5 / 20
第5話 鬼頭家は賑やか
しおりを挟む
「ごちそうさまでした」
食事を終えた桜は空いた食器を持って流しに向かう。
鬼頭家のキッチンはリフォームにより最近流行りのアイランドキッチンになっているので、家族の顔を見ながら洗い物をすることができるのだ。
ちなみにガスコンロは壁側に設置されていて、そのうえではスペースを贅沢に使うレンジフードがガンガン回っている。
窓を開ければ涼しい田舎の家ではあるが、昨今の夏は暑すぎる。
流石に熱風が吹き抜けていくだけなので窓は閉められていて、エアコンが涼しい風を吹き出していた。
祖父が桜に向かって声をかけた。
「桜~。一服したら、裏山へ行くか?」
「うん、行くっ。今日買ってきた木刀使いたい」
「そうかそうか。なら行くか」
少し遅れて食事を始めた母が釘をさす。
「キチンと食休みしてから行ってね? せっかく作った野菜の吸収が悪くなるから」
「分かってるよー」
桜は笑いながら席へと戻った。
母がハッと何かを思い出して言う。
「あっ、そうだ。桃が冷えてるんだった。桃食べるなら誰か剥いて」
「それなら僕が剥くよ。冷蔵庫のどこにあるの?」
父が笑いながら椅子から立ち上がった。
「冷蔵庫の二段目。真ん中の真ん中にドーンとあるはず」
「ん、あった。三個くらい剥けば足りるかなぁ~」
冷蔵庫から桃を取り出した父は、器用に剥き始めた。
流しは家族から見えるところにあるから、会話しながらサクサクと作業ができるのだ。
「最初に剥いたのは、わたしが食べるっ」
桜が右手を上げると、その横で弟がそうめんをすすりながら叫ぶ。
「あっ、ねーちゃん、ずっこい」
母は落ち着きのない息子をたしなめる。
「楽は先にご飯をちゃんと食べちゃいなさい。しっかり食べないとすぐにお腹すいちゃうわよ? まだナスもあるし、オクラも残っているから食べなさい」
「おっ。食べちゃっていいの?」
楽は目を輝かせた。
育ち盛りの胃袋は底なしだ。
「いいわよ。母さんは、残りのそうめんをやっつけたら終了~」
桜は母の食器を眺めて突っ込んだ。
「ん? でもお母さんこそ、食べる量が少なくない? 畑仕事は重労働なのに」
「ハハッ。さっき天ぷら揚げながらつまみ食いしてたから大丈夫」
「そうなんだ」
桜は視線を、豪快に笑う母から父の手元へと移した。
手慣れた様子で桃を剥く父は、あっという間にカット済みのものを皿の上に並べた。
「父さんは次のを剥かなきゃいけないから、お皿取りにきてー」
「はーい」
桜は元気よく返事をして立ち上がり、流しの横に置かれた桃の載った白い皿を取りに行った。
悠は孫娘を愛しげに眺めながら、自分の娘に話しかける。
「桜も大きくなったもんだ。子どもの成長なんてあっという間だな?」
「そうね、父さん」
薫も嬉しそうに桜の背中を眺めながらこたえた。
「我が家の事情は承知しているけど……あの子には自分が満足できるように生きて欲しいわ」
「そうだな。いまどき鬼を鎮める必要もなかろう。桜には自分の好きに生きる道を選ばせたらいい」
祖父は薫にだけ聞こえるくらいの声で小さく呟いた。
薫も頷いて小声で言う。
「そうよね。いまどき、鬼を封じるなんて時代錯誤もはなはだしい」
桃の載った皿を持って意気揚々と帰ってきた桜に祖父が聞く。
「桜は高校卒業したらどうするんだ?」
「あら。桜は進学するんでしょ?」
薫は確認するように娘に聞いた。
桜はコクリと頷きながら自分の席へと座る。
「うん。地元の大学なら推薦とれるし、自宅から通える」
「そうだな、高校よりも近いくらいか」
「うん」
祖父の質問に、桜は頷いてこたえた。
「じゃあ、大学を卒業したら?」
そうめんと天ぷらを夢中になって食べていた楽が、パッと顔を上げて質問した。
桜はうーんと唸る。
「家を出るのも面倒だし。就職先も思い浮かばないから、お母さんの【家庭菜園】でも手伝おうかなぁ……」
「ふふ。桜ったら。頼もしいんだから」
母は嬉しそうに笑った。
「ああ。それはそれでいいな」
父もコクコクと頷いた。
「まぁ、桜がそうしたいなら、そうすればいい。お前は好きに生きなさい」
祖父は顔をクシャクシャにしながら、桜へ包み込むような笑みを向けた。
食事を終えた桜は空いた食器を持って流しに向かう。
鬼頭家のキッチンはリフォームにより最近流行りのアイランドキッチンになっているので、家族の顔を見ながら洗い物をすることができるのだ。
ちなみにガスコンロは壁側に設置されていて、そのうえではスペースを贅沢に使うレンジフードがガンガン回っている。
窓を開ければ涼しい田舎の家ではあるが、昨今の夏は暑すぎる。
