22 / 40
第22話 部外者の来ない文化祭
しおりを挟む
陸の孤島学園の文化祭は独特だ。
真城は周囲をキョロキョロと見回した。
校庭や校舎は少々飾り付けられているが、特別に普段と変わった様子はない。
土がむき出しになった道を歩きながら、真城は黒江に話しかけた。
「うちの学校の生徒しかないな?」
「なんといっても陸の孤島だからな?」
黒江は虫除けの香りを突破してきた小さな羽虫を追い払いながら答えた。
四方を山に囲まれているといっても、そこまで標高が高いわけでもない。
ただ交通の便が悪い。
車で来られると駐車場が足りなくなるため、結果として保護者の参加も禁止という完全在校生のみの文化祭となっている。
卒業生が遊びに来ることもない。
そうなるとどうなるか?
真城は不満げに言う。
「確かに祭りではあるけどさー。男しかいねぇ~。クソあちぃ上に男しかいねぇぇぇぇぇぇっ」
「はっ⁉」
黒江が顔色を変えるとワナワナと震えた。
「お前、俺というものがありながら、女子を求めているのかっ」
「別に女子を求めているわけじゃねーよ。つか『俺というものがありながら』ってなんだよ? お前はメンドクサイ女か?」
「はうっっっっっっ」
真城に冷たくあしらわれ、黒江は震えながら胸を押さえて仰け反った。
「イケナイ扉が開いてしまいそうっ」
「おいっ、ヤメロ。キモイッ。おれもいるんだぞ?」
坂下は下手な小芝居を始めた黒江の頭をパコーンと軽く叩く。
黒江が坂下を睨むのを見て、真城がケケケッと笑った。
黒江が改めて周囲を見回して言う。
「でも確かに男しかいねーな?」
「男子校だからなー。逆に女がいたら怖いだろっ」
坂下が顔をしかめる横で真城が高い声で「八尺さま~」と言ってケケケッと笑う。
黒江がガッと真城の肩を両手で掴んで真顔で言う。
「真城は可愛いからなぁ~。連れていかれるなよ?」
「ケケケッ。背の高い女なんて怖いから逃げるっ」
坂下がコクコクと頷きながら言う。
「そうだよなぁ~。八尺さまはだいたい2メートル40センチくらいの身長だそうだから、真城は半分だな?」
「そこまでチビじゃねーよっ」
真城は坂下の肩を指を広げた手の甲でペシッと軽く叩いた。
黒江が笑いながら言う。
「はははっ。そもそも部外者入れんから、八尺さまも入れない」
「八尺さま推しすぎだろ?」
真城と黒江が仲良く笑いころげていると、坂下はしみじみと言う。
「そうそう。部外者は入れないんだよねー。だからスーちゃんも呼べないし。まぁ呼んだところで来られないけどさぁ~」
坂下は糸目をさらに細くしてショボーンと背中を丸めた。
真城が頬をぶくっと膨らめて不満げに言う。
「オレはさー、日本の高校の文化祭ゆーたら、アニメで見たみたいな男女混合のワチャワチャしたヤツが見られると思ってたからさー。もうホント、残念」
真城が口を尖らせてブチブチと言うのを聞いて、黒江は笑った。
「はははっ。男子校だからな~。諦めろぉ~」
「うん、しゃーない。諦めるぅ~」
真城は潔く諦め、黒江はご褒美と称して彼の茶色っぽい髪をカイグリカイグリと撫でた。
「どっちへのご褒美だよ、どっちへの⁉」
坂下が突っ込む。
「も~さぁ~、お前らはさぁ~、暑苦しいんだよ!」
坂下がブチブチ言うのを聞いて「「そっち?」」と真城と黒江は声を揃えて返しつつ、そういわれれば暑いかも、と一旦離れた。
少しずつ増えていく生徒に混ざって真城たちは進んでいく。
