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第9話 秘密
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オレは疑問だらけだ。
それでも質問1つせずに、父さんの後について家令の部屋へと来た。
オレたちが中に入ると、父さんはしっかりと鍵をかけた。
「防音の魔法もかけた。もう話せる」
「父さんっ!」
オレは父さんに抱き着いた。
質問はいくらでもあるが、まずは抱きしめて安全を確認したい。
抱きしめた父さんの体は温かい。
生きてる。
オレの目からはドワァァァと涙が溢れた。
視界は滲んでいるが、父さんが笑っているのが分かった。
「本当にジャービットは泣き虫だな」
「うっうっ……とお……」
否定したいが言葉が嗚咽で出てこない。
「このままでは説明できない。まずは泣き止んでおくれ」
父さんは抱き着いていたオレの腕を外した。
オレは涙を拭いて、クッと奥歯を噛み締めた。
父さんはくしゃっと眉根を下げると、情けなさそうに言う。
「感動の再会、と言いたいところだが、ジャービット。父さんは、もう死んでいる」
「……え?」
オレは間抜けな声を出した。
「父さんとイリーナさま、そしてファウスト辺境伯さまは、先ほどの騒ぎで死亡した。お前の見た通りだ。あれは夢ではない」
「ふぇ?」
オレは間抜けな声を出した。
それが本当なら、今目の前にいる人は誰だ?
「ここにいるのはお前の父ではあるが、死んでいる。ほら、ココを触ってご覧」
父さんはオレの右手を握ると、そのまま自分の胸に当てた。
「……え⁉」
「動いていないだろう?」
父さんは悲しげに言った。
父さんの体は温かいが、心臓は動いていなかった。
「リリアーナさまの魔力は膨大だ。ジャービット。あの方のなかには、とてつもない力がある。まだ生まれたばかりで何も分からないまま、死んだご両親と私の魔法回路へ働きかけ、生き返らせてしまった」
「えっ⁉」
オレは驚いた。
物語としてそんな話を聞いたことはあるが、作り話だ。
実際にできるなんて話は聞いたことがない。
「私たちは、リリアーナさまが無意識に作っている結界内で生きている。生かされているんだ。おそらく、この結界から外に出れば、死んでしまうだろう。実際のところは試してみないと分からないが、試してみる勇気は父さんにはないよ」
「父さん……」
オレは母さんに続いて父さんも失ってしまうのか?
そうなれば天涯孤独だ。
「まだお前には、結界の存在も感じられないだろうがな」
「うん」
全く分からない。
もともと辺境伯家の周囲には厳重に結界が敷かれている。
リリアーナさまが展開している結界の存在は分からない。
「この秘密を知るのは、旦那さまとイリーナさま、それと猫だ」
「猫?」
「お前が拾ってきた子猫だよ。リリアーナさまが魔法を発動した時に、あの部屋にいた。そして従魔として契約も済ませたようだった」
オレは猫のことを思い返してみた。
たしかに不自然な成長を遂げていた白猫を。
「リリアーナさまは防衛本能で、自分に役立つ存在へ魔力を分け与えた。我々は、もともとリリアーナさまを守るつもりだったからね」
「あの短期間に?」
「そう。あの短時間に、だ」
襲撃があってからオレがリリアーナさまを連れて逃げだすまで、1時間もなかっただろう。
その間に、結界を張って、父さんと両親を蘇生させ、猫と契約を結んで従魔にしたのか。
しかも、生まれたての状態で。
「リリアーナさまは……化け物?」
「ファウスト辺境伯の血筋だ。かなり濃くはあるけれど。何も知らない人間から見れば、お嬢さまは化け物と近い存在に映るだろう。だからこそ、守らなければならない」
父さんは真剣な顔をした。
オレは口元をキュッと引き結んだ。
「私も、ファウスト辺境伯ご夫妻も。実際には死んでいる。お嬢さまを守らなければいけないが、既に死んでいる以上、どこまでやれるか分からない。そこで重要になるのがお前の存在だ」
父さんはオレの目をしっかりと見て言う。
「お嬢さまを守るんだ、ジャービット。それが出来るのはお前だけだ」
「でも父さん。オレにそんな力は……」
「周りを見ろ、ジャービット」
オレは言われるまま家令の部屋を見回した。
「ここにある魔法道具は全てお前が引き継ぐ。私たちの家系は、魔力量そのものは少ないが魔法道具を使う技術には長けている。大丈夫だ、ジャービット。お前ならできる」
「父さん……」
オレは不安と悲しみで心の中がいっぱいになっていくのを感じながら、父さんを見上げた。
「大丈夫だ、ジャービット。今すぐお別れというわけじゃない。教えられるだけ教えていくから、がんばれ」
オレは父さんの目を見ながらコクンと頷いた。
それでも質問1つせずに、父さんの後について家令の部屋へと来た。
オレたちが中に入ると、父さんはしっかりと鍵をかけた。
「防音の魔法もかけた。もう話せる」
「父さんっ!」
オレは父さんに抱き着いた。
質問はいくらでもあるが、まずは抱きしめて安全を確認したい。
抱きしめた父さんの体は温かい。
生きてる。
オレの目からはドワァァァと涙が溢れた。
視界は滲んでいるが、父さんが笑っているのが分かった。
「本当にジャービットは泣き虫だな」
「うっうっ……とお……」
否定したいが言葉が嗚咽で出てこない。
「このままでは説明できない。まずは泣き止んでおくれ」
父さんは抱き着いていたオレの腕を外した。
オレは涙を拭いて、クッと奥歯を噛み締めた。
父さんはくしゃっと眉根を下げると、情けなさそうに言う。
「感動の再会、と言いたいところだが、ジャービット。父さんは、もう死んでいる」
「……え?」
オレは間抜けな声を出した。
「父さんとイリーナさま、そしてファウスト辺境伯さまは、先ほどの騒ぎで死亡した。お前の見た通りだ。あれは夢ではない」
「ふぇ?」
オレは間抜けな声を出した。
それが本当なら、今目の前にいる人は誰だ?
