花言葉を俺は知らない

李林檎

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「…成仏の可能性は低いと思います、殺された霊は病気や寿命で死んだ方より未練が強いです…それに貴方がその方にとても執着しているように感じます、そんな貴方を置いて成仏出来る恋人はまずいないと思いますよ」

「じゃあ、何故俺に会いに来ないんですか?」

「愛しい者同士なら喧嘩別れをしても、何も感じなくなるとは思えません」

「では、他になにか…」

「そもそも黄泉の国にいないとなれば話は別です」

「……どういう事ですか?」

「生きている、可能性です」

瞬が生きている?…そんな筈はない、絶対にありえない。

だって瞬の死体を見たし、何度も何度も生死の確認をした。
その度に言葉にならない恐怖と絶望を味わった。

そんな筈はないとミゼラに言いかけて口を閉じる。

一言、勝手な事を言わないでくれと言えば済む。

しかし、それにしては心当たりがいくつかあった。

『目の前に瞬がいるのに諦めるバカが何処にいる!?俺は絶対に諦めない!瞬が再び死んだ時のために地獄で待っている!!そしたら今度こそ…』

ロミオの言葉、ずっと瞬の死体の事を言ってると思っていた。
しかしもしロミオが瞬に会っていたら再び死ぬ意味も分かってくる。
都合のいい事だとは思う、頭の可笑しい奴の言葉を鵜呑みにするなんて…

それに森であったあの青年は瞬と瓜二つだと感じた。
瞬なのではないかと思ったが確証はなかった。
そう、ミゼラに霊媒してもらうまでは…そんな奇跡みたいな事…

…まさかと思い、ミゼラに希望の眼差しを向ける。

「ミゼラ様、もし生きてるとして…別の人の身体になる事はあるんですか?」

「…転生はあります、その方が亡くなって一年なら今は生まれたばかりの赤ん坊ですか」

「…大人の姿になっているって事は…」

「例外を知らないので何とも…」

例外がない、それはつまり…可能性がない訳ではないという事か。
だとしたら、自分でその可能性を探すしかない。

ハイドは静かにミゼラに向かって頭を下げた。
今まで薄っぺらい事しか言わなかった霊媒師の中で、彼女は本物だと確信した。
瞬に会えなかったが、新たな可能性を教えてくれた。
精霊の森で会った彼をまずは探す、話していないからなにか分かるかもしれない。

彼が瞬でなくても、瞬の事をなにか知っているかもしれない。

そして重要な婚約破棄の事をミゼラに話そうと思った。
はっきりと終わらせよう、俺の一年前から止まった時間をゆっくり動かすために…一歩ずつ踏み出そう。
しかし、今のミゼラは霊媒で疲れているから休ませようと応接室のドアを開けてリチャードを呼んだ。

リチャードは聞き耳を立てている事にハイドが気付いていた事に驚いていた。
長年一緒にいるんだ、リチャードの性格は分かっている。

リチャードにメイドを呼ぶように頼んでミゼラを空いている寝室で休ませる事にした。
さすがに男に運ばれるのはミゼラだって嫌だろう。

すぐにメイドが二人やって来て、ミゼラを連れて応接室を出た。

応接室にはハイドとリチャードだけになった。

「よく聞こえなかったけど、何話してたんだ?」

「瞬の話だ」

「えっ!?瞬様来たのか!?」

ハイドは静かに首を横に振り、リチャードは肩を落とした。
でも、瞬はもしかしたら別人になっているかもしれない。

リチャードには絶対に笑われるから言わない。

ー姿形が変わっても、俺が君を愛しているのは変わらないー

ー必ず君を見つけ出す、そう心に誓ったー
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