流石に熱風が吹き抜けていくだけなので窓は閉められていて、エアコンが涼しい風を吹き出していた。
祖父が桜に向かって声をかけた。
「桜~。一服したら、裏山へ行くか?」
「うん、行くっ。今日買ってきた木刀使いたい」
「そうかそうか。なら行くか」
少し遅れて食事を始めた母が釘をさす。
「キチンと食休みしてから行ってね? せっかく作った野菜の吸収が悪くなるから」
「分かってるよー」
桜は笑いながら席へと戻った。
母がハッと何かを思い出して言う。
「あっ、そうだ。桃が冷えてるんだった。桃食べるなら誰か剥いて」
「それなら僕が剥くよ。冷蔵庫のどこにあるの?」
父が笑いながら椅子から立ち上がった。
「冷蔵庫の二段目。真ん中の真ん中にドーンとあるはず」
「ん、あった。三個くらい剥けば足りるかなぁ~」
冷蔵庫から桃を取り出した父は、器用に剥き始めた。
流しは家族から見えるところにあるから、会話しながらサクサクと作業ができるのだ。
「最初に剥いたのは、わたしが食べるっ」
桜が右手を上げると、その横で弟がそうめんをすすりながら叫ぶ。
「あっ、ねーちゃん、ずっこい」
母は落ち着きのない息子をたしなめる。
「楽は先にご飯をちゃんと食べちゃいなさい。しっかり食べないとすぐにお腹すいちゃうわよ? まだナスもあるし、オクラも残っているから食べなさい」
「おっ。食べちゃっていいの?」
楽は目を輝かせた。
育ち盛りの胃袋は底なしだ。
「いいわよ。母さんは、残りのそうめんをやっつけたら終了~」
桜は母の食器を眺めて突っ込んだ。
「ん? でもお母さんこそ、食べる量が少なくない? 畑仕事は重労働なのに」
「ハハッ。さっき天ぷら揚げながらつまみ食いしてたから大丈夫」
「そうなんだ」
桜は視線を、豪快に笑う母から父の手元へと移した。
手慣れた様子で桃を剥く父は、あっという間にカット済みのものを皿の上に並べた。
「父さんは次のを剥かなきゃいけないから、お皿取りにきてー」
「はーい」
桜は元気よく返事をして立ち上がり、流しの横に置かれた桃の載った白い皿を取りに行った。
悠は孫娘を愛しげに眺めながら、自分の娘に話しかける。
「桜も大きくなったもんだ。子どもの成長なんてあっという間だな?」
「そうね、父さん」
薫も嬉しそうに桜の背中を眺めながらこたえた。
「我が家の事情は承知しているけど……あの子には自分が満足できるように生きて欲しいわ」
「そうだな。いまどき鬼を鎮める必要もなかろう。桜には自分の好きに生きる道を選ばせたらいい」
祖父は薫にだけ聞こえるくらいの声で小さく呟いた。
薫も頷いて小声で言う。
「そうよね。いまどき、鬼を封じるなんて時代錯誤もはなはだしい」
桃の載った皿を持って意気揚々と帰ってきた桜に祖父が聞く。
「桜は高校卒業したらどうするんだ?」
「あら。桜は進学するんでしょ?」
薫は確認するように娘に聞いた。
桜はコクリと頷きながら自分の席へと座る。
「うん。地元の大学なら推薦とれるし、自宅から通える」
「そうだな、高校よりも近いくらいか」
「うん」
祖父の質問に、桜は頷いてこたえた。
「じゃあ、大学を卒業したら?」
そうめんと天ぷらを夢中になって食べていた楽が、パッと顔を上げて質問した。
桜はうーんと唸る。
「家を出るのも面倒だし。就職先も思い浮かばないから、お母さんの【家庭菜園】でも手伝おうかなぁ……」
「ふふ。桜ったら。頼もしいんだから」
母は嬉しそうに笑った。
「ああ。それはそれでいいな」
父もコクコクと頷いた。
「まぁ、桜がそうしたいなら、そうすればいい。お前は好きに生きなさい」
祖父は顔をクシャクシャにしながら、桜へ包み込むような笑みを向けた。
0
あなたにおすすめの小説
~春の国~片足の不自由な王妃様
クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。
春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。
街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。
それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。
しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。
花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??
