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第51話 土曜日の説教
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わたしは執筆をお休みして、無事に1週間の仕事を終えた。
月曜日から金曜日まで、ノー残業デーの呑気なお仕事です。
シゴデキお姉さまが、少し難易度の高い仕事は引き取ってくれたので、わたしは雑用係寄りの事務員として頑張った。
頑張ったのは本当です。
信じてください。
そんなこんなで1週間のお勤めを終えたわたしは、当たり前のような顔をして久美子の家へと来ていた。
「もうっ。聞いたわよ、明日香。倒れたんですって⁉」
美香が目を吊り上げて言う横で、久美子も心配そうな表情を浮かべている。
「大丈夫なの? 体が資本なのにっ」
玄関あけたら二歩でわたしは、久美子と美香に挟まれてしまった。
わたしは2人に比べると身長が少し低い。
両手に花、両側におっぱいである。
ぎゅうぎゅうに挟まれて、撫でまわされた。
わたしは猫か⁉
とは思いつつも、悪い気はしないのが人間の弱いところだ。
いい匂いがして、柔らかくて、温かいものは良いものだ。
「あれだけ無理しちゃダメって言ったのに」
美香に軽くペンッとデコピンされてしまった。
「本当にそうよ。倒れたらお小遣い稼ぎどころじゃないでしょ?」
久美子には頬っぺたをムニッと両手でつかまれてしまった。
「心配かけてごめんなしゃい」
頬っぺたをムニムニされながら言ったので変な発音になってしまったが、わたしは2人に謝った。
せっかく協力してもらったのに、心配をかけたのはよくない。
「無理したつもりはなかったんだけど……」
わたしの言い訳じみた言葉を聞いた美香が、綺麗に整えた眉毛を跳ね上げる。
「無理したつもりがなくてもダメ。それは無理していたってことよ。いつもとは違う生活パターンだったんだから」
「はい……」
美香の言う通りだ。
無理をしているつもりがなくても、生活パターンが普段とは違ってしまう。
わたしは、もっと用心するべきだったのだ。
「執筆って意外と体を使うから、疲れちゃうのよ。頭も使うし、目も疲れるし。文字を書けば肩も凝るし、集中していると椅子から立ち上がることもなく1時間、2時間と時間が経っていたりするから。普段よりも多く休むようにしないとね」
「あい……」
久美子の言うとおりである。
もう少し余分に休んでいれば、倒れることもなかったかもしれない。
「動画見たり、漫画読んだりしている時間は、休んだうちに入らないからね? 体力付けるといっても、すぐにマッチョになれるわけじゃない。ちゃんと休息をとらないと」
「そうよ、明日香。私たちはあなたが寿命を縮めていい、なんて思ってないから。楽しく生きるために協力しているのだから、そこは忘れないで」
美香と久美子に畳みかけるように言われて、わたしはコクリとうなずいた。
2人の協力がなければ、書籍化作業なんて物珍しいものに携わることもなかっただろう。
わたしが倒れたことは、恩を仇で返すようなものだ。
心の底からわたしは反省した。
「心配かけてごめんなさい」
わたしは2人に頭を下げた。
下げた頭を2人がかりでグチャグチャに髪の毛を混ぜるように撫でられて、ようやくわたしは解放された。
そしていつものようにお茶をする。
わたしはお詫びの品として、いつもよりも豪華にフルーツの盛られたケーキをテーブルの上に出す。
久美子が美味しい紅茶を入れてくれた。
美香は高級なチョコレートを持参していた。
「チョコレートはお薬だから。ほら、明日香。お家でも食べてね」
私は美香から、テーブルに置かれた物より少し小さな箱を渡された。
わたしは2人から小説家の体調管理の方法などを伝授されながら、いつものように楽しい土曜日を過ごしたのだった。
月曜日から金曜日まで、ノー残業デーの呑気なお仕事です。
シゴデキお姉さまが、少し難易度の高い仕事は引き取ってくれたので、わたしは雑用係寄りの事務員として頑張った。
頑張ったのは本当です。
信じてください。
そんなこんなで1週間のお勤めを終えたわたしは、当たり前のような顔をして久美子の家へと来ていた。
「もうっ。聞いたわよ、明日香。倒れたんですって⁉」
美香が目を吊り上げて言う横で、久美子も心配そうな表情を浮かべている。
「大丈夫なの? 体が資本なのにっ」
玄関あけたら二歩でわたしは、久美子と美香に挟まれてしまった。
わたしは2人に比べると身長が少し低い。
両手に花、両側におっぱいである。
ぎゅうぎゅうに挟まれて、撫でまわされた。
わたしは猫か⁉
とは思いつつも、悪い気はしないのが人間の弱いところだ。
いい匂いがして、柔らかくて、温かいものは良いものだ。
「あれだけ無理しちゃダメって言ったのに」
美香に軽くペンッとデコピンされてしまった。
「本当にそうよ。倒れたらお小遣い稼ぎどころじゃないでしょ?」
久美子には頬っぺたをムニッと両手でつかまれてしまった。
「心配かけてごめんなしゃい」
頬っぺたをムニムニされながら言ったので変な発音になってしまったが、わたしは2人に謝った。
せっかく協力してもらったのに、心配をかけたのはよくない。
「無理したつもりはなかったんだけど……」
わたしの言い訳じみた言葉を聞いた美香が、綺麗に整えた眉毛を跳ね上げる。
「無理したつもりがなくてもダメ。それは無理していたってことよ。いつもとは違う生活パターンだったんだから」
「はい……」
美香の言う通りだ。
無理をしているつもりがなくても、生活パターンが普段とは違ってしまう。
わたしは、もっと用心するべきだったのだ。
「執筆って意外と体を使うから、疲れちゃうのよ。頭も使うし、目も疲れるし。文字を書けば肩も凝るし、集中していると椅子から立ち上がることもなく1時間、2時間と時間が経っていたりするから。普段よりも多く休むようにしないとね」
「あい……」
久美子の言うとおりである。
もう少し余分に休んでいれば、倒れることもなかったかもしれない。
「動画見たり、漫画読んだりしている時間は、休んだうちに入らないからね? 体力付けるといっても、すぐにマッチョになれるわけじゃない。ちゃんと休息をとらないと」
「そうよ、明日香。私たちはあなたが寿命を縮めていい、なんて思ってないから。楽しく生きるために協力しているのだから、そこは忘れないで」
美香と久美子に畳みかけるように言われて、わたしはコクリとうなずいた。
2人の協力がなければ、書籍化作業なんて物珍しいものに携わることもなかっただろう。
わたしが倒れたことは、恩を仇で返すようなものだ。
心の底からわたしは反省した。
「心配かけてごめんなさい」
わたしは2人に頭を下げた。
下げた頭を2人がかりでグチャグチャに髪の毛を混ぜるように撫でられて、ようやくわたしは解放された。
そしていつものようにお茶をする。
わたしはお詫びの品として、いつもよりも豪華にフルーツの盛られたケーキをテーブルの上に出す。
久美子が美味しい紅茶を入れてくれた。
美香は高級なチョコレートを持参していた。
「チョコレートはお薬だから。ほら、明日香。お家でも食べてね」
私は美香から、テーブルに置かれた物より少し小さな箱を渡された。
わたしは2人から小説家の体調管理の方法などを伝授されながら、いつものように楽しい土曜日を過ごしたのだった。
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