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「飲み物はホットコーヒーで良いかな?」
「いや、こいつはホットティーで頼む」
「そうか……。じゃあホットコーヒーを二つとホットティーを一つ頼むよ」
「分かりました」
笑いをこらええる表情を見られたくない為に、思わずうつむいている間にペンションオーナーの金森さんと兄はウェイトレスの横塚千香さんに飲み物のオーダーを終えた。兄が近くの椅子に腰かけたので私も横の椅子に座ればオーナーの金森さんもテーブルを挟んだ向かいの椅子に座った。
「さっき後で話すって言ったし、折角だから玄関とロビーに飾ってある猛禽の剥製やエゾ鹿について説明しておこうか?」
「そうですね。ぜひお願いします。私、あんな大きい鳥の剥製なんて初めて見ました!」
「まず、玄関に入ってすぐの所に置いていたのはオオワシだね。体長が約100センチ、翼を広げると約250センチの大きさになる」
「250センチ! そんなに大きいんですか!?」
「うん。オオワシは日本で一番大きな鳥とも言われているよ」
「エゾ鹿も日本で生息してる鹿の中で一番大きいし、北海道って土地だけじゃなくて住んでる鳥や獣のサイズまで大きいんですね!」
「失礼します」
私が感心しているとウェイトレスの横塚千香さんが銀色のトレイに飲み物を乗せてやって来た。そして、兄と金森さんの前に湯気を立てるホットコーヒーが入った白磁器のコーヒーカップを置き、私の前にはホットティーが入った白磁器のティーカップを置いた。
「出来立てで熱いですから、飲む時は気をつけて下さいね」
「わかりました」
「では、ごゆっくりどうぞ」
「はい。ありがとうございます」
小柄で可愛らしい三つ編みのウェイトレス。横塚千香さんに軽く会釈した後、ティーカップの持ち手をつまんで持ち上げ、白い湯気を立てる琥珀色の紅茶を数回、息を吹きかけて冷ましてから口をつけた。
兄と金森さんもコーヒーカップを口元で傾けて一息ついた。それにしてもウェーブのかかったダークブラウンの髪色で、にこやかで日焼けしていて筋肉質な長身イケメンの金森さんと、黒髪で愛想が無くどちらかというと細身の兄は実に対照的に思える。
そんなことを考えていたら金森さんが手に持っていた白磁器のコーヒーカップをソーサーに戻し、私と兄に視線を向けて微笑んだ。
「オオワシやオジロワシは北海道で見ることが出来る鳥の代表格だけど、冬の間しか見ることが出来ないんだ。見ておくなら今の内だよ」
「え、そうなんですか?」
「うん。夏場は繁殖……。卵を産んで育てる為にロシア極東、サハリンなどに帰るんだ。四月には北海道からロシアを目指して飛び立ってしまうよ」
「へぇ、子育ての為にロシアに……。じゃあ、なんで北海道に来るんですか?」
「寒くなるとロシアの河川が凍ってしまって主食の魚が食べられなくなるから、日本で越冬するそうだよ。北海道の川には十月はカラフトマスやサケが産卵の為に戻って来るし、旬のマスやサケで腹を満たして秋を過ごした後は冬場に人間の漁師が捕った魚からおこぼれを狙ったり、時にはアザラシの赤ちゃんを食べることもあるそうだ」
「ええっ! アザラシの赤ちゃんも食べちゃうんですか?」
「猛禽類は肉も食べるからね。可愛いアザラシの赤ちゃんが殺されてしまうというのは胸が痛むけど、自然の摂理だからね……」
「そうですね……。食べる側だって生きるのに必死なんですよね」
クマなどの冬眠する動物と違って鳥は冬眠しないから寒い間も、しっかりエサを取らないといけないのだ。厳しい自然の気候や状況に対応する為に北海道に渡ったからには、生きるために獲物を狩って食べるのは仕方ないことなのだろう。
「うん。あと、ロビーにあるエゾ鹿の剥製。実は夏場に仕留めて剥製にしたから毛色が夏場の物なんだ」
「冬はエゾ鹿の毛色が違うんですか?」
「夏場は明るい茶色の毛色だけど、冬場はくすんだ灰褐色になるんだ」
「ずいぶん色が変わるんですね」
「保護色だな……。野生動物なら夏場と冬場で体毛がかわる物も珍しくない」
兄が一度、ソーサーの上に戻していた白磁器のコーヒーカップをつかんで口を付ける前に呟けば、金森さんは目を細めて頷いた。
「そうだね。夏の木々に合わせて明るい茶色の体毛になったり、冬場の木々に紛れられるように灰褐色になってるんだと思うよ」
「オーナー。ちょっと良いですか?」
「ああ。今、行くよ。君たちはゆっくりしていてくれ。ちなみに夕食は18時から用意できる」
「わかりました」
ウェイトレスの横塚千香さんに呼ばれた金森さんは席を立つ。
「金森、後でまた話を聞きたい。夕食後に時間はあるか?」
「わかった。夕食が終わる時間は一段落してるし、また来るよ」
兄の問いかけに快く頷いた金森さんは調理場の方へ入っていった。