押しつけられた身代わり婚のはずが、最上級の溺愛生活が待っていました
cheeery
恋愛
名家・御堂家の次女・澪は、一卵性双生の双子の姉・零と常に比較され、冷遇されて育った。社交界で華やかに振る舞う姉とは対照的に、澪は人前に出されることもなく、ひっそりと生きてきた。
そんなある日、姉の零のもとに日本有数の財閥・凰条一真との縁談が舞い込む。しかし凰条一真の悪いウワサを聞きつけた零は、「ブサイクとの結婚なんて嫌」と当日に逃亡。
双子の妹、澪に縁談を押し付ける。
両親はこんな機会を逃すわけにはいかないと、顔が同じ澪に姉の代わりになるよう言って送り出す。
「はじめまして」
そうして出会った凰条一真は、冷徹で金に汚いという噂とは異なり、端正な顔立ちで品位のある落ち着いた物腰の男性だった。
なんてカッコイイ人なの……。
戸惑いながらも、澪は姉の零として振る舞うが……澪は一真を好きになってしまって──。
「澪、キミを探していたんだ」
「キミ以外はいらない」
冷遇妃ライフを満喫するはずが、皇帝陛下の溺愛ルートに捕まりました!?
由香
恋愛
冷遇妃として後宮の片隅で静かに暮らすはずだった翠鈴。
皇帝に呼ばれない日々は、むしろ自由で快適——そう思っていたのに。
ある夜、突然現れた皇帝に顎を掴まれ、深く口づけられる。
「誰が、お前を愛していないと言った」
守るための“冷遇”だったと明かされ、逃げ道を塞がれ、甘く囲われ、何度も唇を奪われて——。
これは冷遇妃のはずだった少女が、気づけば皇帝の唯一へと捕獲されてしまう甘く濃密な溺愛物語。
手を伸ばした先にいるのは誰ですか~愛しくて切なくて…憎らしいほど愛してる~【完結】
まぁ
恋愛
ワイン、ホテルの企画業務など大人の仕事、そして大人に切り離せない恋愛と…
「Ninagawa Queen's Hotel」
若きホテル王 蜷川朱鷺
妹 蜷川美鳥
人気美容家 佐井友理奈
「オークワイナリー」
国内ワイナリー最大手創業者一族 柏木龍之介
血縁関係のない兄妹と、その周辺の何角関係…?
華やかな人々が繰り広げる、フィクションです。
「やはり鍛えることは、大切だな」
イチイ アキラ
恋愛
「こんなブスと結婚なんていやだ!」
その日、一つのお見合いがあった。
ヤロール伯爵家の三男、ライアンと。
クラレンス辺境伯家の跡取り娘、リューゼットの。
そして互いに挨拶を交わすその場にて。
ライアンが開幕早々、ぶちかましたのであった。
けれども……――。
「そうか。私も貴様のような生っ白くてか弱そうな、女みたいな顔の屑はごめんだ。気が合うな」
最後に、お願いがあります
狂乱の傀儡師
恋愛
三年間、王妃になるためだけに尽くしてきた馬鹿王子から、即位の日の直前に婚約破棄されたエマ。
彼女の最後のお願いには、国を揺るがすほどの罠が仕掛けられていた。
覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―
Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。
魔法のいらないシンデレラ 3
葉月 まい
恋愛
魔法のいらないシンデレラVol.3
『魔法のいらないシンデレラ』シリーズ Vol.3
ー幸せな家族の形とは?ー
可愛い子どもに恵まれた瑠璃と一生は、
また新たな赤ちゃんを迎えようとしていた。
幸せを感じながら、少しずつ
家族の絆を深めていく二人。
そして、二人の近くで始まった
新たな恋の物語とは…
『魔法のいらないシンデレラ』
『魔法のいらないシンデレラ 2』に続く
シリーズ第3弾
どうぞお楽しみください!
*・゜゚・*:.。..。.:*・'登場人物'・*:.。. .。.:*・゜゚・*
神崎 瑠璃 (29歳)… 一生の妻
神崎 一生 (35歳)… ホテル 総支配人
高岡 小雪 (24歳)… 保育士
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる