた片付け終わると、腰を反らしてウーンと唸った。
「後は聖水で流して終わり、ですかね。シャーリンさまの能力は素晴らしいのですが、お片付けが面倒なようです」
「聖女ちゃん、お片付け、へたくそ」
執事が掃除するのを、ベッドのように大きな白いビーチチェアの上から眺めていたシャーリンが言った。
「おや、こんな所にも肉片が……教育によくない能力ですねぇ」
「教育によくない? 聖女ちゃん、良い子なのに?」
シャーリンは、ビーチチェアの背もたれに手を置いて、膝を立てて執事を見ながら、頭を右に傾けて考えた。
高齢の執事は時々、五歳のシャーリンには理解するのが難しいことを言う。
シャーリンは、執事が匂わせる言葉の意味するところに辿り着けたことは一度もないが、一応考えてみることにしていた。
悩んでいる様子のシャーリンを見て、執事は笑みを浮かべて言う。
「確かにシャーリンさまは、良い子ですが……聖女としての力が、他の聖女の方々と違うと申しますか……ちょっと不穏なのです」
「ふおん?」
シャーリンは頭を左に傾けた。
「人間を齧るとか、ちょっと怖い能力ですよね。悪人から悪い部分を肉片として飛び散らせたり、ドクロマークをニコちゃんマークにしたり……」
「かわいいでしょ」
シャーリンはニコッと笑ったが、触ってもいない旗の模様が変わるなど聞いたことはない。
執事は遠くなっていく元海賊船の旗をしばし眺めた。
ドクロマークの旗がはためいていた海賊船には、いまはニコちゃんマークの旗が揺れている。
「ちょっと気味が悪いですけど……まぁ、可愛いですね」
「やったぁ~。聖女ちゃん、ジアにも褒められたぁ~」
両手を上げて喜び笑うシャーリンに、毒気を抜かれたようになった執事は溜息を1つ吐き、笑みを浮かべた。
そこにカスピエル公爵の声が響く。
「シャーリン、お土産があるよー! おいでー!」
「わーい! いま行くねぇ~、お父ちゃまぁ~」
シャーリンは小さな手の付いた両腕を上げて、青いコットンドレスを揺らしながら、嬉しそうに父親のもとへと駆けていった。
白い砂浜、駆けてくお子ちゃま。
寄せて、返して、砕ける、波々。
世界樹の生えた、まぁるい離れ小島を守るのは。
可愛い鮫の聖女、シャーリン。
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