「文化祭っていっても、なんかあんまり文化祭っぽくない?」
「んー、文化部の出し物は校内でやってるみたいだから、あとで行ってみようぜ」
「うんっ」
真城が笑顔を煌めかせてコクッと頷くと、黒江はまた茶色がかった髪を両手でクシャクシャと混ぜた。
「ハハッ、お返しだぁ~」
真城が黒江の背中に飛び乗り、彼の真っ黒な髪をわしゃわしゃと混ぜ返していると、山へと続く道の両脇に屋台が現れた。
真城は黒江の背中に乗っかったまま感心したように言う。
「おお。なかなか壮観」
その隣で坂下もキョロキョロしながら口を開いた。
「寮母さんに混ざって、文化部や先生方も店を出してるみたいだな」
「そうだな。みんな頑張ってるよなー」
そう黒江が言った瞬間「じゃ、おれも頑張ろうかな」という声と共に坂下がニコニコしている真城の上に飛びついた。
一番下になった黒江は「グェッ」と潰れたような声を出したが、張りぼて筋肉ながら、なんとか耐えた。
真城は周囲をキョロキョロと見回した。
校庭や校舎は少々飾り付けられているが、特別に普段と変わった様子はない。
土がむき出しになった道を歩きながら、真城は黒江に話しかけた。
「うちの学校の生徒しかないな?」
「なんといっても陸の孤島だからな?」
黒江は虫除けの香りを突破してきた小さな羽虫を追い払いながら答えた。
四方を山に囲まれているといっても、そこまで標高が高いわけでもない。
ただ交通の便が悪い。
車で来られると駐車場が足りなくなるため、結果として保護者の参加も禁止という完全在校生のみの文化祭となっている。
卒業生が遊びに来ることもない。
そうなるとどうなるか?
真城は不満げに言う。
「確かに祭りではあるけどさー。男しかいねぇ~。クソあちぃ上に男しかいねぇぇぇぇぇぇっ」
「はっ⁉」
黒江が顔色を変えるとワナワナと震えた。
「お前、俺というものがありながら、女子を求めているのかっ」
「別に女子を求めているわけじゃねーよ。つか『俺というものがありながら』ってなんだよ? お前はメンドクサイ女か?」
「はうっっっっっっ」
真城に冷たくあしらわれ、黒江は震えながら胸を押さえて仰け反った。
「イケナイ扉が開いてしまいそうっ」
「おいっ、ヤメロ。キモイッ。おれもいるんだぞ?」
坂下は下手な小芝居を始めた黒江の頭をパコーンと軽く叩く。
黒江が坂下を睨むのを見て、真城がケケケッと笑った。
黒江が改めて周囲を見回して言う。
「でも確かに男しかいねーな?」
「男子校だからなー。逆に女がいたら怖いだろっ」
坂下が顔をしかめる横で真城が高い声で「八尺さま~」と言ってケケケッと笑う。
黒江がガッと真城の肩を両手で掴んで真顔で言う。
「真城は可愛いからなぁ~。連れていかれるなよ?」
「ケケケッ。背の高い女なんて怖いから逃げるっ」
坂下がコクコクと頷きながら言う。
「そうだよなぁ~。八尺さまはだいたい2メートル40センチくらいの身長だそうだから、真城は半分だな?」
「そこまでチビじゃねーよっ」
真城は坂下の肩を指を広げた手の甲でペシッと軽く叩いた。
黒江が笑いながら言う。
「はははっ。そもそも部外者入れんから、八尺さまも入れない」
「八尺さま推しすぎだろ?」
真城と黒江が仲良く笑いころげていると、坂下はしみじみと言う。
「そうそう。部外者は入れないんだよねー。だからスーちゃんも呼べないし。まぁ呼んだところで来られないけどさぁ~」
