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宇宙船のお迎え

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「さて。そろそろ我が家に帰りまっか。」
「えー、まだいいでしょー」
「あーごめんでっせ、ハルカはん。この子には、わてだけでのぉてほかにも家族がおりまんねん。心配してると思いまっから、ごめんなさいね」
「そっかー」

 ハルカはシュンとして元気がなくなった。

「また来ますから。そんときは遊んでやってくださいな」

 そうクロが言うとハルカは激しく頷き、元気を取り戻した。マスミとリオも目を輝かせる。

「ホント? ワタシ、待ってるからね?」
「はいぃ~。そん時は仲良くしてください」
「待ってるよ」
「またね。ミュルちゃん。クロちゃん」
「それでは、おいとましますー」

 クロがそう言うと、さっきまで晴れ渡っていた空に突然、灰色の雲がモクモクと盛り上がり始めた。

「おっ?」
「何?」
「え、今日の天気予報は晴れのハズよ」

 ハルカとマスミとリオは、空を見上げた。灰色の雲は外から何かを隠すように盛り上がっていく。そして予想通り、隠しておくべきものは現れた。薄暗い雲の奥に何やら光るものがクルクルと回りながら飛んでいるのが見えた。その光る何かは、遠くからグイグイこちらの方にやってくる。まぶしい光はグルングルン回りながらハルカたちの頭上で止まった。

「おお」
「これは」
「宇宙船ね」

 光の中に銀色の船体がチロリと見えて、ハルカとマスミとリオは、顔を上に向けたまま口をポカンと開けた。明るい光がグルグル回る、その中央。丸い銀色の宇宙船の底が幾つかの板状に分かれたと思った瞬間、ゆっくりと円を描くように縮みながら開いていく。その隙間から、まぶしい光がピカッと瞬いた。光は何本かのスジに分かれていく。棒状になった光が次に目指したのは地上だった。柱が立つように、光のスジが地面目指してスゥーっと伸びた。

「アニメだ」
「映画だ」
「小説みたい」

 溜息をつきながら、それぞれに感想を口にした。

「ほいなら。また、お会いしましょ~」
「ミュ~ル」

 猫と犬が光の柱のなか、吸い込まれるように空へと昇っていく。なんというファンシーな光景だろう。ハルカたちは、ホワホワした笑顔を浮かべながら手を振り、その姿を見送った。
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