「ここにいるのはお前の父ではあるが、死んでいる。ほら、ココを触ってご覧」
父さんはオレの右手を握ると、そのまま自分の胸に当てた。
「……え⁉」
「動いていないだろう?」
父さんは悲しげに言った。
父さんの体は温かいが、心臓は動いていなかった。
「リリアーナさまの魔力は膨大だ。ジャービット。あの方のなかには、とてつもない力がある。まだ生まれたばかりで何も分からないまま、死んだご両親と私の魔法回路へ働きかけ、生き返らせてしまった」
「えっ⁉」
オレは驚いた。
物語としてそんな話を聞いたことはあるが、作り話だ。
実際にできるなんて話は聞いたことがない。
「私たちは、リリアーナさまが無意識に作っている結界内で生きている。生かされているんだ。おそらく、この結界から外に出れば、死んでしまうだろう。実際のところは試してみないと分からないが、試してみる勇気は父さんにはないよ」
「父さん……」
オレは母さんに続いて父さんも失ってしまうのか?
そうなれば天涯孤独だ。
「まだお前には、結界の存在も感じられないだろうがな」
「うん」
全く分からない。
もともと辺境伯家の周囲には厳重に結界が敷かれている。
リリアーナさまが展開している結界の存在は分からない。
「この秘密を知るのは、旦那さまとイリーナさま、それと猫だ」
「猫?」
「お前が拾ってきた子猫だよ。リリアーナさまが魔法を発動した時に、あの部屋にいた。そして従魔として契約も済ませたようだった」
オレは猫のことを思い返してみた。
たしかに不自然な成長を遂げていた白猫を。
「リリアーナさまは防衛本能で、自分に役立つ存在へ魔力を分け与えた。我々は、もともとリリアーナさまを守るつもりだったからね」
「あの短期間に?」
「そう。あの短時間に、だ」
襲撃があってからオレがリリアーナさまを連れて逃げだすまで、1時間もなかっただろう。
その間に、結界を張って、父さんと両親を蘇生させ、猫と契約を結んで従魔にしたのか。
しかも、生まれたての状態で。
「リリアーナさまは……化け物?」
「ファウスト辺境伯の血筋だ。かなり濃くはあるけれど。何も知らない人間から見れば、お嬢さまは化け物と近い存在に映るだろう。だからこそ、守らなければならない」
父さんは真剣な顔をした。
オレは口元をキュッと引き結んだ。
「私も、ファウスト辺境伯ご夫妻も。実際には死んでいる。お嬢さまを守らなければいけないが、既に死んでいる以上、どこまでやれるか分からない。そこで重要になるのがお前の存在だ」
父さんはオレの目をしっかりと見て言う。
「お嬢さまを守るんだ、ジャービット。それが出来るのはお前だけだ」
「でも父さん。オレにそんな力は……」
「周りを見ろ、ジャービット」
オレは言われるまま家令の部屋を見回した。
「ここにある魔法道具は全てお前が引き継ぐ。私たちの家系は、魔力量そのものは少ないが魔法道具を使う技術には長けている。大丈夫だ、ジャービット。お前ならできる」
「父さん……」
オレは不安と悲しみで心の中がいっぱいになっていくのを感じながら、父さんを見上げた。
「大丈夫だ、ジャービット。今すぐお別れというわけじゃない。教えられるだけ教えていくから、がんばれ」
オレは父さんの目を見ながらコクンと頷いた。
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