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知的財産権法特論

　医療関連行為発明の特許法上の取扱いについて論じる。まず特許権が与えられる要件をおさえる。特許権が与えられるには次の五つの要件をみたさなければならない。まずは発明でなければならない。ここにいう発明とは「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」と定義される。次に産業上の利用可能性がなければならない。産業上の利用可能性がないものは受けられない。次が新規性があることである。これは公然と知られていないことである。そして、進歩性があることが必要である。最後が不特許事由に該当しないことである。不特許事由の一つに「公の秩序、善良の風俗または公衆の衛生を害するおそれがある発明」がある。次に特許権の効力について述べる。物の発明の場合は特許権の対象となる物の生産、使用、供給、輸入をする行為がある。方法の発明の場合は特許権の対象となる方法の使用をする行為である。続いて医療関連の発明と特許権について論じる。これは医療機器、医薬品、医療関連行為に分けられる。医療機器は、他の機器と同様、「物の発明」として特許権の対象となりうる。また、医薬品を製造する方法についても、要件を満たせば「方法の発明」として特許権の対象となりうる。ただし、医薬の調剤行為および調剤行為により製造される医薬に関しては、特許権の効力がおよばないものとされる。医療関連行為については、医療機器や医薬品が「物の発明」として特許権の対象になるのに対して、「医療行為」については、特許権の対象とされていない。その理由は以下のとおりである。一つは医療行為の研究開発は、特許制度によるインセンティブ付与のニーズが高くなかったこと。二つめは、医療行為は緊急の対応が求められ、特許が付与されると許諾を求めなければならず、患者の生命や身体に危険がおよぶことである。特許権が与えられない行為として、人間を手術する方法、人間を治療する方法、人間を診断する方法があげられる。人間を手術する方法としては、外科的手術方法、美容・整形のための手術方法や手術のための予備的処置方法も人間を手術する方法にふくまれる。人間を治療する方法には、投薬・注射、物理療法などの手段を施す方法、人工臓器・義手などの代替器官を取り付ける方法がある。また、病気の予防方法や治療のための予備的処置方法、補助的処置方法、看護のための処置方法などもふくまれる。人間を診断する方法には、医師が病気の発見、健康状態の認識等の医療目的で、身体・器官の状態・構造を計測するなどして各種の資料を収集する方法、およびその収集方法につき、病状について診断する方法を意味する。また、この計測方法や計測のための予備的処置方法も人間を診断する方法にふくまれる。中でも、「人間から採取したものを処理する方法、またはこれらを分析するなどして各種データを収集する方法」のうち、「採取したものを同一人に治療のために戻すことを前提にして、採取したものを処理する方法」は医療行為にあたるとされる。そのため、細胞を採取者と同一人に戻す手法による再生医療・遺伝子治療における細胞の処置方法は、たとえ採取方法や接種方法が方法中にふくまれていない場合にも医療行為にあたり、特許権を与えないという判断が特許庁によりなされている。このような特許庁の運用に対し、研究開発促進、産業振興等の観点から、見直しを求める要請が出ている。例えば、研究開発促進、産業振興の観点からは、再生医療および遺伝子治療関連技術の中には、皮膚の培養方法や細胞の処理方法等、医師のみならず医師免許を有しない者も行うことを許されるものもあり、これらの技術は、受託事業の確立など新産業としての成長が見込まれる。しかし、これらの方法が細胞を採取者と同一人に戻す手法は再生医療・遺伝子治療における細胞の処置方法による場合、たとえ採取方法や接種方法が方法中にふくまれていない場合でも医療行為にあたり特許権を与えないと特許庁は判断している。このような運用に対し、これらの技術を特許権により保護し、新産業育成を促進してほしいと要請される。医療機器、医療品等の使用方法に関しては、医療機器や医薬品のように、以前より物や物を生産する方法に関する発明に対して特許権が与えられてきた分野においても使用方法に特許を与え、保護してほしいとの要請が出ている。例えば、特定の物質を測定し、その物質が、一定値以上の場合にのみ既知の医薬品を既知の用途のため使用する方法がある場合、医薬品およびその用途は既知であるから、化学構造や用途により特定した医薬品に関する発明では新規性あるいは進歩性がなく特許の対象とはならない。また、この方法を使用方法の発明としてみた場合、医療行為にあたり現在の運用では特許権が与えられていない場合などがある。