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婚約破棄は華やかに
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学園卒業を祝う夜会は、華やかに開催される。生徒会主催のイベントであり、毎年のように行われるものではあるが、未来を担う貴族たちの新たなる旅立ちを祝う場だからだ。とくに今年は王太子ケンドリックが卒業するとあって、より一層華やかなものとなっていた。
ピカピカに磨かれた床に手すり、あちらこちらに飾られた生花は花弁が大振りなものばかりで華やかな気分をより一層盛り上げる。入り口から続く赤い絨毯が招くまま先に進めば、綺麗なドレープを描く赤いカーテンの向こうに用意された会場へと辿り着く。学園の施設とは思えないほどの立派な大広間は夜会に備えて飾り立てられ、小国の王城にあるものよりも華やかだろうと思わせるものだった。
卒業式典の一部でしかない夜会でありながら飾られた花や持ち込まれた装飾などの効果もあって、王城で行われる国王主催舞踏会の簡易版では、と、思えるほどの豪華さである。
「リネット・セナケリア公爵令嬢との婚約を破棄する!」
その会場では、設えられた舞台上からケンドリックが白の貴族服に施された金刺繍と金髪を煌かせ、婚約者であるリネット・セナケリア公爵令嬢へ婚約破棄を告げていた。
「なんですって⁈」
「根性だけでなく耳まで悪いのか、リネット・セナケリア公爵令嬢! お前との婚約は破棄するっ!」
これには冷静沈着かつ優秀で名高いリネット・セナケリア公爵令嬢も動揺のあまり、緑の瞳が収まった大きな目を更に見開いて叫ばずにはいられない。突然の発表に、さっきまで明るい騒めきがこだましていた会場内はシンと静まり返った。その中で発せられたリネットの声は普段よりも凛として響き、会場の隅々にまで広がって行く。
「我が公爵家と王家の間で取り交わされた正式な婚約ですのよ⁈ 簡単に破棄など出来ようはずがございませんわ!」
「貴様は王太子である私、ケンドリックにふさわしくないっ! よって貴様と結ばれた婚約については破棄する!」
冷たく言い放つケンドリックにリネットのただでさえ白い肌は色を無くし、華奢な体は細かく震えた。よろめいて倒れないのが不思議なくらいだ。細い体にケンドリックの瞳と同じ色である青をまとい、美しく輝く金の髪をハーフアップにした公爵令嬢は完璧に見えた。皆の疑問を代表するかのように、リネットは問う。
「なぜですの? 私の、どこが婚約者としてふさわしくないとおっしゃるのですか⁈」
「お前は、レティシア・スカルノ男爵令嬢に嫌がらせをしただろう⁈」
ケンドリックはレティシアの細い腰を抱き寄せた。レティシア・スカルノは十八歳の男爵令嬢、艶やかな赤毛に蠱惑的な赤目、日焼けしたような濃い肌色の胸が大きな下級生だ。
「⁈ そんな覚えはございません!」
「えぇいっ! 言い訳は見苦しいぞ、リネット! お前がどんな女か、私には分かっているんだっ!」
「そんなっ!」
レティシアはケンドリックの隣で勝ち誇ったような笑みを浮かべ、リネットを見下ろしていた。胸元が大胆に開いた真っ赤なドレスには、ケンドリックの豊かな金髪を思わせる金の刺繍がたっぷりと施されている。見上げるリネットの瞳には、赤いドレスに包まれたレティシアの豊かな胸越しに、悪意に満ちた彼女の視線が刺さった。
(ケンドリックさまと仲が良いとは聞いておりましたが、男爵令嬢とでは身分の釣り合いもとれませんし。油断していましたわ)
リネットは唇を噛んだ。貴族の世界では駆け引きが重要である。友人たちは彼女にレティシアのことを耳打ちしてくれていた。とはいえ、爵位も重要な意味がある貴族社会でのこと。王太子婚約者であり公爵令嬢でもあるリネットは、男爵令嬢ごとき勝負になどならないと捨て置いたのである。
だが、レティシアの表情を見れば分かる。
(私……はめられたのね)
赤い瞳がリネットを見下ろしている。リネットから見れば、レティシアは可愛くも綺麗でもない。老練な手管を使って欲しいものを手に入れる捕食者のように見えた。どのような手段を使ったのか知らないが、男爵令嬢ごときが公爵令嬢であり王太子婚約者でもあるリネットを追い落としたのだ。
「お前は、もう私の婚約者ではない」
「そんなっ!」
「叫ぶなよ、婚約者だったリネット。見苦しいぞ」
「……」
ケンドリックの中ではすでに、婚約者だったリネットになっている。過去形だ。
(私はもう……王太子の……ケンドリックさまの婚約者ではない……のね……)
物心ついた時から始まっていた王妃教育は、もう意味などない。生徒会の仕事を手伝ったことも、王太子の公務を手伝ったことも、ケンドリックにとっては意味など無かったのだ。冷たい瞳でこちらを見る青い瞳に、リネットは悟った。
(ケンドリックさまにとって私の存在など、その程度のものだったのね……)
ケンドリックが今日まで王太子として過ごしたのと同じくらい、リネットもまた王太子婚約者として過ごしてきたのだ。しかし、その重みについての解釈は異なっていたようだ。それは、自分の立場をわきまえて真剣に取り組んでいたリネットにとっては衝撃的なことであった。
(私は一生懸命、王太子婚約者として務めを果たしているつもりだったのに。ケンドリックさまには、そう映っていなかった、ということだわ。将来の王妃にふさわしい人間になろうと私なりに頑張ってきたつもりだったのに。ケンドリックさまには、そう思って頂けてはいなかった……)
リネットは今まで生きてきた時間の全てが無駄になったように感じた。努力の先には、何も無かったのだ。王妃としての役目も。ケンドリックの妻という役割も。
(もうすべて過去なのだわ……私には何も求められてはいない……)
「私は愛するレティシア・スカルノ男爵令嬢と共に生きる。お前と生きることはない」
だとしたら、リネットは何のために頑張ってきたのだろうか。
(すべてが無駄だった?)
