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傷心を癒したい
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(もっと早く来れば良かった)
レアンは自室でソファに座ってぼんやりと空を眺めているアリシアを見た時、真っ先にそう思った。
アリシアが婚約破棄されダナン侯爵家に戻された、と、聞いた時に自分から手紙を書けばよかった。
訪問してよいかと。
彼女の様子を見れば断られていた可能性も大きいけれど、何もせずに待っているだけよりはマシだった。
(今のアリシアは人形のようだ)
フリルとレースがたっぷりと使われてはいるけれどネグリジェのようなデザインのドレスに身を包んだ幼馴染は、昔と変わらず可愛らしかったが精彩を欠いていた。
梳いただけの金髪を長く垂らして体のラインを拾わないドレスを着ている姿は、まるで人形だ。
焦点が合っているのかどうかも分からない緑色の瞳。
(あれだけ快活で賢く、大らかで前向きな少女だったアリシアが……なぜこんな姿に?)
レアンは白地に金刺繍の入ったコートの胸辺りをギュッと掴んだ。
見ているだけでも胸が痛い。
大好きだったからこそ手放して、大好きだったからこそ会いにも行けなかったのに。
アリシアならどこへ行っても幸せになれると信じていたのに。
「わたくしには、なんの価値もないのよ……」
誰に聞かせるでもない小さなつぶやきに衝撃を受ける。
価値がないなど、とんでもない。ココにはキミのことが大好きな人たちが大勢いる。なぜキミはそんな風に思うの? なにがあったの? どんな酷い目にあったの?
レアンの心の中には聞きたいことが山のように沸き上がるけれど。アリシアの様子を見れば聞くわけにもいかないと気付く。
(彼女をこれ以上、追い詰めたくない)
しかし、これだけは断言できる。
(王家の奴らはクソだっ!)
どんなやり方で奴らが彼女を追い詰めたのかは知らない。それでも癒すことはできる。できるはずだ。
レアンは精一杯の優しい笑顔を浮かべ、柔らかく呼び掛ける。
「アリシア」
声に反応して懐かしい顔がコチラを向く。
金の髪に緑の瞳。
幼き頃の記憶と今の彼女とが重なっていく。
可愛い。可愛いのに。
切なさに涙が滲みそうになるのを笑みで誤魔化す。
「……お兄ちゃま?……レアンお兄ちゃま?」
「アリシア。久しぶりだね。大きくなったね……」
幼馴染の女の子は今も変わらず魅力的に見える。
大好きな大好きなアリシア。
あの幼い日の無邪気さをキミに取り戻すことができるのなら何でもするのに、と、レアンは思う。
あの時、勇気を出して戦えばよかった。
「お兄ちゃま……何年ぶりかしら?」
「ん……アリシアが婚約する前だね……遠い昔だね……」
悔やむ気持ちはあるけれど、あの日に戻ることはできない。しかし、今日から始めることはできる。
レアン・スタイツ伯爵は金色の目でアリシアを見つめた。
「お兄ちゃまも、大きくなったわ」
無邪気な笑顔を浮かべているつもりのアリシアは、どこか焦点の合わない瞳をこちらに向けている。
レアンは自分に出来る事をした。
「ふふ。私も大きくなった、か。……ねぇ、アリシア。お兄ちゃま呼びは、もう止めて?」
「あら? お兄ちゃまは、お兄ちゃまでしょ?」
レアンはアリシアの隣に腰を下ろし、彼女の顔を覗き込む。そして願いを口にした。
「私は、アリシアの兄ではないから……レアンと呼んで」
「レアンさま?」
「レアン、でいいよ」
「ふふふっ。レアン? 呼び捨てなんて、なんだか変だわ」
「いいんだよ、アリシア。大人になったのだから。……私はキミに、一番親しい人として呼ばれたい」
レアンは思わずアリシアの右手をとると両手で包み込んだ。
「レアン……」
戸惑うような声のアリシアに、心の中でこいねがう。
(もうアリシア、キミを手放したくない……私の側にいて欲しい)
レアンの心は決まった。
本当に欲しいモノを私は諦めない ――――――。
レアンは自室でソファに座ってぼんやりと空を眺めているアリシアを見た時、真っ先にそう思った。
アリシアが婚約破棄されダナン侯爵家に戻された、と、聞いた時に自分から手紙を書けばよかった。
訪問してよいかと。
彼女の様子を見れば断られていた可能性も大きいけれど、何もせずに待っているだけよりはマシだった。
(今のアリシアは人形のようだ)
フリルとレースがたっぷりと使われてはいるけれどネグリジェのようなデザインのドレスに身を包んだ幼馴染は、昔と変わらず可愛らしかったが精彩を欠いていた。
梳いただけの金髪を長く垂らして体のラインを拾わないドレスを着ている姿は、まるで人形だ。
焦点が合っているのかどうかも分からない緑色の瞳。
(あれだけ快活で賢く、大らかで前向きな少女だったアリシアが……なぜこんな姿に?)