坂下は糸目をさらに細くしてショボーンと背中を丸めた。
真城が頬をぶくっと膨らめて不満げに言う。
「オレはさー、日本の高校の文化祭ゆーたら、アニメで見たみたいな男女混合のワチャワチャしたヤツが見られると思ってたからさー。もうホント、残念」
真城が口を尖らせてブチブチと言うのを聞いて、黒江は笑った。
「はははっ。男子校だからな~。諦めろぉ~」
「うん、しゃーない。諦めるぅ~」
真城は潔く諦め、黒江はご褒美と称して彼の茶色っぽい髪をカイグリカイグリと撫でた。
「どっちへのご褒美だよ、どっちへの⁉」
坂下が突っ込む。
「も~さぁ~、お前らはさぁ~、暑苦しいんだよ!」
坂下がブチブチ言うのを聞いて「「そっち?」」と真城と黒江は声を揃えて返しつつ、そういわれれば暑いかも、と一旦離れた。
少しずつ増えていく生徒に混ざって真城たちは進んでいく。
「文化祭っていっても、なんかあんまり文化祭っぽくない?」
「んー、文化部の出し物は校内でやってるみたいだから、あとで行ってみようぜ」
「うんっ」
真城が笑顔を煌めかせてコクッと頷くと、黒江はまた茶色がかった髪を両手でクシャクシャと混ぜた。
「ハハッ、お返しだぁ~」
真城が黒江の背中に飛び乗り、彼の真っ黒な髪をわしゃわしゃと混ぜ返していると、山へと続く道の両脇に屋台が現れた。
真城は黒江の背中に乗っかったまま感心したように言う。
「おお。なかなか壮観」
その隣で坂下もキョロキョロしながら口を開いた。
「寮母さんに混ざって、文化部や先生方も店を出してるみたいだな」
「そうだな。みんな頑張ってるよなー」
そう黒江が言った瞬間「じゃ、おれも頑張ろうかな」という声と共に坂下がニコニコしている真城の上に飛びついた。
一番下になった黒江は「グェッ」と潰れたような声を出したが、張りぼて筋肉ながら、なんとか耐えた。
0
あなたにおすすめの小説
地味メガネだと思ってた同僚が、眼鏡を外したら国宝級でした~無愛想な美人と、チャラ営業のすれ違い恋愛
中岡 始
BL
誰にも気づかれたくない。
誰の心にも触れたくない。
無表情と無関心を盾に、オフィスの隅で静かに生きる天王寺悠(てんのうじ・ゆう)。
その存在に、誰も興味を持たなかった――彼を除いて。
明るく人懐こい営業マン・梅田隼人(うめだ・はやと)は、
偶然見た「眼鏡を外した天王寺」の姿に、衝撃を受ける。
無機質な顔の奥に隠れていたのは、
誰よりも美しく、誰よりも脆い、ひとりの青年だった。
気づいてしまったから、もう目を逸らせない。
知りたくなったから、もう引き返せない。
すれ違いと無関心、
優しさと孤独、
微かな笑顔と、隠された心。
これは、
触れれば壊れそうな彼に、
それでも手を伸ばしてしまった、
不器用な男たちの恋のはなし。
【完結】恋い慕うは、指先から〜ビジネス仲良しの義弟に振り回されています〜
紬木莉音
BL
〈策士なギャップ王子×天然たらし優等生〉
学園の名物コンビ『日南兄弟』は、実はビジネス仲良し関係。どんなに冷たくされても初めてできた弟が可愛くて仕方がない兄・沙也は、堪え切れない弟への愛をSNSに吐き出す日々を送っていた。
ある日、沙也のアカウントに一通のリプライが届く。送り主である謎のアカウントは、なぜか現実の沙也を知っているようで──?
隠れ執着攻め×鈍感受けのもだキュンストーリー♡
いつもいいねやお気に入り等ありがとうございます!
