【完結】煌めくままに恋しよう

天田れおぽん

文字の大きさ
10 / 40

第10話 最後の晩餐

しおりを挟む
 八月のお盆近くなると生徒の数はグッと減る。
 真城と黒江は全く予定がなかったので、夕食の時間にはいつも通り寮の食堂へと足を運んだ。
 坂下も一緒だ。

 坂下が当然のように真城の前に座りながら言う。

「運動部の奴らもだいぶ減ったな?」
「ああ、部活も休みになるらしいよ。短いけど」

 真城が答える横で、黒江が渋い顔をしている。

 頭数の少なくなった生徒の前で、教師である旭ヶ丘あさひがおか八雲やくもが何やら説明していた。

「寮母さんは明日からお休みに入ります。今晩の食事は心していただくように」
「はは。大袈裟ですよ、旭ヶ丘あさひがおか先生。寮母は休みをズラしましたから、明々後日には別の者が食事くらい作りますよ」
「いえいえ。金之助きんのすけさんのご飯は格別に美味しいですから……」

 寮母たちは時期をズラして夏休みをとるようにしているが、お盆の時期になると流石に残れる者は減る。
 
「今晩のハンバーグは味わって食べとかないとな」

 坂下の言葉に、黒江も頷きながらお椀片手に言う。

「豚汁も味わっといたほうがいい。コレは絶品だ」

 黒江に言われて豚汁を一口すすった真城は目を丸くした。

「うまー。金之助きんのすけさん、神」
「お前は神多すぎー」

 笑いながら言う坂下は一転、真顔で言う。

「今年は寮母さんゼロの年か。寂しいねぇ」

 そんな坂下を指さして真城が笑う。

「カカカッ。【今年は】って、古参みたいな顔して言ってるけど、オレら一年生だもん。初めての夏休みじゃん」
「そだな」

 坂下と真城がキャッキャッしているのを、黒江は横目で面白くなさそうな表情を浮かべて見ている。

「それにしてもさー、八雲やくもティーチャー、やばくない?」
「ヤバイ、ヤバイ。見ろよ、寮母さんを見る目。ヤバすぎる」

 身長は高いが痩せっぽちで、マッシュルームカットのなれの果てのようなボサボサの黒髪の八雲やくもはマッチ棒のようだ。
 そのマッチ棒が、マッチョな寮母を横目でチロチロと見ている。

 真城はケケケと笑いながら言う。

「八雲ティーチャーってば、寮母さんにハート飛ばしてない?」
「あーそれだー。分かりやすい」

 坂下は手を叩いてケラケラ笑った。
 黒江が庇うように言う。

八雲やくも先生は、変態くさく見えるタイプだから……」
「いや、ド直球に変態だろ?」

 フォローのつもりで言った黒江の言葉に、真城は真顔で突っ込んだ。
 黒江は真面目な顔で言う。

「でも明日からは、金之助きんのすけさんがしばらくいないのか」
「ん。戻ってくるまでは、森に行かん方がいいな?」
「え? なんで?」

 真城の言葉に坂下が興味を持って身を乗り出した。

「実は今日さー」

 真城が今日あったことを説明した。
 坂下はウンウンと頷きながら言う。

「そっかー。それツキノワグマの名前がエリザベスなのか。全てのツキノワグマをエリザベスと呼んでいるのか。気になるなー」

 真城も頷きながら言う。

「だよなー? でもちょっと聞きにくいよな」
「だよなー。そこは謎のままにしといたほうがよくない?」
「だなー」

 坂下の意見に、黒江もウンウンと頷いた。
 これにより【エリザベス】のことは永遠の謎となり、金之助きんのすけの作るハンバーグと豚汁は寮母イチということで意見の一致をみた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

義兄が溺愛してきます

ゆう
BL
桜木恋(16)は交通事故に遭う。 その翌日からだ。 義兄である桜木翔(17)が過保護になったのは。 翔は恋に好意を寄せているのだった。 本人はその事を知るよしもない。 その様子を見ていた友人の凛から告白され、戸惑う恋。 成り行きで惚れさせる宣言をした凛と一週間付き合う(仮)になった。 翔は色々と思う所があり、距離を置こうと彼女(偽)をつくる。 すれ違う思いは交わるのか─────。

地味メガネだと思ってた同僚が、眼鏡を外したら国宝級でした~無愛想な美人と、チャラ営業のすれ違い恋愛

中岡 始
BL
誰にも気づかれたくない。 誰の心にも触れたくない。 無表情と無関心を盾に、オフィスの隅で静かに生きる天王寺悠(てんのうじ・ゆう)。 その存在に、誰も興味を持たなかった――彼を除いて。 明るく人懐こい営業マン・梅田隼人(うめだ・はやと)は、 偶然見た「眼鏡を外した天王寺」の姿に、衝撃を受ける。 無機質な顔の奥に隠れていたのは、 誰よりも美しく、誰よりも脆い、ひとりの青年だった。 気づいてしまったから、もう目を逸らせない。 知りたくなったから、もう引き返せない。 すれ違いと無関心、 優しさと孤独、 微かな笑顔と、隠された心。 これは、 触れれば壊れそうな彼に、 それでも手を伸ばしてしまった、 不器用な男たちの恋のはなし。