レアンは白地に金刺繍の入ったコートの胸辺りをギュッと掴んだ。
見ているだけでも胸が痛い。
大好きだったからこそ手放して、大好きだったからこそ会いにも行けなかったのに。
アリシアならどこへ行っても幸せになれると信じていたのに。
「わたくしには、なんの価値もないのよ……」
誰に聞かせるでもない小さなつぶやきに衝撃を受ける。
価値がないなど、とんでもない。ココにはキミのことが大好きな人たちが大勢いる。なぜキミはそんな風に思うの? なにがあったの? どんな酷い目にあったの?
レアンの心の中には聞きたいことが山のように沸き上がるけれど。アリシアの様子を見れば聞くわけにもいかないと気付く。
(彼女をこれ以上、追い詰めたくない)
しかし、これだけは断言できる。
(王家の奴らはクソだっ!)
どんなやり方で奴らが彼女を追い詰めたのかは知らない。それでも癒すことはできる。できるはずだ。
レアンは精一杯の優しい笑顔を浮かべ、柔らかく呼び掛ける。
「アリシア」
声に反応して懐かしい顔がコチラを向く。
金の髪に緑の瞳。
幼き頃の記憶と今の彼女とが重なっていく。
可愛い。可愛いのに。
切なさに涙が滲みそうになるのを笑みで誤魔化す。
「……お兄ちゃま?……レアンお兄ちゃま?」
「アリシア。久しぶりだね。大きくなったね……」
幼馴染の女の子は今も変わらず魅力的に見える。
大好きな大好きなアリシア。
あの幼い日の無邪気さをキミに取り戻すことができるのなら何でもするのに、と、レアンは思う。
あの時、勇気を出して戦えばよかった。
「お兄ちゃま……何年ぶりかしら?」
「ん……アリシアが婚約する前だね……遠い昔だね……」
悔やむ気持ちはあるけれど、あの日に戻ることはできない。しかし、今日から始めることはできる。
レアン・スタイツ伯爵は金色の目でアリシアを見つめた。
「お兄ちゃまも、大きくなったわ」
無邪気な笑顔を浮かべているつもりのアリシアは、どこか焦点の合わない瞳をこちらに向けている。
レアンは自分に出来る事をした。
「ふふ。私も大きくなった、か。……ねぇ、アリシア。お兄ちゃま呼びは、もう止めて?」
「あら? お兄ちゃまは、お兄ちゃまでしょ?」
レアンはアリシアの隣に腰を下ろし、彼女の顔を覗き込む。そして願いを口にした。
「私は、アリシアの兄ではないから……レアンと呼んで」
「レアンさま?」
「レアン、でいいよ」
「ふふふっ。レアン? 呼び捨てなんて、なんだか変だわ」
「いいんだよ、アリシア。大人になったのだから。……私はキミに、一番親しい人として呼ばれたい」
レアンは思わずアリシアの右手をとると両手で包み込んだ。
「レアン……」
戸惑うような声のアリシアに、心の中でこいねがう。
(もうアリシア、キミを手放したくない……私の側にいて欲しい)
レアンの心は決まった。
本当に欲しいモノを私は諦めない ――――――。
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