例えそれが事実なのだとしても、リネット自身は認めたくは無かった。公爵令嬢という立場に甘んじることなく未来の王妃としての務めを立派に果たせるように、と、踏ん張ってきた時間はリネットの人生の全て。
(無駄だと思えば、足元から全てが崩れて……私が私でなくなってしまうわ)
リネットは体に力を入れて背筋を伸ばし、キッとケンドリックを睨んだ。
「この婚約破棄を、私の父や国王ご夫妻は承知されているのですか?」
「いや。私ひとりで決めた」
「ならば、婚約破棄のご提案については父と相談の上、ご返事させて頂きますわ」
「それには及ばん」
「えっ?」
ケンドリックはレティシアに目配せをする。
「キミの言った通りだね、レティシア」
「はい、ケンドリックさま」
「リネット、お前は策を講じて何としても婚約破棄を阻止するだろう、と、レティシアが言っていた。その通りだったようだ」
「なっ……」
(父と相談することが策を講じる? 何をおっしゃっているのかしら、ケンドリックさまは。貴族の結婚が家長の意思次第なのは当然のことですわ)
「我が父である国王陛下やお前の父君であるセナケリア公爵殿が出て来れば、婚約破棄など撤回されてしまうかもしれない。私はそれが嫌なのだ、リネット。お前の手の平で転がされる人生などまっぴらだ」
「そんなこと……」
「お前は自分の優秀さを鼻にかけ、有能さを遺憾なく発揮し、私の立場を危うくしている。お前は有能令嬢で、私は不出来な王太子。皆にそう思われていることに気付いてないのか?」
「そんな……誤解ですわ」
リネットの表情を眺めていたケンドリックはチッと舌打ちをすると、苦々しい口調で言う。
「やっぱり、気付いてはいるんだな。なのに、それで良いと思っている。お前がそう考えているのは、傲慢さゆえだ」
「あっ……」
(私が……傲慢?)
壇上から自分を見下ろすケンドリックの冷たい視線に、リネットは膝から崩れ落ちそうになる。それでも踏ん張っていられるのは、彼の隣で見下すような視線を送って来る赤毛の女の存在があるからだ。
(あんな下劣な男爵令嬢に、私が負けるだなんて……)
視線を下げれば、ピカピカに磨かれた床に惨めな令嬢の姿が映っている。リネットは一刻でも早く自宅に帰り、安心できるベッドの上でひとり泣きたかった。
「お前を自宅に帰すわけにはいかない。この場から次の婚約者の元へ……いや、結婚相手の元に行くのだ」
「なっ⁈」
(このまま⁈ ケンドリックさまは何を言ってらっしゃるの?)
リネットは見知らぬ怪物を見るような目でケンドリックを見上げた。彼はひどく満足そうな表情を浮かべると、さも良い事のように言う。
「お前はお妃教育を受けているからな。婚約破棄したからといって、どこの馬の骨とも分からぬ者と結婚させるわけにもゆかぬ。ついては、我が叔父であり我が父である国王の弟、アスランの元に嫁に行け」
「まぁ!」
リネットの叫びと共に、会場内も驚きに揺れた。
(アスラン殿下と言えば、呪いを受けた王弟殿下として有名な方。公の場には一切現れない、隠された存在でもあるお方ではありませんか!)
