4 / 5
第4話 フレイヤのスキル
しおりを挟む
公爵令嬢フレイヤは、スキル持ちである。
冒険者ギルドのあるこの世界では、魔法を使える者は少なくない。
貴族や王族もその例から漏れることはなく、特にボルケーノ公爵家は優秀なスキルを持つ者が出ることで有名だった。
フレイヤが王太子の婚約者に選ばれたのは、生まれ持った魔力量が多く、特殊なスキルを持っていることも大きな理由のひとつだ。
彼女は、魔物から魔核をもぎ取ったり、体が爆散するほどの魔力を放出した者を力ごと封じ込めたり、結果が『ご無体』と言われるほどの極端なことをすることができる。
なお微調整はできない。
そのためスキルを使うことには危険が伴うので滅多に使わないが、いざというときには国王を守ることができる。
魔力量の多さは体力と、スキルの強さは知力と結びついているため、フレイヤは王妃として適した人材だ。
マリウスの暴走でそれが叶わなくなった時、国民はみな残念がった。
そした他国は喜んだ。
「わたしの妻になってくれませんか? フレイヤ嬢」
「お断りします、ユーリーさま」
受付台の前に座ったフレイヤは、穏やかに金髪碧眼美形の他国の王子へ向かって告げた。
「貴女のおかげでわたしの命は救われたのです。この命、貴女を幸せにするために使わせていただけませんか?」
「間に合っています」
冒険者が座るべき場所に座る美貌の王子は、結果としてフレイヤが救った人物だ。
ルビーの弟で、カイロス商会の副会長であるバロールは、ユーリーと面談する予定があった。
表向きは商談ということになっていたが、バロールは真実を見通すことができる魔眼を持っていて、ユーリーを暗殺しようとしている一派をあぶりだすために引っ張りだされていたのだ。
バロールに真実を見通されては困る一派は、彼の暗殺を試みた。
魔核による爆殺を選んだのは、あわよくばユーリーごと始末してしまおうという思惑からだったようだ。
結果的には、バロールの働きによりユーリー暗殺を企てた一派は一掃された。
その感謝の印としてフレイヤに結婚を申しむ者は、ユーリー以外にもいた。
「なら俺のところへ嫁に来ないか?」
「だから間に合っています」
バロールがユーリーを押し退けるようにしてフレイヤの前に座り、彼女の手袋をはめた手を握る。
すると後ろに控えていた執事が一歩前に出て、パロールの指を丁寧に一本一本外すとその手を受付台の上に置き、再び後ろへと下がった。
冒険者ギルドのあるこの世界では、魔法を使える者は少なくない。
貴族や王族もその例から漏れることはなく、特にボルケーノ公爵家は優秀なスキルを持つ者が出ることで有名だった。
フレイヤが王太子の婚約者に選ばれたのは、生まれ持った魔力量が多く、特殊なスキルを持っていることも大きな理由のひとつだ。
彼女は、魔物から魔核をもぎ取ったり、体が爆散するほどの魔力を放出した者を力ごと封じ込めたり、結果が『ご無体』と言われるほどの極端なことをすることができる。
なお微調整はできない。
そのためスキルを使うことには危険が伴うので滅多に使わないが、いざというときには国王を守ることができる。
魔力量の多さは体力と、スキルの強さは知力と結びついているため、フレイヤは王妃として適した人材だ。
マリウスの暴走でそれが叶わなくなった時、国民はみな残念がった。
そした他国は喜んだ。
「わたしの妻になってくれませんか? フレイヤ嬢」
「お断りします、ユーリーさま」
受付台の前に座ったフレイヤは、穏やかに金髪碧眼美形の他国の王子へ向かって告げた。
「貴女のおかげでわたしの命は救われたのです。この命、貴女を幸せにするために使わせていただけませんか?」
「間に合っています」
冒険者が座るべき場所に座る美貌の王子は、結果としてフレイヤが救った人物だ。
ルビーの弟で、カイロス商会の副会長であるバロールは、ユーリーと面談する予定があった。
表向きは商談ということになっていたが、バロールは真実を見通すことができる魔眼を持っていて、ユーリーを暗殺しようとしている一派をあぶりだすために引っ張りだされていたのだ。
バロールに真実を見通されては困る一派は、彼の暗殺を試みた。
魔核による爆殺を選んだのは、あわよくばユーリーごと始末してしまおうという思惑からだったようだ。
結果的には、バロールの働きによりユーリー暗殺を企てた一派は一掃された。
その感謝の印としてフレイヤに結婚を申しむ者は、ユーリー以外にもいた。
「なら俺のところへ嫁に来ないか?」
「だから間に合っています」
バロールがユーリーを押し退けるようにしてフレイヤの前に座り、彼女の手袋をはめた手を握る。
すると後ろに控えていた執事が一歩前に出て、パロールの指を丁寧に一本一本外すとその手を受付台の上に置き、再び後ろへと下がった。
141
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された令嬢、隣国の暴君王に“即”溺愛されていますが?