義兄が溺愛してきます
ゆう
BL
桜木恋(16)は交通事故に遭う。
その翌日からだ。
義兄である桜木翔(17)が過保護になったのは。
翔は恋に好意を寄せているのだった。
本人はその事を知るよしもない。
その様子を見ていた友人の凛から告白され、戸惑う恋。
成り行きで惚れさせる宣言をした凛と一週間付き合う(仮)になった。
翔は色々と思う所があり、距離を置こうと彼女(偽)をつくる。
すれ違う思いは交わるのか─────。
推しにプロポーズしていたなんて、何かの間違いです
一ノ瀬麻紀
BL
引きこもりの僕、麻倉 渚(あさくら なぎさ)と、人気アイドルの弟、麻倉 潮(あさくら うしお)
同じ双子だというのに、なぜこんなにも違ってしまったのだろう。
時々ふとそんな事を考えてしまうけど、それでも僕は、理解のある家族に恵まれ充実した引きこもり生活をエンジョイしていた。
僕は極度の人見知りであがり症だ。いつからこんなふうになってしまったのか、よく覚えていない。
本音を言うなら、弟のように表舞台に立ってみたいと思うこともある。けれどそんなのは無理に決まっている。
だから、安全な自宅という城の中で、僕は今の生活をエンジョイするんだ。高望みは一切しない。
なのに、弟がある日突然変なことを言い出した。
「今度の月曜日、俺の代わりに学校へ行ってくれないか?」
ありえない頼み事だから断ろうとしたのに、弟は僕の弱みに付け込んできた。
僕の推しは俳優の、葛城 結斗(かつらぎ ゆうと)くんだ。
その結斗くんのスペシャルグッズとサイン、というエサを目の前にちらつかせたんだ。
悔しいけど、僕は推しのサインにつられて首を縦に振ってしまった。
え?葛城くんが目の前に!?
どうしよう、人生最大のピンチだ!!
✤✤
「推し」「高校生BL」をテーマに書いたお話です。
全年齢向けの作品となっています。
一度短編として完結した作品ですが、既存部分の改稿と、新規エピソードを追加しました。
✤✤
あなたのいちばんすきなひと
名衛 澄
BL
亜食有誠(あじきゆうせい)は幼なじみの与木実晴(よぎみはる)に好意を寄せている。
ある日、有誠が冗談のつもりで実晴に付き合おうかと提案したところ、まさかのOKをもらってしまった。
有誠が混乱している間にお付き合いが始まってしまうが、実晴の態度はいつもと変わらない。
俺のことを好きでもないくせに、なぜ付き合う気になったんだ。
実晴の考えていることがわからず、不安に苛まれる有誠。
そんなとき、実晴の元カノから実晴との復縁に協力してほしいと相談を受ける。
また友人に、幼なじみに戻ったとしても、実晴のとなりにいたい。
自分の気持ちを隠して実晴との"恋人ごっこ"の関係を続ける有誠は――
隠れ執着攻め×不器用一生懸命受けの、学園青春ストーリー。
【完結】俺とあの人の青い春
月城雪華
BL
高校一年の夏、龍冴(りょうが)は二つ上の先輩である椰一(やいち)と付き合った。
けれど、告白してくれたにしては制限があまりに多過ぎると思っていた。
ぼんやりとした不信感を抱いていたある日、見知らぬ相手と椰一がキスをしている場面を目撃してしまう。
けれど友人らと話しているうちに、心のどこかで『椰一はずっと前から裏切っていた』と理解していた。
それでも悲しさで熱い雫が溢れてきて、ひと気のない物陰に座り込んで泣いていると、ふと目の前に影が差す。
「大丈夫か?」
涙に濡れた瞳で見上げると、月曜日の朝──その数日前にも件の二人を見掛け、書籍を落としたのだがわざわざ教室まで届けてくれたのだ──にも会った、一学年上の大和(やまと)という男だった。
なぜかピアス男子に溺愛される話
光野凜
BL
夏希はある夜、ピアスバチバチのダウナー系、零と出会うが、翌日クラスに転校してきたのはピアスを外した優しい彼――なんと同一人物だった!
「夏希、俺のこと好きになってよ――」
突然のキスと真剣な告白に、夏希の胸は熱く乱れる。けれど、素直になれない自分に戸惑い、零のギャップに振り回される日々。
ピュア×ギャップにきゅんが止まらない、ドキドキ青春BL!
三ヶ月だけの恋人
perari
BL
仁野(にの)は人違いで殴ってしまった。
殴った相手は――学年の先輩で、学内で知らぬ者はいない医学部の天才。
しかも、ずっと密かに想いを寄せていた松田(まつだ)先輩だった。
罪悪感にかられた仁野は、謝罪の気持ちとして松田の提案を受け入れた。
それは「三ヶ月だけ恋人として付き合う」という、まさかの提案だった――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる