花言葉を俺は知らない

李林檎

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面影

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ーハイドsideー

結局森で夜を明かし、朝に目を覚ました。
瞬の部屋より瞬を感じられて安心して眠れた。
こんな安らぐ時間はいつぶりだろうか…瞬が居なくなってからは感じた事がない。

もうそこには誰もいなくて綺麗に毛布が畳まれ、彼に掛けた上着を掛けられて寝ていたようだ。
優しい人物なのだと上着を掴んで柔らかく微笑む。
きっとこの事をリチャードに言ったら戯事だと呆れるだろう。

でも、何故か俺には彼が瞬ではないのかと思い始めていた…確証なんて何処にもないけど…
容姿以外全てが一致する気がした、ただの勘だけど…
それを確かめるためにも早く霊媒して瞬に会いたい。

焚き火の火も毛布も精霊が用意してくれて、何から何まで世話になった。
立ち上がると側になにかが置いてあるのに気付いた。
葉っぱで作った入れ物の中に小さな果物が入っていた。
精霊が置いたのかと思って精霊を見るとハイドの周りを飛ぶだけだった。

話せないのか、来た時にはなかったから精霊か…もしかしたら彼なのかもしれない。
大事に入れ物ごと持ち、荷物の袋に潰れないように入れる。

…洞窟を出たら瞬が消えてしまいそうで怖かったが此処にいても仕方ないから上着を着て洞窟を後にした。
精霊の森は初めて来たから帰り道が分からず精霊に導かれるまま進み入り口までやってきた。
精霊にお礼を言い、イズレイン帝国に向かう。

愛馬を引き連れると案内もしてくれるのか、精霊が前を飛んでいた。
もう少し早く出会えたら瞬と精霊の話を出来たのかもしれないと愛馬に跨り思う。

そして城に戻るとずっと待ってたのか入り口にいたリチャードが駆け寄ってくる。

「何処行ってたんだよ!早く来い!」

「…どうしたんだ?いきなり」

愛馬から降りてリチャードに引きずられるように歩く。
他の騎士に愛馬を頼みそのまま城に向かって進む。
たまたま早く帰れたから良かったものの精霊の力を借りなかったら森を出るのが時間が掛かっただろう、帰るまでずっとそこにいるつもりだったのかと呆れる。

夢の世界から現実に引き戻された何とも言えない気持ちになりながら城の応接室にやってきた。

ハイドに用がある客かと身なりを素早く整えてノックをして開けた。

「ハイド・ブラッドで…す」

応接室のソファーに座っているその人物を見て言葉に詰まった。
何故、此処にいるのかと驚きが大きくてリチャードを見た。
いつから居たのか、早く知らせれば遠回りせずに済んだのに…リチャードも分からないと困惑していた。

リチャードは大きな仕事をやり終えた顔をして既に充分なほど驚いたからか平然としていて応接室のソファーに座る。
…もう用が済んだのに当たり前のようにまだ居座る気なのか。

我に返り、ハイドもリチャードの横に腰を下ろす。

「何故、この国にいらっしゃるのですか?…ミゼラ様」

「精霊の森で儀式の葉を摘み帰る時に、そちらの騎士様に呼び止められ帰りを待つように言われたので」

「…申し訳ございません」

「いえ、昨日来たばかりですので…泊まってしまいご迷惑では?」

リチャードと偶然イズレイン帝国の門近くで会い城に案内されたようでリチャードの代わりに謝る。
ミゼラも気まずかったのかそう言い首を横に振る。、
リチャードの女性を見つけるセンサーはいったい何で出来てるのか不思議だった。

しかしたまには役に立つ、俺にとっても手間が省けたしもし精霊が森まで運んでくれなかったらすぐに帰る事が出来ずに、またすれ違っていたから精霊には感謝してもしきれないな。

