【完結】冷遇された瘴気払いの夜伽聖女は、召喚した呪われ王子に溺愛される

天田れおぽん

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第一話 ファーストダンス

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 甘く、甘くささやいて。
 あなたの優しい欲望を、そっと私の耳元で。
 甘く、甘くささやいて。
 きっと叶えてあげるから。
 だから、お願い。ささやいて。
 あなたの望みを、ささやいて――――

「あっ……うっ……えっ? ふっ……」

 震える桜色のぷっくりした唇から、甘い喘ぎが零れ落ちる。

「ん? レイチェル、何かな?」

 高めだが甘くセクシーな男の声が、レイチェルの耳に注ぎ込まれる。

「うぅん……あんっ」
「はっきり言ってくれないと、分からないよ」
「ちょっ、ちょっと待ってぇ……クロイツさまぁ~」

(あぁん。クロイツさまが、テクニシャンすぎるっ)

 初めての夜伽に、レイチェルが気持ちはもちろん、体もついて行けていないことに気付きながらも、素知らぬふりをするクロイツが愛しいけれど憎らしい。
 そんなレイチェルの気持ちを知ってか知らずか、クロイツは端正な唇を少し意地悪く歪めながら、いやらしく、ささやく。

「ん? レイチェル。ぼくは、何を待てばいいのかな?」
「あっ……」

 大きなベッドの上で膝立ちになったレイチェルは、クロイツの一糸まとわぬ体にすがるように両腕を回している。
 体をわななかせる裸のレイチェルには頼るものなど何もなく、クロイツの引き締まった体にすがるしかなかった。
 体温が近い。
 
(あ……あぁ、逞しい背中。えっと……わたしの手はどこへ置いたらいいの?)

 レイチェルの細くて白い両腕はクロイツの逞しい背中に回されているが、両手の指はどこにつかまるべきか迷うようにフワフワと彷徨っていた。
 クロイツの白く大きな手が、レイチェルの淡くピンクに染まるしなやかな背中を辿る。
 右手で彼女の背中を抱え、左手は更に下を目指して妖しく指をうごめかせながら降りていく。

「ンンッ……」
 
 レイチェルはたまらなくなって、色っぽい声を上げてしまうのだ。

(あん……恥ずかしい)

 彼女の感情に合わせるように、白い肌がサッと朱を帯びる。
 レイチェルの体には、その華奢さには見合わない立派な乳房がついている。
 ピンク色の長い髪を振り乱して背中を反らせれば反らせるほど、その豊かな胸は存在感を増すのだ。
 クロイツはゴクリと唾を呑み込むと、色素の薄い端正な唇を豊かな膨らみへと滑らせた。

「んぁっ!」

(あ……やんっ、そんな……え?)

 豊かな膨らみの先端をクロイツの唇に軽くつままれて、レイチェルは目を見開いて体を跳ねさせた。

(これは……なに?)

 甘い疼きに背中をわななかせたレイチェルのアメジスト色の瞳に、生理的な涙が薄っすらと浮かぶ。
 その顔を満足そうに、そして愛しげに覗き込んだクロイツは、レイチェルのシュッと締まった顎の先にチュッと音をたててキスをした。
 そして、彼女の耳元で何かをささやく。

「え?……あん」

 レイチェルは聞き取れなかった彼の欲望を、慌ただしく自分の口から上がる甘い喘ぎの合間を縫って、かすれる声で聞いた。

「いま、ンン……なんとおっしゃったの? クロ……いえ、クロイツさま」
「ん……君のなかに入りたい」

 クロイツは切なげな声で告げると、甘えるようにレイチェルの胸元へツヤツヤと輝く金髪を擦り付ける。
 敏感な胸の先を刺激されたレイチェルは、ぷっくりした唇をローズピンクに染めながら甘い声を上げた。
 
「はぁ~……んん」
「君のなかに、入りたいんだよ。レイチェル」
 
 金色の瞳に切羽詰まった欲望の色を浮かべて、クロイツはレイチェルを覗き込む。
 そして左手の指先を、入りたい先へと潜らせた。
 濡れた音とレイチェルの嬌声が重なって響く。

