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繋がろうと思えばインターネットがなくても繋がれる。全部オレのせいにするなよと、インターネットがいたら言うだろう。人間なんてみんな勝手だ。言いたいように言うし、思いたいように思う。アンタはいつも勝手だと、勝手に決めつけて出ていったのは、母親だったか、父親だったか。いずれにせよ、もうどちらもいない。私は独りだ。ヒューヒューと音がする。それは風の音か、それとも呼吸器の音か。自分で上げている音か、機械が上げる音か。分からない、分からない。もう全て分からない。分からないまま消えてしまおう。消えてしまえるのならば。人間、そう簡単に消えることなどできないし、死ぬことも難しい。死にたくない時には死んで、死にたいときには死ねないものだ。だからどうということもなく、ただそういうものだと教えられるだけ。それを思い知っていくだけ。時が流れていくなかで知ることは少なく、思い知らされることは沢山ある。絶対に動かないことの幾つかのなかに死は入っているというのに自分で決められないという理不尽。それを思い知るための時間。それが人生。だからどうということもなく時間は過ぎる。ノイズ、ノイズ。ここは底冷えのする世界。明日は真っ暗でも来る。明日が来ることが恐いんじゃない。真っ暗な中で目覚めることが恐いのだ。恐怖は恐怖でしかないし、恐怖を乗り越えて何か目覚ましいものがあるだろうか。いや、ない。真っ暗な中で目覚めたら意識があるだけで何もできないし、何もできないのでは恐怖に包まれるしかないだろう。再び寝られたらいいけれど、真っ暗であることを自覚した後ですんなり眠りにつけるとも思えない。真っ暗であることを知るには目覚めなければいけないけれど、それを確認するくらいなら安らかに眠り続けていたほうが楽だ。それなのに、なぜ目覚めなければいけないのか。寝ていたらいいじゃないか。とはいえ、それも無理なことで人間は眠り続けることなどできない。眠り続けられる時が来たとしたら、それは死。死にたいわけじゃない。真っ暗であることを知りたくないだけだ。それは勝手なことだろうか。勝手に真っ暗になる方が悪いのではなかろうか。暗いよりも明るいほうがいいし、寒いよりも暖かいほうがいい。それが普通ではないのか。普通ってなんだ。普通ではあることは勝手であることとは真逆だ。勝手であることが普通だったら、この世の全てが普通に勝手だ。いや皆が勝手なのであれば、普通であることが勝手であることか。勝手とはなんだ。勝手が当たり前なら普通で不変。なんだ、私は普通で普遍だったのか。それならば安心だ。暗闇の中でも眠れる。砂嵐。ノイズ、ノイズ。
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