リチャードに部屋を出るように言うと仕方なさそうにして応接室から出た。
…なんだ、今の顔はなにか言いたげな顔は…リチャードは関係ないから追い出しただけだ。

静かになった応接室で空気が一気に緊張する。
ミゼラがではない、これからする事にハイドはミゼラを真剣な眼差しで見つめる。

ハイドは回りくどい事はせず、早速ミゼラに本題を言う事にした。

「ミゼラ様、早速ですが例の件…お願い出来ますか?」

「死んだ方に会いたいのですね、分かりました…この葉だけで充分ですから」

事前に伝書鳩で知らせていたからミゼラには分かっていて、葉が詰まったカゴを見せた。

他にいろいろと道具が必要なのではと思っていたからそれだけでいいのかと驚いた。
今までの霊媒師は怪しい水晶玉とか鏡とか持っていた。
本当は正装があるらしいが、今は持ってきていないから通常の巫女服で我慢して下さいと言われ正式なものとかよく分からないから瞬に会えるなら何でもいいと頷いた。

ハイドはミゼラに指定された場所に立つとミゼラは聞き取れない言葉を呟き数枚の葉に息を吹き掛け空中に投げた。
すると不思議な事に葉はスローモーションになって落ちていく。
キラキラと光る葉を見つめる。

「貴方の会いたい方を思い浮かべて下さい」

「…名前などは?」

「いりません、貴方の想いが相手を引き寄せるのです」

そう言われ、ゆっくりと瞳を閉じて思い浮かべるのはただ一人。

ー瞬…会いたい、瞬が会いたくないなら直接言ってくれー

ー恨んでても怒っててもいいから、君に会いたいー

ーお願いだ、俺の前に来てくれ…瞬ー

強く強く瞬を想い願うと、葉は全て床に落ちた。

一気に緊張が解けたような疲れが押し寄せてきた。

「終わりました」

「もう?」

意外と早く終わり、驚いてミゼラを見ると身体が大きく揺れて倒れそうになりハイドが支える。
何分ぐらいしか経ってないと思うがハイド達は酷く疲れていた。
キョロキョロ周りを見ると何も変わってはいない。
ミゼラを見ると不思議そうな顔をして首を傾げていた。

今回はハイドも疲れを感じていたから手応えがあったが…もしかして、また失敗か?

これで会えなかったらもう一生会えない気がして冷や汗を流す。
ミゼラは儀式の力のせいか床に落ちている緑色だったのに黒ずんだ葉を片付けていた。

「死んだ方が行くのが黄泉の国です、私は葉を通して黄泉の国を見ました」

「…そんな事が出来るのですか?」

「えぇ、それが巫女の役目の一つです…しかし、貴方の会いたい方は貴方の想いに反応していません」

「…それって、会いたくないという事ですか?」

「……そうですね、想いを無視する事も出来ます…全く貴方に対して想いは感じていないようでした」

ミゼラは自分が感じた事を言っているのだと分かっている。
それでもハイドにはショックだった…瞬はハイドを何とも思っていないと言われたようなものだからだ。
今まで一緒に過ごしていた時間はなんだったのか、ハイドの独りよがりだったのか。

もう未練がなくて瞬は応えないとなると…成仏したという事か?

…じゃあ、もう瞬には二度と会う事が出来ないのか?

何もかもが遅すぎたのだろうか…ハイドは絶望して膝を床に付いて崩れた。

「アイツは、成仏したんでしょうか」

「その方との関係や何故死んでしまったのかを教えて下さい」

ハイドは瞬とは恋人同士で、ハーレー国の騎士に殺された事を話した。
まだ婚約破棄していないのに恋人の話をしたら失礼だろうかと思っていたが、やはり原因は知りたい。
今のハイドを婚約者としてじゃなく霊媒を必要とするお客様ぐらいにしか思ってないのかミゼラからは何の感情もない。

あの絶望的な光景が思い出されて拳を握りしめた。
ミゼラは痛みに共感して瞳を閉じて考えていて、やがてこちらを見た。

ミゼラに瞬が殺された事や恋人だった事を話して、ミゼラは首を横に振った。
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