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第52話 日曜日の家族団らん
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「よく寝たぁ~」
わたしはベッドの上で伸びをしながら、ベッドサイドにある時計をチェックした。
8時をちょっとすぎたあたり。
日曜日にしては少し早起きだ。
ベッドのなかで体を右に左にと転がしながら、今日の予定を考える。
「今日も執筆は、お休みかなぁ……」
流石に親友2人からの説教はこたえた。
無理はいけない。
「ちょうど一区切りついたとこだし。投稿サイトでの連載は後回しにして、校正紙が来るまでお休みしてもいいか」
小説を書くのは楽しいが、わたしの本業は事務員という名の何でも屋だ。
無理はいけない。
25万くらい稼いで、経費を使って、税金かからないくらいでちょうどいい。
「今回の騒ぎで有給を3日も使っちゃったし」
金銭的な損が生じたわけではないが、それでもダメージはある。
「お金があっても有給がないと、推しのための遠征に行きにくくなる」
平日に休める権利は貴重だ。
推しのために使う有給は、健康にいい。
命の洗濯ができて寿命が延びる。
「でも今回は寿命縮むところだったもんなー。入院するほどでもなかったけどさー。危なかった」
入院となったらおおごとだ。
会社も休まなければならないし、お金もかかる。
家族にも心配をかけたし、美香たちにも怒られた。
「これからはペースを落とさなきゃ。世の中にはバリバリ働いて、子育てしながらバンバン書籍化している小説家さんもいるけど。体力は個人差があるもんね。わたしにあのペースは無理ぃ~」
世間的には、かなり甘えた環境下にいる兼業小説家という自覚はある。
だからちょっと頑張ってみたが、わたしには無理なのだ。
無理なものは仕方ない。
「マイペースで長く書くほうがいいって、久美子も言ってたし。わたしは、わたしらしくいく~」
とはいえ、web小説家なんて吹けば飛ぶような存在である。
次の仕事なんてあるかどうかわからない。
「わたしが書いているのは、異世界恋愛ファンタジーだから。コミカライズ原作を狙うという手もあるって美香に言われたなぁ~。無理のないスケジュールでイケるなら、わたしもやってみたいけど。仕事とれるのかなぁ? よくわかんない」
そのせいで焦りがあったのでは、と美香に指摘された。
「でも美香によると、わたしは他のジャンルもいけそうだから気にするな、ということらしいし。うーん。やっぱりマイペース。マイペースで行こう。つか、マイペースを作らないといけない段階かな?」
先は長い。
焦る必要はない。
わたしはエイッと起き上がると、着替えを持って一階へと降りた。
ダイニングキッチンでは両親が朝食を食べていた。
わたしに気付いた父がこちらを見る。
「おや、明日香。おはよう。もう起きたのか?」
「うん、起きた。おはよう」
「おはよう、明日香。あなたの分の朝ご飯、急いで準備するわね」
母はそう言って台所へと向かった。
「おはよ。別に慌てなくていいし、そのくらい自分でできるよ」
わたしの言葉など耳に入らなかったかのように母はキッチンでお味噌汁をお椀につけている。
我が親ながら、わたしに甘々すぎると思う。
そしてわたしは、やってもらえることはやってもらう主義だ。
顔を洗って着替えると、わたしはいつもの席に座った。
向かいの席に座っている父がニヤニヤしながら聞く。
「それで、明日香。今日は出かけないのか?」
最近、父は揶揄うようなニヤニヤ笑いを浮かべてわたしをよく見る。
「うん。久美子たちとは昨日会ったから」
「じゃなくてさ……佐々木君、だっけ? 送り迎えしてくれた会社の人」
「うん。会社の人」
わたしの朝食を持ってきた母も、父と似たようなニヤニヤ笑いを浮かべている。
よく似た夫婦だ。
わたしは箸を手に取ると、それ以上は何も言わずに黙々と朝食を食べた。
わたしはベッドの上で伸びをしながら、ベッドサイドにある時計をチェックした。
8時をちょっとすぎたあたり。
日曜日にしては少し早起きだ。
ベッドのなかで体を右に左にと転がしながら、今日の予定を考える。
「今日も執筆は、お休みかなぁ……」
流石に親友2人からの説教はこたえた。
無理はいけない。
「ちょうど一区切りついたとこだし。投稿サイトでの連載は後回しにして、校正紙が来るまでお休みしてもいいか」
小説を書くのは楽しいが、わたしの本業は事務員という名の何でも屋だ。
無理はいけない。
25万くらい稼いで、経費を使って、税金かからないくらいでちょうどいい。
「今回の騒ぎで有給を3日も使っちゃったし」
金銭的な損が生じたわけではないが、それでもダメージはある。
「お金があっても有給がないと、推しのための遠征に行きにくくなる」
平日に休める権利は貴重だ。
推しのために使う有給は、健康にいい。
命の洗濯ができて寿命が延びる。
「でも今回は寿命縮むところだったもんなー。入院するほどでもなかったけどさー。危なかった」
入院となったらおおごとだ。
会社も休まなければならないし、お金もかかる。
家族にも心配をかけたし、美香たちにも怒られた。
「これからはペースを落とさなきゃ。世の中にはバリバリ働いて、子育てしながらバンバン書籍化している小説家さんもいるけど。体力は個人差があるもんね。わたしにあのペースは無理ぃ~」
世間的には、かなり甘えた環境下にいる兼業小説家という自覚はある。
だからちょっと頑張ってみたが、わたしには無理なのだ。
無理なものは仕方ない。
「マイペースで長く書くほうがいいって、久美子も言ってたし。わたしは、わたしらしくいく~」
とはいえ、web小説家なんて吹けば飛ぶような存在である。
次の仕事なんてあるかどうかわからない。
「わたしが書いているのは、異世界恋愛ファンタジーだから。コミカライズ原作を狙うという手もあるって美香に言われたなぁ~。無理のないスケジュールでイケるなら、わたしもやってみたいけど。仕事とれるのかなぁ? よくわかんない」
そのせいで焦りがあったのでは、と美香に指摘された。
「でも美香によると、わたしは他のジャンルもいけそうだから気にするな、ということらしいし。うーん。やっぱりマイペース。マイペースで行こう。つか、マイペースを作らないといけない段階かな?」
先は長い。
焦る必要はない。
わたしはエイッと起き上がると、着替えを持って一階へと降りた。
ダイニングキッチンでは両親が朝食を食べていた。
わたしに気付いた父がこちらを見る。
「おや、明日香。おはよう。もう起きたのか?」
「うん、起きた。おはよう」
「おはよう、明日香。あなたの分の朝ご飯、急いで準備するわね」
母はそう言って台所へと向かった。
「おはよ。別に慌てなくていいし、そのくらい自分でできるよ」
わたしの言葉など耳に入らなかったかのように母はキッチンでお味噌汁をお椀につけている。
我が親ながら、わたしに甘々すぎると思う。
そしてわたしは、やってもらえることはやってもらう主義だ。
顔を洗って着替えると、わたしはいつもの席に座った。
向かいの席に座っている父がニヤニヤしながら聞く。
「それで、明日香。今日は出かけないのか?」
最近、父は揶揄うようなニヤニヤ笑いを浮かべてわたしをよく見る。
「うん。久美子たちとは昨日会ったから」
「じゃなくてさ……佐々木君、だっけ? 送り迎えしてくれた会社の人」
「うん。会社の人」
わたしの朝食を持ってきた母も、父と似たようなニヤニヤ笑いを浮かべている。
よく似た夫婦だ。
わたしは箸を手に取ると、それ以上は何も言わずに黙々と朝食を食べた。
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