ゆっこ
恋愛
王都の中心から少し離れた城の塔は、風がよく通る。
その夜わたし――エリスは、豪奢すぎるほどの寝室のバルコニーに出て、夜風を胸いっぱいに吸い込んだ。
「……本当に、ここはわたしの部屋でいいのかしら」
つい昨日まで、わたしは婚約者であったアルノルト殿下からの侮蔑に耐え、社交界で嘲笑され、家族にさえ冷たくされていたのに。
まさか隣国ファルゼンの“暴君王”と呼ばれるレオンハルト陛下に見初められ、護衛兼客人として迎えられるとは、夢にも思っていなかった。
……いや、正確には“客人”などという生易しい扱いではない。
「誰もお前なんか愛さない」と笑われたけど、隣国の王が即プロポーズしてきました
ゆっこ
恋愛
「アンナ・リヴィエール、貴様との婚約は、今日をもって破棄する!」
王城の大広間に響いた声を、私は冷静に見つめていた。
誰よりも愛していた婚約者、レオンハルト王太子が、冷たい笑みを浮かべて私を断罪する。
「お前は地味で、つまらなくて、礼儀ばかりの女だ。華もない。……誰もお前なんか愛さないさ」
笑い声が響く。
取り巻きの令嬢たちが、まるで待っていたかのように口元を隠して嘲笑した。
胸が痛んだ。
けれど涙は出なかった。もう、心が乾いていたからだ。
婚約破棄された令嬢、冷酷と噂の王に拾われて溺愛される
ほーみ
恋愛
白い花びらが散る中、私は婚約者に手を振り払われた。
「もうお前とは終わりだ、リリアーナ。俺はセリーヌと結婚する」
――ああ、やっぱり。
そうなるとは思っていた。けれど、実際に言葉にされると胸が締め付けられる。
「そう……ですか。お幸せに」
「お前みたいな地味な令嬢といても退屈なんだよ。セリーヌのほうが愛らしいし、社交界でも人気だ」
冷徹王子に捨てられた令嬢、今ではその兄王に溺愛されています
ゆっこ
恋愛
――「お前のような女に、俺の隣は似合わない」
その言葉を最後に、婚約者であった第二王子レオンハルト殿下は私を冷たく突き放した。
私、クラリス・エルデンは侯爵家の令嬢として、幼い頃から王子の婚約者として育てられた。
しかし、ある日突然彼は平民出の侍女に恋をしたと言い出し、私を「冷酷で打算的な女」だと罵ったのだ。
涙も出なかった。
あまりに理不尽で、あまりに一方的で、怒りも悲しみも通り越して、ただ虚しさだけが残った。
『お前とは結婚できない』と婚約破棄されたので、隣国の王に嫁ぎます
ほーみ
恋愛
春の宮廷は、いつもより少しだけざわめいていた。
けれどその理由が、わたし——エリシア・リンドールの婚約破棄であることを、わたし自身が一番よく理解していた。
「エリシア、君とは結婚できない」
王太子ユリウス殿下のその一言は、まるで氷の刃のように冷たかった。
——ああ、この人は本当に言ってしまったのね。
婚約破棄された令嬢、なぜか王族全員から求婚されています
ゆっこ
恋愛
婚約破棄の宣言が響いた瞬間、あたりの空気が凍りついた。
「――リリアーナ・フォン・クレメンス。お前との婚約は、ここで破棄する!」
王太子アーロン殿下の声が、舞踏会場に響き渡る。
淡い金髪を後ろでまとめ、誇らしげな顔で私を見下ろしている彼の隣には、黒髪の令嬢――男爵家の娘であるセレナが、哀れみを含んだ目をこちらに向けていた。
……ああ、これ。よくあるやつだ。
舞踏会の場で公開断罪して、庶民出の恋人を正当化するという、古今東西どこにでもある茶番。
「殿下、理由をお伺いしても?」
婚約破棄されたら、実はわたし聖女でした~捨てられ令嬢は神殿に迎えられ、元婚約者は断罪される~
腐ったバナナ
ファンタジー
「地味で役立たずな令嬢」――そう婚約者に笑われ、社交パーティで公開婚約破棄されたエリス。
誰も味方はいない、絶望の夜。だがそのとき、神殿の大神官が告げた。「彼女こそ真の聖女だ」と――。
一夜にして立場は逆転。かつて自分を捨てた婚約者は社交界から孤立し、失態をさらす。
傷ついた心を抱えながらも、エリスは新たな力を手に、国を救う奇跡を起こし、人々の尊敬を勝ち取っていく。
婚約破棄された悪役令嬢、復讐のために微笑みながら帝国を掌握します
タマ マコト
ファンタジー
婚約破棄を突きつけられた公爵令嬢セラフィナ・ロジウムは、帝国中の視線が集まる舞踏会の場で、完璧な笑みを浮かべながら崩壊の瞬間を受け入れる。
裏切った婚約者アウリス皇太子と平民の恋人を祝福するその微笑みの奥では、凍てつくような復讐の誓いが芽生えていた。
爵位と家を奪われ、すべてを失った彼女は、帝国の闇組織「黒翼」の諜報員ラドンと出会い、再び笑顔を武器に立ち上がる。
――奪われたすべてを、今度は自らの手で、静かに取り戻すために。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる