歴史人物烈伝

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范増の深謀

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 序章
 これは秦王朝打倒から漢王朝樹立までの間に繰り広げられた深謀遠慮の才を発揮した范増の物語である。
 第一章 青年范増
 ここに居る范増は今年で数えて18になる若者である。彼は秦王朝を甚だ憎んでおり将来は打倒秦王朝を夢見ており誰か英傑を見つけたらその軍師となり新たな王朝を築くという野望を持っており、そのために今は兵法書や軍略書を読みあさっている。また彼は占星術や地理学なども必須知識と考えているので日々学んでは実際に天地を観察しながら英雄が世に出るのは今か今かと待ち焦がれている。しかしながら星を占ってみてもその兆しはまだなかった。
 第二章 范増の鬼才
 話はだいぶ下り范増65歳にして彼は鬼才ぶりを発揮する。それは秦王朝が倒れて二人の英傑が天下をとるため相争うことを占星術で知っていたのである。それまでは自分の才をひけらかすことなくただ知を磨きながらじっと英傑が世に出るのを待っていた。そして天空に輝く2つの巨星が気を増しているのが見えるがどうやらそれは楚国の新王であるらしい。ただもう片方の巨星にはたくさんの星々が眷属をなしているのが見てとれた。なるほどそれはどうやら楚王の宿敵であって自分が扶けるべきは楚王の方でありどちらが勝つかまでは見てとることは出来なかった。ただそれは自分の知謀次第でどうにでもなるという自信が彼にはあった。
 第三章 亜父
 早速范増は秦の章邯の軍を破り破竹の勢いで進撃する項羽の陣に赴いた。そして秦打倒の後いかにかの劉邦を凌いで新王になるべきか懇懇と諭していった。感銘を受けた項羽はそれより范増を亜父と呼び軍師と定める。その亜父が説くには漢中を先に平定した劉邦は後顧の憂いとなること必定なので先に機会あるうちに消しておくことが先決ということであった。しかし結局傲岸な項羽は劉邦を侮り鴻門之会において劉邦に対して寛大であったためこの好機を逸する結果となる。これはその夜に天を仰いで見たところ勢いを失わずに輝く青星を周りの諸星が守るように輝いているのを見る限りやはり時の運には逆らえないのかとひどく彼は落ち込んだが未だに赤々と輝きを放つ赤色巨星を見ると励まされる想いがした。
 第四章 劉邦への怨念
 それ以来の范増が抱く劉邦への怨みは募るばかりで焦りとともにいかに劉邦を亡き者にするか考える日々である。さまざまな策略は思いついたが決定打となる策は先の鴻門之会の他には思い浮かばず日に日に怨みは増すばかりであった。また同時に項羽への愛情故の苛立ちもやはり隠せなかった。その後漢中王を名のり本格的な項羽との戦いになった今相手の軍を破るより他になく鴻門之会の失策への悔恨は膨らむばかりでどうしようもなかった。
 第五章 星落つる
 范増も齢70を過ぎる頃となり、垓下の戦いに破れる前、最後の軍法会議が終わり陣の帷を出て夜空を眺めた彼の胸には悲壮感と憤慨が入り混じっていた。今までは勢いのあった赤い星は最期の星落つる前の相であった。その反対に周りの星々に囲まれている青い星は永く勢いを失うことのない天中間近の相であった。負けを悟った彼はその未明に陣を去り故郷への旅路についたが道半ば溜まりに溜まっていた劉邦への怨念と項羽に対する義憤が祟り病を起こしてこの世を去った。享年73の年であった。
 終章
 范増亡き後父と仰ぐ軍師亡き後の項羽は頼りを失い敗勢に陥るが早いか凄惨な最期を迎えることとなる。范増の野望は叶わなかったがやはり時の運にはどんな才知をもってしても抗えないことを示す例となった。
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