「準備は出来ている。後はお前が出発するだけだ」
「それは、どのような意味ですの?」
「そのままの意味だ」
ケンドリックはリネットの侍女がサッと動くのを見て取ると手で制し、言う。
「……あ、侍女。お前は残れ。行くのはリネットひとりだ」
「えっ⁈」
驚きに目を見張るリネットに、ケンドリックは冷淡な笑みを向けた。
「お前はズルいからな。既成事実を作って完膚なきまでに潰しておかないと。また私の婚約者に返り咲いて貰っては困る」
「なんですって⁈」
「リネット。もう戻ってこなくていいぞ」
ケンドリックは、ニヤリと笑った。その笑みはリネットの背筋を凍らせる。
(本気ですのね?)
こうしてリネットは有無を言わせず王弟アスランの元へと送り込まれたのだった。
ピカピカに磨かれた床に手すり、あちらこちらに飾られた生花は花弁が大振りなものばかりで華やかな気分をより一層盛り上げる。入り口から続く赤い絨毯が招くまま先に進めば、綺麗なドレープを描く赤いカーテンの向こうに用意された会場へと辿り着く。学園の施設とは思えないほどの立派な大広間は夜会に備えて飾り立てられ、小国の王城にあるものよりも華やかだろうと思わせるものだった。
卒業式典の一部でしかない夜会でありながら飾られた花や持ち込まれた装飾などの効果もあって、王城で行われる国王主催舞踏会の簡易版では、と、思えるほどの豪華さである。
「リネット・セナケリア公爵令嬢との婚約を破棄する!」
その会場では、設えられた舞台上からケンドリックが白の貴族服に施された金刺繍と金髪を煌かせ、婚約者であるリネット・セナケリア公爵令嬢へ婚約破棄を告げていた。
「なんですって⁈」
「根性だけでなく耳まで悪いのか、リネット・セナケリア公爵令嬢! お前との婚約は破棄するっ!」
これには冷静沈着かつ優秀で名高いリネット・セナケリア公爵令嬢も動揺のあまり、緑の瞳が収まった大きな目を更に見開いて叫ばずにはいられない。突然の発表に、さっきまで明るい騒めきがこだましていた会場内はシンと静まり返った。その中で発せられたリネットの声は普段よりも凛として響き、会場の隅々にまで広がって行く。
「我が公爵家と王家の間で取り交わされた正式な婚約ですのよ⁈ 簡単に破棄など出来ようはずがございませんわ!」
「貴様は王太子である私、ケンドリックにふさわしくないっ! よって貴様と結ばれた婚約については破棄する!」
冷たく言い放つケンドリックにリネットのただでさえ白い肌は色を無くし、華奢な体は細かく震えた。よろめいて倒れないのが不思議なくらいだ。細い体にケンドリックの瞳と同じ色である青をまとい、美しく輝く金の髪をハーフアップにした公爵令嬢は完璧に見えた。皆の疑問を代表するかのように、リネットは問う。
「なぜですの? 私の、どこが婚約者としてふさわしくないとおっしゃるのですか⁈」
「お前は、レティシア・スカルノ男爵令嬢に嫌がらせをしただろう⁈」
ケンドリックはレティシアの細い腰を抱き寄せた。レティシア・スカルノは十八歳の男爵令嬢、艶やかな赤毛に蠱惑的な赤目、日焼けしたような濃い肌色の胸が大きな下級生だ。
「⁈ そんな覚えはございません!」
「えぇいっ! 言い訳は見苦しいぞ、リネット! お前がどんな女か、私には分かっているんだっ!」
「そんなっ!」
レティシアはケンドリックの隣で勝ち誇ったような笑みを浮かべ、リネットを見下ろしていた。胸元が大胆に開いた真っ赤なドレスには、ケンドリックの豊かな金髪を思わせる金の刺繍がたっぷりと施されている。見上げるリネットの瞳には、赤いドレスに包まれたレティシアの豊かな胸越しに、悪意に満ちた彼女の視線が刺さった。
(ケンドリックさまと仲が良いとは聞いておりましたが、男爵令嬢とでは身分の釣り合いもとれませんし。油断していましたわ)
リネットは唇を噛んだ。貴族の世界では駆け引きが重要である。友人たちは彼女にレティシアのことを耳打ちしてくれていた。とはいえ、爵位も重要な意味がある貴族社会でのこと。王太子婚約者であり公爵令嬢でもあるリネットは、男爵令嬢ごとき勝負になどならないと捨て置いたのである。
だが、レティシアの表情を見れば分かる。
(私……はめられたのね)
赤い瞳がリネットを見下ろしている。リネットから見れば、レティシアは可愛くも綺麗でもない。老練な手管を使って欲しいものを手に入れる捕食者のように見えた。どのような手段を使ったのか知らないが、男爵令嬢ごときが公爵令嬢であり王太子婚約者でもあるリネットを追い落としたのだ。
「お前は、もう私の婚約者ではない」
「そんなっ!」
「叫ぶなよ、婚約者だったリネット。見苦しいぞ」
「……」
ケンドリックの中ではすでに、婚約者だったリネットになっている。過去形だ。