「いや、こいつはホットティーで頼む」
「そうか……。じゃあホットコーヒーを二つとホットティーを一つ頼むよ」
「分かりました」
笑いをこらええる表情を見られたくない為に、思わずうつむいている間にペンションオーナーの金森さんと兄はウェイトレスの横塚千香さんに飲み物のオーダーを終えた。兄が近くの椅子に腰かけたので私も横の椅子に座ればオーナーの金森さんもテーブルを挟んだ向かいの椅子に座った。
「さっき後で話すって言ったし、折角だから玄関とロビーに飾ってある猛禽の剥製やエゾ鹿について説明しておこうか?」
「そうですね。ぜひお願いします。私、あんな大きい鳥の剥製なんて初めて見ました!」
「まず、玄関に入ってすぐの所に置いていたのはオオワシだね。体長が約100センチ、翼を広げると約250センチの大きさになる」
「250センチ! そんなに大きいんですか!?」
「うん。オオワシは日本で一番大きな鳥とも言われているよ」
「エゾ鹿も日本で生息してる鹿の中で一番大きいし、北海道って土地だけじゃなくて住んでる鳥や獣のサイズまで大きいんですね!」
「失礼します」
私が感心しているとウェイトレスの横塚千香さんが銀色のトレイに飲み物を乗せてやって来た。そして、兄と金森さんの前に湯気を立てるホットコーヒーが入った白磁器のコーヒーカップを置き、私の前にはホットティーが入った白磁器のティーカップを置いた。
「出来立てで熱いですから、飲む時は気をつけて下さいね」
「わかりました」
「では、ごゆっくりどうぞ」
「はい。ありがとうございます」
小柄で可愛らしい三つ編みのウェイトレス。横塚千香さんに軽く会釈した後、ティーカップの持ち手をつまんで持ち上げ、白い湯気を立てる琥珀色の紅茶を数回、息を吹きかけて冷ましてから口をつけた。
兄と金森さんもコーヒーカップを口元で傾けて一息ついた。それにしてもウェーブのかかったダークブラウンの髪色で、にこやかで日焼けしていて筋肉質な長身イケメンの金森さんと、黒髪で愛想が無くどちらかというと細身の兄は実に対照的に思える。
そんなことを考えていたら金森さんが手に持っていた白磁器のコーヒーカップをソーサーに戻し、私と兄に視線を向けて微笑んだ。
「オオワシやオジロワシは北海道で見ることが出来る鳥の代表格だけど、冬の間しか見ることが出来ないんだ。見ておくなら今の内だよ」
「え、そうなんですか?」
「うん。夏場は繁殖……。卵を産んで育てる為にロシア極東、サハリンなどに帰るんだ。四月には北海道からロシアを目指して飛び立ってしまうよ」
「へぇ、子育ての為にロシアに……。じゃあ、なんで北海道に来るんですか?」
「寒くなるとロシアの河川が凍ってしまって主食の魚が食べられなくなるから、日本で越冬するそうだよ。北海道の川には十月はカラフトマスやサケが産卵の為に戻って来るし、旬のマスやサケで腹を満たして秋を過ごした後は冬場に人間の漁師が捕った魚からおこぼれを狙ったり、時にはアザラシの赤ちゃんを食べることもあるそうだ」
「ええっ! アザラシの赤ちゃんも食べちゃうんですか?」
「猛禽類は肉も食べるからね。可愛いアザラシの赤ちゃんが殺されてしまうというのは胸が痛むけど、自然の摂理だからね……」
「そうですね……。食べる側だって生きるのに必死なんですよね」
クマなどの冬眠する動物と違って鳥は冬眠しないから寒い間も、しっかりエサを取らないといけないのだ。厳しい自然の気候や状況に対応する為に北海道に渡ったからには、生きるために獲物を狩って食べるのは仕方ないことなのだろう。
「うん。あと、ロビーにあるエゾ鹿の剥製。実は夏場に仕留めて剥製にしたから毛色が夏場の物なんだ」
「冬はエゾ鹿の毛色が違うんですか?」
「夏場は明るい茶色の毛色だけど、冬場はくすんだ灰褐色になるんだ」
「ずいぶん色が変わるんですね」
「保護色だな……。野生動物なら夏場と冬場で体毛がかわる物も珍しくない」
兄が一度、ソーサーの上に戻していた白磁器のコーヒーカップをつかんで口を付ける前に呟けば、金森さんは目を細めて頷いた。
「そうだね。夏の木々に合わせて明るい茶色の体毛になったり、冬場の木々に紛れられるように灰褐色になってるんだと思うよ」
「オーナー。ちょっと良いですか?」
「ああ。今、行くよ。君たちはゆっくりしていてくれ。ちなみに夕食は18時から用意できる」
「わかりました」
ウェイトレスの横塚千香さんに呼ばれた金森さんは席を立つ。
「金森、後でまた話を聞きたい。夕食後に時間はあるか?」
「わかった。夕食が終わる時間は一段落してるし、また来るよ」
兄の問いかけに快く頷いた金森さんは調理場の方へ入っていった。
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