【完結】【小説】web小説で25万円稼ぐには

天田れおぽん

文字の大きさ
54 / 57

第54話 受賞、だと?

しおりを挟む
 わたしは平常心を保ちつつ、淡々と創作と仕事と人間としての最低限やるべきことのバランスをとりながら生活をした。
 ……いや、する予定だった。

「ふぁ? 受賞?」

 思わず変な声が出た。

 新しい日常のリズムが出来たと油断したころにイレギュラーが差し込まれてしまったのだ。

 webで稼ぐには、投稿サイトで読まれたり、書籍化したり、契約作家になったりといった方法がある。

 書籍化したり、コミカライズの原作の仕事を得たりするためには、連載をして拾い上げを待つだけでなく、コンテストに応募して積極的にアピールするという方法もあるのだ。

 タグひとつで簡単に応募できるコンテストも数多くあるため、わたしは気軽に応募した。
 そして応募した事実を半分忘れていた。
 
 忘れていたコンテストで受賞すると、嬉しいという感情よりも、キツネにつままれたような現実味のない化かされたような気分になる。

 とはいえ、嬉しいものは嬉しい。

 わたしは浮かれた。

 受賞したといっても佳作なのでたいしたことはないが、受賞は受賞である。
 税金に悩まない程度ではあるが賞金もあるし、書籍化もされるのだ。

 久美子や美香にも祝ってもらったし、家族にも伝えた。
 会社にも報告をして、シゴデキお姉さまに「無理はしないように」と釘を刺された。

 ……まぁ、無理だね。
 頭では分かっているし、1回やらかしているわけだから本人も気を付けてはいるわけだが。
 無理だね。
 頑張っちゃうね。
 張り切って、無理しちゃうね。

 わたしはコンテストの賞金や、書籍化した際の印税に関する経理的なことを気にかけつつも、改稿に取り組んだ。
 web投稿サイトへの投稿はお休みした。

 でも会社へは休まず行った。
 なるべくいつもと同じような生活パターンを心掛けていた。

 でもね。
 受賞したら浮かれるし、編集さんとの打ち合わせは緊張するし、書籍が出るとなれば張り切ってしまうものなのですよ。
 国立国会図書館へ納本もされるわけですよ。
 そりゃあ下手な物は出したくないですよね。
 
 そこは人情として分かってください。

 わたしは、とってもとっても真面目に改稿へ取り組んだ。
 有給を使おうか、どうしようかと悩んだ日もあった。
 でも使わなかった。

 そして結果としてまた倒れたのだ。

 馬鹿である。

「お前さー。もうちょっと上手に体調管理しろよ」

 佐々木。
 車で送迎してくれるのはありがたいが、説教はやめてくれ。
 分かっているんだ、本人は。
 だがね。分かっているからといって、毎回キチンと出来るわけじゃない。

 君だって社会人だからわかるだろう?
 出来ることと出来ないことの間には、頑張ればどうにかできるものが沢山あるのだよ。

 こうしてわたしの有給は休養のために消え、久美子たちには説教されて、両親のニマニマ笑いは増えた。

 受賞作が無事、出版された頃には、わたしは前の失敗をサクッと水に流して、再び創作を始めたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

橘若頭と怖がり姫

真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。 その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。 高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

処理中です...