(私はもう……王太子の……ケンドリックさまの婚約者ではない……のね……)
物心ついた時から始まっていた王妃教育は、もう意味などない。生徒会の仕事を手伝ったことも、王太子の公務を手伝ったことも、ケンドリックにとっては意味など無かったのだ。冷たい瞳でこちらを見る青い瞳に、リネットは悟った。
(ケンドリックさまにとって私の存在など、その程度のものだったのね……)
ケンドリックが今日まで王太子として過ごしたのと同じくらい、リネットもまた王太子婚約者として過ごしてきたのだ。しかし、その重みについての解釈は異なっていたようだ。それは、自分の立場をわきまえて真剣に取り組んでいたリネットにとっては衝撃的なことであった。
(私は一生懸命、王太子婚約者として務めを果たしているつもりだったのに。ケンドリックさまには、そう映っていなかった、ということだわ。将来の王妃にふさわしい人間になろうと私なりに頑張ってきたつもりだったのに。ケンドリックさまには、そう思って頂けてはいなかった……)
リネットは今まで生きてきた時間の全てが無駄になったように感じた。努力の先には、何も無かったのだ。王妃としての役目も。ケンドリックの妻という役割も。
(もうすべて過去なのだわ……私には何も求められてはいない……)
「私は愛するレティシア・スカルノ男爵令嬢と共に生きる。お前と生きることはない」
だとしたら、リネットは何のために頑張ってきたのだろうか。
(すべてが無駄だった?)
例えそれが事実なのだとしても、リネット自身は認めたくは無かった。公爵令嬢という立場に甘んじることなく未来の王妃としての務めを立派に果たせるように、と、踏ん張ってきた時間はリネットの人生の全て。
(無駄だと思えば、足元から全てが崩れて……私が私でなくなってしまうわ)
リネットは体に力を入れて背筋を伸ばし、キッとケンドリックを睨んだ。
「この婚約破棄を、私の父や国王ご夫妻は承知されているのですか?」
「いや。私ひとりで決めた」
「ならば、婚約破棄のご提案については父と相談の上、ご返事させて頂きますわ」
「それには及ばん」
「えっ?」
ケンドリックはレティシアに目配せをする。
「キミの言った通りだね、レティシア」
「はい、ケンドリックさま」
「リネット、お前は策を講じて何としても婚約破棄を阻止するだろう、と、レティシアが言っていた。その通りだったようだ」
「なっ……」
(父と相談することが策を講じる? 何をおっしゃっているのかしら、ケンドリックさまは。貴族の結婚が家長の意思次第なのは当然のことですわ)
「我が父である国王陛下やお前の父君であるセナケリア公爵殿が出て来れば、婚約破棄など撤回されてしまうかもしれない。私はそれが嫌なのだ、リネット。お前の手の平で転がされる人生などまっぴらだ」
「そんなこと……」
「お前は自分の優秀さを鼻にかけ、有能さを遺憾なく発揮し、私の立場を危うくしている。お前は有能令嬢で、私は不出来な王太子。皆にそう思われていることに気付いてないのか?」
「そんな……誤解ですわ」
リネットの表情を眺めていたケンドリックはチッと舌打ちをすると、苦々しい口調で言う。
「やっぱり、気付いてはいるんだな。なのに、それで良いと思っている。お前がそう考えているのは、傲慢さゆえだ」
「あっ……」
(私が……傲慢?)
壇上から自分を見下ろすケンドリックの冷たい視線に、リネットは膝から崩れ落ちそうになる。それでも踏ん張っていられるのは、彼の隣で見下すような視線を送って来る赤毛の女の存在があるからだ。
(あんな下劣な男爵令嬢に、私が負けるだなんて……)
視線を下げれば、ピカピカに磨かれた床に惨めな令嬢の姿が映っている。リネットは一刻でも早く自宅に帰り、安心できるベッドの上でひとり泣きたかった。
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「まぁ!」
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「それは、どのような意味ですの?」
「そのままの意味だ」
ケンドリックはリネットの侍女がサッと動くのを見て取ると手で制し、言う。
「……あ、侍女。お前は残れ。行くのはリネットひとりだ」
「えっ⁈」
驚きに目を見張るリネットに、ケンドリックは冷淡な笑みを向けた。
「お前はズルいからな。既成事実を作って完膚なきまでに潰しておかないと。また私の婚約者に返り咲いて貰っては困る」
「なんですって⁈」
「リネット。もう戻ってこなくていいぞ」
ケンドリックは、ニヤリと笑った。その笑みはリネットの背筋を凍らせる。
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