【完結】恋い慕うは、指先から〜ビジネス仲良しの義弟に振り回されています〜

紬木莉音
BL
〈策士なギャップ王子×天然たらし優等生〉 学園の名物コンビ『日南兄弟』は、実はビジネス仲良し関係。どんなに冷たくされても初めてできた弟が可愛くて仕方がない兄・沙也は、堪え切れない弟への愛をSNSに吐き出す日々を送っていた。 ある日、沙也のアカウントに一通のリプライが届く。送り主である謎のアカウントは、なぜか現実の沙也を知っているようで──? 隠れ執着攻め×鈍感受けのもだキュンストーリー♡ いつもいいねやお気に入り等ありがとうございます!

なぜかピアス男子に溺愛される話

光野凜
BL
夏希はある夜、ピアスバチバチのダウナー系、零と出会うが、翌日クラスに転校してきたのはピアスを外した優しい彼――なんと同一人物だった! 「夏希、俺のこと好きになってよ――」 突然のキスと真剣な告白に、夏希の胸は熱く乱れる。けれど、素直になれない自分に戸惑い、零のギャップに振り回される日々。 ピュア×ギャップにきゅんが止まらない、ドキドキ青春BL!

あなたのいちばんすきなひと

名衛 澄
BL
亜食有誠(あじきゆうせい)は幼なじみの与木実晴(よぎみはる)に好意を寄せている。 ある日、有誠が冗談のつもりで実晴に付き合おうかと提案したところ、まさかのOKをもらってしまった。 有誠が混乱している間にお付き合いが始まってしまうが、実晴の態度はいつもと変わらない。 俺のことを好きでもないくせに、なぜ付き合う気になったんだ。 実晴の考えていることがわからず、不安に苛まれる有誠。 そんなとき、実晴の元カノから実晴との復縁に協力してほしいと相談を受ける。 また友人に、幼なじみに戻ったとしても、実晴のとなりにいたい。 自分の気持ちを隠して実晴との"恋人ごっこ"の関係を続ける有誠は―― 隠れ執着攻め×不器用一生懸命受けの、学園青春ストーリー。

【完結】ルガルの星―冷徹な社長は、僕の運命を知っていた―

綾波絢斗
BL
この世界には、二つの特別な称号を持つ者たちが存在する。 一つは、絶対的な権力を持つ王の称号――ルガル(lugal)。 もう一つは、ルガルと対をなし、その力を補う「番」――ムル(mul)。 ルガルは生まれながらに選ばれし存在。 国家からエリート教育と地位を与えられ、能力に応じて厳格なランク分けが行われる。 最上位のルガルは、政治さえも動かす絶対者だ。 一方で、ムルは生まれた瞬間にはその正体がわからない。 遺伝子検査や学力テストを経て候補が絞られるが、 最終的に「真のムル」かどうかを見極められるのは――ルガルだけ。 ムルが覚醒したとき、同じ場所に「紋章」が現れ、その瞬間から、ルガルとムルの力は共鳴し始める。 ムルの能力はルガルの力を最大限に引き出す。 ゆえにルガルたちは、自らのムルを求め、時には他人のムル候補を奪い合う。 そして、すべての出生データと遺伝情報を管理するのは、 巨大企業イルジオン――国家をも超える存在。 その頂点に立つ社長、一条レイ。 冷徹なルガルの頂点に君臨する彼が「自分のムル」と出会った。

恋と脅しは使いよう

makase
BL
恋に破れ、やけ酒の末酔いつぶれた賢一。気が付けば酔っぱらいの戯言を弱みとして握られてしまう……

【完結】俺とあの人の青い春

月城雪華
BL
 高校一年の夏、龍冴(りょうが)は二つ上の先輩である椰一(やいち)と付き合った。  けれど、告白してくれたにしては制限があまりに多過ぎると思っていた。  ぼんやりとした不信感を抱いていたある日、見知らぬ相手と椰一がキスをしている場面を目撃してしまう。  けれど友人らと話しているうちに、心のどこかで『椰一はずっと前から裏切っていた』と理解していた。  それでも悲しさで熱い雫が溢れてきて、ひと気のない物陰に座り込んで泣いていると、ふと目の前に影が差す。 「大丈夫か?」  涙に濡れた瞳で見上げると、月曜日の朝──その数日前にも件の二人を見掛け、書籍を落としたのだがわざわざ教室まで届けてくれたのだ──にも会った、一学年上の大和(やまと)という男だった。

処理中です...