「アァァァンン」

 のけぞる白い首元へ、クロイツが唇を落とす。
 膝立ちになったレイチェルの太ももの間からは、クロイツの愛を求めて蜜が滴り落ちた。
 白い太ももをゆっくりと伝い落ちていく蜜は、クロイツを受け入れる準備が整った合図でもあり、レイチェルの欲望でもある。

(お腹の中が熱い)

 レイチェルは、いっぱいいっぱいになって喘ぎながらも、少しでもセクシーに聞こえるようにささやいた。

「あふっ……いいわ、わたしの王子さま。来て」
「ふふ。合意してもらって受け入れてもらえるの、エロいね」

 艶めいた笑みを浮かべるクロイツに、レイチェルの背中は淫らに揺れた。
 クロイツはレイチェルの背中を抱いて、ゆっくりとベッドの上へと寝そべらせる。
 自分がその両足の間へと収まるようにすることも忘れない。
 細く締まってはいるが、筋肉のしっかりついたクロイツの体は、女性であるレイチェルに比べたら大きい。
 それでも柔軟なレイチェルの体は容易に両足を広げてクロイツの体を受け入れた。
 寝そべらせたレイチェルの体の真ん中、蜜の滴る侵入口に緩く右手の指先を潜らせながら、クロイツはささやく。

「大丈夫だと思うけれど……痛かったら言ってね、ぼくの愛する夜伽聖女……」
「ん、はい……」

 恥じらいに揺れながらレイチェルは、消え入るような声で答えて頷いた。

「あんっ……クロイツさまは慣れていらっしゃるから、ンンッ……心配などしていませんわ……ぁあんっ」

 喘ぎながら必死に伝えるレイチェルを笑顔を覗き込んだクロイツは、近くにあったクッションを引き寄せると、レイチェルの細い腰を持ちあげ、その下に入れた。
 クロイツはピンク色の髪を愛しげに撫で、アメジスト色の瞳を覗き込む。
 そしてサッと身をかがめ、自分の顔で彼女の顔を撫でるようにしながら、隣に持っていった。
 セクシーな声が秘密を打ち明けるように、レイチェルの耳元でささやく。

「ん、ご期待にそえなくて悪いが、ぼくも初めてだ」
「ぁぁ……えっ⁉」

 動揺した隙を突くように、体を起こしたクロイツは高ぶる己自身をレイチェルの中へと一気に収めた。

「あぁっ!」

 あまりの衝撃にレイチェルは背中を反らせて驚きの声を上げた。

「ん、ごめん、痛かったね。ごめんね」

 クロイツは嬉しそうにレイチェルの細い体を抱き込むようにしながら、彼女の額に、頬に、鼻先にとあちらこちらに宥めるようなキスを落とした。

「あぁ~んっ」

 悲鳴のような、甘えるような高い声を上げるレイチェルの唇に、クロイツのそれが重なる。
 レイチェルは喘ぐように彼の唇を、その存在を求めて、クロイツの背中へと細くしなやかな腕を回す。
 淫らな声と音とか入り交じり、セクシーな香りが部屋へと満ちていく。
 初めてとは思えないほど甘く官能的に、二人の時間が重なって、それは未来へと繋がっていくのだ。
 レイチェルの額から全身へと繋がっていく、ピンク色に発光している聖女紋と同じように。

 だが、ギシギシと軋むシルクのシーツのかかった大きなベッドも、広くてしっかりとした装飾が施されている部屋も、レイチェルとクロイツの夜伽のために用意されたものではない。
 レイチェルと別の王族が使うために用意されたものだ。
 だというのに。

「クロイツさま……わたしの王子さま」
「ああ、そうだよレイチェル。ぼくは君の王子さまで、君は……ぼくの夜伽聖女だ」

 2人は熱くピッタリと結ばれた。
 なぜこんなことになってしまったのか。
 話は数日前に遡るのだった。
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